2018年の酒税法改正により、2020年10月から順次酒税の税率が変更となります。
サッポロビールが実施した事前の意識調査によると、税率改正について知らない人が過半数を占める結果となりました。
とはいえ、ビールや発泡酒、新ジャンルなどお酒の税金は皆さんの暮らしや家計にも大きく影響のあることだと思います。
そこで今回は、2020年10月から順次施工される酒税法改正の内容を分かりやすくまとめていきます。
酒税法の歴史や改正のあらましについてもご説明していますので、ぜひこれを機に酒税の理解を深めてください!
そもそも酒税法って?改正に至った背景は?
改正後の税率についてみていく前に、まずは酒税法とはどのような法律なのか?なぜ改正に至ったかの経緯をご説明します。
ビールのおよそ半分は税金!昔は国税の税収第1位だった!?
日本における酒税のはじまりはなんと室町時代にまで遡ります。
明治時代以降、酒税は国の大きな財源の1つとなっており、その割合は地租(土地を対象にした課税)に次ぐ24%。
さらに、1901年に麦酒税、いわゆるビール税が初めて導入され、酒税は地租を抜き、国税のうち、もっとも大きな割合を占める税金となりました。
当時政界への強い力を持っていた地主たちが地租の税率引き上げに反対したため、政府にとっては酒税を増税する方が容易だったからという背景があります。
平成元年(1989年)には、酒税法が大幅改正され、自動車、貴金属、電化製品が減税される一方、ビールは税負担45%という高い税率のまま残り、それが今なお続いている状況となっています。
【小売価格に占める税負担の推移】
(引用:ビール酒造組合・発泡酒の税制を考える会)
度重なる改正によって生まれた発泡酒と新ジャンル
酒税法は幾度も改正を続けてきました。ビール業界にとっての転機となったのが、2003年の酒税法改正です。
それ以前には、ビールに課せられる高い税率を回避しようと麦芽使用量が一定未満の「発泡酒」が人気を博していましたが、2003年の同法改正によって、発泡酒の税率も上がってしまことになりました。
そして、ビールでもない、発泡酒でもない、第3のビールとして麦芽以外の原料を使用したアルコール飲料が次々と生まれることになります。
第三のビールとしては、サントリーの金麦、KIRINののどごし生、アサヒの麦とホップなどが有名ですね。
こうしたビール系飲料商品は、酒税法の改正に伴って、ビールメーカー各社がアイデアを尽くして生み出してきた商品ともいえるのです。
酒税による収入は年々減少傾向に
以前は国税の歳入割合第1位を占めていた酒税ですが、その課税額は1994年をピークに減少傾向にあります。
現在では、国の税収に占める酒税の割合はわずか2%。この状況を改善するために2018年酒税法の改正が行われ、2020年10月から2026年10月までに段階的に税率を変更することが決まりました。
【酒類の課税数量と課税額の推移】
(引用:財務省「酒税に関する資料」より)
酒税法改正でお酒の値段が変わる!2020年10月から順次施行開始
それでは具体的にビール等の税率はどのように変わっていくのでしょうか?
改正後のビール系飲料の税率一覧
【酒税の変更スケジュール】※350ml缶にかかる酒税額で算出
改正前 | 2020年10月 | 2023年10月 | 2026年10月 | |
ビール | 77円 | 70円 | 64円 | 55円 |
発泡酒(麦芽比率25%〜50%) | 62円 | 59円 | 55円 | 55円 |
発泡酒(麦芽比率25%未満) | 47円 | 47円 | 47円 | 55円 |
新ジャンル | 28円 | 39円 | 47円 | 55円 |
2020年から3年おきに段階的に酒税が変更となります。
最終的には、ビール・発泡酒・新ジャンルの全てが350ml缶あたり55円の酒税に統一されます。
現行の金額と比べると、ビールと麦芽比率25%〜50%の発泡酒は減税、麦芽比率25%未満の発泡酒と新ジャンルは増税となります。
また、今回の酒税法改正により2018年から酒類の分類方法も変更となっています。
これまで麦芽比率67%以上のものをビールと定義していましたが、今後は、麦芽比率50%以上のものをビールと呼ぶことになります。今まで発泡酒だったお酒もビールになるということですね。
また、ビールの副原料についてもこれまで認められていた、麦・米、とうもろこしなどに加えて、果実や香辛料、ハーブ、野菜など一定の香味料も副原料として認められることになりました。
これによって、副原料でハーブや香辛料、果実などを使っていた海外のビールは、これまで日本で発泡酒として扱われていましたが、今後はビールに分類されます。
ワインは増税、日本酒は減税に!
ビール以外のワインや日本酒でも税率改正があります。
【ワイン・日本酒の税率改正スケジュール】※350mlでの概算
改正前 | 2020年10月 | 2023年10月 | 2026年10月 | |
日本酒 | 42円 | 38.5円 | 35円 | 35円 |
ワイン | 28円 | 31.5円 | 35円 | 35円 |
2023年10月からは日本酒とワインは同じ「醸造種類」に一本化され、税率も統一されます。
現行と比べると、日本酒は減税、ワインは増税ということになります。
酒税法改正に伴うビールメーカー各社の動きにも注目
改めて、酒税法改正における今後の各種アルコール飲料の増税、減税の内容をまとめます。
ビール | 減税 |
発泡酒(麦芽比率25%〜50%) | 減税 |
発泡酒(麦芽比率25%未満) | 増税 |
新ジャンル | 増税 |
日本酒 | 減税 |
ワイン | 増税 |
こうした酒税法の変更により、今後ビールメーカー各社では、新たな商品開発が活発になっていくことが予想されます。
キリンビールでは、2020年10月6日より、日本初の糖質ゼロビールを発売することを発表しています。
酒税改正による低価格化へのチャンスを活かすとともに、健康志向の高まりに答える形での商品企画となります。
お酒が好きな方は、今後ビールメーカー各社の動きにも注目してみると面白いと思いますよ。
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