2019年1月から出国時に課税される「国際観光旅客税」通称出国税が導入されることになりました。
検討段階では観光促進税と呼ばれていましたが、正式名称は国際観光旅客税となります。
税収は訪日外国人の急増に対応して、観光インフラの整備に使用するために使われる予定になっています。
日本の税金(国税)としては「地価税」以来、実に27年ぶりの新税になります。
新しい税金は国民の負担を増やします。なぜ今回新税の導入に踏み切ったのでしょうか?
この記事では新しく導入される「出国税」についてまとめました。
※以下この記事では新税の呼称として広く使用されている「出国税」と記します。
※この記事で解説する新税は2015年に富裕層のタックスヘイブンへの資産移転を防ぐために導入された「国外転出時課税制度」とは別のものです。
出国税とは?
出国税とはどんな税金なのでしょうか。
その仕組みを解説したいと思います。
ポイントは3つです。
- 外国人・日本人に関わらず、出国時に1人1000円の課税
- 航空券購入時に上乗せして徴収
- 2019年1月から徴収開始
外国人観光客は帰国時、日本からの海外に行くビジネスマンや観光客は出発時に税金を支払うことになるのですね。
1人1000円で、数万円の航空券に上乗せされるため実際に気になる人はそんなにいないかもしれません。
ただ海外に行くたびに課税されるので、海外出張の多いビジネスマンにとってはあまり恩恵を受けないの納税額は増えるので不満に思うかもしれません。
日本からの出国者数は2016年で4000万人(内訪日外国人2400万人)でした。
簡単に計算すれば出国税によって400億円の税収が見込めることになります。
税収は観光拠点の整備や出入国の管理設備に充てるそうですが具体的な用途の範囲はまだ決まっていません。
東京オリンピックに間に合うように2019年1月から徴収を始める予定です。
出国税は恒久的な国税としてはバブル崩壊の原因になったともいわれる「地価税」以来27年振りの新しい税金になります。
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出国税が導入される理由
なぜ出国税がつくられることになったのでしょうか。
その理由を見ていきましょう。
近年外国人観光客が急増している
出国税が作られた背景には外国人観光客が急増していることが挙げられます。
下のグラフは日本を訪れた外国人の推移です。
年別訪日外国人数
JTB総合研究所の資料より
近年訪日外国人が急増していることが分かります。
2012年まで800万人前後だったのが2016年には2400万人を突破しています。
東京オリンピックという国際イベントも控え、今後もしばらくこの勢いは止まりそうにありません。
政府は目標として年間4000万人の観光客受け入れを目指す
日本政府も、数少ない成長産業である観光業を盛り上げようと2017年3月に「観光立国推進基本計画」を閣議決定しました。
そのなかで2020年までに達成を目指す目標を以下のように定めています。
- 訪日外国人旅行者数:4,000万人 (平成27年実績値:1,974万人)
- 訪日外国人旅行消費額:8兆円 (平成27年実績値:3.5兆円)
- 訪日外国人旅行者に占めるリピーター数:2,400万人(平成27年実績値:1,159万人)
- 訪日外国人旅行者の地方部における延べ宿泊者数:7,000万人泊(平成27年実績値:2,514万人泊)
- アジア主要国における国際会議の開催件数に占める割合:3割以上・アジア最大の開催国(平成27年実績値:26.1%・アジア最大)
観光庁ホームページより
あと数年で外国人旅行客4000万人、旅行消費額8兆円と現在の2倍近くの数字に引き上げるという野心的な目標です。
このため観光庁の2018年度予算は247億円と2015年度と比べ実に2.3倍の額に増えています。
しかし、これでも外国人観光客の急増に観光インフラの整備が追い付いていないのが現状です。
外国人観光客急増の裏で「観光公害」が起きている
訪日外国人の数がうなぎのぼりに増加している裏で観光地では様々な弊害が起きています。
例えば特に影響が深刻な観光客の多い京都を例にとってみましょう。
京都を訪れた外国人観光客は2016年で661万人で前年から4割増加しました。
その影響で京都では地元住民が路線バスに乗れない、マンションの一室などで許可を得ていない「ヤミ民泊」が横行するなど住民との間でトラブルが増えているのです。
そこで京都府は日本で最も厳しい民泊条例を制定するとともに宿泊税の導入も決定しました。
ただ自治体単独でできることには限りがあります。
大阪府の資料より(2017年)
上の資料を見ると外国人観光客の宿泊先の2割が民泊だったことが分かります。
民泊は近年広く普及しているののの、周辺住民とのトラブルが起きる原因にもなります。
また、地方では複数言語の観光表示や通信環境など、観光インフラが整っていない現実もあります。
東京オリンピックまでに観光インフラを整備することやトラブルを減らしていくための諸制度を整備するには、資金が必要になってくるのです。
これも出国税が導入された背景の一つです。
政府の財政難
間接的な理由としては政府の財政難もあります。
毎年度の予算は大半が年金など社会保障費の支払いに消えてしまうため、毎年の支出を抑制するのが精いっぱいで他の予算を増やす余地は乏しいのです。
観光予算もこれ以上大幅に増やすのは厳しい。新税を作るのが安定的な財源を確保できる上、もっとも簡単に予算の増額を実現できる方法なのです。
税金の使い道
400億円の税収増になる出国税ですがどんな使い道になるのでしょうか?
観光庁の2017年度予算は200億円程なので、今までよりもずっと潤沢な予算を使うことができます。
現時点での情報によると「地域の文化を生かした観光政策」や「出入国管理の強化」に使うとしています。
かなり漠然とした感じだと思われるかもしれません。
使い道についてはかなり幅広く使えるような制度を整備すると報道されています。
そのため、どこにいくら使ったのかしっかり監視していかなければ無駄遣いの温床になる恐れもあります。
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海外の出国税はどうなっている?
日本の出国税と導入される理由についてみてきました。
海外でも同じような制度を設けている国はいくつも存在します。
韓国:日本と同じく約1000円
アメリカ:事前にインターネットで申請を受け付け。約1500円(外国人だけ)
ドイツ:航空券税。約1000円~5900円
オーストラリア:約5300円。年間800億円ほどの税収
ほかにフランスやイギリスも導入しています。
アメリカやフランスは世界でもトップの観光客受け入れ国です。こうしてみると出国税を導入するのも仕方ないのかもしれません。
訪日客には免税の拡大も
少し話が変わりますが、外国人観光客には出国税が課されるようになりますが、一方で免税制度が改正され、免税の範囲が拡大されます。
改正点:一般の物品と消耗品の購入額を合算し、5千円以上になれば免税の対象とする。
これまではそれぞれ5千円以上買う必要がありましたが、その制限がなくなります。
例えばこれまで土産物として3千円のシャツと2千円のお菓子を別々に購入した場合は免税の対象外でしたが、2018年からそれが免税んの対象内になるのです。
2016年に免税の対象を1万円以上の商品から5千円の商品に引き下げたことに続く免税の拡大になります。
外国人観光客にとってはこれらの免税制度拡大を利用すれば実質的な負担はそこまで増えないかもしれません。
まとめ
出国税についてまとめました。
外国に行くたびに1000円余計にかかることには少し不満を感じる人もいると思います。
ただ、「観光立国」を目指す政府の方針の中で安定した財源を確保するためにはしょうがないのかもしれませんね。
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