近年、ネット上で実物を見ないでものを購入したり、メルカリのように個人で取引する機会が増えてきたことにより、私たち消費者が日常生活でトラブルに遭うことが増えています。
また、お年寄り世帯やひとり暮らしの女性などを中心に、訪問販売や電話勧誘でのやや強引な営業によってついつい必要のない商品を購入するというトラブルも多くあります。
一般的には、「モノやサービスを購入する」という行為は法的に意味を持つ契約で、それが10円のガムという少額の取引でも立派な契約です。
また、こうした契約は締結されると両者の合意がなければ取り消すことはできません。
ただ、不意を突かれたように取引を用いられるケースにおいては、売買契約を交わした後であっても、一定の期間内であれば、両者の合意なしに契約を無効化しお金を支払う必要がなくなる場合があります。
このとき、その裏付けとして用いられるのが「クーリングオフ」という制度です。
このクーリングオフという言葉は、みなさんどこかで聞いたことがあるかと思います。
しかし、具体的にどんな事例で使えるのか、どのように手続きをするのかを理解している人はごく少数です。
そこで今回は、クーリングオフが使える状況や期限、最近問題となっているネット上でのトラブルに使えるか否か、実際の契約無効化に至るまでの手続きなどをわかりやすく解説していきます!
法律に詳しくない方でも、この記事の情報だけでクーリングオフの実践までたどり着くことができる内容となっているので、是非最後までご覧ください!
クーリングオフ制度とは?適用できる期限や契約方法をわかりやすく解説!
では、まずはクーリングオフという制度がどんなものなのか、適用することのできる事例や認められる期限などを解説していきます。
そもそもクーリングオフはとはどんな制度なの?
クーリングオフ制度は、私たち消費者を時間が十分に与えられず、正常な判断ができないまま結んでしまった売買契約から守る制度となっています。
不意を突かれて勧誘をされると「家から早く出て行って欲しい」「電話を早く切りたい」という気持ちから、欲しくもない商品の購入を承諾してしまう可能性があります。
こうしたトラブルが発生した後で、もし消費者が納得していなければ、一定期間内であればその契約を無効にすることができるのが、クーリングオフの効果となっています。
クーリングオフが適用可能な購入方法や契約方法とは?
では、クーリングオフが適用できる購入の仕方や契約の仕方がどんなものかを紹介していきます。
残念なことに、クーリングオフはどんな商品の売買の場面でも使える制度ではありません。
ポイントは「消費者側に熟慮できない要素がある」ような、次の6つのケースとなります。
- 訪問販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスなど)
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)
- 特定継続的役務提供(語学教室や結婚相談所など)
- 業務提供誘引販売取引(モニター商法など)
- 訪問購入(廃品回収など消費者の自宅に訪問し引き取りを行うもの)
基本的に、上記の6つに該当しない形での商品やサービスの取引では、クーリングオフの適用は認められません。
そのため、お店に行って商品を買うような一般的な購入方法では、消費者側に十分な考える時間の猶予がありますので、クーリングオフは使えないということになります。
クーリングオフが適用できる期間はいつまで?
クーリングオフが適用できる期間には8日間に設定されているものと、20日間に設定されているものの2つの種類が存在します。
では、いつからがクーリングオフの期間のスタートになるかということですが、これは「契約内容を記載した書面を受け取った日」を1日目にカウントします。
契約初日を入れるのが数え方のポイントです。
具体的には、4月1日に契約書面の交付があった場合には、8日の期間の場合には4月8日、20日の場合には4月20日がクーリングオフが認められる期限となります。
続いて、先ほどのクーリングオフの事例を期限の長さで分類していきます。
まず、8日間の期限が設定されているものに関しては、訪問販売・電話販売・特定継続的役務提供・訪問購入の4つとなります。
20日間の期間が適用されるのは、残った連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引になります。
ちょっと難しい単語が出てきたので、馴染みのある事例で言い換えると、前者がマルチ商法などで後者がモニター商法などが該当します。
これらは販売方法として悪質性が高いことから、より消費者を保護するため長い期間が設けられています。
ネット販売やメルカリはNG!クーリングオフが使えない8つの事例・ケースとは?
