最近では3組に1組のカップルが離婚をしてしまうという時代になりました。
離婚というと子供の親権や慰謝料を巡って何かと揉め事が起きがちです。
ドラマなどでは離婚をすると、「慰謝料として○万円を請求します!」なんて台詞が出てきたりもしますが、この金額ってどのように決まっているかわかりますか?
離婚する時になってから、もらえる金額が意外と少なくてびっくりした、なんてことも往々にしてあります。
そこで今回は、簡易的なものにはなりますが離婚の際に発生する慰謝料の計算方法や、相手から受け取ることのできる慰謝料を増やすためのポイントなどを解説していきます。
離婚の際の慰謝料はいくらになる?計算方法をわかりやすく解説
では早速離婚の際の慰謝料の金額がどのように決まるのか、計算方法を解説していきます。
まずはじめにみなさんに知っておいていただきたいのは、離婚の際の慰謝料の計算方法には厳密な規定はないということです。
これから紹介する方法は、あくまで目安となるものですので、必ずしもこの金額がもらえるということではないことを念頭に置くようにお願いします。
離婚の際の慰謝料の計算式は以下のようになります。
基本慰謝料120万円+相手の年収の3%×実質的婚姻年数(最高で20年)×有責度×調整係数
実質的婚姻期間とは、実際に結婚していた期間の長さをさします。
有責度とは、以下のように3つの段階に分かれています。
- 相手が極めて悪い場合:1
- 相手が悪い場合 :0.9~0.2
- お互いほぼ同程度悪い:0
有責度に関しては明確に何をしたら極めて悪いに該当し、どこまでなら悪いに収まるのかというのには状況に応じたブレがあります。
こうしたことが積み重なるので、明確にこの状況では必ず慰謝料はこうなるとは言えないのですね。
調整係数とは、就業状況に伴う支払い能力を反映するものです。
- 配偶者と同程度の年収の方:0.7
- 就業経験のない方:1.3
ここからは簡単に慰謝料のシミュレーションをしていきましょう。
ケース1:重度の有責性がある場合
ケース1の状況は以下の通りと仮定をしましょう。
- 妻Aさん40歳のパートタイム勤務
- 結婚生活期間は15年間
- 夫Bさん47歳の会社員で年収は700万円
- 離婚原因は夫の不貞行為
- 夫に重度の有責性がある
この場合の慰謝料の計算式は以下の通りになります。
基本慰謝料(120万円)+(年収700万円×3%)×実質的婚姻年数(15)×有責度(1)×調整係数(1.0)= 435万円
婚姻期間も長く、夫の年収も700万円と高額である場合には、慰謝料としては435万円という高額なものになってしまいますね。
とは言え、長く連れ添った妻を裏切るわけですから、それ相応の負担を負わなければなりません。
では次のケースでは有責度がそれほど高くはない場合を見ていきましょう。
ケース2:有責性がそれほど高くはない場合
ケース2の状況は以下の通りと仮定します。
- 妻Aさん40歳のパートタイム勤務
- 結婚生活期間は15年間
- 夫Bさん47歳の会社員で年収は700万円
- 離婚原因は双方の価値観のすれ違い
- 夫婦ともに有責性は薄い
この場合の慰謝料の計算式は以下の通りになります。
基本慰謝料(120万円)+(年収700万円×3%)×実質的婚姻年数(15)×有責度(0)×調整係数(1.0)= 120万円
双方がほぼ納得したような状態で、有責性もともにない場合には、それ以外の条件がケース1と同じであっても慰謝料の金額は120万円にとどまります。
有責性が双方にない場合には慰謝料が発生しないようなケースも多々ありますね。
補足:有責性の大きさで簡易的に慰謝料を計算してみる
基本的に慰謝料の決定に大きく関わる係数は、婚姻期間の長さと有責性とされています。
これら二つの指標から、一般的な慰謝料の相場をまとめたものが下の図になります。
婚姻期間 | 1年未満 | 1~3年 | 3~10年 | 10~20年 | 20年以上 |
責任:軽 | 100 | 200 | 300 | 400 | 500 |
責任:中 | 200 | 300 | 500 | 600 | 800 |
責任:重 | 300 | 500 | 700 | 900 | 1000 |
これは相手方の年収などを考慮していないので、先程までのものよりもかなりアバウトなものにはなっていますが、簡単にチェックする程度には利用できますので、相手方の情報が十分ではない場合などに利用してみると良いでしょう。
離婚時の慰謝料をより多くもらうためには?押さえておくべき3つのポイント
離婚というのは、婚姻関係を解消するという人生の中でも大きなイベントの一つなので、一筋縄ではなかなかいきません。
そのため、しっかりと慰謝料をもらうためには入念で計画的な準備をしておく必要があるのです。
今回は、慰謝料をどのようにしたらよりしっかりともらうことができるのかという観点から3つの押さえておくべきポイントを解説していきます。
しっかりと証拠集めを行い、言い逃れを未然に防ぐ
離婚時に慰謝料を受ける場合には、それ相応のダメージを自分が負ってしまったことを客観的に証明する必要があります。
浮気や不倫、DVなどの暴力など、当事者としては目を背けたくなるものもあるかもしれませんが、民事で争う前にはしっかりと証拠づくりをしておかなければなりません。
具体的には、以下のような証拠を集めると交渉が有利に進められるでしょう。
