実家の酒屋を自らM&A!異色の経歴を持つ公認会計士の半生

株式会社Loco Partners 経営管理部 経理グループ General Manager/公認会計士 川口 達也(かわぐち たつや)氏

1988年、東京都世田谷区の酒屋「川勇商店」の長男として生まれる。早稲田大学商学部卒業。

2012年に新卒で株式会社ディー・エヌ・エー(以下ディー・エヌ・エー)に入社。新卒入社初の経理部配属となり、月次決算業務・IFRSによる連結開示業務・会計システム入替・固定資産システム導入・各種BPR業務等に従事。

また、株式会社ディー・エヌ・エーの社員として業務を行いつつ、2012年11月には公認会計士の試験に合格。

2016年、公認会計士資格を取得したことをきっかけに将来のキャリアプランを再考し、2017年2月より株式会社Loco Partners(ロコパートナーズ、以下Loco Partners)に入社。

異色の経歴を持つ公認会計士、その誕生秘話

川口さんが会計士になった理由は何ですか?

最初のきっかけは、高校2年の時に行った進路相談ですね。

 

私は祖父の代から続く酒屋の長男ということもあり、父に「酒屋を継いだ方が良いのか」と聞いたところ、「小売に未来は無いから、資格を取れ」と言われました

 

昔はお酒を扱えるお店の距離規制などがあり、お酒を売る免許の取得が難しく、競合も少なかったので儲かっていたんですよね。しかし、ちょうど当時は規制緩和によりコンビニやスーパーといったライバルが増えてきた時代で、私もお客さんが減ってきていることは子供ながらに感じていたので、父の言葉には驚きながらも納得できました。

 

高校は割と進学校に通っていたので、資格を取るなら国家三大資格を目指そうと思いました。その中で、医師は文系だったので断念し、弁護士は人の争いやトラブルの中に身を置かなければいけないイメージがあり、それが面倒くさそうに思えたので、実家が商売をしていたことからも会計士を目指すことを決めました。

監査法人ではなく、事業会社で働きはじめた理由は何だったのですか?

監査法人で働く時に、ビジネスの構造に歪みがあると感じたからですね。

 

大学時代、ゼミの恩師から課題図書として渡された『変わる会計、変わる社会』という本に、「監査人はクライアントから金銭を貰っているのに、クライアントの決算書の正しさを証明する」というビジネスの構造のジレンマが書いてありました。

 

私はその歪んだ構造の中で働くことに疑問を持ったのと、会計士の勉強をしている中で私より優秀な人はたくさん見てきたので、その人たちとの競合を避けることも考えて事業会社への就職を決意しました。

 

ちょうど就職活動をしていた時は、会計士の1次試験に合格していたこともあり知識は備わっていたので、応募企業の有価証券報告書を見て会社の状況を分析するのにハマってました。

 

そんな中、たまたま合同説明会で出会ったディー・エヌ・エーは、まず最初のWebテストが異常に難しかったのが印象的でした。

 

完全に落ちたと思っていたところ、幸運にもWebテストに合格できたので、そこでようやく財務諸表を見てみたんですよ。すると、無借金経営であるうえに会社の収益面も非常に良く、モバイルゲーム事業でどうやってこの利益を出しているのか興味深くなりました。

 

途中の選考やグループディスカッションも革新的で面白く、そのまま内定を頂けたので、ディー・エヌ・エーに入社をさせて頂くことになりました。

 

「実家の酒屋をM&A」するまでに至った道のり

ご実家のM&Aに至った経緯や、その際に気をつけたことを教えてください

ディー・エヌ・エーに入社してからも、長男として実家の酒屋をどうにかしたいという気持ちは常に持っていたんですよね。

 

2016年に会計士の修了考査を合格し、ほぼ公認会計士の資格を手中におさめてからは、具体的に実家の再建を考えるようになり、その一方で、組織内会計士としてのスキルを上げるためにも転職を決意しました。

 

そんな中、現職のLoco Partnersは日本旅館との関わりも大きく、「日本旅館×日本酒」で事業的にも実家の再建のヒントになる気がしたのと、ベンチャーで経理・法務・総務・労務などバックオフィスの幅広い業務を任せてもらえて副業がOKということもあったので、2017年2月に入社をさせて頂きました。

 

そこから実際に空き時間で実家の事業再建を始めたんですが、得意分野である経理の内製化をする一方で、酒屋にとって生命線である仕入れの充実のため、蔵元さんとのコネクションを作る必要がありました。

 

そのために自身で酒蔵見学に行ったり、日本酒のイベントに参加したりして、日本酒に対する思いを会社のブログでも公表していたところ、『SAKETIMES』を運営する株式会社Clear(以下Clear)の生駒さんから実家のM&Aのお話を頂きました。

 

生駒さんは生粋の日本酒マニアで、日本酒に強いこだわりを持っていました。Clearで『SAKE100』というプレミアム日本酒ブランドとECサイトを立ち上げ、自社で企画し酒蔵と共同開発した日本酒を全国に広めるために、私の実家が持つお酒の販売免許が必要とのことでした。

 

お酒の販売免許についての補足説明をすると、一般免許があれば酒屋としてお酒を販売でき、通販免許があればお酒の通販ができます。しかし、通販免許は酒税法で細かい規制があり、大手メーカーのような醸造量の多いお酒は販売できないようになっています

 

