今回、お話を伺ったのはAngelKnights税理士法人の中村桂子先生です。
元々は税理士を目指していたわけではなく、医者を志していたという中村先生。
先生が税理士になろうと思ったきっかけやお客様とのエピソード、税理士選びのコツなどを伺ってみました。
AngelKnights税理士法人 代表 中村 桂子 先生
理学部卒業後、医療特化型の会計事務所に入所。その後、PwC税理士法人、新日本製鐵の財務部を渡り歩き、2012年に中村桂子税理士事務所を独立開業。2020年、AngelKnights税理士法人へ。
医者になるためのステップとして税理士を選択!?
インタビュアー:まずは、中村先生が税理士になるまでの経緯を教えて頂けますか?
中村先生:学生の頃、将来は医者として世界で社会貢献をしたいと考えておりました。
海外で医者になるためには理系の学位を取得した後で医学部へ進学します。大学は国内で理学部に進んで、その後に海外で勉強をしようと考えました。
親に相談したところ、そこまでの教育資金は準備していないから自分で(稼いで)行きなさい、と言われました。
収入と時間との両方を確保できる職業は何だろうかと兄に相談したところ「税理士」と言われたことが全てのキッカケです。
大学卒業後に働きながら税理士資格を目指すことにしました。最終的に税理士登録をしたのは32歳のときでした。
この頃には、海外の過酷な環境で人を助けることを現実的に考えられませんでした。一方で、会計や税務を非常に面白いと思っていました。
併せて会計事務所を経営する父の事業承継についても考えるようになりました。
背景や環境から、税理士の道を選択することが、自分の意思で実現化できる貢献へつながっていくのでは、と思いました。
インタビュアー:偶然のキャリアチェンジだったんですね。
中村先生:そうですね。私の地元は福島県です。
帰省した際に東日本大震災を経験し、自分の時間は自利利他に使うことを決めました。
それは税理士試験を通過したタイミングでもありましたが、そのとき偶々妊娠もしたのです。
周囲や環境に気遣いながら時間を過ごすよりは、限られた自分の時間、人生を自由に選択し、精一杯に生きたい気持ちが強かったです。
それ以外は何も考えていませんでした(笑)。
そんな流れを尊重してこれは独立だ、してしまえ!という勢いで2012年に開業をしました。
インタビュアー:おお、すごいですね。当初は大変じゃなかったですか?
中村先生:子育てしながらの独立開業は大変でした。
お客様のいない状態でスタートしましたが、事務所の家賃や会費、他の経費を払わなければならない。それまでの貯金を使い、子供を抱っこしながら業務をしていました。
研修や会合の参加は必須でしたので、子供を連れて参加していました。私は先輩税理士方に恵まれておりました。彼らが子供を可愛がってくださいました。
有難い限りでした。今の我々があるのは先輩税理士方のおかげです。
本当に感謝しています。心から御礼申し上げます。
税理士をする一番の理由は、恩返し。
インタビュアー:事務所としての強みや特徴を教えてください。
中村先生:当社のお客様はほとんどが法人です。
スタッフメンバーも特には企業に関する会計税務の知識や経験が豊富で、連結会計から連結納税も、上場非上場問わず対応できるところが強みといえます。
もちろん中小企業や個人事業主、相続のみご依頼のお客様もいらっしゃいます。
幅広い業種・規模に対応できるスタッフメンバーが揃っているのは特徴ですね。
インタビュアー:お客様からよくある相談内容ってありますか?
中村先生:一概に「これ」と限定されることはありませんが、会計や税務では完結しない、複雑な問題を相談されることが多いです。
例えば、弁護士や弁理士などの他士業、地方自治体、厚生労働省や国土交通省など、機関を縦断横断するような領域の問題、経営者の手前である個人としての人生やセカンドライフの相談も。
どのように判断や行動をしたらよいのか、解決の糸口を一緒に探してほしいなど、内情を知っているからこその相談に来られる経営者の方は多いですね。
おいしい店を教えてほしい、なども(笑)。信頼をいただけて、とても嬉しいです。
インタビュアー:お客様から信頼されている証拠ですね。お客様との印象に残っているエピソードがあれば、教えてください。
中村先生:エピソードという表現には至るものはありませんが…
私が税理士をしている大きな理由に「恩返し」があります。
時間を共有してくれたすべての人に甚大な恩と敬意があります。自分の人生でどうしたら彼らに恩返しをできるか、いつも考えております。
あるとき前職場より業務依頼がありました。私は二重三重の返事をし、大喜びで賜りました。
時を経ても変わらない思いで私を選んでくださったことが本当に嬉しくて。彼らが全力で私を守ってくれたように、今は私も彼らを全力で守り、役立ちたい。
もちろん彼らに限らず、私を育ててくださった父の事務所で働く職員さんたちの幸せもずっと守り続けていきたい。
彼らが私を生かしてくれたことへの恩返しが使命だと思っています。
インタビュアー:今年は、コロナ拡大により大きな環境の変化がありましたが、経営者に対して何かアドバイスはありますか?
