2018年は、武田薬品のシャイアー買収が大きなニュースとなりました。
国内だけではなく、世界では武田薬品に代表される巨額M&Aが多々行われています。
そこで今回は、2018年のM&A買収金額ランキングを世界TOP10・日本TOP3をそれぞれご紹介します。
買収金額だけではなく、どういった狙いでM&Aに踏み切ったのかも解説しています。業界全体の勢力図が大きく変わるM&A、世界では一体どのような案件があったのでしょうか?
M&Aによる巨額買収ランキング2018〜世界編〜
第10位 中国三峡集団(中国)
- 被買収企業:エネルギアス・デ・ポルトガル(ポルトガル)
- 賠償金額:296億ドル
- 買収先業種:エネルギー
- 発表日:2018年5月
中国の国営電力会社である中国三峡集団は、296億ドルでポルトガルの電力会社最大手のエネルギアス・デ・ポルトガル(EDP)を買収すること発表しました。
ポルトガル最大手であるEDPは、世界各地に10を超える拠点を持ち、同時に風力発電に強く世界で第4位となるほど大きな会社です。そんなEDPを買収することで、山峡集団は海外市場への拡大を目指すことが狙いのようです。
山峡集団の一株あたり3.26ユーロでの株式公開買い付け(TOB)を提案しましたが、EDPはそれを自社の価値に見合った額ではないと拒否しています。
第9位 マラソン・ペトロリアム(アメリカ)
- 被買収企業:アンデバー(アメリカ)
- 賠償金額:313億ドル
- 買収先業種:エネルギー
- 発表日:2018年4月
第9位となったのは、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムが同業のアンデバーを313億ドルでの買収です。この合併により、アメリカ最大の石油精製会社が生まれることになります。
マラソンの狙いとしては、シェールブームや米国や中南米の石油需要の高まりによる石油価格の上昇を見越して、同業の石油会社を買収しておくことでライバル会社に対抗しようとしているようです。
マラソンは、アメリカの中西部やメキシコ湾岸などの東側を中心に事業を展開し、アンデバーをアメリカ西部での事業を行なっていることから、重なりがないので地理的に見ても都合が良いことが分かります。
第8位 エーオン(ドイツ)
- 被買収企業:イノジー(ドイツ)
- 賠償金額:385億ドル
- 買収先業種:エネルギー
- 発表日:2018年1月
第8位にランクインしたのは、ドイツ電力大手会社のエーオンがRWE傘下である同業のエネルギー会社イノジーの買収です。
メルケル首相が原子力・化石燃料から再生可能エネルギーへの転換へと方針を決めたことをうけ、国内卸売電力価格が下落しました。
そうしたことが、ドイツでもっとも再生エネルギーへの投資が多いエーオンとドイツ最大の発電企業であるイーオンとの合併へとつながりました。
イノジーは海外での太陽光発電事業を行なっており、その点もエーオンにとっては魅力的に見えたのかもしれません。
第7位 アベルティスSPV(スペイン)
- 被買収企業:アベルティスSA(スペイン)
- 賠償金額:415億ドル
- 買収先業種:インフラ
- 発表日:2018年3月
アベルティスはバルセロナに本拠地を置く、交通・通信インフラ事業を行う大手会社です。
イタリアのインフラ管理を行うアトランティアとスペインの建設会社ACSが同時期にアベルティス買収を発表しました。結果として買収争いとはならず、アトランティアとACSの両者による共同買収となりました。
アトランティアにとっては、アメリカ、オーストラリア、ドイツなどの新たな土地へと参画できるようになり、またそれが買収の狙いだったようです。
第6位 コムキャスト(アメリカ)
- 被買収企業:スカイ(イギリス)
- 賠償金額:484億ドル
- 買収先業種:メディア
- 発表日:2018年2月
コムキャストは米大手メディア会社、スカイは英有料放送局です。
コムキャストはヨーロッパ方面で展開するスカイを傘下にすることでグローバルにメディア事業を進めようとしています。
この買収が進む前は、米大手エンターテインメント会社の21世紀フォックスがスカイを買収する予定でした。
第5位 Tモバイル(アメリカ)
- 被買収企業:スプリント(アメリカ)
- 賠償金額:586億ドル
- 買収先業種:携帯電話
- 発表日:2018年4月
アメリカの携帯キャリアで第4位のTモバイルが、携帯キャリア第3位のスプリントを買収してアメリカ最大級となる携帯キャリアが生まれました。
合併の目的は、大きく差をつけられているアメリカ第1位と第2位のAT&T、Verisonに対抗し、次世代の5Gネットワーク構築を加速させることです。
第4位 エナジー・トランスファー・エクイティ(ETE)(アメリカ)
- 被買収企業:エナジー・トランスファー・パートナーズ(ETP)(アメリカ)
- 賠償金額:618億ドル
- 買収先業種:エネルギー
- 発表日:2018年8月
エナジー・トランスファー・エクイティ(ETE)は、ニューヨーク州オールバニーに本社を置く、エネルギー事業を行う会社です。
