所得税とは?計算式や納付方法、住民税との違いをわかりやすく解説!

住まい

所得税とは何かや所得税の仕組みを事細かに把握している方は意外と少ないのではないでしょうか。

しかし、所得税は働く人全員が対象になる税金です。

また、消費税のように商品やサービスに一律で8%の税金がかけられており、お店に代わりに全て納税してもらえるケースとは違い、所得税は計算方法、納付方法などが複雑な仕組みになっています。

現在そして将来のお金のやりくりを考える上で税額をしっかりと把握、予想しておくことは重要だと思います。

そこで、今回は所得税を基本から解説し、具体的に年収600万円の人にはどれだけの所得税がかかるか計算します!

さらに、サラリーマン、個人事業主、アルバイトの方それぞれのパターンでの所得税の納付方法も紹介します。

加えて、所得に対してかけられる他の代表的な税金である住民税との違いも説明します。

最後に住民税の計算方法も解説し、年収600万円の人の手取り額も計算します!

POINT!

  • 所得税とは何か?を基本から解説!
  • 所得税の計算方法が分かる
  • 所得税の納付方法を知れる
  • 所得税と住民税の違いを解説
  • 手取り額の計算方法も紹介

所得税を一から分かりやすく解説!

そもそも所得税って?

所得税とは1月1日から12月31日までの一年間に生まれた個人の所得に課される税金のことです。

所得税の特徴としてよく知られているのが累進課税という仕組みです。

この制度については後ほど紹介します。

所得税は、源泉徴収(天引き)されるため、自分がどれくらいの金額の所得税を支払っているか把握していない人もいるのではないでしょうか。

そこで、後ほど具体的な例を出しながら、所得税の計算方法を解説します。

所得と収入の違いは?

具体的な計算方法を解説する前に、所得税の基本用語をおさえましょう!

そもそも所得と収入は違います。

所得 = 収入 - 経費です。

会社員の場合、副収入がないと、所得=収入になります。

個人事業主の場合は、所得=売上(収入)−必要経費になります。

所得税を計算するにあたって大切な用語がもう一つあります。

それは、課税所得です。

文字通り、課税対象になる所得のことです。

課税所得 = 所得 - 各種控除です。

詳細は後ほど説明しますが、所得から全ての人が対象になる基礎控除や会社員が対象になる給与所得控除、社会保険料控除などを引いた額が課税対象になります。

所得は10種類ある!

所得と一口に言っても様々な種類の所得があります。

会社員にとって一般的な給与所得、個人事業主にとって一般的な事業所得以外に、不動産所得、配当所得、一時所得、退職所得、利子所得、譲渡所得、山林所得、雑所得の計10種類の所得があります!

源泉徴収、累進課税とは?

所得税の話になると、源泉徴収や累進課税といった言葉をよく聞きますよね?

これらが何のことなのか解説します。

日本の所得税には、累進課税制度が採用されています。

簡潔に言うと、多く稼いでいる人に高い税率をかけ、高所得者からより多くの税金を徴収する制度です。

所得が多い人に対して高い税率をかけて、所得が少ない人には低い税率をかけています。税率区分は後ほど紹介しますが、課税所得に応じて5%〜45%の税率が設定されています。

給料明細を事細かに確認していない場合は、所得税でいくら引かれているのか把握していないのではないでしょうか。

その原因は、源泉徴収という仕組みにあります。源泉徴収の対象者は、主に会社員です。天引きと呼ばれることもよくあります。

会社が従業員の代わりに、所得税を給料から毎月差し引いています。そのため、従業員は確定申告をする必要がなくなります。

所得控除、給与所得控除など各種控除とは?

