コロナショックにより、足元の経済活動は停滞している一方、これを機に投資を始めた方が急増しているようです。
大手ネット証券の楽天証券によると、3月の新規の口座開設数は過去最大となり、月間16万件となりました。
盛り上がりを見せる株式市場ですが、投資初心者がこれから投資を始めるのはチャンスなのでしょうか?
今回は、投資のプロフェッショナルに投資のイロハについてインタビューをしました。
株式会社クラウドファンディング
代表取締役 伊東修
2002年
野村證券株式会社入社。
全国同期3年連続営業成績トップ。
3年目にして全国7年次以下全社員中営業成績トップ。
2006年
米モルガンスタンレー証券会社入社。
機関投資家、上場会社、未上場会社等の法人営業に従事。
2008年
リーマンショック等未曾有の金融危機の中、ヴァイスプレジデント昇格。
2013年
株式会社クラウドファンディング創業。
インタビュアー:
まず、伊東社長の投資に関するご実績を教えていただけますか?
伊東社長:
資産家やそうじゃない方、色々なお客様がいらっしゃいますが、新規のお客様の資産運用を任せて頂いた数でいうと、日本で最も多くお取引頂いたかと思います。
インタビュアー:
野村證券で全国同期3年連続営業成績トップってすごいですよね!
伊東社長:
それも一つではあるんですけど…いろんな考え方の人がいるじゃないですか。年齢、性別も様々ですし、とにかく損したくないという人や高いリターン求める人もいます。不況の時、景気が良いとき、タイミング含めて、いろんな人にお取引いただけたところが私の経験として言えることかな。
インタビュアー:
コロナショックで経済は悪化していますが、初心者が今から株を買うのはいいタイミングなのでしょうか?
伊東社長:
ざっくり言うと、景気が良いときに売って、悪いときに買うのが鉄則なんです。
今はたしかに口座開設数が増えていますが、強烈に買ってる人は少ないと思います。
景気も悪いし先行きもこれから大変になりそう!というタイミングが株価の底。
最も苦しい時に買えるか?が、株で勝つための一つのキーになります。
逆に、景気も良くて今後もずっとこれが続きそうだ!ってみんなが言うときが株価のピーク。
その時に、株を売らなきゃいけません。
大きな波という観点では、基本的にみんなが思ってることの逆をしないと利益は出しにくいです。
当たり前のことですが、上で買って、下で売ったら負けます。下で買って上で売るから勝てるんです。
でも大抵の人は、株価が下がってる時はもっと下がるのではないかと不安になり急いで売っちゃうし、株価が上がってる時はさらに上がると期待して、そこで買っちゃう。
インタビュアー:
なるほど。勝つためには、大衆の心理とは逆を行かなきゃいけないんですね。ちなみに、株式を始める素人が陥りやすいミスだとか、気をつけた方がいいこととかってありますか?
伊東社長:
投資は、答えがない世界なので難しいのですが、これから投資を始めるのであれば、小さい投資金額にすべきだと思います。
インタビュアー:
小さい金額っていうのは、資産のだいたい何割程度とお考えですか?
伊東社長:
それぞれのライフプランによっても違いますが、最初は余剰資金の10%程度を上限目安として考えるといいのではないでしょうか。
投資といっても、株式投資だけでなく、債券とか為替とかいろんなものがあります。
株一つとっても、大型、中・小型株など、会社の規模によってもリスクとリターンは違います。いろんな選択肢がある中で、いきなり一つに絞って資金を集中させないことも大切です。
インタビュアー:
株だけじゃなくて債券やFXなど、いくつかに分散投資したほうがいいということですか?
伊東社長:
何に投資した方がいいかは、人によります。
例えば、株に向いている人もいれば、債券に向いている人もいるんです。
株をやってみたけど、日々の値動きが気になって、他のことに手をつけられなくなって日々の生活に支障が出てしまう方は、株式ではなくて、債券などの投資商品の方が向いてるかもしれません。
大事なことは、常に他を買える選択肢を残しておくことです。
例えば100万円を投資上限として、いきなり何か100万円買ってしまった、他の投資商品を試すことができません。
自分にあった投資商品を見極めるためにも、買える選択肢を残して、余裕ある資金管理が大事です。
インタビュアー:
なるほど。ちなみにこれまで伊東社長が出会った投資初心者の方が、よく気にしていることや、その時にアドバイスしていることってありますか?
伊東社長:
多くの初心者は陥りがちなんですが、みんな「株価」を買ってます。株式投資をギャンブルだと思っている人も多いです。
でも実際に買ってるのは、「株」です。株っていうのは会社そのものなんです。会社を買っているわけで、ギャンブルなんかじゃありません。
インタビュアー:
株式会社ですから、分割した会社の一部を持っているってことですよね?
伊東社長:
そうです。会社の株を買うということは、その会社の何パーセントかを買うということです。
会社の成長とともに株価は上がるものですし、会社が過大評価されているなら下がりやすくなります。
会社に価値があるんです。
会社が持っている資産も株主のものになるし、今後の利益も分配金として受け取る権利が株主にはあります。
会社の価値をもとに、株価は動いています。
もし、すごく良い会社なのに株価が下がってるのであれば「これは安い!本来の価値と乖離がある。買いだ!」と思うし、会社が何も変わってないのに株価がやたら上がってるんなら、「過大評価じゃないか」とみます。
ところが、大体の人は、会社そのものを見ずに、その会社の株価チャートの動きだけを見るんですよね。
デイトレーディングを否定するわけじゃないのですが、株式投資をするということは、本来は会社を買ってるんだという意識を持つことが大事です。
インタビュアー:
なるほど。つまり株価チャートの動きに一喜一憂するのではなくて、その会社はもっと評価されるべき会社なのか、そうではないのか、会社そのものを見て判断すべきということですね。いい会社かそうではないかは、会社の何を見て判断すれば良いですか?
