近年外国人旅行客の増加とともに急拡大しているのが民泊ビジネスです。
民泊仲介最大手の会社Airbnbを利用した訪日客は2016年で約370万人、宿泊日数は延べ1000万泊を超えています。
日本経済新聞によると訪日客の2割弱が民泊を利用しているともいわれています。
2018年には「民泊法」が施行され、グレーゾーンも多かった民泊についても正式に認められるようになるため、余っている部屋や物件を貸してみようかなと考えている人も多いのではないでしょうか。
この記事では民泊ので得た所得にかかる税金と2018年6月に施行される予定の住宅宿泊事業法(民泊法)についてまとめました。
民泊とはなにか?
そもそも民泊とはなんでしょうか?
民泊とは個人の家の一部や空いている別荘、マンションの空室などを旅行者に貸すサービスです。
ホテルや旅館との最大の違いは部屋の貸し手が個人で部屋も一般的な民家だということです。
なぜ民泊サービスが発展したのでしょうか?
その理由はスマートフォンとインターネットの普及です。昔は旅行者と現地の人々を繋ぐ手段はほとんどありませんでした。
しかし、現在ではAirbnbなどのアプリを通じてたとえ外国であっても泊まりたい人と泊めたい人が簡単にやり取をすることができるようになりました。
貸す側のメリット
貸し手にとって民泊を選ぶメリットは何でしょうか?
・空き家、空き部屋を活用できる
誰も使っていない部屋や物件を利用することができます。使っていなくても毎年の管理費用や税金で困っている人も多いと思います。そうした不動産を有効活用できるのは民泊の大きなメリットでしょう。
・設備投資にお金がかからない
民泊はホテルや旅館のように改装が必要なく、普段の部屋をそのまま貸し出すことができます。
・利用者との交流が楽しめる
日本だけでなく世界各地からの旅行者が訪れます。そうした人々と異文化交流ができるのは民泊ならではの醍醐味でしょう。
借りる側のメリット
一方で民泊を利用する側のメリットは何でしょうか?
・ホテルよりも安く泊まれる
民泊なら同じ広さの部屋をホテルよりも安い価格で泊まることができます。中には家を一軒まるまる借りることもできます。
・現地の人々の生活を体験できる
ホテルに泊まるよりも、その国の文化に触れることができます。
民泊にかかる税金
民泊で得た利益には税金がかかります。
利益が一定金額以上になった場合は「確定申告」が必要になります。
確定申告が必要になる年間所得は他に収入がない場合は所得38万円を超えた場合、ほかに給与所得がある場合は民泊分の所得が20万円を超えた時です。
お小遣い感覚で利用するならば、所得が多すぎないように注意が必要です。
自宅を貸し出す場合(雑所得)
自宅を貸し出す場合は「雑所得」に分類されます。
雑所得の場合「総合課税」として本業の給与と通算して税額を求めます。
所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万~330万円 | 10% | 97,500円 |
330万~695万円 | 20% | 427,500円 |
695万~900万円 | 23% | 636,000円 |
900万~1800万円 | 33% | 1,536,000円 |
1800万~4000万円 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得税額 = 所得(給与所得+民泊の所得) × 所得税率 - 控除額
自宅以外を貸し出す場合(不動産所得)
自宅以外の物件を貸し出した場合は「不動産所得」となります。
不動産所得も本業の給与所得と合わせて「総合課税」によって求めます。
もっと大規模に民泊事業をやれば「事業所得」として認められることもできます。
事業所得として認められれば以下のようなメリットを受けることができます。
- 青色申告で最大65万円の控除が受けられる
- 副業が赤字の場合に給与所得と損益通算して税額を減らすことができる
- 損失は3年に渡って繰り越すことができる
ただし事業として認められるにはだいたい10部屋以上の運用が必要になります。
経費として申請できるもの
確定申告で計算される所得は以下のようになります。
所得 = 民泊の宿泊料収入 ー 様々な経費
ということは経費をできるだけ計上することで所得を抑え納税額を減らすことが分かります。
経費には様々な項目があります。
・家賃
・水道光熱費
・通信費
・掃除道具
・寝具
・テレビ
・仲介手数料
・火災保険料
他にも民泊に関連した支出であれば経費に計上することができます。
確定申告に備えて領収書やレシートは日ごろからきちんと保管するようにしましょう。
京都市の宿泊税
一部の自治体では独自に宿泊税を設け、民泊もその対象になっています。
観光客の多い京都市では2018年から新たに宿泊税を導入することになりました。
税額は最大で1000円です。
背景に観光客の増加によって交通機関の混雑が市民生活に影響を与えるようになったことがあります。
宿泊税の税収は混雑緩和など観光客の受け入れ態勢整備に使う予定になっています。
京都市 | 大阪府 | 東京都 | |
導入時期 | 2018年 | 2017年 | 2002年 |
税額 | 200~1000円 | 100~300円 | 100円~200円 |
年間税収 | 45億6千万円 | 10億9千万円 | 22億9千万円 |
民泊 | 対象 | 対象 | 対象ではない |
税金の使い道 | 観光振興、混雑緩和、景観保全 | 観光客受け入れ体制整備 | 観光振興策の推進 |
今後もこうした動きが広がっていくかもしれません。
宿泊税は利用者が負担し、仲介サイトが納税するような仕組みになるので貸し手には直接の負担はありませんが、宿泊料の値上げには繋がります。
2018年に住宅宿泊事業法(民泊法)が施行
2018年に「民泊法」が施行されます。
民泊は新しく登場したサービスであるため、今までの法律を適用するのは難しく、許可を得ていないグレーゾーンに近い物件が大半でした。
三井住友トラスト基礎研究所(2016年)
人を宿泊させるためには旅館業の許可が必要ですが、法律に規定された度の業態も基準が厳しく実際に許可を得ている物件は少数でした。
グラフを見れば分かる通り、条件の比較的緩い「簡易宿所」としての許可を得ている物件も多いものの、民泊物件全体で許可を得ているのは全体のわずか16%に過ぎません。
監視の行き届かない無許可の民泊が大半の環境の中で、利用者の増加に伴いトラブルも多く報告されるようになりました。
民泊法の目的は?
2018年6月に施行される民泊法の目的は法律の下で民泊を適切に管理し、トラブルを防ぐと同時に民泊の利用を促進していくことです。
2020年の東京オリンピックに向けてホテル不足の解消、全国で増え続ける空き家問題の解消など民泊に期待される役割は大きいと言えます。
民泊法の主なポイントは以下の通りです。
・仲介業者は観光庁に登録
・家主は自治体に届け出
・営業日数上限は年間180日
・自治体は条例で営業日を制限
・法令違反は業務停止命令
貸し手にとっては今までの法律的にあいまいな状況から、きちんとした許可を取って営業できるようになったため民泊への参入のハードルは下がったと言えるでしょう。
しかし、一年の営業日が180日に制限されるなど、民泊だけで生活したいという人には厳しい条件が付けられました。
また自治体によってはトラブルや治安の悪化を防ぐため、条例で民泊を全面禁止しているところもあります。
部屋を貸したいと考えている方は注意してください。
まとめ
民泊を貸した利益にかかる税金と民泊法についてまとめました。
法律も整備されたことで、今後より一層民泊は拡大していくでしょう。
もし空いている部屋や物件があるのなら一度仲介サイトに登録することを検討してみてもいいかもしれませんね。
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