今回買収したエナジー・トランスファー・パートナーズ(ETP)は、ETEの子会社の一つで、天然ガス集積・輸送パイプライン・テキサス州にある貯蔵施設3か所を保有していました。
買収によって、規模の拡大・保有資産の地域分散・コスト削減が見込まれています。
第3位 シグナ(アメリカ)
- 被買収企業:エクスプレス・スクリプツ・ホールディングス(ESRX)(アメリカ)
- 賠償金額:670億ドル
- 買収先業種:ヘルスケア
- 発表日:2018年4月
シグナはアメリカの医療保険会社です。買収したのは、薬剤給付管理会社のエクスプレス・スクリプツ・ホールディング(ESRX)。保険会社の代わりに製薬会社と価格交渉をして、値引きを引き出す役割を担う会社です。
ESRXの価格交渉力によって医薬品の価格が安くなれば、最終的に支払う保険金額が減少し、シグナの収益改善が見込まれています。
アメリカ国内では、GAFAの一角を担うAmazonのヘルスケア業界参入に備え、医療業界の再編が加速中です。
第2位 武田薬品工業(日本)
- 被買収企業:シャイアー(アイルランド)
- 賠償金額:768億ドル
- 買収先業種:ヘルスケア
- 発表日:2018年4月
日本の武田薬品がアイルランドのシャイアーを買収し、製薬会社売上高ランキングでTOP10入りを果たしました。
買収によって、武田薬品は「がん」「消火器」「精神神経」の3つの重点領域の他に、第4の柱としてシャイアーの強みである「希少疾患」の製品を加えることができます。
ただし買収の成否は「新薬を創出できるか」にかかっていると言われており、今後の動向が注目されます。
第1位 ユニリーバNV(オランダ)
- 被買収企業:ユニリーバPLC(イギリス)
- 賠償金額:906億ドル
- 買収先業種:生活必需品
- 発表日:2018年3月
ユニリーバは、1930年にイギリスの石鹸会社リーバ・ブラザーズと、オランダのマーガリン会社マーガリン・ユニが経営統合して生まれた会社で、世界最大の食品・日用品メーカーです。
2018年まではイギリスとオランダの両方に別組織の本社がありましたが、アメリカのクラフト・ハインツからの買収提案によって、オランダのロッテルダムに本社を一元化することを決定しました。
このM&Aにより会社の構造がシンプルになるため、長期的な業績と株主価値を向上が期待されています。
M&A買収企業ランキング2018〜国内編〜
第3位 富士フィルムホールディングス
- 被買収企業:ゼロックス(アメリカ)
- 賠償金額:6,659億円
- 買収先業種:卸売・サービス
- 発表日:2018年1月
2018年1月に富士フィルムHDがアメリカゼロックスの買収を発表しました。
しかし、ゼロックス大株主のカール・アイカーンやダーウィン・ディーソン氏が買収に反発し、2月に買収差し止めを求めて訴訟。4月に、裁判所が買収手続きを禁止する事態に発展しました。
もともと、富士フィルムとゼロックスは1960年代から関係を持っていたが、その関係が破綻する事態となっています。
2019年2月に入り、富士フィルムHDの古森会長は、買収が難しくなったと発言し、事実上頓挫したといえる状況です。
第2位 ルネサスエレクトロニクス
- 被買収企業:インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(アメリカ)
- 賠償金額:7,330億円
- 買収先業種:ハイテクノロジー
- 発表日:2018年9月
半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、アメリカ同業界のIDTを7,330億円で全株取得し完全子会社化することを正式に発表しました。
この金額は、国内半導体メーカーの買収額としては過去最大級のもので、自動車やIoT分野の強化を狙いとしています。
手続きは2019年上半期を目処に行われ、統合によって営業利益275億円の効果を発揮すると見込まれています。
第1位 武田薬品工業
- 被買収企業:シャイアー(アイルランド)
- 買収金額:6兆8,000億円
- 買収先業種:ヘルスケア
- 発表日:2018年4月
世界第2位の買収案件となった武田薬品によるシャイアーの買収は、2018年度の国内No.1案件となりました。
2018年のM&A市場は8年間で過去最高を記録
2018年は、合計781件のM&Aが行われ、合計金額は13兆7860億円に登りました。2011年以降、件数・取引金額ともに最高を記録する結果となっています。
さらに1000億円以上のM&Aも最高水準であった2016年の件数と同じ20件をマーク。M&A市場は大きな盛り上がりをみせました。
2019年に入り、製薬大手のブリストル・マイヤーズ・スクイブ社がセルジーン社を8兆円という超巨額買収で世界4位の製薬企業へ名乗り出るなど、ビッグニュースが飛び出しました。
その後、医薬品メーカーのイーライリリーがバイオ医薬品企業のロクソ・オンコロジーを約9000億円で買収するなど製薬業界全体でのM&Aが盛り上がりを見せています。
変革が求められる製薬業界や、その他の業界のM&Aに2019年も注目したいところですね。
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