しばしば児童手当と混同されることが多い児童扶養手当ですが、両者は完全に異なる制度です。
しかし、児童扶養手当について知っている方は少ないのではないでしょうか?
今回は児童扶養手当について受給要件、所得制限、受給金額、受け取り時期、受給できる年齢の制限について説明します。
また、児童扶養手当以外にも母子家庭(父子家庭)が使える手当について紹介します。
児童扶養手当の受給条件
児童扶養手当は、両親が死亡したり、離婚した家庭や父母が障害者である児童の養育者に対して支払われる手当です。
しばしば児童手当と間違われることが多いこの手当ですが、児童手当が日本国内に住む中学生までの子供を持つ全ての家庭に払われるのに対して、児童扶養手当はひとり親に対して払われます。
母子家庭(父子家庭)は、児童手当と児童扶養手当の両方を受給することが可能です。
それでは、児童扶養手当の受給要件をみていきましょう。
具体的な、児童扶養手当の受給要件は以下のようになっています。(以下、東京都福祉保健局から引用)
- 父母が婚姻を解消(事実婚の解消含む)した後、父又は母と生計を同じくしていない児童
- 父又は母が死亡した児童
- 父又は母が政令で定める障害の状態にある児童※
- 父又は母の生死が不明である児童
- 父又は母が母又は父の申し立てにより保護命令を受けた児童
- 父又は母から引き続き1年以上遺棄(捨てて置き去りに)されている児
- 父又は母が法令により引き続き1年以上拘束されている児童
- 婚姻によらないで生まれた児童
- 父母が不明な場合(棄児等)
※父障害の場合、受給資格者は母又は養育者、母障害の場合、受給資格者は父又は養育者
しかし、上記の受給要件を満たしていても次に該当する人は手当を受けることができません。
- 児童又は請求者が日本国内に住所を有しないとき
- 児童が児童福祉施設等に入所している、里親に委託されているとき
- 児童が父と母両方と生計を同じくしているとき(父又は母が障害による受給を除く)
- 児童が父又は母の配偶者(事実上の配偶者を含む。)に養育されているとき
(東京都福祉保健局から引用)
簡単にいうと、海外に住んでいる場合、両親と住んでいる場合、福祉施設に住んでいる場合、再婚相手に養育されてる場合などは受給資格を失うことになります。
このように、児童扶養手当は一度受給したらずっと受給できるわけではなく、受給資格がなくなる場合があります。
他にも公的年金を受け取るようになり、その金額が児童扶養手当の金額を超えた場合なども資格を失います。
仮に受給資格がなくなっていたにも関わらず、児童扶養手当を受けていた場合には、その期間の手当を返還しなくてはならないので注意しましょう。
児童扶養手当は何歳まで受け取れる?
児童扶養手当は扶養する子供の18歳の誕生日の後に訪れる、最初の3月31日まで支給されるようになっています。
参考程度でいいですが、児童扶養手当によく似た名前の手当に特別児童扶養手当というものがあります。
特別児童扶養手当とは、精神又は身体に障害を有する20歳未満の児童の福祉増進を図るために、その児童の保護者に対して支給される手当のことです。
これはひとり親家庭が支給対象となる児童扶養手当とは完全に別個の制度であり、それぞれの要件を満たせば両方受給できることもあります。
特別児童扶養手当の支給期限は20歳の誕生日の前日までとなっています。
児童扶養手当には所得制限がある!
児童扶養手当には所得制限というものがあり、養育者(父または母)の所得が定められた金額よりも高いと手当を受給できません。
ここでいう所得とは、税法上の所得額(年収から給与所得控除額を引いた額)を差します。いわゆる額面給与ではないので注意しましょう。
なお、離婚後に元夫から養育費を受け取っている場合は、その金額の8割を加算します。
【計算方法】
- 給与所得控除後の金額:100万円
- 元夫からの養育費:月5万円
所得=100万円+48万円(5万円×12ヶ月×0.8)-8万円(一律控除※)=140万円
※一律控除・・・所得から全員差し引くことができる。金額は8万円。
この所得制限によって、児童扶養手当を全額受け取れるケース(全部支給)と部分的に受け取れるケース(一部支給)の2パターンに分かれます。
それぞれの所得制限は扶養人数に応じて以下のようになります。
扶養親族数(子供など) | 全部支給(円) | 一部支給(円) |
0人 | 490,000 | 1,920,000 |
1人 | 870,000 | 2,300,000 |
2人 | 1,250,000 | 2,680,000 |
3人 | 1,630,000 | 3,060,000 |
4人 | 2,010,000 | 3,440,000 |
平成31年4月現在(単位:円未満)
また、ここでは便宜上4人までしか記述していませんでしたが、税法上の扶養人数が1人増すごとに所得制限上限額は38万円加算されます。
児童扶養手当はいくらもらえる?受給金額と計算方法
それでは、児童扶養手当で受け取れる金額はいくら位なのでしょうか?
