ふるさと納税が2019年6月に改正!現行制度の問題や変更点を解説

カレンダーと話し合う二人のビジネスマン

ふるさと納税は自治体に対する寄付金から2,000円を引いた額が、所得税や住民税から控除される制度です。そして寄付したお金に応じて、高額な返礼品がもらえると言う事で話題になりました。

節約をかねて、ふるさと納税を利用している方も多いと思います。

しかし、この高額な返礼品が問題となり、2019年6月から一部の制度が改正になるということが決定しました。

「制度改正によって一体何が変更されるのか」「どうして変更する必要があるのか」気になると思います。

今回は、ふるさと納税制度の変更点と変更するに至った背景について解説しています。

ふるさと納税が改悪になる?制度の変更点とは?

今回の改正では、ふるさと納税(特例控除)の対象となる基準が以下のように変わりました。

2019年6月からの改正点

  • 返礼品の調達額の割合は、寄付額の30%以下に設定する
  • 返礼品は地場産品とする
  • 上記に従わない自治体は、地方税法を改定し、ふるさと納税寄付控除の対象外とする

また指定をした都道府県等が基準に適合しなくなったと認める場合などには、総務大臣が指定を取り消すことができるとする旨も盛り込まれています。

総務省は以前より、高額な返礼品は納税による地域貢献というふるさと納税の趣旨に沿わないとして規制強化を進めていました

一部の地域では過度な返礼品と地場産品以外の取り扱われており、返礼品の見直しを求めていましたが、なかなか改善されなかった為、制度改正に至る結果となりました。

これまで割高な返礼品を実施していた地方自治体に寄付をしていた方は注意が必要です。

もし、ふるさと納税制度を外されると自治体に寄付をしても、税金の控除が受けらえれなくなるからです。つまり高いお金を出して、割高な商品を買うだけになってしまうのです。

地方自治体もこれまで以上にしっかりとした返礼品の選定が重要となります。

ふるさと納税が改正に至った理由や背景を解説!

ふるさと納税が実施されて10年が経ちましたが、具体的に今回制度が改正されるようになったきっかけは何かあったのでしょうか?

大阪府泉佐野市の高額な返礼品が総務省から問題視された

今回の制度改正は大阪泉佐野市の高額な返礼品がきっかけだとも言われています。

大阪府泉佐野市は、2017年にわずか1年間で130億円以上の寄付金が集まり、年間で最も寄付金を集めた地方自治体です。2位の自治体(宮崎県都農町)と50億円以上も差をつけてのダントツトップとなっています。

今回の制度改正以前から、総務省では、ふるさと納税での返礼割合(寄付額と返礼品価格の割合)を3割以下に抑えることと、返礼品は原則として地場産品にするようにと言われていました。

しかし、泉佐野市の特設サイトを見てみると、新潟県の米・海道のホタテなど地元以外の名産品や、返礼率(寄付額と返礼品価格の割合)が45%の返礼品などが人気を集めていました。

他の自治体が返礼率を3割以下に抑えている中で、泉佐野市などの一部の地方自治体は、返礼率を高めることで人気を集めていたのです。

こういった背景をみて総務省は、ふるさと納税の本来の目的から外れていると判断し、地方自治体に返礼品の見直しを通達しました。

ふるさと納税の本来の目的

  • 地域のPR
  • 人口が少ない地域でも税収を集める
  • お世話になった地域に寄付をする

Amazonギフト券が決め手?

しかしその後も、一部の地方自治体では、総務省の通知を聞かずに様々な施策を実施しました。

中でも、泉佐野市は、今年2月からAmazonギフト券をプレゼントする「『100億円還元』閉店キャンペーン!」を実施。

ふるさと納税特設サイト「さのちょく」において、ふるさと納税を申し込んだ人全員にAmazonギフト券をプレゼントするというもので、Amazonギフト券は、ふるさと納税額の10%分、5月以降の配送月を指定すると20%分がもらえます。

今回のキャンペーンは、過去に静岡県小山町が一度実施した企画であり、その際に、「特産品とは全く関係ない金券が返礼品に含まれるのは問題である」と総務省からの注意を受けました。※静岡県小山町は現在アマゾンギフト券を取り扱っていません。

その為、今回の泉佐野市のキャンペーンは、総務省に対して挑発的ではないのか?と問題視されました。

総務省は、泉佐野市のように、より多くの寄付金を集めるため、様々な形で高額な返礼品を用意する自治体が現れることを恐れて、今回の制度改正を行いました。

制度改正を受けて泉佐野市の反応は?

総務省の制度改定を聞き、泉佐野市の市長は、

 「これまでおよそ5年、アイディアを出し合い、知恵を絞って日本一になった。ただ、地元の業者を通しているとはいえ、地元の特産品ではない返礼品を贈ってきたのは事実です。そういう点が目立って、規制につながったのでしょう。まるで“泉佐野つぶし”のようにも感じます。もちろん、法が施行されればきちんとルールに従います。ですが、本当にこれでいいんかな、と思います」

という意見を示しました。また今回問題になった100億円キャンペーンについては、以下のように答えています。

100億円還元キャンペーンをやめるつもりはありません。泉佐野市では140社がふるさと納税に関わっていますが、法改正によって約7割の事業者との取引をやめなければならなくなる。結果、経営が危なくなったり、倒産する会社が出ることだけは避けなければならない。

最近では、愛知県春日井市では、総務省の指摘で、ふるさと納税の返礼品から海外ブランドの自転車を外した為、用意した1570台(計1億4500万円相当)の在庫を抱えて損害を受けたとして、自転車販売会社が、市に7500万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した、というニュースがありました。

地元を盛り上げるためのふるさと納税が逆に周辺企業を苦しめる結果になってしまっては本末転倒ですね。

今後のふるさと納税はどうなる?

今までは、節税対策として高額な返礼品ばかりが重視されていたふるさと納税ですが、改訂後は高額な返礼品もなくなる事から、集まる寄付金が減ることが予測されています。

全体の税収は減ることが予想されますが、当初の狙いであった、地域への恩返しや地方創生などの、愛着ある地域の活性化と言った本来の役割に近くなるでしょう。

まだ現状、資金・人材不足などの理由から特産品が用意できず、ふるさと納税に参入できていない地方自治体も数多くあります。今後はそういった地方自治体でも参加できるような制度になるといいですね。

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