新型コロナ禍を受けて、経営が芳しくなくなった企業などが数多くあります。廃業を視野に入れている個人事業主も。
こうした状況の中、事業用で借りている土地・建物の賃料を国が負担してくれる「家賃支援給付金」という制度が、注目されています。2020年7月14日に家賃支援給付金の申請も開始されました。
法人だと最大600万円給付される家賃支援給付金。コロナ禍を受けての売上減少とはどの程度から対象になるのでしょうか?また、どうすればこの給付金が支給されるのか気になるところですよね。
今回は家賃支援給付金について対象者から申請方法、申請するにあたっての必要書類を解説してきます。申請前の準備として役立ていただければ幸いです。
家賃支援給付金は法人もフリーランスも対象
家賃支援給付金の対象者は、こちらの➀~③の要件をすべてを満たす事業者となります。
- 中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者
- 5~12月の売上高について、1ヵ月で前年同月比▲50%以上 または、連続する3ヵ月の合計で前年同期比▲30%以上
- 自らの事業のために占有する土地・建物の賃料を支払いをおこなっている
また、コロナ禍を受けて廃業予定の事業者は対象外になります。事業継続の意思があることも必須になっているようですね。
家賃支援給付金の対象要件について具体的に詳しく見ていきましょう。
➀中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者
今回の家賃支援給付金の対象者は、中小企業もしくは、フリーランスを含む個人事業者ということになります。医療法人、農業法人、NPO法人、会社福祉法人など、会社以外の法人も幅広く対象です。具体的には、次のいずれかに当てはまる法人であることが条件になります。
- 資本金の額または出資の総額が10億円未満であること
- 資本金の額または出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下であること
大企業や、公務員などの公共法人は含まれせん。
また、事業規模が中小企業と同程度であっても、政治団体や宗教上の団体、キャバレーなどの風俗関連の事業者も給付の対象外となります。
②5~12月の売上高について、1ヵ月で前年同月比▲50%以上 または、連続する3ヵ月の合計で前年同期比▲30%以上
新型コロナの影響での売上減少した中小企業などが家賃支援給付金の対象となっています。
具体的には、2020年の5~12月の売上高について、いずれか1か月の売上が前年の同じ月と比較して50%減少、連続する3か月の売上の合計が、前年の同じ期間の売上の合計と比較して30%減少している事業が対象となります。
こちらは、2020 年 5 月の売上が、前年の同じ月(2019 年 5 月)の売上と比較して 50%以上減っている場合の図です。
また、2020 年 5 月から 7 月までの売上の合計が、前年の同じ期間(2019 年 5 月から 7 月まで)の売上の合計と比較して 30%以上減っている場合の図はこちらです。
このように2020年の5~12月を、前年の5~12月と、1か月で比べる場合は売上の50%の減少、3か月連続で比べる場合は売上の合計が30%減少のいずれかに当てはまれば給付の対象になります。
③自らの事業のために占有する土地・建物の賃料を支払いをおこなっている
他人の土地・建物を自身で営む事業のために直接占有し、使用・収益(物を直接に利活用して利益・利便を得ること)をしていることの対価として、賃料の支払いをおこなっていることも給付の対象の要件となります。
しかし、土地または建物を他者に転貸(又貸し)などは対象外となるの気を付けましょう。
家賃支援給付金の給付額は最大個人300万円、法人600万円
家賃支援給付金における、給付額は、申請時の直近1か月における支払賃料(月額)に基づき算定した給付額(月額)の6倍です。法人では最大600万円、個人事業者には最大300万円が一括支給(現時点で1度のみ)されます。
今まで支払っていた賃料の100%を給付されるわけではありませんが、最大で月額の賃料の2/3が支給されます。また、一括で半年分振り込まれるので、今、持ち直したい事業者にとってはかなり大きいですよね。
給付額の算定に含まれるのは賃料、公益費、管理費のみ
給付額は、申請時の直近1か月における支払賃料(月額)に基づき算定した給付額(月額)の6倍になりますが、給付額の算定の基礎となる費用は賃料、公益費、管理費を指します。
電気代、ガス代などは給付額の算定時において含まれないので注意してください。
対象 | 対象外 | |
費用 |
|
|
なお、賃料および公益費・管理費には、消費税などを含みます。税込での計算になるので分かりやすいですね。
また、よくある疑問として、住居兼事務所などで住居と仕事場が同一の場合はどうするのか、という問題がありますが、こちらの場合は、事業用の地代家賃として財務申告部分のみとなります。
給付額の算定方法
給付額の算定方法は、月々に支払う賃料が法人の場合、75万円以下か、75万円超か、個人事業者の場合、37.5万円以下か37.5万円超かによって次のように異なります。
支払い賃料(月額) | 給付額 | |
法人 | 75万円以下 | 支払い賃料×給付率2/3 |
75万円を超 | 50万円+[支払賃料の75万円の超過分×1/3] ※ただし、100万円(月額)が上限 | |
個人事業者 | 37.5万円以下 | 支払賃料×2/3 |
