2016年にパナマ文書が流出しタックスヘイブンが問題になりましたが、タックスヘイブンという言葉は知っていても、それを利用した仕組み、問題点を知っている人は少ないと思います。
そこで今回はタックスヘイブンの仕組み、パナマ文書とは何なのか、日本におけるタックスヘイブンの実態、税逃れを防止するための対策について説明したいと思います。
そもそもタックスヘイブンとは?パナマ文書って何?
タックスヘイブンとは、税金が大幅に優遇されている国や地域のこと
タックスヘイブン(tax haven)とは所得税や法人税などの税率が著しく低い、または完全に免除される国や地域を指し、日本語では租税回避地とも呼ばれています。
よくheaven(天国)との混同が見られますが、正しくはhaven(避難所)です。
税率は国際的な取り決めが存在しないため、国ごとに大きく異なります。
そこで他国から企業を誘致するため、税率を低めに、あるいはゼロに設定する国や地域ができ、そのような場所を総称してタックスヘイブンと呼ぶようになりました。
パナマ文書って?何が問題だった?
タックスヘイブンという言葉を世界に知らしめる原因となったパナマ文書ですが、詳しくは理解していない人も多いと思うので解説します。
パナマ文書はパナマの法律事務所であるモサック・フォンセカによって作成された、租税回避行為に関する一連の機密文書のことです。
これは南ドイツ新聞が匿名の人物から入手した結果流出したものであり、2016年5月に21万以上の法人と、その株主らの名前が公表されました。そこに記されていたのは世界各国の首脳や富裕層がイギリス領バージン諸島、パナマ、バハマなどのタックスヘイブン(租税回避地)を利用して資産を隠した可能性を示すものでした。
流出により、タックスヘイブンを用いた金融取引をしていたとして、アイスランドとパキスタンの首相が辞任するなど大きな問題となりました。
また、朝日新聞デジタルによると、2017年6月までにパナマ文書に記載があった日本関連の個人、法人について日本の国税当局が調査を行った結果、所得税などで総額31億円の申告漏れが見つかったと報じています。
タックスヘイブンの仕組みは?初心者にもわかりやすく解説
タックスヘイブンに法人や子会社などを設立して納税することで、低い税率を利用して節税することができます。
例えば、日本にあるA社が200万円で仕入れたモノをC社に300万円で売る場合を考えます。
この場合にA社には100万円の利益が生じ、この利益にはA社がある日本の税率で法人税などの税金がかかります。
ここで、A社とC社の間にA社の子会社でありタックスヘイブンにあるB社を挟んだとしましょう。
まず、A社は200万円でB社にモノを売り、B社はC社に300万円でそのモノを売るとします。
この場合にB社はA社と同じ額を利益として手にしますが、A社は利益が0円となり、B社の利益が100万円となります。この時同じ利益でもタックスヘイブンに設立したB社にかかる税金の方がA社よりも大幅に少なくなり、税金を引いた後の利益も大きくなります。
実際にはこのように単純な方法は使われませんが、大まかな仕組みはお分かりいただけたと思います。
要はペーパーカンパニー(業務を一切行っていない会社)をタックスヘイブンに設立することによって節税ができるのです。近年では、この仕組みを悪用して資金を隠したり、税金逃れをすることが問題になっています。
また、秘匿性の高さからマフィアやテロ組織の資金洗浄(マネーロンダリング)に使われることもあるようです。
タックスヘイブンで有名な地域はどこ?
タックスヘイブンと言われている地域は世界中にあります。
日本で有名な地域は、ケイマン諸島やシンガポール、香港などです。
タックスヘイブンで有名な地域に共通する特徴を説明!
①税率が低い、もしくはゼロ
これがタックスヘイブンの最大の特徴です。
上述したケイマン諸島はイギリス領の小さな島ですが、5階建てのビルに1万8,000社が登記されているなど、国全体で法人が6万社も集まっています。
なぜならケイマン諸島は所得税や法人税、財産や遺産相続も非課税となっているからです。
②規制が緩い
税制に関する規制が緩く、過干渉でない国や地域がほとんどです。
③匿名性が高い
タックスヘイブンは匿名性が高く、会社を設立しても代表が誰であるかが外部に漏れる危険性はかなり低いです。
④ペーパーカンパニーを許している
シンガポールなどを除いて、実質的な活動をしていなくても法人として許されるところが多いです。
日本におけるタックスヘイブン問題の実態は?
タックスヘイブンをケイマン諸島だけに限定しても、日本のタックスヘイブンへの投資額は55兆円に達していて、これはアメリカに次ぐ2位になっています。
この金額は日本に次ぐイギリスの23兆円、フランスの20兆円、ドイツの17兆円の合計におおよそ匹敵する額であり、日本がタックスヘイブンを大きく活用していることが分かります。
しんぶん赤旗(2013年8月25日)によると、東証に上場している時価総額上位50社のうち45社が子会社をタックスヘイブンに持っており、子会社数は354にのぼり、その資本金の総額は8.7兆円になるということです。
また、タックスヘイブンにより海外へ流出している税金は日本円で約6兆円に上ると言われており、これは消費税2%分に相当する額であるとして、消費税増税を疑問視する声も上がっていました。
税逃れを阻止する国の対策税制とは?
このようにタックスヘイブンを利用されると、本体その国に収められる予定だった税金が他国に流れてしまうことになります。
そのため、各国ではタックスヘイブンを利用した税逃れを阻止するための対策を講じています。
移転価格税制
タックスヘイブン対策税制
タックスヘイブン対策税制とは、法人税が20%未満である外国の子会社等の所得を日本の親会社等の所得に合算して課税する税制のことです。
かつてはこれらの規定は整備されていませんでしたが、現在ではこの2つの税制を整えることによって国際的な税金逃れを防止しようとしています。
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