毎年4月〜6月ごろに各市区町村から納税通知がくる「固定資産税」。
土地や家を所有している人は必ず払わなければいけない税金であり、その金額は数十万円にのぼることも珍しくありません。
昨今の新型コロナウイルス感染症拡大による収入減少・ボーナスの減額や見送り等の影響などをうけて、固定資産税が払えないかもしれない・・・、とお困りの方もいるのではないでしょうか。
払えないからといって、もし滞納したまま放置し続ければ、最終的には大切なご自宅を手放さなければならないことになってしまうかもしれません。
そこで今回は、固定資産税が払えない・延滞してしまいそうだという場合の対処法を解説していきます。
固定資産税を滞納するとどうなる?どんなリスクがある?
固定資産税の支払いをせずに滞納をするリスクは大きく以下の2つです。
延滞金がかかる
固定資産税などの税金を滞納すると、高い延滞金が発生します。
延滞金の年利は、原則としては
・納期限の翌日から1ヶ月まで・・・年7.3%
・納期限の翌日から1ヶ月を経過した日以降・・・14.6%
となりますが、現在(令和2年中)は特例基準割合が適用されて、
- 納期限の翌日から1ヶ月まで・・・年2.6%
- 納期限の翌日から1ヶ月を経過した日以降・・・8.9%
の利率で計算されます。
【延滞金の計算例】
2020年6月30日が納期の固定資産税300,000円を1年間延滞を続けた場合の延滞金は、[25,000円]となります。
給与や自宅を差し押さえられる
納期限を過ぎても支払いがない場合には、納税期限から20日以内に「督促状」が発行されます。
督促状は、法律に基づいて送付されるため、納期限を過ぎた場合には必ず送付されます。
地方税によると、督促状を送付してから10日経過した日までに滞納分が完納されない場合には、「財産差し押さえ」を行うと規定されています。
つまり、法律上は滞納から1ヶ月程度で財産差し押さえをされてしまう可能性があるということです。
実態としては、1ヶ月で差し押さえされるケースは多くはないようですが、法律的にはいつ強制執行されてもおかしくないことを覚えておいてください。
また、家や土地が差し押さえる場合には、国が差し押さえ登記を行います。
差し押さえ登記が実施されると、その家はあなたの方で売却をすることができなくなる可能性があります。
後ほど、詳しく解説しますが、オーバーローンの物件を銀行と協議して売却する「任意売却」をする際には、この差し押さえ登記の期限に注意が必要です。
固定資産税の滞納から差し押さえまでの順序
固定資産税の滞納から強制執行までの順序をみていきます。
①督促状・催告状での支払い通知
納期限を過ぎても支払いがないと、期限から20日以内に督促状が届きます。
督促状送付後にも連絡がとれない、納付がない場合には、複数回の催告状が送付されます。
不動産が共有財産である場合、督促状は代表者にしかいきません。例えば、夫婦ペアローン で物件を所有していて、税金を滞納した場合には、督促状は代表者側にしかい送られません。
②財産調査・身辺調査
督促状・催告状の通知を無視し続けていると財産の差し押さえ準備が始まります。
準備では、税金滞納者がお金に換えられる財産をいくらくらい持っているかという「財産調査」、家族構成や勤務先など滞納者自身に関する「身辺調査」の2つが行われます。
これによって、家族や勤務先、取引先などに税金滞納の事実を知られてしまう恐れがあります。
また、財産調査、身辺調査の他に隠している財産か調べるために自宅を突然捜索される可能性もあります。税金滞納者には裁判所の令状なしで自治体などが捜索することができます。
③給与、自宅等の財産差し押さえ
調査の結果わかった財産(給与口座、マイホーム等)は差し押さえがされます。
差し押さえがされると関係各所に通知書が送付されます。
- 不動産の差し押さえ→契約関係者へ
- 給与の差し押さえ→勤務先へ
- 現預金の差し押さえ→金融機関へ
なお、財産調査で分かった全ての財産を差し押さえれられるわけではなく、「生活・事業継続に欠かせないもの=衣服、寝具、家具、台所用具、生活に必要な3ヶ月の食料と燃料、実印など」は差し押さえての対象にはなりません。(国税徴収法第75条)
④財産の公売・競売
差し押さえられた財産は公売や競売といったカタチで売却されて、売却代金の中から納税資金が支払われます。
【公売と競売の違いとは】
競売は、債権者が裁判所に申し立て、債務者が所有する財産を裁判所の管轄下で売却すること。
公売は、国税(所得税・相続税等)の滞納によって、国税局や税務署に差し押さえられた不動産を入札によって売却すること。
仕組みはどちらも似ていますが、競売は債権者、公売は国税局・税務署が主体者となる点が異なります。
固定資産税が払えない時の対処法
固定資産税が払えない時の対処法は大きく以下が挙げられます。
- 分割払いを相談する
- 徴収の猶予を受ける
- 換価の猶予を受ける
- 任意売却をして納税する
①:分割払いを相談する
まず最初にやるべきことは、お住まいの市区町村役場へ連絡し、分割納付の相談をしてみることです。
