高齢の親がいるけど、万が一、親が認知症になったら相続はどうなるの?こんな一抹の不安を抱えている方へ本記事をお送りします。
今回は、信託や後見制度など数々の相続支援を行なってきた司法書士法人UNIBESTの代表・岩白先生にお話を伺いました。
認知症になった後にできる相続対策はある?家族信託や成年後見制度って何が違うの?メリットやデメリットは?など、様々な疑問にお答え頂きましたので、ぜひ最後までご覧ください。
司法書士法人・行政書士法人UNIBEST 代表 岩白 啓佑 先生
法政大学法学部法律学科卒業後、2015年に司法書士法人山口事務所(現司法書士法人・行政書士法人UNIBEST)入所。
司法書士・行政書士の枠に囚われず、「私たちは、お客様の幸せのために、信じ頼られる組織であり続けます」と言う経営理念のもと、真に価値あるサービスの提供を目指している。
司法書士法人UNIBESTってどんな事務所?
インタビュアー:最初に、司法書士法人UNIBESTが提供しているサービスや強みを教えてください。
岩白先生:まず、不動産登記や商業登記といった、いわゆる司法書士業務の代表格である登記業務があります。
それから遺言を家族信託を中心とした相続対策、相続が発生した後の遺産整理をしています。
遺産整理というのは、残された不動産や預金、株式などの様々な財産を整理・管理して、遺産分割で決まった内容通りに相続人に分配していくという手続きですね。
あとは、認知症対策です。こちらも家族信託を使った提案をしています。
最近は会社の社長さんが認知症だとか、あるいは事故にあって突然判断能力がなくなったり、亡くなったっていう場合も、信託を使ってカバーできるような手法を考え取り組んでいます。
経営理念として「私たちは、お客様の幸せのために、信じ頼られる組織であり続けます。」というのがあるので、その理念を大切にして、他の事務所に断られるような難しい案件にもチャレンジするというのが強みですね。
例えば、相続人が何十人もいる相続案件は大変なのですが、立川オフィスの所長なんかは去年パラグアイまでハンコもらいに行きました。笑
後、裁判業務をRPAで自動化したり、司法書士報酬の支払いをPayPay払いに対応したり、LINEでの問い合わせに対応したり、新しい取り組みにもチャレンジしています。
今後は、デジタル遺産なんかも取り扱っていこうと思っています。
インタビュアー:色々と最先端の取り組みを行ってらっしゃるんですね。
岩白先生:チャレンジ精神を持って、いろんな案件に対応でき、かつ新しいことにもチャレンジしていくというのが強みだと思っています。
それに最先端を行きたいじゃないですか。かっこいいじゃないですか。そういうのが好きなんです。
いろいろとチャレンジして、常に「そんなことやってるの!?」って、驚かれるようなことをやっていきたいですね。
それもあって、有難いことに業界内で勉強会をしてほしいというお誘いも頂きます。
認知症になったら財産の管理はどうする?成年後見制度と家族信託の違いとは?
インタビュアー:今日はそんな中でも「相続と認知症」について伺っていきたいのですが、認知症になる前となった後、できる相続対策には何がありますか?
岩白先生:まず大前提として、認知症になった後はできることは一切ないんですね。
なので、残念ながら、認知症になった後に相続対策は無理というのが答えになります。
認知症になる前なら、色々と対策はできます。
主だったところでいうと、争族(あらそうぞく)対策と相続税対策。やはりこの辺の相談は多いですね。
争族対策に関しては、遺言もしくは家族信託というのが主な対策方法です。家族信託は、家族の誰かに自分の資産の管理を託す方法なのですが、遺言と同じ機能を持たせることができるんです。
相続税対策については、基本的には税理士さん分野ではあるんですが、例えば、ローンを組んでアパートを建てることで相続税を減らすことができます。このような対策も認知症になってしまうと出来なくなってしまうんです。
認知症の場合、お金を借りることができませんし、不動産に担保をつけることも出来ません。
そこで、認知症になる前に家族信託を組んでおいて、息子さんに全部任せるという方法があります。
そうすると、相続税を圧縮するという金銭的なメリットはお父さんにつくけれど、実際に動くのは息子さんっていう形を作れるんですね。
インタビュアー:本人以外の人に財産管理を頼む方法として、家族信託と成年後見人制度があると思いますが、違いは何でしょうか?
