起業をしようと考えたときに多くの人が一番初めに思い浮かぶのは株式会社ではないでしょうか。
有限会社!と答えられた方、実は有限会社、合名会社などは2006年の会社法改正で廃止され、新たに設立することが出来なくなっています。
現在会社を設立する場合、株式会社と合同会社の二つしか選択肢がありません。
意外と知られていませんが、改正で新たに誕生したのが合同会社という会社形態です。
比較的小規模な事業から始めようと考えている起業家にとって、合同会社を設立するメリットは非常に大きいと考えられます。
この記事では合同会社について詳しく解説していきたいと思います。
合同会社とはなにか
合同会社とは2006年の会社法改正によって、それまでの合名会社と合資会社を統合する形で誕生した比較的新しい会社形態です。
当初は知名度が低かったこともあって年間の設立数は約三千件余りでしたが、下の表の通り年々件数が増加していき2016年度には設立件数が2万件を超えています。
設立された会社に占める合同会社の割合を見ても、2006年度にはわずか4.2%でしたが、2016年度では総設立数の内20%を合同会社が占めていて、合同会社が徐々に市民権を獲得していることが伺えます。
(出典)「政府統計の総合窓口」e-Statのデータから作成
合同会社設立のメリット
なぜ相対的に株式会社よりも合同会社を選ぶケースが増えてきたのでしょうか。それは合同会社のメリットが世の中に次第に知られるようになったからです。
それではここで合同会社のメリットをまとめました。
株式会社と比べ設立費用が安い、毎年かかる費用も少ない
株式会社と合同会社それぞれの設立にかかる費用を列記します
株式会社にかかる費用
- 定款に貼る収入印紙代 4万円
- 公証人に払う手数料 5万円
- 定款の謄本手数料 約2,000円
- 登録免許税 15万円
合計:約24万円
合同会社の設立にかかる費用
- 定款に貼る収入印紙代 4万円
- 定款の謄本手数料 約2,000円
- 登録免許税 6万円
合計:約10万円
上からわかる通り合同会社の創業当初にかかる費用は株式会社の半分以下です。
さらに二年目以降も合同会社が費用面で優れている点が以下のようにあります。
役員の任期が無期限
株式会社の場合役員の任期が2年と決まっており、留任変更に関わらず手続きが必要です。
この際事務的な煩雑さだけでなく、重任登記費用として一万円必要になってきます。
役員の任期が無期限の合同会社の場合これらの手続き費用は掛かりません。
決算公告の義務がない
企業は年一回決算として税務署に収支を報告しなければなりません。
これに加えて株式会社の場合決算公告を行う義務があります。
通常は官報に掲載するという手段を採りますが、この費用が約6万円かかります。
もちろん合同会社ではこの費用は発生しません。
株式会社と同じ節税効果
個人事業主が法人化した場合の節税効果は株式会社と同様に享受することができます。
経営の自由度が高い
株式会社はたくさん出資した人の発言権が強くなり、出資分に応じて利益を配分することが求められます。
しかし、合同会社の場合そうした制約が存在しないため、例えば会社への貢献順に利益を配分することができます。
また株式総会を開く必要もなくあらゆる面で株式会社と比べ柔軟な経営体制を構築することができます。
どんな人が合同会社を設立するべきか
合同会社を設立する際のメリットを挙げました。
では実際にどんな人が向いているのでしょうか。
BtoCビジネスを始めようと考えている方
合同会社のマイナスポイントを挙げるとするならば、それは社会的な信頼性が株式会社と比べ低いことです。そうしたデメリットがあまり影響しないBtoCビジネスはおすすめです。
具体的にはカフェ、学習塾、ラーメン屋、サービスを展開するIT企業などはおすすめです。
一定以上の売り上げが見込める場合
いくら合同会社のがお得といっても法人の設立には追加の費用が発生します。
何もしなくても毎年法人住民税が発生する上、毎年の税務署への決算報告などは税理士に委託する場合費用がかかり、社会保険料の法人負担も発生します。
一定の売り上げが確保できる予定がない場合個人事業主の方が結果的に手間やコストが小さい場合があるので、会社設立の前には負担に見合う売上を確保できるかしっかり予測を立てることが重要です。
小規模な事業を考えている場合
迅速な意思決定と柔軟な組織運営、利益の自由な分配ができるため、社員が数名程度の会社の場合、合同会社の恩恵をより受けることができるでしょう。
合同会社を設立するのに適さない場合
メリットが大きい合同会社ですが、設立するのに適さないケースもあります。
適さないケースを以下挙げました。
融資ではなく増資によって資金調達を考えている場合
合同会社は株式を発行しないので増資によって資金調達をすることができません。
一方で銀行からの融資や社債の発行は株式会社同様にできます。
会社を創業する際に実績がなく銀行から融資を受けづらいという場合、下の記事のような制度を利用することをお勧めします。
数年以内の株式上場を考えている場合
ベンチャー企業を創業後、早期の株式上場を目指している経営者の場合、合同会社は向いていません。
合同会社を株式会社に転換することも可能ですが、手続きの面倒さと社内組織変更の労力を考えると最初から株式会社を設立したほうが良いと言えるでしょう
法人設立による節税のメリットを享受できるだけの売上が見込めない方
個人事業主から法人化を考えたときに、売上が一定以上の規模がないと十分に節税のメリットを受けられない可能性があります。
法人化したときに具体的に節税効果があるか、知りたい場合は税理士に相談してみましょう。
まとめ
合同会社は諸費用が株式会社よりも安く、法人としての節税効果が期待できることから、条件に合った経営者には非常に素晴らしい制度だと言えます。しかし、個人事業主と株式会社と合同会社はそれぞれ一長一短があり、それぞれを比較してどれが一番適しているかよく考えて決めましょう。
暮らしに役立つお金の情報を無料でお届けしています!