2019年のM&A市場を振り返ってみたいと思います。
2019年には、アサヒグループホールディングスが豪ビール大手を1兆円以上で買収したり、ヤフーのZOZO子会社化など、大型案件のニュースが目立った年になりました。
過去の推移からみても、件数・金額ともにM&A市場が盛り上がった1年といえます。
そこで今回は、去年1年間のM&Aは過去と比較してどのような位置付けにあったのか、ご説明していきます。
なお、本記事の情報は、上場企業が義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介大手のストライク(M&A Online)が集計したものを参考しています。
2019年のM&A市場の動向|1000億円超えの国内案件続出!
2019年のM&A総数は前年を59件上回る「841件」と4年連続で増加し、08年(870件)以来の高い水準となりました。年間800件台に乗せるのは09年以来10年ぶりの出来事です。
特徴的な点としては、
- アサヒグループホールディングが豪ビール大手を約1兆2000億円で買収
- 昭和電工が9640億円を投じる日立化成を子会社化
- ソフトバンクが4565億円でヤフー子会社化
など国内の大型案件が注目されました。実際、国内企業間で1000億円を超える大型案件は前年1件に過ぎなかったのに対し、2019年の場合は9件に急増しています。
取引金額が1000億円を超える大型M&Aはクロスボーダー(国際間)案件を中心に22件あり、件数は前年(20件)と大差なかったものの、その内容に大きな変化が見られる結果となりました。
M&Aの取引総額は8兆1201億円で、08年からの過去12年間では18年(13兆7278億円)、16年(12兆円1578億円)に次ぐ3番目となっています。
取引金額は、08年当時の1.6倍に膨らみましたが、18年は武田薬品工業がアイルランドの製薬大手シャイアーを6兆円以上で、16年にはソフトバンクが英半導体設計会社アームを約3兆3000億円で買収し、取引金額を13兆~12兆円台に押し上げたことが背景にあります。
こうした要素を考慮すれば、2019年のM&Aは件数だけではなく、金額面でも過去最高圏内にあるといえそうです。
2019年のM&Aを象徴する3つのトピックスを紹介!
2019年のM&A動向を象徴する重要トピックスをご紹介します。これを読んでおけば、2019年のM&A市場の全体感が理解できると思います。
クロスボーダー案件ではオーストラリアの台頭が目立つ
取引金額が100億円を超えるM&A総数は68件で、前年より8件増えました。68件中、クロスボーダー案件は40件と約6割を占めています。
対象企業の国籍では豪州の台頭が目立ちます。
100億円超のM&Aで豪州案件は7件(売却1件含む)を数え、全体の1割強にあたる結果となりました。
人口増などを背景に市場拡大が見込まれるオセアニア地域での事業基盤を強化する動きとみられています。
業種別では、製薬関連のM&Aが活性化
業種別では製薬関連のM&Aが活発化しています。
アステラス製薬が遺伝子治療分野強化に向けて米バイオ企業のオーデンテス・セラピューティクスを3200億円で買収を決めたのをはじめ、大日本住友製薬、旭化成、富士フイルムホールディングスが米欧企業を相手に大型M&Aを相次ぎ発表しました。
また、アジアでは、大正製薬ホールディングがベトナムの医薬品会社を取り込みました。
ソフトバンクのM&A案件が主役に
M&A金額ランキングで、アサヒグループ、昭和電工に続く3位、4位はいずれもソフトバンク絡みです。
ソフトバンクはポータルサイト大手のヤフー(現Zホールディングス)を子会社化(19年同6月)し、次にそのヤフーは衣料通販サイト大手のZOZOを子会社化(11月)しました。
さらに、ヤフーと無料通話アプリ大手のLINEが昨年11月、20年10月に経営統合することで基本合意を発表し、世間をにぎわせました。
ソフトバンクが昨年のM&A市場で主役を演じたといえそうです。
このようにM&A件数・金額ともに過去最高クラスの結果となった2019年。とくに国内での大型案件が目立つ結果となりました。
この勢いは2020年も続くのでしょうか?お金のカタチでは、毎月1回M&A市場の動向を発表していますので、次回の掲載もぜひお楽しみにしてください。
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