顧問弁護士は敷居が高い、と感じている個人事業主の方は少なくないのではないでしょうか。
事業をしていく上で法律問題は避けて通れない問題です。そこで、今回は個人事業主が顧問弁護士をつけるメリットや上手な活用方法、費用相場などを現役弁護士に伺ってみました。
窪田 翔太 先生|窪田総合法律事務所 代表弁護士
1988年東京都生まれ。2006年法政大学付属第一高等学校卒業、2010年法政大学法学部法律学科卒業、2012年明治大学法科大学院修了、2013年司法試験合格。2014年司法修習終了、弁護士登録。
広告コンサルタント企業にて勤務し、2016年都内法律事務所にて勤務。2018年窪田総合事務所を設立。
個人事業主によくある法律トラブルとは
-個人事業主などの小規模事業者からよくある法律相談にはどんなものがありますか?
色々あるのですが、例えば、売掛金の回収ができないというケース。
小規模事業者だとそもそも契約書の作り方が分からないとか、契約書を締結していないなど予防法務のところがしっかり出来ていないというのが挙げられます。
上記のような取引先が約束を守ってくれないというものだけではなく、自分や従業員が何かしらの事故を起こしてしまったとか、下請けなどの業務委託先の仕事のクオリティが低すぎたなど、事業を営んでいると様々な関係者とやりとりが発生するので、その分、法的トラブルも必然的に増えてしまいますよね。
大手企業だとこの辺りの法務関係は法務部や顧問弁護士がやっていますが、個人事業主のように少数精鋭でやっていると、どうしてもこうした法的トラブルへの事前対応は後回しにされがちです。
個人事業主に顧問弁護士をつけるメリット3点
-個人事業主が顧問弁護士をつけるメリットを教えてください。
①:予防と事後の両方の観点から事業主をサポートしてくれる
大きく分けると、弁護士の顧問業務は、予防法務と事後法務に分かれています。
予防法務というのは文字通り、様々な紛争を予防する為の法律業務です。
具体的には契約書の作成やチェック、新規事業の法的リスクの分析や社内コンプライアンスの構築などです。
事後法務は、紛争が起きてしまった場合の対応で、先ほどの取引先からお金が回収できないというケースや従業員が事故にあってしまったなど、そうした事象が起きてしまった場合にどう解決させていくかというところです。
現状だと、特に小さい会社であれば予防法務の観点が重要視されていないので、そこを対策できるというのは大きいメリットだと思います。
②:スポット依頼と比べて気軽に相談しやすい
次にスポットでの相談ではなく、顧問弁護士をつけるという観点でいうと、顧問弁護士の方が連絡を取りやすいし、事業を知っているので話が早いです。
弁護士に相談したい時って何かしら緊急であることが多いですが、顧問であればスピーディーに対応してもらうことができると思います。
依頼する弁護士にもよりますが、私の場合は月何時間まで相談可、複雑な事案以外は基本気軽に相談してくださいという形にしています。
スポットだと「これって弁護士に相談するまでもないかな」「これでお金が発生するのもな・・」と躊躇してしまう部分もあると思うので、より気軽によりフランクに相談しやすくなるかなと思いますね。
③:精神的なストレスを抱えずに済む
もし面倒なトラブルになった場合、委任をしてもらえれば、その後の相手とのやりとりは全部弁護士に一任することができます。
なので、そこのトラブル解決に要する時間だったりストレスだったりを弁護士が引き受けるということです。
その分、本業に集中してもらえるというのもありますし、どうすればいいのか分からないストレスを抱えているよりも、お金を払って任せちゃった方がいいというのは多くのお客様からも聞きます。
中には相手から嫌がらせを受けているとか、業務を妨害されてしまうとか、そうしたことも発生し得るので、それらへの対応は弁護士を使う大きなメリットかなと思います。
顧問弁護士にかかる費用は?
-顧問弁護士を依頼するための費用はどれくらいになりますか?
これも先生にもよりますが、大体、月額3万円前後になってくるのかなと思います。
昔はミニマム5万円だったのですが、弁護士が増えたということもあり顧問弁護士料は下がっている傾向がありまして。
中には、もちろん相談のボリュームにもよりますが、月額1万円からというところもありますし、逆にボリュームが大きければ月5万円というケースもあります。
ただし、訴訟については顧問業務に含まれないことが多いので注意が必要です。任意での交渉であれば顧問の範囲内で対応するケースもありますが、いざ裁判手続きに移りましょうとなった時は別途費用がかかってくることが多いです。
そこは相談に応じてとなるので、まずは話を聞きに行ってみることをおすすめします。
個人事業主が顧問弁護士を上手に活用するためコツ
-顧問弁護士を上手に活用するためのポイントはありますか?
①:自分にあった弁護士を探す
弁護士といっても人柄やタイプは様々なので、自分に一番マッチする弁護士を選ぶことが大事だと思います。
例えばですけど、名前の通った弁護士事務所じゃないと安心できないという人もいるでしょうし、事業を多角的にやられてる方であれば、ここの分野はここの先生という感じで専門的な弁護士をそれぞれ配置するというやり方もありだと思います。
他にも、携帯でパッと電話したらすぐに出てくれる先生なのか、時間はかかってしまうけど質の高い仕事をしてくる先生なのか。事業を一緒にやっていくことになるので、すごく人柄って大事かなと思いますね。
注意点としては、結局弁護士も仕事なので、事件が増えるほど弁護士は儲かるんですよ。なので「ここは弁護士に依頼しないような案件だよ」ということもきちんと言ってくれたり、「これは弁護士に頼むまでもないから弁護士費用が無駄になっちゃうよ」とか、そこまで伝えてくれる先生かどうかというのも大事ですね。
②:法律問題以外のことも相談してみる
また、顧問弁護士なら、裁判にならない範囲なら気軽に相談ができるので、どんどん弁護士を使った方がいいと思います。顧問弁護士を使い倒してる人は本当にちょっとした事でも電話をしてくれます。
弁護士によっては法律相談だけではなく、コンサルティング業務を行なっている先生もいるのでそういったところも相談していくのもありです。
例えば、私の場合は、顧問先同士を繋げて新しいものを生み出すサポートをしています。
常日頃から事業について相談を受けていると色々な繋がりが見えてくるので、例えば、こういうことやりたいんだけど、良い会社知らない?と聞かれたら、あの会社がマッチしそうだなというのが分かってくるんです。
私の顔を使ってもらうことで費用を安くしてもらったり、仮に安く出来なくても最優先で対応してくれたり、良い取引になりますしね。
この前は、顧問先のクリニックがPCR検査の定額受け放題サービスというのを始めまして、そういう有益な情報は顧問先の会社に教えて、実際に契約に繋がったところなんかもありますよ。
予算感に合うのであれば、まずは1年間契約してみるのもあり
-最後に弁護士を付けようか迷っている個人事業主の方に何かアドバイスがあればお願いします。
繰り返しになりますが、何か事が起きてからだと遅いということもありますし、事が起きる前に手を打てたら被害が最小限に収まる場合もあるので、まずは相談してみて、意外と予算に合うのであれば、例えば1年だけでもまずは付けてみるということがオススメです。
弁護士というと敷居を高く感じられる個人事業者の方は多いかと思いますが、私たちとしてももう少し身近に感じてもらいたいと考えていますので、是非どんどん使ってもらえたらなと思います。
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