所得税を計算する上で、各種控除は理解しておかなければなりません。

代表的なものとしては、以下のものがあります。

所得控除:累進課税の税率をかける前に所得から引く

税額控除:税率をかけた後の所得税額から引く

給与所得控除:会社員の見なし経費を所得から差し引く

社会保険料控除:社会保険料を所得から引く

基礎控除:全員を対象に一律に一定額を所得から引く

所得控除

所得控除は全部で14種類あります。

代表的なものとして以下の控除があります。

【個人での申告が必要なもの】

  • 雑費控除
  • 医療費控除
  • 寄付金控除

【会社が代わりに申告してくれるもの】

  • 給与所得控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 社会保険料控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除
  • 障害者控除
  • 生命保険料控除

税額控除

税額控除は全部で19種類あります。

その中でも会社員に関係する控除の種類を紹介します。

これらの控除は確定申告によって自ら国に申請しなければいけません

  • 配当控除
  • 政党等寄付金特別控除
  • 外国税額控除
  • 公益社団法人等寄付金特別控除
  • 住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)

給与所得控除

所得控除の一種です。

給与所得控除とは会社員や公務員など給料をもらっている人が対象です。

スーツ代など必要な経費が一定程度あるとみなし給与収入から差し引く仕組みです。

個人事業主は、自ら実際にかかった経費を収入から引きますが、会社員の場合は、このようにあくまで見なしの経費が引かれることになります。

給与所得控除は給料が低いほど控除額の割合が大きくなります。

2019年1月時点では、65万円〜220万円の控除幅です。

つまり、給料を得ている人には最低65万円の控除があるということになります。

社会保険料控除

こちらも所得控除の一種です。

実際に支払った社会保険料分が所得から引かれます。

基礎控除

基礎控除も所得控除の一種です。

対象者は収入がある全員で、一律に38万円が引かれます。

パートやアルバイトにも所得税はかかるの?

パートやアルバイトの方は、「103万円の壁」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

給料が103万円を超えると、課税されるというものです。

これは、上で説明した基礎控除38万円と給与所得控除の最低額65万円の合計額です。

つまり、どんな人に対しても最低103万円の控除があり、103万円以内の収入(給料)であれば課税所得が0円になるのです。

上に挙げたその他の控除にあてはまらない人は、この103万円が控除額の上限になるため、103万円以上の収入(給料)がある場合は所得税を支払うことになります。

所得税の計算方法を解説!実際に計算!

所得税の税率、控除額は?

日本の累進課税は以下のように設定されています。

平成30年度所得税の税額票

課税される金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

国税庁Webサイトより

所得によって上記のように税率や控除額が異なり、所得が多くなるほど税率が高くなります。

所得税がかからない範囲はある?

先ほど103万円の壁のところで解説しましたが、誰もが103万円までの収入(給料)であれば所得税はかかりません。

ただ、この103万円に加えて、既婚者であれば配偶者控除、子どもがいる場合は扶養控除を利用することで所得税がかからない範囲が広がります。

計算手順を解説!

以下の4つのステップで所得税の税額を計算することができます。

  1. 年収を計算
  2. 控除額を算出
  3. 課税所得を計算
  4. 所得税額を計算

月収50万円の場合の所得税はいくらになる?

それでは実際に月収50万円のケースを例に所得税をもとめていきましょう。

今回は計算をわかりやすくするために、賞与やボーナスはなく、残業代や各種手当を含めて月収50万円であると仮定します。

また、月収50万円=額面の月収50万円として考えていきます。

今回は、独身の会社員の場合を考えてみましょう。

結婚していたり子供がいる場合でも控除が増えるだけで考え方は同じです。

1.年収を計算

月収50万円 × 12 = 年収600万円

2.控除額を算出

それでは全ての会社員に適用される3つの控除を見ていきましょう。

基礎控除

所得税の基礎控除:38万円

給与所得控除

もらう給料によって以下のように控除が変動します。

給与給与所得控除額
180万円以下収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)
360万円以下収入金額×30%+18万円
660万円以下収入金額×20%+54万円
1000万円以下収入金額×10%+120万円
1000万円超え220万円(上限)

