今回は、M&A仲介サービス大手の株式会社ストライクが行った「経営者の資産運用に関するアンケート」をもとに社長の資産運用・事業承継の実態をご紹介していきます。
アンケートでは経営者309名に対して、2019年に「増やしたい資産」「減らしたい資産」や「妻に残したい資産」などをリサーチ。また、経営者の奥さんに対してもアンケートを実施し、「夫に残してほしくない資産」等、経営者夫婦間の資産に対する考え方も調査しています。
アンケート対象
会社経営者:309人
性別:男性100%
年齢:50〜54歳(22%)、55〜59歳(29.8%)、60歳以上(48.2%)
地域:全国
結婚:既婚100%(子供あり89.6%、子供なし10.4%)
そもそも社長はいくらお金を持ってるの?資産額を大公開!
「経営する会社の株式及び自宅以外の資産(生命保険含む)の合計金額はどのくらいか?」と質問に対して、過半数の経営者が合計5,000万円以上の資産を持っていると回答しました。
最も多かったのは、「5,000万円〜1億円未満(23.3%)」。次いで「1,000万円〜3,000万円未満(19.7%)」「1億円〜3億円未満(17.2%)」「1,000万円未満(15.5%)」と続きます。
最も資産額の大きい選択肢である10億円以上という経営者も2.6%おり、個人によって資産額は大きく差があることが見受けられます。
なお、上記の金額は自社株式や自宅を加味していないため、実際の資産合計額は更に大きいことが予測されます。
2019年、社長が注目している資産運用方法はこれ
今年、最も増やしたい資産は現金!2位は上場株式
アンケートによると、2019年の資産運用で増やしたい資産(複数回答)は、1位の「現金・預金(69%)」に次いで、「上場株式(21%)」、「不動産(賃貸用・投資用)(19%)」、「投資信託(12%)」と続きました。
ストライクの荒井邦彦社長は、「経営者の現金信奉が根強いことが伺える」と見ています。
米国と中国の貿易摩擦などを背景に18年終盤から19年初にかけて株式相場が不安定になることもありましたが、なお2割以上の経営者が2019年も引き続き上場株式を増やしたいと考えているようです。
その他、投資信託や外貨預金なども増やしたい資産として一定数が回答。経営者の間で現金重視の動きは根強いものの、長引く国内の超低金利を受けて、金融商品などで運用益を得ようとする動きがあることがわかります。
今年、最も減らしたい資産は生命保険
一方、2019年に減らしたい資産として最も回答が多かったのは、「生命保険(死亡保険金額)」という結果に。
一部で法人税の節税効果を過度に高めた経営者保険を金融庁や国税庁が問題視していると報じられたこともあり、こうした動きが資産運用にも影響した可能性が考えられます。
経営者保険の問題とは
問題となっているのは「法人向け定期保険」別名、節税保険・経営者保険とも呼ばれます。
主に中小企業の経営者が契約し、保険料の支払いで課税所得を減らして、将来解約や役員死亡の際に保険金が支払われる保険商品です。
経営者にとって、節税効果があることや、利益をあげて税金を払うよりも保険に入って返戻金を受け取った方が手元に残るお金が増える等のメリットがあります。
しかし、生保各社が同様の商品を相次いで投入し、死亡時の保障という本来の目的から外れて、過度な節税PRが横行。この流れを金融庁が問題視し、一部商品の見直しを生保各社に求めています。
社長が家族に残したい資産と、家族が残して欲しい資産はこんなに違う!
ストライクでは、社長が家族(奥さん)に残したい資産(2019年1月)と奥さんが残して欲しい資産(2018年8月)についての質問も実施。
家族に残す資産に関して、相互の考えにミスマッチがあることが判明しました。
社長が家族に残したい資産は、現預金・不動産・会社
「自分がなくなった時に奥さんに残したい資産は?」との質問では、1位の現預金に続いて、「不動産」「経営する会社の株式」がそれぞれ全体の4割を超える結果になりました。
家族が社長に残してほしい資産は、現預金・保険金・不動産
一方、社長の奥さんが残して欲しい資産は、「現金・預金」で全体の約9割を占める結果に。次いで「保険金」「居住用不動産」「国債などの有価証券」が続き、「経営する会社(会社の株式)」と答えた人はわずか15%にとどまり、事業を家族に残したいと考える経営者にとっては残念な結果となってしまいました。
さらに、社長の配偶者に「夫に残されて困る資産は?」と聞いたところ、1位が「会社の株式」と回答。
ストライクの荒井社長は、「家族の残す側と残される側での希望の相違が浮き彫りとなったが、これが現実といえそうだ」と話しています。
リタイアしたら会社はどうする?注目される事業継承について
事業承継は経営者にとって重要な課題となっていますが、アンケートによると全体のおよそ40%が「事業承継についてこれまで全く検討したことがない」または「事業承継を検討したことがあるが、結論はまだ出ていない」といった回答をし、また「家族・親族に承継する予定だが本人の了解を得ていない」という経営者が約14%となりました。
団塊の世代の大量退職などで企業の後継者不在が深刻となる中、事業をどう次代に引き継いでいくかについて、家族同士の意思疎通を早めからしておく必要がありそうです。
特に経営者の高齢化が進む中、事業承継問題は引き続き経営者の悩みのタネとなるでしょう。会社経営者・役員の方は、ご家族の方と意見の食い違いがないように早めから相談しておく必要がありそうですね。
暮らしに役立つお金の情報を無料でお届けしています!