月々の受給金額まとめ(平成31年4月分より)
全部支給とは所得により児童扶養手当が全額給付されることでしたが、全部支給の場合には以下のような受給金額になっています。
児童数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 |
---|---|---|---|---|
金額 | 42,910円 | 53,050円 | 59,130円 | 1人につき6,080円加算 |
全額支給の場合、およそ毎月4万円〜6万円程度、年間48万円〜72万円の金額が支給されます。4人目以降は、1人につき約6000円が加算されます。
続いて、下は一部支給の場合の受給金額です。
児童数 | 1人 | 2人以上(所得制限あり) |
---|---|---|
金額 | 42,900円から10,120円 | 2人目は5,070~10,130円加算 3人目以降は1人につき 3,040~6,070円加算 |
(台東区ホームページから引用)
一部支給の場合の、具体的な受給額は以下の計算式で求められます。
月々の支給額=42,490円-(年間所得-全部支給の所得制限限度額)×0.0226993
例えば、子供が1人いて、年間所得が100万円の場合には、
42,490円-(1,000,000円-870,000円)×0.0226993=約39,539円
となり、約39,539円が支給される計算になります。
減額や支給停止措置もあるので注意
児童扶養手当制度には一部支給停止措置というのがあります。
これは受給開始から5年を経過する等した人は、一定条件を満たしていないと手当額が2分の1に減額されるという制度です。
対象となるのは、下記の1か2のうち早く経過したときの翌月からです。
- 支給開始月の初日から起算して5年
- 支給要件に該当した日が属する月の初日から起算して7年
ただし次のいずれかの条件を満たしていれば減額されることはありません。
- 就業している(職業についている)
- 求職活動等の自立を図るための活動をしている
- 身体上または精神上の障がいがある
- 負傷または疾病等により就業することが困難
- 監護する児童または親族が障がい、病気等で介護の必要があり就業が困難
上記のいずれにしても、条件を満たしていることを証明する書類が必要になります。
町田市の場合、受給から5年経過した人には、該当月の前々月に自治体から書類が送付がされるようです。
児童扶養手当の支給は年3回!支給日を確認
児童扶養手当は原則年に3回、4月、8月、12月の11日(休日や祝日の場合はその前営業日)に支払われます。
支払日 | 支払対象月 |
---|---|
4月11日 | 12月分、1月分、2月分、3月分 |
8月11日 | 4月分、5月分、6月分、7月分 |
12月11日 | 8月分、9月分、10月分、11月分 |
新規の申請の場合には、申請した月の翌月分から支給されます。
また、8月分以降の手当の受給には現況届(現状を確認するための届け)の提出が必要になります。
児童扶養手当の申請方法
児童扶養手当を受給するにはもちろん、申請が必要になります。
ここでは児童扶養手当の申請方法について、申請場所、必要なもの、手続きの内容に分けて説明します。
申請場所
申請は各自治体によって行われますが、自治体によって福祉課、子育て支援課、子育て給付係などと窓口の名称が異なるので、自分の住んでいる自治体で事前に確認しましょう。
児童扶養手当は原則窓口での受付になり、郵送での申請は受け付けていません。
また、本人以外の代理申請は受け付けておらず、本人による申請が必要です。
必要な書類
児童扶養手当を各自治体に請求するには認定請求書が必要になります。
認定請求書には申請者の現状を把握する項目や児童のマイナンバーを記載する欄があります。
認定請求書の取得方法は自治体によって様々ですが、ホームページからダウンロードできる場合もあります。
また、認定請求書には以下の書類を添付する必要があります。
- 申請者本人と児童の記載がある戸籍謄本又は戸籍抄本
- 前年度分の所得証明書
- 申請者名義の普通預金通帳
- 本人確認書類
- 養育費に関する申告書(貰っている場合には月々の受取額を申告)
多くの自治体では、申請書類は1か月以内に発行されたものという条件が付いています。
