EUの改正著作権法案で導入される見込みの通称「リンク税」とは?


先月の6月20日、EUの改正著作権法案が委員会で可決されました。

 

著作権保護は本や映像、音楽だけではなく様々なコンテンツの発展を擁護する重要なものですが、インターネットの出現で法整備が追い付いていないというのが現状です。

それに対応し、EU内の国でバラバラだった基準を統合していこうというのが改正の目的のようです。

日本でも、インターネット上で漫画が無料で読める「漫画村」が世間を騒がせましたが、これに対して現行の法整備では有効な対策をとることができませんでした。

今回のEU著作権法の改正も、日本ではあまり話題になっていませんが、著作権保護のための世界的な動きを示していますし、EUだけでなく、今後日本にも影響が出てくると考えられます。

 

様々なインターネット上のコンテンツについてこの改正は定めていますが、その中で、ひと際議論が紛糾したのがlink tax 通称「リンク税」です。

リンク税にあたる法案の11条は賛成が13票反対が12票という僅差で可決されました。

日本では現状リンク税と翻訳されているものの、イメージされているものとはおそらく少し違い、国が徴収する税金というよりかはコンテンツ保持者が著作権料を請求できるようになるということなので、この翻訳には語弊があると思われます。

ですが、本記事ではほかの呼称がないためとりあえず「リンク税」と呼ばせていただきます。

それでは、詳細を追っていきましょう!

BITPOINT

リンク税とは何を意味するの?

「リンク税」とは、EUデジタル単一市場における著作権指令案(Proposal for a DIRECTIVE OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on copyright in the Digital Single Market – Agreed negotiating mandate)の中の第11条、オンライン利用に関する報道出版物の保護の条文で示される内容を指します。

とりあえず条文を確認してみましょう。原文はリンク先PDFの54ページからです。訳文は骨董通り法律事務所様訳出のものを引用させて頂きます。

 

第11条 オンライン利用に関する報道出版物の保護

 

第1項  加盟国は、加盟国で設立された報道出版社(筆者注:新聞社や雑誌社)に対し、情報社会サービスプロバイダによる報道出版物のオンライン利用について、情報社会指令第2条及び第3条第(2)項に定める権利(筆者注:複製権及び公衆に利用可能にする権利)を付与しなければならない。

 

 第1段落の権利は、報道出版物の重要でない部分の利用には適用されない。加盟国は、報道出版物の一部分について、当該部分が著作者による知的な創作の表現であるかどうか、もしくは当該部分が個別の言葉もしくは非常に短い抜粋であるかどうか、またはその両方の基準を考慮して、重要ではないかどうかを自由に決定できる。

 

第2項  第1項の権利は、報道出版物に組み込まれた著作物及びその他の素材に関してEU法で著作者やその他の権利者に付与された権利をそのまま残し、それらの権利に決して影響を及ぼさないものとする。

 

 (略)

 

第3項  情報社会指令第5条乃至第8条(筆者注:権利制限等)、及び孤児著作物指令は、第1項の権利に準用する。

 

第4項  第1項の権利は、報道出版物の発行(publication)から1年間で満了する。当該期間は、発行日の翌年の1月1日から起算される。

 

第5項  第1項は[本指令の施行日]以前に最初に発行された報道出版物には適用されない。

骨董通り法律事務所コラムより引用

この中の第一項が核心部分になります。

意味していることは、外部のウェブサイトにリンクを貼る行為に著作権料を請求できる権利がコンテンツ保持者に付与されるということです。

 

つまり、新聞社や出版社がやっているニュースサイトなどをグーグルニュースやこのサイトのようなキュレーションメディアが記事などをリンクした際に、新聞社や出版社側が著作権料を請求できると言うことです。

 

それがいくらになるかなどはまだ決まってないようですが、グーグルやフェイスブックなどのリンクを多く用いているプラットフォームや、キュレーションメディアには大きな打撃になりそうです。

 

考えられる影響は?

ドイツのケース

実はこれと類似したことを先んじて実施した国があります。ドイツやスペイン、ベルギーです。ここではドイツのケースを見てみましょう。

 

2014年にこの第11条と同じような法律がドイツと導入されました。

Googleニュースなどのニュースキュレーションサービスがニュースにリンクを貼り短い抜粋を表示することに対して、出版社側が使用料を請求できるという、「副次的著作権法」と呼ばれるあたらしい著作権法でした。

 

この法案によってGoogleは課税義務を課されました。

それに抵抗するため、GoogleはドイツでGoogleニュースをそれぞれ運営停止しました。

すると出版社側はGoogleニュースからの検索流入がなくなりトラフィックが10~15%ほども激減してしまいました。

大混乱の末、この「副次的著作権」の導入は取り下げになりました。

考えられるメリット、デメリット

メリット

  • インターネット上のコンテンツ保持者の権利拡大によって、安心してコンテンツを作成、公開しやすくなる。

デメリット

  • 中小のメディアは料金の支払いや手続きの煩雑さから撤退、衰退していく危険性がある。
  • コンテンツ保持者としても、どの程度権利を請求できるのか不透明で、コンテンツの保護、発展に対して有用に働くのかわからない
  • コンテンツ保持者とリンク使用者は利害関係ではなく、共生関係にあるとも考えられるので、コンテンツ保持者側の権利拡大によって共生関係が破壊されてしまう可能性がある。
  • 今後のインターネットの公開性を損なう動きの先駆けになり、「閉じたインターネット化」を進めていく端緒となるかもしれない。

これからの新しい著作権の形に注目!

インターネットは無法地帯ではありませんし、同時にコンテンツの著作権は守られなければなりません。

 

しかし、今までインターネットは規制の少なさや気軽に参加できることなどから発達してきたと思われます。

もし、インターネットの出現とともに厳しい法整備がなされていたら今のようなインターネットの発展はなかったでしょう。

今回のEUの改正著作権法案にはここで扱った「リンク税」だけではなく、インターネット上のコンテンツに関する様々な条項が定められています。

例えば13条の「コンテンツ認識システム義務化」ではムービーや音楽、画像などのコンテンツの投稿を認めるすべてのプラットフォームに対して、アップロードされるコンテンツが著作権侵害物でないかをチェックするシステムの導入を義務付けるようとしています。

これはインターネットのあり方にも重大な影響を及ぼすことになるでしょう。

現在の著作権保護期間が70年に延長されたのも、先ずはEUで可決、そしてアメリカでも導入され、日本も導入する運びとなりました。

 

インターネットは国に縛られない越境的なものなので、なおさら影響を受けやすいと思われます。

この法案がどう影響を及ぼし、実際に実施されていくのか、注目する必要がありそうです。

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