給与所得控除額:600万円 × 20% + 54万円 = 174万円

社会保険料控除

次に計算するのは社会保険料の支払額です。

社会保険料は支払った全額が控除の対象になります。

具体的には国民年金保険料、厚生年金保険料、健康保険、雇用保険などがあります。

以下が保険料率の目安です。

 社会保険料の種類本人負担の保険料率
厚生年金9.15%
健康保険4.95%
雇用保険0.30%
合計14.40%

社会保険料の料率や金額は勤めている会社や地域、年齢によっても違うので目安として考えてください。

ただ大半の人の社会保険料負担はこの水準とそう変わらないと思います。年収に社会保険料率をかけることで社会保険料の額を計算します。

社会保険料控除額:600万円 × 14.4% =86.4万円

3.課税所得を計算する

主な控除の金額を算出することができました。

次に税金の計算に使われる課税所得を計算しましょう。課税所得は年収から先ほど求めた控除をそれぞれ引くことで求めることができます。

所得税控除額の合計= 基礎控除38万円 + 給与所得控除174万円 + 社会保険料控除86.4万円 =298.4万円

課税所得= 600万円 - 298.4万円 =301.6万円

ここで求めた課税所得に税率をかけることで実際の税額を求めることができます。

4.所得税額を計算

所得税の累進課税表は以下のようになります。

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万~330万円10%97,500円
330万~695万円20%427,500円
695万~900万円23%636,000円
900万~1800万円33%1,536,000円
1800万~4000万円40%2,796,000円
4000万円超45%4,796,000円

課税所得は301.6万円なので所得税の計算は次のようになります。

所得税:課税所得301.6万円 × 10% ー 控除額9.75万円 =20.41万円

よって、独身の会社員で年収600万円(月収50万円)の場合は、所得税として1年間に20.41万円を国に支払うことになります。

所得税の納付方法は?

サラリーマン、正規雇用の場合

会社が従業員の代わりに、所得税を給料から毎月差し引いています。

これがいわゆる天引きと呼ばれることもある源泉徴収ですね。

そのため、基本的にサラリーマンの方は確定申告をする必要がなくなります。

しかし、一般のサラリーマンであっても年収や副業、働き方によっては確定申告が必要になるケースがあります。

代表的なものとしては、以下のケースが挙げられます。

  • 給与所得が2000万円を超えている
  • 給与所得以外の副業で20万円以上の所得を得ている
  • ダブルワークをしている

自営業、個人事業主の場合

自営業、個人事業主は毎年1月1日〜12月31日の期間に発生した所得を、翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告を通して、行政に申告しなければなりません。

このように、どこかの企業に雇用されているわけではなく自分で起業をしたり業務委託契約で働いているフリーランスの方などは自分で確定申告をしなければなりません。

これらの方の場合には事業所得から基礎控除の38万円を差し引いた額を課税所得として扱います。

パートやアルバイトの場合

一般にアルバイトやパートで働いている方の年末調整は勤務先の経理担当の方がやってくれるので、必要書類に記入をするだけで簡単に済みます。

しかし、年収が103万円を超えた場合には確定申告が必要になるなど面倒なことになります。103万円を大きく超えて稼ぐ必要がある場合以外は扶養内に収める方が無難です。

また、年収が103万円を超えたときに加えて、年の途中でアルバイトやパートをやめてしまった場合にも注意点があります!

アルバイトやパートをやめた場合、年末調整はどうなる?

ここまでは年末調整が勤務先で行ってもらえるので、それほど負担はないことを解説していきました。

しかし年末調整のタイミングで企業に属していない場合、具体的には途中でアルバイトやパートをやめてしまった際には自力で確定申告する必要があるのです。

こうした場合には、元勤務先から発行される源泉徴収票が必要となるので、確定申告前に焦って準備をしないように余裕を持って計画しておくと良いですね。

また特に学生だと元勤務先とうまくいかずにやめてしまったケースも多く想定されます。

そう言った場合はメールや郵送でのやりとりを通じて源泉徴収票を受け取る方法がベターとされています。

アルバイトを掛け持ちしている場合の年末調整は?

では年末調整時に複数のアルバイトを掛け持ちしている場合はどうなるのでしょうか。

簡潔にいうと、最も所得の多かった勤務先のみで年末調整を行ってもらうというのが定石です。

所得が多いほど受けられる還付の額も大きくなるので、なるべく税金の天引きが多くなされている勤務先で年末調整を行いましょう。

また、年末調整は一人につき一箇所のみで認められるので、複数の勤務先に依頼しないように気をつけましょう!

所得税と住民税の違いは?

そもそも住民税とは?