では、ここからはクーリングオフが適用できないケースについてご紹介していきます。
みなさんの抱えているトラブルが、もし次のようなケースに該当する場合には、残念ながらクーリングオフによる解決は難しくなってしまいますので、ご注意ください。
NG①:ネット通販・インターネット上でのオークションなど
まず、1つ目の事例はインターネット上での通信販売やメルカリなどの個人取引、オークションサイトを利用したケースです。
最近トラブルの多い、メリカリでの出品者とのトラブルはクーリングオフによって解決することができないということになります。
基本的に、インターネット上での取引にクーリングオフは適用できず、返品が認められている場合のみ、購入後の代金返却の見込みがあります。
ただ出品者が記載している「返品不可」という言葉は、返品特約と呼ばれる正式に法的な力を持つものとなりますので、そうした記載のある商品の返品は認められないと考えてください。
NG②:自動車やバイクをディーラーで購入したケース
自動車やバイクなどは、ディーラーに自ら足を運んでじっくり考えてから購入するという性質から、クーリングオフの対象外となります。
トラブルの多い中古車の売買に関しても、不備や故障の所在がどこにあるかを明確に立件できないことから、消費者側が泣き寝入りせざるを得ない状況が多くなっているので注意しましょう。
NG③:短期間で完結するサービスを購入したケース
5万円に満たない金額かつ、短期間で完結するようなサービスではクーリングオフは認められていません。
具体的にどのようなサービスかというと、
- 1ヶ月間未満のエステコース
- 2ヶ月未満の語学学校や学習塾・資格支援講座
などが挙げられます。
ただし、契約した場合に自宅で訪問販売を受けていた場合や電話での勧誘を受けていた場合には、もともとのクーリングオフの適用条件に該当していますので、上記のようなケースでもクーリングオフが認められます!
NG④:消耗品をすでに使用してしまったケース
一度使ってしまうと価値を失ってしまうような商品では、使用した後にクーリングオフでその契約を取り消すことはできません。
特定商取引法では、次のような商品は使用してしまうとクーリングオフが認められなくなるとされています。
- 健康食品
- 不織布および幅が13センチメートル以上の織物
- 生理用品
- 靴やサンダルなどの履き物
- 防虫剤、殺虫剤、防臭剤及び脱臭剤
- 化粧品、毛髪用剤及び石けん、浴用剤、合成洗剤、洗浄剤、つや出し剤、ワックス、靴クリーム、歯ブラシ
- 壁紙
- 医薬品
意外なところでいえば、衣服のクーリングオフに関しては特に規定はないものの、靴やサンダルなどの履き物に関してはクーリングオフの対象外となっていることが注意するべきポイントですね。
NG5:事業用や商業用など個人以外での取引をしたケース
クーリングオフが存在している意義として、個人を意志とは異なる売買トラブルから守るということがありましたので、クーリングオフをしようとしている主体が法人になってしまうと利用はできなくなります。
しかし、購入者の名目が法人であったものの、実際に使用する予定が個人やご家庭であった場合には、クーリングオフが認められますので、あくまで「実際に使うのは誰か」というのが条件の決め手となります。
NG⑥:購入した商品を自分の過失によって壊したケース
商品の到着前や受け渡し前に破損をしていた場合には当然クーリングオフは認められますが、受け取り後にご自身の過失や故意によって商品を壊してしまった場合には、クーリングオフはできません。
また、仮にもともと壊れていた商品だったとしても、受け取り時期と破損時期の関係性を証明しなければ交換や返品に応じてもらえない可能性は高くなります。
そのため、金額の大きな買い物の場合には受け取ってすぐに不具合がないかを確認すると安心です。
NG⑦:過去1年にわたって同じ相手と取引をしているケース
クーリングオフでは、消費者が十分に購入に至るまで吟味できていなかったり、販売者の信頼性を確認できないまま購入することによってトラブルが起きてしまったケースを対象としています。
既に取引の経験がある相手との間に発生した問題に関しては、十分な信頼関係や情報交換が成立しているものとされますので、クーリングオフは適用できません。
取引の経験は過去1年間まで遡られます。
NG⑧:そもそもクーリングオフの期間を過ぎているケース
先ほど、クーリングオフが適用できる場合には8日間の期間が定められているものと、20日間の期間が定められているものの2種類があると紹介しました。
これらの期間を過ぎてしまうと、本来クーリングオフが認められるようなものであっても、対象外になってしまいます。
万が一、トラブルに遭ってしまった場合にはまずはクーリングオフで対応できるものかどうかをチェックし、そうであればなるべく早く行動に移しましょう!
では、どのように行動に移すべきなのか、クーリングオフの手続きの仕方をここからは解説していきます!
手続きは意外と簡単!クーリングオフの通知書類の書き方を1から解説!