岩白先生:成年後見制度というのは、認知症になった後、本人が財産管理できなくなった際に代わりの管理人、つまり、後見人を裁判所で選ぶという制度です。
多くの場合は、我々のような専門家が選ばれて後見人につきます。
成年後見の場合、趣旨が本人の財産保護なので、財産が減るような動きや投機的な動きはしてはいけません。
例えば、財産を使ってアパート投資したい、となっても、アパートに人が入らないかもしれないリスクがあるので、そういったことは出来ないんです。
つまり、成年後見では財産をいまの状態で保つというのが一番の目的となります。裁判所から報告書の提出を命じられて監督されるので、制限は厳しいです。
一方、家族信託というのは、本人と託される人の間で、あなたに財産管理を頼むからね、という契約になります。これは民法の契約自由の原則に則って、中身は自由に決められます。
なので、本人の財産をリスクに晒すような投資の動きもできますし、個人間の契約なので裁判所から監督されることもありません。
そういう意味では、家族信託の方が財産に対して柔軟な対応ができるんです。
インタビュアー:なるほど。成年後見制度を使った方がいい人と、家族信託を使った方がいい人はそもそも全く別なんですね。
岩白先生:はい、成年後見人は認知症になった後に使う制度で、家族信託は逆に認知症になる前に使うべき制度です。認知症になっちゃったら契約ができないので。
後は、費用面でみても違いがありますね。
家族信託というのは新しい制度で、まだ対応できる人間が少ないので相応の費用はかかるのですが、あくまで信託を組む最初の1回だけ。
成年後見人の場合は、管理すべき専門家がつくので、大体20万円〜30万円の金額が毎年、亡くなるまで掛かります。
例えば、契約時に100万払って信託を組んでおくのと、認知症になって、後見人つけたことで10年間で300万円払うのと、どっちが良いかって考えて家族信託を選ばれる方も多いです。
インタビュアー:逆に家族信託のデメリットって何ですか?
岩白先生:強いてあげるなら、家族信託自体がまだ新しい制度なので、判例があまり積み重なっていない点です。
理論上は色々なことができるんですが、あんまり複雑なことをして将来トラブルになった時に、どう決着するかというのが見えにくい、というのはあります。なので、実際はそこまで複雑な契約はしません。
後、これはケースバイケースですが、家族のお金なので「使っちゃってもいいか」みたいなイメージを持つ人も中にはいるようです。
例えば、長男が家族信託でお父さんの財産を託されていたとして、長男がそれを自分で使い切っちゃいましたってなったら、当然他の兄弟からすると「何やってんだ!」ってトラブルになりますよね。
成年後見制度も後見人が財産使っちゃったっていう例はあるのですが、裁判所が監督したり、専門家が入ったりしているのでちゃんとバレるんです。
でも、家族信託はそういうのがないのでバレない。モラルの問題にはなりますが、他人の財産を託されているという意識を持っていない人だとそういったリスクはあるかもしれないですね。私たちも信託の話ではそういった点を強調したり、監督人をつけるようにしたり、諸々の提案はするようにしています。
遺言ひとつで相続人の苦労が変わる!?事例からみる遺言の重要性
インタビュアー:これまで相続支援してきた中で印象に残っているお客様とのエピソードを教えてください。
岩白先生:いつもセミナー等で紹介する話が2つあります。
1つは、30年前に亡くなられていたお父さんの家に住んでいたご長男の話です。
子供が5人いて、そのうちのご長男が私のところに来られて、父名義の建物に現在住んでいるので名義を自分のものにしてくださいとご相談がありました。
色々資料をみて相続人を探してみると、長女がアメリカで亡くなっていました。現地で結婚して、子供も生まれているらしいのですが、連絡もつかないし、名前もわからない。その子はアメリカで生まれたから、アメリカ人なんですよね。
日本人がアメリカに行ったのであれば調べようもあるのですが、アメリカにいるアメリカ人を探すのは結構大変。
いい不動産だったんで価格も高く、これを解決するのに諸々の費用や代償金など全て込みで1,000万円くらいかかることが分かったんです。
