世界初!ベネズエラ政府が国として仮想通貨を発行

お金の新しい形として仮想通貨が注目を浴びています。

仮想通貨の取引所がハッキングに遭ったり、仮想通貨の価格が急落したりと危ないイメージを持っている人も多いと思います。

しかし中には仮想通貨の採用に積極的な国もいます。

南米のベネズエラでは政府が仮想通貨の発行を発表しました。

この記事ではベネズエラの仮想通貨「ペトロ」と発行の背景についてまとめました。

ベネズエラの仮想通貨「ペトロ」

2017年12月3日にベネズエラのマドゥロ大統領は「ペトロ」と呼ばれる政府による仮想通貨を発行することを表明しました。

2018年2月にはペトロの先行販売も始めるそうです。

この「ペトロ」は石油などの天然資源によって裏付けされるということです。

1ペトロに対してベネズエラの石油1バレルを保証するそうです。

予定では最終的に1億ペトロを発行し、発行額は60億ドル(約7000億円)になるそうです。

なぜ国が仮想通貨を発行するのか?

なぜ既に貨幣や紙幣を発行している国が新たに仮想通貨を発行するのでしょうか?

最新のテクノロジーを使うことで国民の生活をより便利にするためだと思うかもしれません。

しかし、ベネズエラの場合は少し事情が違います。

現在ベネズエラの通貨ボリバルがハイパーインフレーションによって使い物ならなくなっているからです。

加えてベネズエラはマドゥロ大統領が独裁制を強めていますが、アメリカ政府から制裁を受けたことによってお金を海外から資金を調達することやIMFに支援を求めることも難しくなっています。

ベネズエラはハイパーインフレーションに対して経済運営が破たんしていてモノ不足は深刻になり餓死者が出る事態となっています。

マドゥロ大統領は政府発行されたこの仮想通貨が通貨の信用を取り戻すための起死回生の一手として期待しているのです。

世界最大の原油埋蔵国ベネズエラ

お金のないベネズエラですが、豊富な天然資源に恵まれています。

あまり知られていませんが、実はベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を誇っています。

下の図をご覧ください。

石油埋蔵量の比較

見ての通りベネズエラの埋蔵量はアメリカの約9倍、世界最大の産油国の一つとして知られるサウジアラビアさえも上回ります。

仮想通貨は価格の変動が激しいことで有名ですが、この豊富な石油を裏付け資産とすることで仮想通貨の価格安定性を高めることが期待されています。

仮想通貨発行は成功するのか?

ベネズエラ政府の試みは成功するのでしょうか?

ペトロは政府発行のデジタル通貨で、通貨の採掘を行うマイナーは政府機関に登録をしなければならない。

つまりペトロは政府によって完全に管理することができるものなっています。

これは非中央集権としてよく挙げられる仮想通貨の性質に反しています。

また、仮想通貨のブロックチェーンの透明性や通貨が本当に石油によって裏付けられているのか監視するのはだれかなどの疑問点もあります。

ベネズエラに経済制裁を加えているアメリカ政府は投資家に対して仮想通貨を購入しないように警告を出しています。

アメリカ政府曰く「ベネズエラの仮想通貨の価値はベネズエラ政府の信用と同じ(ぐらい低い)」としています。

ベネズエラの野党も発行に反対しています。デジタル通貨の発行が国の石油備蓄を違法に利用していると主張してます。

そもそも産油国と言えば国民がとても豊かな暮らしをしているイメージがありますが、なぜベネズエラは仮想通貨の発行をやろうとするまでの経済の混乱が起きているのでしょうか?

仮想通貨発行の背景

南米で最も豊かだったベネズエラ

豊富な石油資源に恵まれたベネズエラは1950~1960年代にかけて南米で最も豊かな国でした。

意外かもしれませんが、世界のなかでも最も豊かな国でした。

下のグラフは1950年時点での各国の一人当たりGDPを表しています。

1950年の一人当たりGDP

なんとベネズエラは世界で4番目に一人当たりGDPの高い国でした。

当時の日本の約4倍、中国の約11倍も高かったのです。

一人当たりGDPは7424ドル、ちなみに2017年のベネズエラの一人当たりGDPは約7千ドルだったそうなので、ベネズエラは一人当たりで見た場合約70年間全く豊かになっていないということになります

日本も1990年代のバブル崩壊以降30年近く経済が停滞していますが、それとは比べものならないほど影響が大きいことが分かります。

どうしてこうなったのでしょうか?

ポピュリストの元祖チャベス元大統領

1970~80年代貧富の格差が拡大し、当時の2大政党制に人々が不満を持つなかで人気を集めたのががチャベス元大統領です。

チャベス元大統領は過激な主張や社会的エリートを攻撃することで大衆を味方につける方法で大統領になったためよくポピュリストのはしりとしても知られています。

チャベスは国内の石油産業を欧米の巨大企業が牛耳っていると主張し、油田や精油施設を国有化しました。

また貧困層への手厚い援助などによって国内の支持を不動のものにしました。

石油価格の低迷で経済が崩壊

ただポピュリスト政権にはよくある問題ですが、経済運営は次第に躓いていきます。

貧困層への多額の援助は国家財政を窮乏化させ、石油の国有化によって外国人技術者が国外に追放されたため石油の生産性は急激に低下しました。

当初は世界的な石油価格の急上昇に助けれたものの、2010年代以降に石油価格が急落したことによって国家財政が破たんしました。

危機的な状況にも関わらず、物価の上昇に対して価格統制を敷いたために、さらなる商品の不足と激しいインフレを招くことになりました。

インフレ率は2600%!

2018年にはインフレ率が2600%を超えました。(日本では日銀が頑張ってインフレ率2%を目指しています)

もはやお金が紙切れになり使い物にならなくなっているのです。

2017年には餓死者が出たり反政府デモで120人が死亡するなど経済は大混乱に陥っています。

さらには独裁を強めるマドゥロ大統領に対し2017年にアメリカが経済制裁を行ったため経済は末期の様相を呈しています。

まとめ

ベネズエラ政府の仮想通貨発行とその背景についてまとめました。

経済の混乱に苦しむ国が起死回生の一手として仮想通貨に期待していることが分かります。

もし仮想通貨の決済手段への利用が成功し、物価を安定させることができれば仮想通貨の評価は高まるでしょう。

今後どうなっていくのか目が離せないですね。

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