一方、お酒の販売免許には「ゾンビ免許」というものがあり、1989年以前に取得したものは通販でも制限なく販売ができるようになっています。ちなみに、Amazonがお酒を販売できているのも、子会社がゾンビ免許を取得しているからです。私の実家も、まさにゾンビ免許を持っている酒屋でした。

 

M&Aの提案を受けたのが実家ということもあり、「実家を売る」ということに若干の抵抗があったのと、免許を渡すと自分たちで事業をする可能性も消えてしまうので、そこはすごく悩みました。

 

そんな中、生駒さんにSAKE100の第一弾商品「百光」という日本酒を飲ませて頂いたんですが、それがもうあまりにも美味しくて。酒蔵の家系というわけでもないのに、ゼロからこれだけ美味しい日本酒をつくる生駒さんが現れて、「これはちょっと敵わないな」とその瞬間思ってしまいました。

 

M&Aの話も、正直ゾンビ免許を取るだけだったら私の実家よりも、すでに店を畳んだ人たちから免許だけ譲って貰った方が断然楽だったんですよ。

 

なのに、なぜうちの免許にこだわるか聞いたところ、「川勇商店さんの50年の歴史を私は背負いたいんです」と言って頂けたんです。

 

「お付き合いをする酒蔵はどこも長い歴史と強い思いを持ってます。私も思いだけでなく、歴史を背負っていきたい」生駒さんはそう言って、祖父の代からの歴史を持つ川勇商店を提携先として希望していました。

 

あと、これは私がLoco Partnersで働く中で感じたことですが、日本の高級ホテルのレストランでは、一杯3,000円のワインはあるのに、同じ価格の日本酒は無いんですよね。

 

ここは日本なのに、日本酒のプレゼンスが低いっていうのは、個人的にすごく勿体無いと思っていて、その現状を疑問に感じています。

 

生駒さんのつくるプロダクトや強い気持ちには、そうした市場に一石を投じて、もっと日本酒の価値を高められる可能性を感じられたので、それをもっと世に広めるために協力ができればと思い、最終的にM&Aに応じることを決めました。

 

実際にM&Aをする際に気をつけたことは、川勇商店の譲渡に向けたスキームの構築や、譲渡のタイミングですね。

 

当時、父は「あと5年は酒屋として仕事を続けたい」と言っていたので、M&Aでお酒の販売免許を譲渡してからも、父が酒屋としてお酒の小売ができるようにする必要がありました。

 

そのためには新しい免許が必要でしたが、同じ場所で免許を2つ所有できないなどの細かいルールがあったので、酒税法や会社法、税法(特に法人税・相続税)に詳しい士業の方々にもご協力頂き、スキームを構築していきました。

 

試行錯誤の結果、まず新しい会社を立ち上げ、そこで免許を新たに取得した後に、川勇商店をゾンビ免許と共にClearさんへ譲渡し所在地を変更してから、実家の場所へ新会社・新免許を移転するという方法をとることにしました。

 

こうしてClearさんは、子会社の川勇商店から『SAKE100』でのEC販売が可能となり、父も新しい会社の免許があるので、引き続き酒屋としてのキャリアを続けることができるようになりました。

 

会計士だからこそ得られる、仕事の魅力とは?

会計士の魅力とは何ですか?

会計士は色んな企業のビジネスモデルをたくさん見る機会に恵まれています。

 

実際に財務状況を調べて成功している会社のビジネスモデルを見られることは、ものすごいチャンスだと思うんですよ。

 

また、会計士は資格を持っているので、ある意味食いぶちはなくならないというセーフティーネットがあります。

 

そのセーフティーネットがあって、会社の成功パターンもたくさん見られる分、他の人よりもチャレンジしやすい環境にあるのが会計士の魅力だと思います。

 

さらに、持っている専門性を掛け合わせると、その人の市場における希少性がどんどん上がっていきます。

 

私も新卒でディー・エヌ・エーに入ってITビジネスを学び、実家の酒屋の事業再建でお酒のビジネスに携わったことで、会計士×IT×お酒という掛け合わせができるようになりました。

 

会計士という専門性を既に持っていれば、他にもう一つ、二つと専門性を増やすことで、自分自身が世の中にとって希少価値の高い人材になれるので、そこもまた魅力ですよね。

 

今後、川口さんが会計士の経験を活かしてやりたいことは何ですか?

将来的には「飲める公認会計士事務所」を作って、ベンチャー企業や酒蔵を、これまでの経験や人脈を使ってサポートしていきたいと考えています。

 

先述した実家のM&Aの際に、日本酒好きの士業の方々と一緒に仕事をさせてもらったことで、日本酒に関わるビジネスにますます興味を持つようになりました。

 

そこで日本酒の産業構造を調べてみると、多くの酒屋や酒蔵は、後継者不足やECサイト・競合店の増加などで苦しんでいることを知りました。また、日本酒業界に特化したコンサルタントも少なく、アナログな会計を行っているところも多く見られます。

 

多くの人々を熱狂させる「日本酒」の伝統文化を廃れさせたくないという思いを持った士業の方々と交流ができたので、今後はその人たちとタッグを組みながら、事業承継やM&A、会計のIT化などのコンサルを通じて日本酒文化の発展をサポートしていきたいと思っています。

 

 

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株式会社Loco Partners

代表取締役社長:篠塚孝哉

事業内容:一流ホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux(リラックス)」の運営

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