どんな証拠が必要か? | 証拠の具体例 | |
浮気・不倫の場合 | 配偶者と浮気相手の間に不貞行為(肉体関係)があったことの証明 | 二人でホテルに出入りする写真・通話履歴・LINEやメールのやりとりなど |
身体的・精神的暴力の場合 | 配偶者があなたに対して暴力を振るったことの証明 | ケガをした部分の写真(日付も入れる)・暴言を録音したもの・医師による診断書・暴力を受けた回数や日時、状況を細かく記した日記など |
悪意の遺棄の場合 | 配偶者が夫婦生活の義務を果たしていないことの証明 | 生活費の振り込みがわかる通帳・配偶者が外部に部屋を借りている証明書・パートナーの行動記録など |
浮気や不倫の証拠を集める際には、興信所や探偵に依頼するケースが多いでしょう。
もちろん調査費用はかかってしまいますが、プロに任せておいたほうがしっかりと過不足なく証拠を集めてくれるので安心です。
暴力などが理由での離婚の場合には、ご自身も辛く苦しい状況でもあるかもしれませんが、自分自身が受けた傷や言葉を事細かに残しておくことが立派な証拠になります。
こうした客観的で確固たる証拠を残しておくことで、「あなたの思い過ごしだよ」「だって証拠がないじゃないか」という相手方の言い逃れを完全にブロックすることができるのです。
証拠が揃ったらいよいよ話し合いに移っていきます。
話し合いの際には口頭ではダメ!しっかりと書面に取り決めを残すこと
証拠を相手方に突きつけた後は、どうやって両者の折り合いをつけていくか離婚協議をしていくことになります。
この際に注意したいのは、慰謝料の請求額は強気で設定するということです。
先程の計算式で簡易的に相場を知ることができましたが、必ずしもあの金額を守らなければならないというわけではありません。
もしあなたが「10億円の慰謝料を請求します」といい、それを相手方が認めればそれで成立してしまうのです。
ですから、初めの提示額はかなり強めに出ておくことが交渉上手といえるでしょう。
相手にも言い分があるでしょうから、徐々にディスカウントしていって両者の妥協点を探っていくことになります。
また、ここで注意したいのが口頭でいくらと決めるのではなく、しっかりと書面に残しておくということです。
この場合の書面とは、公正証書と呼ばれるもので、しっかりとした法的な拘束力があるため、仮に相手が支払い期日に慰謝料が支払わない場合、「強制執行(相手の財産を差し押さえること)」も可能になります。
交渉ごとは甘く見ない!離婚に強い弁護士をしっかりと手配しておく
しっかりとした証拠を集めることと同じくらい、交渉に強い仲間を確保しておくことが大切です。
仮に十分な証拠があったとしても、相手方が弁護士を雇い、自分は丸裸で行ってしまうとおそらくうまく言いくるめられてしまいます。
持ってる武器を最大限に生かすためにも、離婚に強い弁護士にあらかじめ依頼し、滞りなく交渉を進めましょう。
特に個人向けの弁護士の場合には初回相談が無料のところも多いので、自分のケースを説明し、このままで勝てそうかをしっかりとすり合わせるようにしましょう。
離婚の慰謝料に関わる注意点とは?
ここまでは離婚時の慰謝料の計算方法・受け取ることのできる慰謝料をより多くするための工夫などを紹介していきました。
ではここからは、離婚時に慰謝料請求に関わる注意点をいくつか紹介していきます。
慰謝料に厳密な規定はない!あくまでケースバイケースである
先程からも申し上げているように、離婚時に請求するべき慰謝料の金額というものに厳密なルールというものはありません。
ですから、実際に争ってみないとどのくらいの金額になるかはわからないことがほとんどです。
慰謝料は相手の悪さや自分の受けたダメージの深さといった定量化できない部分も大きく関わってくることから、第三者からの心象や証拠の質や数というものが慰謝料にダイレクトに響いてくるのです。
もちろん判例なども参考にはなりますが、あまり高をくくりすぎることもしないように注意しましょう。
慰謝料と財産分与は分けて考えておく
夫婦で生活していると、マイホームや自動車、家電などの高額な資産を二人で共有している状況にあります。
しかし離婚によってこうした共有財産はどちらかのものになりますので、財産を分割することとなります。
こうした手続きを財産分与と言います。
慰謝料を多く取るためにも、財産分与を別個のものとして考えておいたほうがメリットは大きいので、慰謝料は慰謝料、財産分与は財産分与で別々に取り決めを進めましょう。
「離婚=慰謝料がもらえる」ではない
しばしば勘違いされやすいのは、離婚をすると必ず慰謝料がもらえるというものです。
慰謝料というのは、相手方の振る舞いによって自分が身体的・精神的に傷ついたことを賠償するものなので、それ相応のダメージがない場合には当然ですが慰謝料は発生しません。
お互いに好きではなくなったので別れる、などの場合には双方が納得し、有責性も薄いので互いに慰謝料を請求することはありません。
特に女性の方の多くは、とりあえず離婚をしてがっつりと相手からお金を取りたいと考える人もいらっしゃいますが、そのためにはしっかりと相手が悪く、自分が被害を受けた、ということを証明する必要があるのですね。
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