住民税とは、市町村民税・道府県民税の総称で地方自治体による教育や福祉、公衆衛生(ゴミ処理など)といった行政サービスの資金確保のために徴収されます。

住民税は所得税と同様に、課税所得に税率をかけて算出されますが、納税時期が当年ではなく翌年という決定的な違いがあるので注意しましょう。

税金の種類が違う!

税金は国に納める「国税」と地方自治体に納める「地方税」に分類できます。住民税は後者の地方税で、自分の居住する都道府県と市町村に納税します。

所得税が国の主要な税源なのに対して、住民税は自治体の主要な収入源です。

また、住民税の税率は所得の多い少ないに関係なく10%(都道府県税4%+市町村税6%)と一定なのも特徴です。

所得税は所得が増えると税率も増えますよね。

計算方法も異なる!

住民税は所得割額均等割額の2つで構成され、前者は所得の大きさで変動します。

ただし、税率は一定です。

後者はみんなに一定額請求される基本料金のようなものとイメージしておいてください。

所得割額は市町村税の部分で6%、道府県民税の部分で4%計10%が基本的にかかります。

一方、均等割額の方では市町村民税の方で約3,500円、道府県民税の部分では約1,500円となっており、基本的に計5,000円くらいが徴収されます。

基本的にと前置きしていますが、地域によって微妙に税率や金額が違うので詳しい金額を知りたい場合は地元自治体のホームページで確認してください。

月収50万円の場合、手取りはいくらになる?

先ほどは所得税のみを計算しましたが、給料から源泉徴収されるのは所得税だけではありません。住民税も源泉徴収された結果、手元に残るお金が手取り額になります。

そこで住民税を計算し、月収50万円(年収600万円)の独身会社員の場合の手取り額をもとめます。

所得税額は先ほど計算したように、20.41万円です。

住民税は所得税とは違い累進税率ではなく所得割均等割の2つの部分に分かれています。

所得割の部分は全国一律で10%です。

均等割も5000円前後です。

住民税の課税所得を計算する上で所得税と違う点があります。

それは、基礎控除の額です。

所得税は一律に38万円であるのに対して、住民税は一律に33万円です。

そこで住民税の課税所得を計算すると、所得税の課税所得よりも5万円多い306.6万円になります。

よって住民税の計算は次のようになります。

住民税: 課税所得306.6万円 × 10% +均等割5000円 - 調整控除2500円 =30.91万円

ここで調整控除が出てきましたが、説明が長くなる&金額的に大きくないので省略します。

これで年収600万円の所得税・住民税の計算ができたので合計を出します。

所得税と住民税の合計:20.41万円 + 30.91万円 =51.32万円

年収600万円の所得税・住民税が51.32万円と求められました。

大体給料の8.5%ほどなのが分かりますね。

次に実際に給与口座に振り込まれる金額=手取り金額の計算もしてみましょう。

手取り金額は額面の給料から社会保険料と所得税・住民税を引くことで求めることができます。

年収600万円の手取り給料:600万円 - 所得税・住民税51.32万円 - 社会保険料86.4万円 =462.28万円

年収600万円といっても自由に使えるお金は462万円ほどしかありません。

計算してみると思ったよりも口座に振り込まれる給料は少ないのではないでしょうか。また、税負担以上に社会保険料の負担が大きいことが分かります。

ただこれはあくまでも目安として考え、各自で実際に計算してみることをお勧めします。

おわりに

ここまで、所得税とはそもそも何か、所得税の計算方法、納付方法、さらには住民税との違いを解説してきました。

特にサラリーマンなど会社勤めの方は所得税や住民税の税額をはっきりとは把握していない人もいらっしゃったかもしれません。

この機会に自分の所得税や住民税を把握してみてください!

将来のお金のやりくりを考える上で税額をしっかりと把握、予想しておくことは重要だと思います。

個人事業主や自営業の方は所得税の納付・申告方法を把握し、しっかりと納税しましょう。

サラリーマン、自営業の方問わず、各自の状況に応じて様々な控除を受けられるので、自分にあてはまる控除がないかを確認してみてください!

各種控除を受けることで節税が可能になります!

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