最近給与所得控除を縮小することが議論されています。
実現すれば年収800万円以上の高所得の会社員は所得税・住民税が増税されることになります。
日本の所得税率は所得が高い人ほど負担が大きくなる累進課税の形式を採用しており、現在の最高税率は45%です。
所得税率を世界の国と比べたとき日本はどんな位置にあるのか知っていますか?
日本の税金は高いという人もいれば、低いという人もいます。本当のところはどうなのでしょうか?
この記事では日本と世界の国との所得税の比較と税率の特に低い国についてまとめました。
日本の所得税
まず日本の所得税について簡単に振り返ってみましょう。
日本の個人の所得に課される税金は国に納める所得税と住んでいる自治体に納める住民税の2種類あります。
所得税の税率は5%~45%、住民税の税率は10%です。
日本では所得税と住民税で別々の税金として分けられていますが、世界の国と比較する際は所得に対する課税としてまとめられることが多いです。
下に所得税の税率表を載せておきます。
所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万~330万円 | 10% | 97,500円 |
330万~695万円 | 20% | 427,500円 |
695万~900万円 | 23% | 636,000円 |
900万~1800万円 | 33% | 1,536,000円 |
1800万~4000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
計算方法は以下のようになります。
所得税 = 所得金額 × 税率 - 控除額
所得税の計算方法を解説!税率と税金の使い道
世界の国の所得税との比較
日本の所得税の税率が分かったところで海外と比較してみましょう。
果たして日本の税金は高いのでしょうか。それとも低いのでしょうか。
最高税率での比較
日本の所得課税の最高税率は所得税の45%と住民税の10%を合計した55%になります。
この最高税率について世界の国と比較したのが下の表です。
内閣府資料より
OECDとは「先進国クラブ」とも言われ、主要な先進国が加入している国際組織です。
表を見ると日本は先進国の中でも特に最高税率が高い国だということが分かると思います。
2015年に所得税最高税率が40%から45%に引き上げられたため、住民税と合計した税率は55%となり、オランダなどを抜いてOECD加盟国4番目の高さになりました。
一番最高税率が高いのはフィンランドで60%を超えています。逆に一番低いのはチェコで最高税率はわずか約15%と日本の所得税と住民税を合計した最低税率と一緒の水準です。
実効税率での国際比較
最高税率の絶対水準での比較を見ました。
でも単純に表面上の税率だけを見て日本の税率が高いと結論づけるのは時期尚早です。
なぜかというと各国の実際の税率は必ずしも表面税率とは一致しません。
なぜかというと、所得税の計算をする際には様々な控除制度や補助制度が利用でき、そうした周辺の諸制度を考慮に入れなければ個人の実際の負担が分からないためです。
例えば日本の場合、給与所得控除や配偶者控除、扶養控除などを利用することで同じ年収でも支払う税金をかなり減らすことができます。
こうした控除制度や補助制度を考慮に入れた上での年収に応じた実際の税率を「実効税率」と呼びます。
下の表では夫婦と子供2人の家庭が負担する所得税の実効税率を国際比較したものです。
比較対象はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツの欧米諸国です。
財務省資料
グラフを見ると年収1000万円までの所得税負担は日本が最低水準だとわかります。
年収1000万円の世帯の所得税実効税率はわずか約10%です。
同じ年収1000万円でもイギリスの実効税率が約25%だと考えるとかなり負担が軽いことのですね。
一方で年収が増加するにつれて税負担は比較対象と比べて重くなっていきます。
年収が2000万円手前の時点でアメリカとフランスを抜き、年収4500万のあたりで日本の実効税率はドイツを超えます。
ただ年収2000万以上の会社員は世の中にそうたくさんいるわけではないので、年収2000万円以下の大部分の人々にとって日本の所得税負担は他の先進国と比べ軽いと言えます。
意外と日本の所得税負担は少ないのですね。
社会保険料負担も考慮した場合
年収1000万円の世帯でも実効税率は10%程度だと言われても実感が沸かないかもしれません。
毎月の額面の給料と手取りの差はもっとあるはずです。
その理由は社会保険料です。皆さんの毎月の給料からは税金の他に国民年金保険料、厚生年金保険料や健康保険保険料が引かれていると思います。
少子高齢化世界一進んでいる日本ではこれらの社会保険負担がどんどん増加しているのです。
社会保険料はただ払って終わりではなく、病気になった場合や老後などいざという時に活用できるメリットがありますが、強制的に徴収され自由に使えるお金が減るという点では税金と同じです。
そこで社会保険料も考慮した国民の負担を示す指標として「国民負担率」が使われています。
国民負担率は税金と社会保険料を合計した金額で収入を割った金額で求められます。
この国民負担率を他の国と比べてみましょう。
国税庁資料より
上の図は国民負担率の国際比較です。
日本は租税の負担率が低い代わりに、圧倒的な高齢化によって社会保障負担率がとても高くなっています。
結果的には国民負担率は42.5%と所得の半分近くが社会保障と税金で消える計算になるのです。
ただし、この数字も高福祉・高負担を掲げるヨーロッパ先進国と比べればまだまだ低い割合だということも分かります。
総合すると日本の国民負担は欧米先進国と比較すると中程度だと言えるかもしれません。
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所得税率が特に低い国
これまで主に先進国と様々な比較をしてきました。
高齢化や財政赤字など共通した問題が多い先進国の中では、日本の税率は決して高いものではないことが分かったと思います。
でも昔と比べると負担は確実に重くなっているし、今後も税負担、社会保障負担は現役世代にさらなる重荷になってきます。
そんな中で世界を見渡すと税負担がとても低い国もあります。
それらの国々は税負担を軽くすることによって世界中から優秀な人材を誘致する戦略を取っています。
ここではそんな税率の低い国々を紹介したいと思います。
シンガポール
シンガポールはマラッカ半島の先端に位置する都市国家です。
がっかりスポットのマーライオンを観光で見に行ったことのある人も多いのではないでしょうか?