中村先生:種々の制度が流動的に変化し、給付金、助成金や補助金、融資商品も都度増えている状況です。
もし資金調達をお考えならば、自分が取得できるであろう補助金や助成金、給付金は何だろうか、それはいつ申請し、いつ入金がされるか、融資をいつ、いくら受けるのか、という一覧を作成するのが良いと思います。
自分が活用できる制度と貰える金額、申請した、入金されたというステータス、合計でいくら入金されるか、時間と収支を管理できるエクセルがあると便利です。
各制度をバラバラに考えている人も多く見受けるのですが、いつ・いくらはキャッシュフローを予測する上で重要ですよね。
また、厚生労働省や経済産業省、中小企業庁、ミラサポなどのサイトで、制度の状況を頻繁にチェックすることをおすすめします。
税理士選びで大切なことは、表現方法や価値基準が自分に近いかどうか
インタビュアー:初めて税理士に仕事を依頼する際のポイントって何かありますか?
中村先生:個人的な考えですが、3つ提示させてください。
1つ目は税理士や担当者の方と相性がいいかどうか見極めることです。
自分の話していることが相手に伝わっているか。相手の話していることを自分が理解できているか。価値基準や判断基準、表現方法や言葉の選び方などが自分に近いかどうかです。それを相性と表現しました。
同じ内容を伝えても表現が全く異なったり、正しく話したつもりだったのに別の意味に伝わっていたとか、そんな場合に間違いや勘違いが起きると思います。
言葉や感情の表現、価値観など、定量的なこと以外で相性がよいかどうかを判断する必要があると思います。
様々なタイプの税理士がいます。感情的な方もいらっしゃれば、受動的な方もいらっしゃいます。どのタイプが良い悪いではなく、自分と相性の良い税理士を見つけることが重要だと思っています。
2つ目は、事業や人生について、将来どうなりたいのか税理士に意思を伝えること。5年後、10年後になりたい姿、意思を明確に伝えることです。
将来の具体的なイメージが無ければ、無いと伝えておくことが大切だと思います。目標を設定して向かっていきたい、ということを税理士に伝えてください。
3つ目は、税理士へ丸投げをしないこと。
税理士は伴走できますが、羅針盤を示し進むのは経営者自身です。ご自身で判断し、行動をおこしていくことが必要です。事業の主役は経営者です。
これらの共通事項は意思疎通、コミュニケーション。相手が何を考えていて、伝えたいことは何なのか。お互いを尊重し、理解し合うことが重要だと思います。
インタビュアー:最後に中村先生が税理士として、日頃から大切にしていることを教えてください。
中村先生:私が最も大切にしているのは自社のスタッフメンバーであり、お客様を守るべきはスタッフメンバーである、ということです。
職場で一緒に働いてくれる仲間たち、近しいベクトルを持った仲間たちが、「どうしたら快適に仕事できるだろう」「どうしたら快適に人生を過ごせるだろう」「彼らの人生がこの先も幸せであるために、どうしたらよいのか」をいつも考えています。我が社で過ごす時間が、彼らの人生を創っていきます。私自身、ビジネスと自分の人生を切り離していません。
人を幸せにする税理士という職業をとても誇らしく思います。一方でそれは一つの姿にすぎないとも考えています。
会計税務に限らない。我々にできることは何か、常に考え、気付き、行動を続けていく所存です。仲間やお客様に感謝しかありません。
中村桂子税理士事務所/AngelKnights税理士法人
所在地:東京都港区北青山3-12-7-8F
電話番号:050-5583-1171
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