37.5万円超 | 25万円+[支払賃料の37.5万円の超過分×1/3] ※ただし、50万円(月額)が上限 |
例えば、法人で見た場合、月々の賃料の支払いが75万円だった場合は、給付率が2/3のため、月額50万円が振り込まれます。
一方で、例として225万円の場合は、50万円+1/3の75万円=125万円で、100万円を超過しているため、上限である月額100万円が振り込まれます。
家賃支援給付金の申請方法
家賃支援給付金の対象、給付額についてはご理解いただけたでしょうか?対象に含まれる場合は、申請時の直近1か月の賃料から給付額が決まるため、早めの申請をおすすめします。
家賃支援給付金は、家賃支援給付金ポータルサイトから申請します。申請から支給までは、こちらの流れをご覧ください。
- 家賃支援給付金ポータルサイトでマイページ作成
- マイページより申請
- 家賃支援給付金事務局で申請内容を確認
- 給付通知書を発送/登録の口座に振り込み
申請後、給付金が振り込まれるのは、1か月程度を要する予定だそうです。時間がかかるため、申請時の不備で差し戻されないように、よく確認していきましょう。家賃支援給付金ポータルサイトでの申請方法について詳しくみていきます。
申請時の入力は、家賃支援給付金についての取り決めに同意後、給付金の支給にあたって、主に事業の基本情報、売上情報、賃料情報、申請者の口座情報を入力します。
各々の情報を入力する際に添付しなければいけない必要書類はおおまかに、
- 確定申告書
- 売上台帳
- 賃貸借契約書
- 申請時の直近3か月分の賃料支払証明
- 通帳のコピー
- 本人確認書類
などが、申請時の入力項目に添付する際に必要になります。
次からは、添付する必要書類について順に詳しく説明します。なお、必要書類を添付するさい、添付書類の保存形式は、PDF・JPG・JPEG・PNG からになります。(画像の容量は 1 ファイル 10MB まで)
また、パスワードで保護されているファイルは受付できずに不備となってしまうので注意してください。
家賃支援給付金の申請時の必要書類
家賃支援給付金の申請時に、主に事業の基本情報、売上情報、賃料情報、申請者の口座情報の入力に加えて、添付しなければいけない必要書類があります。
また、該当するものが確認できる箇所に印をつけなくてはいけない必要書類もあります。
必要書類の多さや、印をつける箇所の有無などにより、ややこしく感じる方も多いかもしれませんが、基本情報、売上情報、賃料情報、口座情報の項目で添付する必要書類を一覧にしたので是非、役立ててください。
入力項目 | 必要書類 | 備考 |
基本情報 | 本人確認書類 | 【下記のいずれか1点】
【上記のいずれもない場合】
|
売上情報 | 2019 年分の確定申告書別表一の控え | 申請にもちいる売上が減った月・期間と比較するすべての事業年度(売上が減った月・期間の前年度売上が属するすべての事業年度)のものを、添付。確定申告書別表一の控えの収受日付印が必須。 |
月別売上の記入のある 2019 年分の所得税青色申告決算書の控え(両面) | ||
e-Tax受信通知(1 枚) | 「メール詳細」の画像データ | |
申請にもちいる売上が減った月・期間の売上台帳など | 申請にもちいる売上が減った月・期間の売上であることがわかるように、申請にもちいる売上が減った月・期間が記載されている箇所に下線 | |
賃料情報 | 賃貸借契約書のコピー | 添付する契約書は、申請者自身の名義で契約されていること、2020 年 3月 31 日と申請日の両方で有効なものであることが必要 |
直前 3 か月間の賃料の支払い実績を証明する書類 | 証明する書類としては、以下のいずれかを添付。
該当する振込が分かるよう以下の対象箇所に全て印をつける。
| |
口座情報 | 名義の通帳の表紙(代表者名義も可) | 口座名義と申請者が一致していること、口座名義人・振込先がわかるようにスキャンまたは撮影 |
名義の通帳をひらいた 1・2 ページ目の両方 |
家賃支援給付金のQ&A
家賃支援給付金については、正確な情報で申請しないと不正受給になりかねないので注意が必要です。ここで申請時によくある疑問を紹介します。
地方公共団体からの支援がある場合は併用することは可能?
家賃支援給付金は国だけではなく、地方公共団体で支援しているところも。
国の家賃支援給付金と地方公共団体からの支援は併用可能です。
しかし、申請者が、地方公共団体から賃料にあてるための支援金を受給している場合や、これから受給することが決定している場合、家賃支援給付金が減額される可能性があります。
具体的には、家賃支援給付金の給付予定額と地方公共団体から給付される家賃支援額の合計が、申請者が 1 か月分として支払った賃料の 6 倍を上回る場合、家賃支援給付金の給付予定額から超過分が減額されます。
もちろん、家賃支援給付金の給付予定額と地方公共団体から給付される家賃支援額の合計が、申請者が 1 か月分として支払った賃料の 6 倍を上回らない場合は、減額となりません。
貸主と借主が夫婦や親子である場合は給付金の対象外?
賃貸借契約の賃貸人(かしぬし)と賃借人(かりぬし)が、配偶者または一親等以内の取引は、親族間取引となり、親族間取引は家賃支援給付金の対象外となります。
また、賃貸借契約の賃貸人と賃借人が実質的に同じ人物である場合も対象となりません。
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