近年では女性の働き方改革が推進されており、今後も結婚や出産後に職場復帰する機会も増えていければ良いと考えられていますね。
しかし、女性の働き方は単に育児や保育の面を整備しただけでは不十分で、税制面からもアプローチしていかなければなりません。
みなさんの中には「扶養」というものを聞いたことがある方は多いかと思います。
扶養に入ることによって税制面での優遇や企業からの手当が受けられるというメリットがある一方、将来的に職場復帰する方にとってはいちいち手続きが面倒なものでもあります。
また、共働きが増えてきていることから扶養に入っていいものか、入れるのかという疑問も多いでしょう。
そこで今回は、扶養に入るための条件や入ることによって得られるメリット、具体的な手続きについて解説していきます!
結婚後に夫の扶養に入るメリット・デメリットとは?
夫の扶養に入るメリット
夫の扶養家族となることによって、以下のような3つのメリットを享受することができるようになります。
- 配偶者控除が適用され、税控除が受けられるようになる!
まず、一つ目のメリットは扶養家族になることで配偶者控除という所得税における控除を受けられるようになります。
税金の課税額というのはみなさんが実際に稼いだ収入から、控除と呼ばれるものを差し引いたのちに課税所得というものを計算して税金額を割り出しています。
つまり、税金の金額を抑えたいのであれば控除を増やす必要があり、配偶者控除も一つの節税対策になります。
ちなみに、この配偶者控除は2018年に改正がなされており、「夫が配偶者控除額38万円を適用できる妻の収入が150万円以内に拡大されたこと」「配偶者控除を受けることが出来る夫の所得が1,000万円以下(収入が1,220万円以下)に限定されたこと」が大きなポイントです!
- 夫の勤務先から手当が受けられることがある!
特に日系の企業の場合には、夫の勤務先で妻が扶養家族に入っていると家族手当をもらえるところが多くあります。
月に数万円単位で手当がもらえることもしばしばあるため、下手に扶養家族を外れてしまうのであれば、勤務先から手当をもらっている方がお得になる、というケースも多いので注意が必要ですね。
- 社会保険に加入することができる!
夫の扶養家族に入っていれば、夫の勤務先の社会保険に加入することができます。
社会保険は従業員と勤務先が保険料を折半するので、どうせなら家族の分も折半してもらった方がお得になりますね。
夫の扶養に入るデメリット
昨今では働き方改革が叫ばれており、家庭を持った女性も望むのであれば男性と同じように働ける環境作りが行われています。
加えて現在高齢化が進んでいる日本では労働力不足が叫ばれています。
女性の働きやすい社会の実現や、労働力不足の問題解消を達成する上でも、今回の配偶者控除の改正は大きな期待が持たれています。
妻が扶養を入ることで上記のようなあらゆるメリットを享受できる一方で、そうしたメリットを受けるためにはこれから紹介するいくつかの条件を満たす必要があります。
そのため、扶養に入ること自体にはデメリットはないものの、入るために女性が自分の働き方に一定の制限をかけなければならないことは大きなデメリットと言えるかもしれません。
夫の扶養に入るタイミングはいつ?結婚後と退職後のどっち?
所得税というのはその年の1月1日から12月31日までに発生した、全ての所得に対して課せられます。
つまり同様に扶養も一年単位で入るか入らないかを決定するものなので、そもそも思い立ってすぐに入ることができない場合もあります。
ですので、扶養に入りたいと思ったタイミングで入る条件を満たしていれば早めに入った方が良いですし、条件からすでに外れている場合には翌年以降の加入を考えることになります。
また、税務上の扱いは結婚の前後でそれほど変わりません。
ですから結婚したから扶養に入らなければいけないなんてこともありません。
むしろ、奥さんの方が退職をしたタイミングが扶養を考える機会になります。
共働きであれば、夫婦それぞれが安定した収入があり、課税の対象となっていますが、奥さんが退社し、専業主婦やパートで働くことになった際には、要件を満たしているならば速やかに夫の扶養家族に入ることになります。
ただし、年収が150万円を超えると自動的に扶養からは外れるので、その年全体でパートor専業主婦しかしない場合は扶養に入り、結婚後も正社員として働くのであれば扶養には入れません。
夫の扶養に入るための条件は?130万円の壁って?