伊東社長:
まずは会社の事業内容を知ることです。
上場会社は、Webサイト上に事業内容や有価証券報告書と言って、会社が何をやってるのか、儲かってるのか、損してるのか、何にいくら使ってるのかなど、情報を全て開示する義務があります。
なので簡単にいうと、最低限必要な情報は全部サイトに載ってるよ、ってことなんです。
同業他社…これは自分で調べなきゃいけないですが、同業他社の有価証券報告書を比較すれば、一発でその会社が順調なのか、厳しいのか分かります。
他には、その会社が販売している商品・サービスを、自分で確認することもできますよね。
消費者として、自分でその商品を買ったり、サービスを受けることもできるし、使っている人に感想を聞いてみたりすることで、その会社のリアルな強み弱みを把握することも出来ると思います。
インタビュアー:
なるほど。有価証券報告書という、ある意味会社の成績表を見比べたり、消費者向けのサービスをしている会社なら、実際に店舗を見て回ったり、商品の味比べみたいなことをして見えてくることもあるわけですね。
たしかに、そこまで調べるのと、ただチャートの動きだけでギャンブルトレードするのとでは、勝率も、投資結果に対する納得度も違ってきそうですね。
伊東社長:
そうですね。まず調べることに価値があります。有価証券報告書を読み込むだけでも、そこまでしてる人はあまりいないので、他の人より強いし、リスクマネジメントもできるんじゃないかな?と思います。
インタビュアー:
日本とアメリカでは個人の金融資産内訳にも大きな違いがあります。日本の家計では現金・預金の占める割合が50%以上。株式・投資信託を合算しても14%程度です。一方アメリカの家計では、現金・預金の割合はわずか13%。株式・投資信託の合算では46%になります。
この結果、アメリカは株価が上がれば個人も潤うと考える人が多いのですが、日本では株価が上がっても企業が儲かってるだけでしょうと考える人も多いですね。
こういった日本とアメリカの違いは、何から出てくるのでしょうか?
伊東社長:
金融リテラシーが違いますよね。
日本ではファイナンシャル教育をほとんど受けないまま大人になる人も多いですが、アメリカでは子供の頃から家庭でもそういった教育を自然としています。
例えば、日本では子供の誕生日にディズニーランド旅行をプレゼントするということは、よくあるとお思います。アメリカでは、それが旅行ではなく、ディズニーランドの株だったりするのです。
日本では、汗水流して稼がないことにあまりいい印象を持てないですよね。
それは良いところでもあるのですが、それとは別で、余剰資金を使って、お金にも働かせようというのがあるべき姿だと思うんです。
お金を寝かしたままにするのではなく、投資することで稼ぐことができたり、投資を通じて世の中の発展につながるというリテラシーになってない。
例えば、アメリカのAmazonは世界で最も大きい会社の一つですが、投資のお金がなければ存在してない会社なんです。
みんながこんなインフラがあったらいい!って理想があって、そこにアメリカは投資した。日本はそうではないので、日本とアメリカに大きな差が生まれたんです。
アップルやグーグルや他の会社も同じ、ちゃんと投資を行えたから今があるんです。その仕組みをアメリカ人はよく理解しているので、株をするっていうことは個人資産を増やすためだけでなく、次の世の中の豊かさに繋がるチャレンジを促しています。
インタビュアー:
最後に読者に向けて何かありますか?
伊東社長:
よく言われるのですが、日本人は投資をギャンブルみたいに思っている人が多いということ。
投資に対して暗い印象を持っていると思うんですね。
一部の投資家ではレバレッジFXとか、信用取引とか、少し価格が変動しただけで資産が吹っ飛んだ!みたいな。それで株おっかない、投資おっかないって。
おっかないのは、株や投資そのものではなくて、資金に対してリスクを高く取りすぎていたり、株価の値動きを使ってギャンブルをしてしまう、その人のトレード手法だと思うんです。
そういう日本あるある…ありますよね?
アメリカ人は個人資産の半分以上を株式や投資信託で持っていますが、投資はギャンブルではなく、自分の生活を妨げない範囲で運用する、それこそが正義という考え方が根付いています。
もし使うことなく、寝かしたままの手付かずの余貯金があったとしたら、
「そのお金が口座にあったことで、どれだけ人生が変わったの?」
「仮に運用に失敗して損失が出たとして、どれだけ人生が変わるの?」
資産をキャッシュで持ってるだけでは増えないし、お金を寝かしたままでは、世の中に役立てることもない。
だったら、自分のできる範囲は限られているけど、持ってるお金の一部を社会に役立ててもらおう。
そういう人生の方が豊かじゃないですか?
自分の行動範囲は限られているから、自分はできないけど、やって欲しいことをしている会社にいろんな投資をする。投資には社会的意義もあるんです。
そして、自分も仕事頑張る。
もし日本人の多くが投資をギャンブルの一部と考えたままでいたら、より一層経済成長に差が出るし、アメリカに完全に置いていかれていると思います。
インタビュアー:
株価の動きだけに着目するのではなく、会社そのものを自分なりに調べてから投資することで、投資収益が上がる可能性も高まるし、投資を通じて、自分たちが住む社会をよりよくすることにも繋がるってことですね。本日は有意義なお話をありがとうございました。
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