手続きの流れ
児童扶養手当申請の流れについて簡単に説明します。
- 役所の窓口で相談する
家庭の状況を説明し受給対象かを確認して、申請の際に必要な書類について聞いておきましょう。
- 申請する
上述した場所に必要な書類を持っていきましょう。
- 審査を待つ
審査には数週間から2か月ほどかかります。
- 児童扶養手当の支給を受ける
新規の申請の場合には申請した月の翌月分から支給されますが、これは翌月に振り込まれるということではないので注意が必要です。
また、児童扶養手当はさかのぼって適用されることはないので、離婚をした際などはすぐに申請するのが良いでしょう。
児童扶養手当以外に母子家庭が使える手当・給付金
国や地方自治体では母子家庭(父子家庭)を支援するために多くの手当を用意しています。
今回はその中でも児童扶養手当を除いた4つをピックアップして紹介します。
母子家庭の住宅手当
母子家庭の住宅手当とは、母子家庭のシングルマザーが月々負担する家賃の一部を助成する制度です。
これは地方自治体が独自に実施している制度であり、国が規定する制度ではありません。
制度を設けている自治体は限られているので、利用を希望する場合には事前に住んでいる自治体のホームページなどで確認する必要があるでしょう。
各自治体に共通する受給要件は以下のような内容です。
- 民間の賃貸住宅に住んでいる
- 所得が一定額以下
- 家賃が一定以下
- 生活保護法の住宅扶助を受けていない
受給金額の例を挙げると、東京都国立市で上限1万円(家賃の3分の1)、千葉県浦安市で上限1万5千円になっています。
母子家庭・父子家庭の医療費助成制度
これは母子・父子家庭を対象として、世帯の保護者や子供が病院で診療を受けた際の自己負担分を居住する地方自治体が助成する制度です。
助成内容は市区町村によって異なるので、各自治体で確認するようにしましょう。
支給対象者(品川区の場合)
0歳~18歳になってから最初の3月31日までの間の年齢の子供または、規則に定める障害の状態にある20歳未満の子供を養育している母子(父子)家庭の人
助成内容
【平成30年8月診療分から】
負担割合 | 自己負担上限額 | |
住民税課税世帯 | 1割 | 外来:14,000円/月 (年間上限 144,000円) |
入院:57,600円/月 (多数回該当 44,400円/月) ※2 | ||
住民税非課税世帯 | 自己負担なし | 全額助成 |
助成内容は上記のようになっています。
母子家庭の遺族年金
遺族年金とは夫が死亡したときに国民年金から支給されるお金のことです。
夫が死亡してからすぐに支給され、支給金額は子供の人数によって異なりますが、子供が18歳になるまで毎月約9万円が支給されます。
申請をするには、死亡届と年金請求書を提出する必要があります。
「死亡届」の用紙は、役場で入手することができますが、多くの場合は病院や葬儀会社の担当者が準備してくれます。
また、年金請求書は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
死亡届は厚生年金に加入している人は会社で、国民年金のみに加入している人は役所に提出し、年金請求書は年金事務所か年金相談センターに提出します。
児童育成手当
児童育成手当の受給要件は以下のようになっています。(品川区の場合)
品川区内に住所がある、18歳になった日以後の最初の3月31日までの児童を下記のいずれかの状態で扶養している父・母または養育者に支給されます。
- 父・母が離婚した児童
- 父または母が死亡または生死不明の児童
- 父または母に引き続いて1年以上遺棄されている児童
- 母が婚姻によらないで生まれた児童
- 父または母が法令により、1年以上拘禁されている児童
- 父または母に重度の障害がある児童
- 父または母が保護命令を受けた(DV被害者)児童
- 上記のいずれかの要件に該当していて、児童が社会福祉施設に入所していないこと
また、支給額は児童1人当たり月額15,500円となっていて、毎年2月・6月・10月の10日から16日頃にまとめて口座に振り込まれます。
母子家庭(父子家庭)の方は設けられている手当をうまく活用しましょう。
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