そもそも固定資産税は4回分割納付ができますが、支払い期限を伸ばし分割回数を増やすことで月々の負担を減らしながら返済をしていく方法もあります。
昨年と比べて収入がいくら減ったため、突発的な出費があったためなどやむをえない状況があり、計作通りに支払いできそうと役所が判断すれば、特別な手続きなく、分割払いを認めてもらえます。
ただし、当初取り決めた計画の中で滞納をすれば、強制執行のリスクは高まります。
②:徴収の猶予を受ける
以下の条件に該当する場合には、あなたの申請をもとに納税を猶予することができます。
- 災害や盗難になったとき
- 本人、またはその生計を一にする親族などが病気や負傷したとき
- 事業を廃止、または休止したとき
- 事業について著しい損失を受けたとき
- 法廷納期限から1年以上後に納付税額が確定したとき
また、現在、新型コロナウイルス感染症の拡大によって納税が困難な人には「徴収猶予の特例制度」というものもあります。
【徴収猶予の特例制度】
以下の内容を満たす方は、1年間、無担保・延滞金なしで地方税(固定資産税、住民税等)の徴収猶予を受けることができます。
<対象者>
以下の①、②いずれも満たす納税義務者が対象になります。
①新型コロナウイルスの影響により、令和2年 2 月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少していること
②一時に納付し、又は納入を行うことが困難であること。
<対象となる地方税>
・ 令和2年2月1日から同3年1月31日までに納期限が到来する
個人住民税、地方法人二税、固定資産税などほぼすべての税目
・すでに納期限が過ぎている未納の地方税についても利用可
③:換価の猶予を受ける
難しい言葉がでてきましたが、換価とは「お金に変えること」。
既に差し押さえを受けている財産やこれから差し押さえ予定の財産の売却を一定期間(最大6年間)猶予してもらえるのが、換価の猶予制度です。
換価の猶予をうけるための要件は以下の通りです。
- 財産の換価を行うことで事業や生活の維持が困難になる場合
- 納税について誠実な意思を持っていること
申請にあたっては、「換価の猶予申請書」「財産目録」「医療費の明細」といった書類を提出します。個別のシチュエーションに応じて必要な書類は変わるため、詳細は、市区町村の納税課に問い合わせしてみてください。
④:任意売却をして納税する
税金滞納や住宅ローン滞納時に使われる最終手段が「任意売却」です。
任意売却とは、住宅ローンの残高が残っている状態で銀行や保証会社と相談をして、売却代金の中から固定資産税の滞納分を支払うことを認めてもらい、自宅を売却することです。
もし既に差し押さえを受けている場合でも、役所と話し合いを行い、差し押さえを解除の上、任意売却できる可能性もあります。
競売や公売の場合と比べると以下のようなメリットがあります。
- 裁判所やネットの公告がないので、所有者の経済事業がばれない。
- 競売等よりも市場価格に近い値段に売れる
- 話し合い次第で引っ越し代金は売却代金から工面できる可能性が高い
競売にかけられるのであればその前に任意売却を検討するのは1つの手段だと思います。
【補足】リースバックで今の家に住み続ける
どうしても今の家に住み続けたいと思う場合には、任意売却で一度家を売却して、その後に借りて住む「リースバック」という方法が使えます。
売却した自宅と賃貸契約を結ぶことで、売却資金によって滞納分を支払うことができ、その後は固定資産税の支払い義務からも解放されます。
また、ゆくゆくその家を再度買い直ししたい場合には、子供の名義で買い戻すことなども可能です。
固定資産税を払えない時に覚えておきたい注意点
自己破産しても納税免除は免れない
競売にして自己破産すればいい、とお考えの人もいるかもしれませんが、実は自己破産で免除されるのは、借金などの債務のみで、税金滞納分は免除がされません。
そのため、競売での売却価額が滞納分に満たなかった場合には、自己破産をしても支払い義務はその後も残り続けます。
時効成立は実質的にありえない
また、税金の時効は3〜7年といわれていますが、これにも注意が必要です。
税金の時効は、督促状や催告状が送られるとリセットされてしまいます。
つまり、現実的に税金の時効が切れることは限りなく0に近いといえます。
税金滞納の義務からは逃れられないことが分かりますね。
固定資産税の納付が難しければ、早い段階で役所に相談をしよう
以上、固定資産税が払えない時の対処法や滞納から強制執行までの流れを解説しました。
新型コロナによる経済悪化、企業の業績悪化などで経済的に苦しい思いをされている方もいると思います。
もしも固定資産税の支払いが難しい状況になったら、なにはともあれ早めに役所に相談することが大切です。
何よりもダメなのは滞納したまま、放置を続けること。大事な自宅を差し押さえられないためにも早めの相談を心がけてください。
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