ここからは、実際にクーリングオフ制度を用いて、契約を取り消すための手順を紹介していきます。
クーリングオフをするにあたって必要な手続きや、やっておくべき工程は次の4つのステップに分けられます。
- 契約解除通知のはがきの作成
- 証拠としてはがきの両面のコピーをとって保管
- 郵便局で「特定記録郵便」または「簡易書留」により相手方にはがきを送付
- 郵便局でもらった送付控えを保管
こうしてみると、実はクーリングオフに必要な手続きといっても、はがきを作成してそれを郵便局で出すだけ、という非常にシンプルなものになっています。
しかし、このはがきの作成方法が法律に馴染みがないと難しいポイントです。
そこで実際にどんな内容を記載する必要があるのか、わかりやすく解説していきます。
販売会社宛の通知はがきの書き方例
契約解除通知のはがきは、当然契約相手である販売会社に向けて送付します。
実際に書類を作成する際に必要な項目を箇条書きで紹介するので、ご自身で作成する場合にはこの順番通りに、ご自身の状況や相手方の情報を追記していただければ正式な書面となります。
- 株式会社◯◯ 代表取締役△様
- 契約年月日 ◯年◯月◯日
- 商品名 ◯◯
- 契約価格 ◯◯円
- 販売会社 ◯◯株式会社 △△営業所
- 担当者名 ◯◯
- 上記日付の契約は解除します。購入代金〇〇円の返金、ならびに商品を引き取りをお願いします。
- ◯年◯月◯日(←こちらは書類作成日を記入)
- (住所)◯◯県◯◯市〜
- ご自身の氏名
◯の部分にはご自身や相手方の情報や正式な日時などを記入してください。
担当者名などがわからなければ、販売会社の情報まででも有効になります。
クレジット会社宛の通知はがきの書き方例
クレジットカードの利用して購入をした場合には、販売会社との間にクレジットカード会社も入っているので、そちらにもクーリングオフの旨を通知する必要があります。
その際に必要な情報としては、概ね先ほどの内容と変わりませんが次のように書き換えておくと自然になります。
- ◯◯クレジットカード会社様
- 契約年月日 ◯年◯月◯日
- 商品名 ◯◯
- 契約価格 ◯◯円
- 販売会社 ◯◯株式会社 △△営業所
- 担当者名 ◯◯
- 上記日付の契約は解除します。
- ◯年◯月◯日(←こちらは書類作成日を記入)
- (住所)◯◯県◯◯市〜
- ご自身の氏名
書き換えるポイントとしては、相手方の名称を変更することと代金返金と商品引き取りの文言を削除することの2つになります。
お金が戻るまで油断禁物!クーリングオフの手続きで確認すべき4つのポイント!
実際に手続きの流れや作成するべき書類を見てみると、意外に簡単だと思った方も多いと思います。
ただ、大切なのはしっかりとお金が戻ってくるまで決して油断してはいけないということです。
悪質な業者の中には、クーリングオフの手続きに応じなかったり、返金を拒んでくるところもありますので、手続きを終えただけで満足しないことが重要です。
また、手続き自体が正しかったとしても内容や商品に不備があると最終的にクーリングオフができなくなる場合があります。
そこで、クーリングオフの手続きを始めるタイミングや実際に書類の送付を完了した後には次の4つのポイントをチェックしましょう。
- 経過日数の数え直し
クーリングオフができると思っていたのに認められない場合の最大の要因は、経過日数を数え間違えているケースです。
先ほども簡単に触れましたが、契約書面ならびに商品を受け取った日を1日目としてカウントします。
受け取り当日をカウントしておらず、1日だけ期間を過ぎてしまっているケースが非常に多いので、カウントの仕方を間違えないこと、またクーリングオフはなるべく早めに行うことに気をつけてください。
- 通知書面のコピーと郵便局控えの保管
悪質な業者の中には、契約書面の送付のタイミングをごまかすことで、クーリングオフの対象期間を経過させるものも存在します。
そうした状況における重要な証拠として、実際に送付した通知書面と郵便局で受け取った控えをしっかりと保管しておいてください。
これら二つを揃えておくことによって、正式な書面を送っていることとその日時がクーリングオフの対象期間内であることの両方が証明できます。
- 返却したい商品に破損や傷がないかを確認
万が一、返却したい商品に破損や傷があるとクーリングオフが認められない可能性が高くなります。
そのため、返却を考えたらまずは商品を大切に保管しておくこと、また自分の手元にあった時には破損がなかったことを証明するために、写真などをとっておくとより良いとされています。
- 自力で解決できない場合には専門家に相談!
手続きもしっかりしたのに相手方から音沙汰がない場合などは専門家の力を借りましょう。
緊急性の高いものの場合には、警察への連絡も必要ですがそうではないのであれば、消費者ホットラインや国民生活センター、法テラスなどに相談しましょう。
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