そろそろ年末に差し掛かり、勤務先の会社でも年末調整をするように急かされているという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
会社員の方はもちろんのこと、アルバイトやパートの方にも提出するようにお願いされる扶養控除申告書ですが、そもそもどうして提出する必要があるのかを知っていますか?
「ほとんどバイト先に行っていないのに提出するのは面倒だな」、「やらなくていいなら年末調整したくない」、そんな意見をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
そもそも扶養控除申告書ってどんな書類!?どうして提出する必要があるの?
扶養控除申告書の説明欄には、おそらく次のような説明が載っているかと思います。
◎この申告書は、あなたの給与について扶養控除、障害者控除などの控除を受けるために提出するものです。
◎この申告書は、源泉控除対象配偶者、障害者に該当する同一生計配偶者及び扶養親族に該当する人がいない人も提出する必要があります。
<平成31年度 扶養控除申告書より抜粋>
扶養控除申告書は年末調整の際に勤務先に提出する書類のうちの1つであり、正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といいます。
この扶養控除申告書の提出を通じて、扶養家族に当たる配偶者や親族がいることを申請することで所得控除を受けることができるのです。
基本的に提出する必要があるのは会社員や公務員の方ではあるものの、アルバイトやパートとして働いている学生さんや主婦の方も扶養控除申告書を提出することはできます。
提出する必要があるのは以下の条件を満たしている従業員の方となります。
- 1年を通じて勤務している。
- 年の途中で就職し、年末まで勤務している。
- 年の途中で退職した人のうち、以下に当てはまる人① 海外支店等に転勤したことにより非居住者となった② 死亡退職した③ 著しい心身の障害のために退職した④ 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した⑤ いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、当年中の支払い給与の総額が103万円以下
この扶養控除申告書を提出することで、会社が年末調整を行うことができず、所得税の申告を確定申告によって自分で行わなければならないのです。
そのため、扶養控除申告書を提出する意味としては 、「税務署にしっかりと所得税の納税の申告をする」ということになっています。
扶養控除申告書を提出するメリット・注意点をわかりやすく解説!
ではここからは扶養控除申告書を提出するとどんなメリットがあるのか、はたまた提出しないとどんな注意点があるのかをわかりやすく解説していきます!
扶養控除申告書を提出するとどんなメリットがあるの!?
では扶養控除申告書を提出するとどんなメリットがあるのでしょうか?
配偶者や扶養親族がいる場合には、一定の所得金額以内の人であれば、扶養控除申告書を記入する事で控除を受けられるので、給与から天引きされる所得税が少なく済むというメリットがあります!
障害者・寡婦・寡夫・勤労学生に該当する方がいる場合には、同じく扶養控除申告書を記入することによって、控除を受けられるので、給与から天引きされる所得税が少なくなります。
そのため、所得税として納税しなければいけない金額が少なくなり、手取りの金額が増えるということになります。
また、副業などによって雑所得がない人であれば確定申告をする必要がなくなるので、年度末に手間をかけなくていいという嬉しさもあります。
また、パートやアルバイトとして働いており、収入がそれほど多くない方の場合には、天引きされていた税金を年末調整によって取り戻すことが可能になります。
バイトやパートの合計年収が103万円以下の場合は、確定申告を行うと、源泉徴収されたお金は全額戻ってきます。
※年末調整を行っている場合は、その限りではありません。詳しくは下記で説明します。
そもそも所得税は、年収が103万円以下の人には課せられません。
年収103万円を超えた場合に所得税はかかるのです。
ひとりでも労働者を雇用している会社には、バイトを含む雇用者の給与から所得税を天引きして納税する「源泉徴収義務」があります。
ただし所得税を徴収されるのは、社会保険料などの控除額を除き、月に88,000円以上の給与がある人のみです。
なので、「いつもは、バイト代5万円程度なのに、8月の夏休みだけいっぱいバイトして10万円稼いだ」場合、年収は103万円を超えないのに、8月の給料から所得税が引かれてしまいます。
つまり、本来納める必要がなかった所得税が天引きされているということです。
だから、年収103万円以下で源泉徴収をされている方が確定申告すれば、引かれた所得税が返金されるのです。
源泉徴収されているかどうかは、給料明細から確認することができますのでぜひチェックしてみてください!
忘れがちな方は気をつけよう!扶養控除申告書を提出しなかった時の注意点とは?
では反対に扶養控除申告書を提出しなかった場合にはどうなるのでしょうか?
基本的に扶養控除申告書を提出しなかった場合には以下の2つの注意点があります。
- 勤務先に年末調整をしてもらえない
- 納税額が増えて手取りが減る
まず1点目の年末調整について。
扶養控除申告書は年末調整に必要な書類の一つです。
この書類を提出しないとなると、勤務先の経理の方が皆さんの分の年末調整をすることができず、皆さん自身で確定申告をしなければならなくなってしまいます。
確定申告の手続きもネットで書類が作成できるようになって便利にはなってきてはいますが、できれば手間は増やしたくないですよね。
確定申告をするのが面倒な人は、必ず期日までに扶養控除申告書を提出しましょう!
また二つ目の手取り額の現象について。
扶養控除申告書を提出することによって、皆さんの扶養家族の人数が決まりますので、受けられる扶養控除の金額などが税務署も把握します。
これを提出しなければ、次の年度には扶養控除を受けられなくなり、所得税の納税する金額が上がり、手取りは減少してしまうのです。
アルバイト・パートを掛け持ちしている人必見!年末調整は複数社?1社だけ?