ご長男家族は、いわゆる一般的な年金暮らしのおじいちゃんおばあちゃんで、いきなり1,000万と言われてびっくりですよね。
1,000万円は払えないので、ひとまず今連絡がつく他の兄弟の承諾書だけもらっておき、いずれお金の準備ができたり、物件を売却してもいいって段階がきたら話を進めましょう、としたのですが、結局今でも解決に至っておらず、お父さんの名義のままになっています。
これがもし遺言で一筆「この不動産は長男に相続させる」とあれば、おそらく名義書き換え費用は30万円くらいで済んでたんですよ。
遺言があれば30万円程度で終わっていたものが1,000万円かかる。
さらに、自分たちの名義になっていないところに住む不安はもちろん、よくわからないアメリカ人の親族の権利も付いているわけです。
いかに遺言を書いておくのが大事かっていうのがわかりますよね。
もう一つ印象に残っているのが、遺言が大事とかいう話ではないのですが・・・。
成年後見にまつわる老夫婦と息子さんの3人家族の話です。
お母さんがパーキンソン病で体が震えてしまい、息子さんは発達障害で働けずに家にこもっている。そういう状況でお父さんが倒れて植物状態になってしまったんです。
施設に入らなきゃいけないので、お父さん名義の不動産を売却することになって、成年後見人として我々が入って支援をすることになりました。
すごい経験だなと感じたのが、お父さんの余命宣告の場に立ち会ったことです。お母さんとお医者さんと私と3人で。
お医者さんが「あと半年くらいだから、覚悟してくれ。別の施設に移ってくれ」と言ったら、お母さんも泣き崩れちゃって「先生、それは見捨てるってことですか!?」と。
それはもう衝撃的で言葉が出なかったです。
その後、自宅の売却やお母さんと息子さんの引っ越しも私たちでサポートして無事に済み、一番大変な山場は無事に越えることができました。
それから、お父さんがすぐに亡くなられて、お葬式でお母さんとお会いしたのですが、その時もお母さんは棺にしがみついて「一人にしないって言ったじゃない!」と、ドラマで見るような状況で。私もウルウルときました。
お父さんが亡くなったことで後見が終了し、諸々の最後の事務を終えた後、お母さんから「ありがとうございました。人の暖かさに触れることができました」というお手紙をいただきまして。温かい気持ちになり、今でも印象に残っている案件です。
司法書士は登記屋ではなく、法律家としてあるべき
インタビュアー:最後に、岩白先生が司法書士として大切にしてることや、やりがいを感じることを教えてください。
岩白先生:司法書士って登記屋さん、書類屋さんってイメージがあると思うんです。
だけど、私が常々スタッフに言ってるのは、「我々は登記屋さんであってはならない。事務屋さん、書類屋さんであってはならない。我々は法律家でなければならない」ということ。
書類を作る、登記をするという視点だけで見ていると見落とすことって多々あるんです。書類としては間違っていないし、登記としても問題なく出来上がる。だけれども、本当にそれだけで良いのかと。
例えば、登記の依頼があった場合、その登記をするに至る実体上の細かい手続がいくつかあっても、登記をするにあたって確認する手続はその中の一部だけ。そうすると、その一部の手続の書類だけ揃えれば、登記の仕事は成り立つんです。
でも、そうじゃなくて、間のその他の手続もちゃんとフォローしてこそ、法律家だろうと私は思うんです。
これ登記のお仕事に限らずは徹底的に意識していますし、スタッフ、特に新入社員には、しっかりその精神を伝えるようにしていますね。
インタビュアー:高い視座を持っているからこそ、新しい取り組みにも積極的にチャレンジできるんですね。本日はありがとうございました!
司法書士法人 行政書士法人 UNIBEST
所在地:東京都千代田区九段南3-2-5 ハトヤ九段ビル6F (東京中央オフィス)
電話番号:03-6256-9903
HP:https://unibest.or.jp/
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