新年度に向け、大学生活や新生活に心躍らせている方も多いでしょう。
大学生をはじめとする学生やその保護者は、学生自身の将来のためにも、公的な社会保障について知っておかなければなりません。
そのなかでも重要なのが国民年金制度についてです。
今回は、学生が国民年金保険料を納付しないとどうなるのか?払えない場合にはどうする?などについて解説します!
学生も国民年金保険料を納付する義務が!いつからいくら納める?
そもそも学生は、国民年金保険料を納める必要があるのでしょうか?
「収入のない大学生は、国民年金の保険料が免除される」といった誤解をされている方も多いのが現状のようです。
しかし日本では、20歳~59歳の人全員が収入額に関わらず国民年金保険の加入を義務付けられています。
そのため、学生であっても、2020年時点では、国民年金は20歳を迎えた月分から、保険料として16540円(1カ月分)を納めなければなりません。
例えば2002年7月24日生まれの人なら、職業や収入に関わらず、2022年7月分から国民年金保険料を納めてくださいという通知が届きます。
しかし実情は、厚生労働省発表の「平成29年度の国民年金の加入・保険料納付状況」によると、20~24歳の国民年金納付率は62.4%。
納付していない人も多くいることが分かります。
国民年金保険料を納付しなかったらどうなる?
では、国民年金保険を学生時代に納付しなかったらどうなるのでしょう?
将来の年金額が減る
国民年金を納付しないと起きる、もっとも重大なデメリットがこれでしょう。
国民年金保険料納付の通知を無視して保険料を未納状態にすると、65歳から受け取れる「老齢基礎年金」の額が、未納の月数分減ってしまいます。
保険料未納の場合、どれくらい老齢基礎年金は減ってしまうのでしょうか?
保険料を全額納付した場合と、しなかった場合を比較してみましょう。
保険料を全額納めた場合
65歳から受給できる老齢基礎年金の年額は、20歳~59歳の間、480カ月間に納めた保険料の月数で決まります。
2019年度の老齢基礎年金の満額は780100円です。
そのため計算式は、
780100円×(納付した月数)/480カ月=老齢基礎年金の年額
となり、65歳以降毎年受け取れる老齢基礎年金の金額が計算できます。
それに対し、学生の間も含めて、480カ月全額国民年金保険料を納めていた場合、
780100円×480カ月/480カ月=780100円
となります。
従って、学生の間から保険料を納め続けていると、年間約78万円の老齢基礎年金を受け取ることができることになります。
学生の間、国民年金が全額未納の場合
では大学に現役合格した7月生まれの人が、20歳になった2年生の7月から大学を卒業する22歳3月までの期間、国民年金が未納だった場合はどうなるのでしょうか。
20歳7月~22歳3月までの期間は、33カ月です。
そのため計算式は、
780100円×(480-32カ月)/480カ月=728093円(小数点以下切り捨て)
となり、満額納付した人と比べると年間約52000円、もらえる老齢基礎年金の金額が減ることが分かります。
「なんだそれだけか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、人生100年時代の今、65歳から老齢基礎年金を受給して100歳まで生きる場合、
52000円×35年=1820000円
も、満額納税者と比べるともらえる金額が減ってしまいます。
これは結構な差ですよね。
障害年金・遺族年金がもらえない
また、老齢基礎年金以外にも、国民年金を納付しないデメリットはあります。
それは、「障害年金」や「遺族年金」がもらえなくなるということです。
障害年金
障害年金とは、病気やケガが原因で一定の障害が残り、生活や仕事が制限される場合に支給される年金のことです。
重い障害だけに限らず、内臓疾患や精神疾患など幅広い障害が対象となっており、給付範囲が広いこの制度ですが、障害年金をもらうためには、以下のいずれかの条件をクリアしていることが必要です。
- 初診日がある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上、保険料を納付(または免除)していること
- 初診日が65歳未満で、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
遺族年金
遺族年金とは、家族を養っていた人が死亡したときに残された家族に支給されるものです。
このうち「遺族基礎年金」という年金を受け取る条件の一つとして、「死亡した人が国民年金に加入中で、保険料納付期間が3分の2以上」などの要件があります。
以上のように、国民年金に加入していなかったり、保険料が未納だったり滞納していると、大事な時に給付を受けることができなくなってしまいます。
学生でも20歳になった時に確実に加入手続きを済ませ、国民年金保険料を納めておきましょう!
年金を払えない場合はどうすればいい?
そうはいっても、収入のほとんどない学生の期間に、一カ月に16540円も払えないという方もいらっしゃるかと思います。
そういった方に向けて、日本では「学生納付特例制度」という制度を導入しています。
学生納付特例制度は、学生の間の国民年金保険料の納付を猶予する制度です。
前年所得が118万円以下なら、市町村の国民年金担当窓口や年金事務所に申請して承認を受けることで、保険料の納付を猶予してもらえます。
猶予を受けることで老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間としてカウントされるので、上述の障害年金や遺族年金も受けることができます。
ただ、あくまでも受給資格期間としてカウントされるだけなので、就職後に学生時代の未納分を納入しなければ老齢基礎年金の額として反映されないので注意が必要です。
滞納してしまったらそれまでの国民年金ですが、この制度を利用して後で追納することで、経済的に厳しい学生でも将来全額の老齢基礎年金を受け取れることになるのでぜひ確認しておきましょう。
将来に備え、学生もしっかりと国民年金を納付しよう!
滞納や未納してしまうことで様々なリスクを伴う、国民年金保険料。
将来のために、納入を決して怠らないようにしましょう。
収入が少ない学生にとって納入は難しいことも多いでしょうが、学生納付特例制度の制度を利用することもできます。
そしてなにより、保護者と学生が国民年金について相談し、知っておくことが重要です!
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