アルバイトをしている学生さんやパートをしている主婦の方の中には、複数の会社から給与を得ているという方もいらっしゃるかと思います。
そうした方が気にしているのは、「年末調整は全部の勤務先でできるの?」「扶養控除申告書はどのに出せばいいの?」ということかと思います。
ここからはアルバイトやパートの掛け持ちをしている方の疑問にしっかりと答えていきます!
アルバイトやパートの掛け持ちをしてても年末調整できるのは1社だけです!
年末調整では従業員のその年の所得総額を企業が把握する必要があります。
もし2つ以上の企業でアルバイトをしている場合には、その人が自社とは違うところでいくら稼いでいるかは把握しきれませんよね。
こうしたアルバイトを掛け持ちしていて収入源が複数ある場合には、年末調整をしてもらう企業を1社に選ぶことになります。
この時選ぶ企業は、一番稼いだ金額が多い勤務先で年末調整をしてもらいましょう!
「じゃあ年末調整をしなかった方の企業で多く支払った税金は取り戻せないの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
この場合には先ほども紹介した「確定申告」という手続きで払いすぎた所得税を取り戻すこととなります。
勤務先からの源泉徴収表はしっかりと保管しておきましょう!
上でも述べた通り、勤務先に年末調整を依頼できるのは1社までです。
そのため、他の勤務先で自分がどのくらい稼いで、どのくらい所得税が取られたかの証拠を自分で持っていなくてはなりません。
ですから、アルバイトを掛け持ちしている場合には全ての勤務先から源泉徴収票を受け取り、年度末に退社した勤務先からも源泉徴収票を受け取っておく必要があります。
源泉徴収票はもし紛失してしまっても企業に発行してもらえますし、勤務先がなかなか対応してくれなくて発行されない場合には管轄の税務署に相談することで対応してもらえることがあります。
実は親も入れることができる?扶養家族の条件や対象とは!?
先ほど、扶養家族がいれば扶養控除を適用されて手取りを増やすことができると申し上げました。
では、扶養家族として認められるのはどのような人なのでしょうか?
解説していきます!
親が扶養家族として認められるケース
もともとサラリーマンとして働いていた親が定年退職をすると、協会けんぽや組合健保などの健康保険から抜けることとなります。
そうしたケースでできることは、大きく以下の3つあるといわれています。
- 定年退職前に加入していた健康保険をそのまま継続する
- 国民健康保険に加入する
- 家族が加入している保険が「健康保険」(協会けんぽ、組合健保)であれば、その扶養家族に入る
この中で、退職後に負担が軽く済むのが3つ目の、家族の扶養家族に入ることです。
親を扶養家族に入れる場合には、先ほどご紹介した条件以外にも、いくつか注意しておくポイントがあります。
- 親が60歳以上の場合には、年収の制限が130万円ではなく180万円になること
- 同居の場合は収入が「被保険者」の半分未満、別居の場合は「被保険者」からの仕送り額より少ないこと
特に年金の部分は、家庭によって金額は異なるので、年金振込通知書」などの書類で確認をしておく必要があります。
上記の条件などで問題がなければ、勤務先企業に「健康保険被扶養者(異動)届」という書類を提出して手続きをすることで、親を扶養家族に入れることができるようになります。
親を扶養家族に入れると、被保険者は以下の表のような所得控除を受けることができます。
扶養控除を利用すると、被扶養者の年齢に応じて、扶養している収入から一定金額の控除を差し引いて課税がなされます。
年齢 | 所得からの控除額 |
23~69歳 | 38万円(33万円) |
70歳以上(同居していない場合) | 48万円(38万円) |
70歳以上(同居している場合) | 58万円(45万円) |
子供が扶養家族として認められるケース
扶養家族に入れることができる子供は、16歳以上の子供に限られます。
そもそも以前は『年少扶養控除』と言って16歳未満でも扶養控除の対象になっていました。
しかし、年少扶養控除は2011年に子供手当の実施と引き換えに廃止されてしまいました。
現在では控除ではなく、医療費が無料であったり、小学校中学校の学費が無料といった現金でのサポートが十分であるので、このような措置が取られたものと考えられています。
16歳以上の子供であれば、扶養家族に入れることができるようになります。
扶養控除を利用すると、被扶養者の年齢に応じて、扶養している収入から一定金額の控除を差し引いて課税がなされます。
年齢 | 所得からの控除額 |
16歳未満 | 扶養控除なし |
16~18歳 | 38万円(住民税33万円) |
19~22歳 | 63万円(45万円) |
扶養家族を増やすことで得られるメリットとは?
子供や親を扶養に入れることで、納税者は扶養控除という所得控除を受けることができます。
これによって、年収に対して住民税や所得税が課税される対象金額が減少し、節税効果を生み出すことになります。
年齢 | 所得からの控除額 |
16歳未満 | 扶養控除なし |
16~18歳 | 38万円(住民税33万円) |
19~22歳 | 63万円(45万円) |
23~69歳 | 38万円(33万円) |
70歳以上(同居していない場合) | 48万円(38万円) |
70歳以上(同居している場合) | 58万円(45万円) |
控除される金額は、扶養に入れた家族の年齢によって違ってきます。
上の表は扶養者の年齢と所得税計算時の控除額(カッコ内は住民税計算時)を示しています。
例えば納税者の年収が500万~700万円の場合で16歳の子供が一人いる場合、上の表から扶養控除の金額は38万円となり、所得税と住民税合計で約7万円の節税になります。
控除額はあくまで所得税の税率をかける前の所得から減らされる金額になります。
控除が38万円だからといって、38万円分の節税にはならないので注意しましょう!
また、年収が高ければ高いほど、扶養家族の人数が多ければ多いほど、節税できる金額は大きくなりますね!
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