ここでは社会保険の加入ラインである、いわゆる「130万円の壁」と呼ばれるものについて解説します。
また念のため130万円の壁の適用がされないケース(「106万円の壁」)、について触れておきます。
年収106万円を超えた段階で社会保険に加入しなければならないのは、以下の条件を全て満たす人です。
- 正社員が501人以上の会社でパートをしている
- 収入が月8万8000円以上
- 雇用期間が1年以上の見込み
- 所定労働時間が週20時間以上
- 学生ではない
※収入に残業手当、通勤手当、賞与は含まない
上記の条件をすべてを満たしているわけではないという人は、130万円の壁の条件の適用対象となります。
収入(交通費も含める)が130万円を超えた段階で社会保険料を支払う必要があるのは、下記の2つの要件を満たす人です。
- 「106万円の壁」の条件を満たさない
- 月収が10万8334円以上(年収130万円以上の見込み)
※月収に残業手当、通勤手当、賞与を含む
この条件を満たしている方であれば、夫の扶養家族になれますし、これ以上稼いでいる場合には扶養によるメリットは受けられなかったり、社会保険料を自己負担しなければいけなくなります。
結婚後に扶養に入るための手続き・必要書類を解説!
夫の扶養に入る上で必要な書類は!?
夫の扶養に入るためには、以下のような書類を用意する必要があります。
- 被扶養者(異動)届
扶養に新たに入る場合には、被扶養者届というものを提出する必要があります。
こちらの書類は日本年金機構のHPなどでダウンロードすることも可能です。
また、被扶養者の方(今回のケースでは妻)が、20歳〜60歳未満で国民年金の被保険者だった場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」の中の「国民年金第3号被保険者該当届」も、同じタイミングで提出しなければなりません。
「国民年金第3号被保険者該当届」を提出することで、「妻の保険料を夫が代わりに払ってくれるので、保険料(年金)の負担をしなくて良い」という意思表示ができるようになります。
- 収入が証明できる公式な書類
収入を証明する書類に関しては、扶養に入る段階での妻の状況によって異なります。
まず、会社を退職して扶養に入る場合には、「退職証明書」または「雇用保険被保険者離職票」が必要になります。
また一度会社をやめて、失業手当を受給している最中または受給後に扶養に入る場合には、雇用保険受給資格者証のコピーが必要になります。
また自営業や不動産収入があった状態から、扶養に入る場合には、なるべく直近の「確定申告書のコピー」が必要となります。
- 夫との続柄が証明できる公式な書類
夫との続柄を証明する際には、戸籍謄本や住民票などの原本を提出します。
夫の扶養に入るための具体的な手続きは!?
まずは上でもご紹介した、「被扶養者(異動)届」と、上記の必要書類を被保険者(親や夫)の会社を経由して日本年金機構へ提出します。
具体的な手続きは、夫の勤務先でやってもらえますが、書類の準備や記入は自分たちで行うことになります。
書類提出後、審査が行われることになります。
この審査が通過すると、健康保険証が夫の勤務先に送付されてきますので、それを受け取ると手続きは完了となります。
おわりに
今回は、妻が夫の扶養に入るために必要な手続きや条件などを詳しく紹介しました。
女性の働き方改革も進んでおり、今後も条件面などでは適宜改正がなされる可能性は高くなっています。
皆さんの働き方やライフプランによって、扶養に入るべきか、入らないべきかは異なってくると思いますので、ぜひご自身の希望やご家族との相談の上、意思決定してみてください!
また、結婚によって生活スタイルが変化する場合は、夫婦の保険見直しをするタイミングでもあります。
宜しければ以下の記事もご参考になさってください。
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