平成最後、2018年度(2018年4月〜2019年3月)のM&A(買収・合併)動向をまとめます。
武田薬品によるアイルランド製薬大手、シャイアー買収をはじめ、世間を賑わせる大型案件が目立った2018年度ですが、国内全体のM&A件数・金額は、いずれも過去10年で最も高い数字となりました。
今回は、2018年度のM&Aの振り返りと共に、巨額M&Aランキングの紹介や2019年の業界展望を解説していきます。なお、本情報は、M&A仲介サービス大手ストライクの調査データを参考にしています。
2018年度M&A市場の振り返りと過去10年の推移
2018年度のM&A件数・金額と過去10年間の推移を解説します。
2009年から2018年のM&A件数推移
2018年度のM&A件数は、「830件」で、2009年の751件を大幅に上回り過去最高の結果となりました。
1,000億円を超える案件も過去10年で最高だった2017年度と並ぶ18件に達しました。
2009年から2018年のM&A金額推移
2018年度のM&A金額(株式取得費用とアドバイザリー費用を合わせた取引総額)は、「12兆7069億円」でした。
金額も過去10年で最高だった2016年から1兆円以上差をつけて最も高い数字に達しています。
2018年度・巨額M&AランキングTOP3!1位は過去最高金額を達成!?
2018年度は、1000億円以上のM&A案件が過去最高に達するなど、大型案件が目立った年でした。
ここでは、巨額M&Aランキングの上位3社の金額と買収背景をご説明します。
ちなみに、10位から4位までのM&A案件は下記の通りです。
順位 | 案件 | 金額(億円) |
4 | 大陽日酸、米プラクスエアの欧州事業を買収 | 6,438 |
5 | 三菱UFJ信託銀行、豪の資産運用会社CFSGAMを買収 | 3,280 |
6 | 米J&J、シー ズ・ホールディングスをTOBで子会社化 | 2,298 |
7 | 大正製薬ホールディングス、一般医薬品会社の仏UPSAを買収 | 1,823 |
8 | 東京海上ホールディングス、欧の再保険子会社2社を売却 | 1,685 |
9 | JT、バングラデシュ2位のたばこ事業を買収 | 1,645 |
10 | 仏フォルシア、日立傘下のクラリオンをTOBで子会社化 | 1,409 |
それでは、3位から順に発表していきます。
第3位 日立製作所 7140億円
第3位は日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収案件です。
再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されています。日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指します。
また、日立製作所は2020年度前半にABBから分社化される送配電事業会社の株式80.1%を取得し子会社した後、4年目以降に100%株式取得して完全子会社化する予定です。
第2位 ルネサスエレクトロニクス 7330億円
第2位は、ルネサスエレクトロニクスによる半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収でした。金額は、日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達しました。
自動運転やEV(電気自動車)等の車載向けに通信用半導体の需要拡大が見込まれることから、IDTの買収によって本分野の開発力強化や相互補完を目指しています。
第1位 武田薬品 6兆7900億円
第1位は、武田薬品によるシャイアー買収です。2018年5月8日に発表され、2019年1月8日成立しました。
買収金額は、桁外れの6兆7900億円!日本企業が行なったM&Aとしては、過去最高となりました。
一時は、巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対しましたが、臨時株主総会では武田薬品株主の賛成率は9割近くに達し、合意に至りました。
武田薬品は、製品化に近い新規候補物質の保有数が少なく、一方のシャイアーは開発中期・後期段階の新規候補物質を多数保有しています。
このため、これだけの金額を投じてM&Aに踏み切りましたが、同時に武田薬品はこの買収に伴って3兆円を超える借金を抱えることとなりました。
2018年度はクロスボーダーが活発化!2019年のM&A市場はどうなる?
前述した通り、2018年度は大型案件が目立った年度となりました。
1000億円を超える大型案件は全部で18件あり、武田薬品などの他、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねています。
これら18件中17件はクロスボーダー(国境を超えたM&A)案件です。2018年度のM&A件数中、クロスボーダー案件は計185件で全体の22.3%近くを占めています。
日本企業が積極的に海外での地盤固めに動く様子が浮かび上がる結果となりました。
こうした流れを受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「低成長で設備投資の効果が低下するなか、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきた」と指摘、「日銀による金融緩和が企業の資金調達を改善させており、今年もM&Aの件数は増えそうだ」と予測しています。
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