シンガポールは所得税が非常に安い国としても知られています。
税率表を見てみましょう。
1シンガポール(S$)=83円(2017年12月現在)
所得額 | 累進税率 |
~ S$20,000 | 0% |
S$20,001~S$30,000 | 2.00% |
S$30,001~S$40,000 | 3.50% |
S$40,001~S$80,000 | 7.00% |
S$80,001~S$120,000 | 11.50% |
S$120,001~S$160,000 | 15% |
S$160,001~S$200,000 | 17% |
S$200,001~S$320,000 | 18% |
S$320,001~ | 20% |
なんと最高税率はわずか20%と日本の半分以下です。
しかもシンガポールには住民税に当たるものがないので日本と比較した税率はさらに低くなります。
シンガポールの場合所得税の計算方法は税率表の所得部分に分けて計算することになります。
例)10万シンガポールドル(830万円)の収入の時の所得税計算
2万シンガポールドルまでは非課税。2万~3万の部分は税率2%、3万~4万の部分は3.5%、4万~8万の部分は7%、8万~10万の部分は11.5%の税率がそれぞれ適用されるといった感じです。
香港
香港はもともとイギリスの植民地で1999年に中国に返還されました。
それでも行政的には高度な自治が認められていて、法律もイギリス時代のものが引き継がれています。
香港も所得税が非常に低い地域として有名です。
1香港ドル(HK$)=14円(2017年12月現在)
①と②で所得税額が低い方を選択する。
①総所得から人的控除と寄付金控除を控除した後の課税所得に累進税率を乗じた金額
人的控除:基礎控除108,000HKD(未婚または配偶者に収入がある場合)、216,000HKD(配偶者に収入がない場合)、子供扶養控除 1人当たり 60,000HKD(出生年度は120,000HKD)
所得 | 累進税率 |
HK$45,000まで | 2% |
HK$45,001からHK$90,000まで | 7% |
HK$90,001 からHK$135,000まで | 12% |
HK$135,001以上 | 17% |
②総所得から寄付金控除額を控除した後の課税所得に標準税率15%を乗じた金額。
香港の所得税計算では控除額が非常に大きいことが分かります。
配偶者控除が日本が38万円なのに対して香港は約300万円、子供扶養控除も日本は廃止されたのに対して香港は一人当たり約84万円もあります。
税率が最高で17%ととても低いだけでなく、実際の税額は控除を利用することでグッと低くなります。
ドバイ
ドバイはアラブ首長国連邦を構成する7つの首長国の一つです。
もともとは砂漠が広がるアラブの一地域で周囲の国と同じように財政の大半を石油収入に頼っていました。
石油依存からの脱却を目指して外資を誘致し、都市開発や観光開発へ積極的な投資を行った結果世界でも有数の近代都市へと変貌を遂げました。
ドバイの所得税はどのぐらいなのでしょうか?
所得税:なし
なんとドバイに所得税はありません。ついでに法人税もありません。
というかドバイをはじめとする石油資源の豊富なアラブの湾岸諸国は税金がほとんどありません。
ドバイはアラブ諸国の中でも開放的な国でお酒を飲むことができ、女性も髪の毛を隠す必要がないので外国人にとっても過ごしやすい国でしょう。
移住にはハードルも
税金が圧倒的に安いなら移住したい!と思う人もいるかもしれません。
しかし、移住はそんなに簡単なことではありません。
まず仕事が見つからなければ長期滞在のビザが下りる可能性は低いです。
また、こうした国は土地が狭く、住宅価格が非常に高かったりします。
例えば香港であれば18平米ほどの一人暮らしの広さの部屋で約6千万円もします。
年収数千万の超高所得者でもない限り、節税だけを目的に移住しようとするのはあまり得策ではないでしょう。
まとめ
日本と世界の所得税の比較を行いました。
欧米諸国と比べても日本の税負担は決して高くないことが分かります。
一方で世界の中には圧倒的に税負担が軽い国もあり、税制上のメリットを利用して世界中から優秀な人材を引き寄せています。
海外に移住したいと言えるぐらいの高所得者を目指したいものですね!
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