東工大の学費値上げや日本の研究の低迷などのニュースで、何かと学問や研究に関わるお金が話題になっていますね。
ノーベル医学・生理学賞に選ばれた京都大学特別教授の本庶佑さんも、文科省に研究費の増額を直訴して話題になっていますね。
しかし、そもそも身近に研究者で生活している人がいる人がいて、どんな環境、経済状況で暮らしているか知っているという人は少ないのではないでしょうか?
普通に仕事をして生活していると、大学の中でどのように研究が行われているかはわかりにくいものです。
今、高校生や大学の学部生などで、「研究者として生きていくってどんな感じなのかな」と気になっている方も、やはり不安の種はお金のことではないでしょうか??
そこで今日は、主に博士課程の大学院生やその後の研究者の生活を支えている、通称「学振」についてみていきましょう!
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そもそも学振って?
学振とは、文部科学省所管の独立行政法人である「日本学術振興会」が研究者に研究奨励金および科研費を与える制度を指します。
研究奨励金がいわゆる給料(生活費)になります。
科研費は科学研究費助成事業の略称であることからもわかるように、自分の研究に使えるお金となります。
学振は申請時期によって主に以下の三種類があります。(一度離職し、再び研究に戻ってきた研究者対象のRPDやPD採用者の中から特に業績の優れている者を面接審査により選抜で採用するSPDは母数が少ないためここでは省略します。)
DC1 | DC2 | PD | |
申請資格 | 博士後期課程1年次相当 | 博士後期課程2年次以上の年次相当 | 博士学位取得後5年未満の者 |
研究奨励金(月額) | 20万円 | 20万円 | 36万2千円 |
科研費(年額) | 150万円以内 | 150万円以内 | 150万円以内 |
採用期間 | 3年間 | 2年間 | 3年間 |
応募者数(H30) | 3375 | 5391 | 2223 |
採用人数(H30) | 695 | 1095 | 330 |
採用率(H30) | 20.59% | 20.31% | 14.48%(SPD含むと15.7%) |
お金の面を見てみると、研究奨励金は月額20万(年額240万円)と月額36万2千円(年額434万4千円)となります。ボーナスはありません。
厚労省の調査によると、2015年の大学院卒業者の平均初任給は22万8千円であることを考えると、修士課程までは給料なしで研究していたことを考えると月に20万円もらえるというのは魅力的に映りますが、決して高いとは言えない水準です。
また採用率も約15%~20%と、狭き門といえるでしょう。
申請者はみな研究志望であり、落ちてしまえば生活費も手に入れられないのでバイトなどをして自力で生計を立てなければならないことを考えると戦いは熾烈です。
アルバイトをすることは研究の時間を削らなければならないことを意味します。
研究時間確保のためにも、博士課程に進学するならぜひとも申請しておきたいところです。
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問題点や特徴は?
上の表をみると、平均よりも低いとはいえ、自分の好きなことをやってこの待遇ならば悪くないんじゃないの?とお思いになる方もいるかもしれませんが、様々な問題点が指摘されています。
・社会保険への加入ができない
・年金や保険については自分で支払う必要がある
・研究に専念するため、副業禁止規定がある。
・奨学金との併用が基本的にできない
・そもそも金額、採用率ともに低い
また、当然学費は払わなくてはならないので、国立でも年間約54万円掛かってしまいます。
全額免除や半額免除の制度もありますので、ぜひとも利用したいところです。
また、ポジティブな面としては、学振採用者の進路が挙げられます。
学振を目指すなら
博士課程に在学、あるいは進学し学振を取得することを目指す場合、数々の準備が必要です。
ここでは日本学術振興会のホームページのスケジュール表で本年度の流れを確認しておきましょう!
今年の申請書類締め切りは6/1でした。これから10月には一次選考の結果が開示され、採用内定者、面接候補者、不採用者が決定します。
面接がある方は11月下旬から12月上旬にかけて順次行われ、1月上旬までには全員の結果が決まります。
申請書類は、電子申請システムを通じてのみの受付となっており、ホームページから作成の見本などが見られます。
研究計画や自己評価など、合計でA4約10枚ほど書く必要があります。
申請書は、自分だけで作るのではなく、人に見せ推敲したりなど思ったよりも時間がかかってしまうケースが多いようなので、時間に余裕をもって作成に当たりたいですね。
まとめ
今日は日本の研究者を支える「学振」について見てきました。
最近は、日本の研究者の海外流出や、研究力の低下が問題になっています。
原因は様々なものがあると思いますが、主な原因の一つとして研究者が経済的・社会的に不遇であることが挙げられるでしょう。
やはり、研究力は国の豊かさを支える基盤になります。
現在、IPSやAI分野など、日本が世界を牽引する可能性のある分野は残されています。
今後の日本の研究環境の改善に期待しましょう。
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