2020年4月M&A動向|新型コロナウイルスがM&A業界に与える影響とは?

経営者

2020年4月のM&A(企業の買収・合併)動向をお知らせします。

2020年3月から新型コロナウイルスが拡大し、経済全体が大きく落ち込んだ4月。緊急事態宣言で休業要請を受けた事業者なども多く、新型コロナが業績に与えたダメージも少なくありません。

2020年初から盛り上がりをみせていたM&A市場にはどのような影響があったのでしょうか。

M&Aの件数・取引金額などから市場全体の動きを解説していきたいと思います。

なお、本記事の情報は、全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)を、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計しています。

2020年4月のM&A市場は新型コロナで急ブレーキ

新型コロナウイルスの影響で経済縮小する中、好調だったM&A市場にも大きくブレーキがかかりました。

年明けからのM&Aの動きを振り返ってみましょう。

2020年1月〜3月までは11年ぶりの高水準

2019年は、アサヒグループによる豪大手ビール会社の巨額買収(1.2兆円)、ヤフーによるZOZOの子会社化などの案件をはじめ、M&A件数・金額ともに過去最高水準の盛り上がりをみせました。

そうした動きは2020年に入ってからも衰えず、1月は2009年以来の取引件数を達成、2月も過去10年間で2番目の件数となりました。

新型コロナウイルスの影響が危惧された3月も2009年ぶりの高水準をマークし、2020年第一四半期全体では前年同月比10件増加という結果に。

2019年からのM&Aの波を引き継ぐカタチになりました。

4月は件数、金額ともに前年割れ

しかし、4月に入り、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きくみられました。

2020年4月のM&A件数は50件で、前年比で17件マイナス。4月としては2016年以来の低い水準となっています。

また、前月(3月)に比べても36件と大幅な減少になり、上昇の流れが一転、下降局面を迎えました。

案件の資産査定に遅れなどが生じている他、緊急事態宣言の延長を受けて案件着手にも様子見の状態が続いていることが予想されます。

さらに4月のM&Aは、取引金額(買収額)も例年に比べて小さく、100億円以上の取引は1件、10億円以上は4件に止まりました。

金額開示された案件自体が少ないということもあり、4月の買収額全体は前年同月比で90%減少となりました。

2020年4月のM&A取引金額ランキング

案件金額
1東海カーボン、炭素黒鉛製品メーカーの仏Carbone Savoie を子会社化197億円
2アステラス製薬、創薬ベンチャーの英ナンナ・セラピューティクスを子会社化90億円
3野村総合研究所、証券取引管理などバックオフィス業務の豪AUSIEXを子会社化60.2億円
4タケエイ、バイオマス発電事業の市原グリーン電力(千葉県市原市)を子会社化53億円
5SHIFT、PCリユース等を手がけるエヌエスシーを子会社化9億円

金額トップに位置したのは、炭素業界の大手東海カーボによるフランスの炭素黒鉛製品メーカーCarbone Savoieの買収案件で、金額は197億円。

Carbone Savoieは、120年の歴史をもち、アルミ精錬用カソード、特殊炭素製品、カーボン等の製造を手がけており、主要商品の精錬用カソードは、自動車・航空機の軽量化ニーズにこたえる製品として今後成長が見込まれている分野です。

続いたのが、アステラス製薬によるイギリスバイオベンチャーナンナセラピューティクスを約16億円で買収した案件。買収後も研究進捗によって最大で約90億円の追加支払いを行います。

アステラス製薬ではミトコンドリアによる創薬分野に力を入れており、研究開発(R&D)を加速させるため、ミトコンドリア関連疾病ベンチャーのナンナ・セラピューティクスの買収に至りました。

コロナ禍でもM&Aの動きがみられた業界は?

業種別で動きが目立ったのが「リユース(中古品)関連」のM&Aです。

中古トラック買取・販売TRUCK-ONEによる東南アジア向け中古トラック販売SUN AUTOの子会社化、中古品のネット販売・買取を行うマーケットエンタープライズによる旺方トレーディングの中古農機具買取販売事業の取得など、合計4件のM&Aが成立しました。

また、一時期、スマホで商品を撮影するだけで買取が完了するとして世間を騒がせた中古品即時買取アプリ「CASH」でも動きが。

その爆発的なヒットから間も無く、DMMが約70億円でバンクを子会社化したことでも記憶に新しいのではないでしょうか。

この度、ネットリユース事業を手がける株式会社BuySell TechnologiesがこのCASH事業を取得。今後は、法人向け買取サービスの強化や買取商材の拡充を目指すということです。

【コラム】M&A大手ストライク、2020年8月期に200人体制へ

M&A仲介大手のストライクは、2022年8月期に社員を200人体制に拡大する方針を打ち出しました。

主にコンサルタントを中心に増員し、事業承継や事業の「選択と集中」などを目的とした中小企業経営者のM&Aニーズに応えるのが狙いです。

新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、企業が新規採用を抑制する動きが広がっているが、ストライクは「不景気のときこそ優秀な人材を獲得するチャンス」とみて、積極的な採用を続ける方針。荒井邦彦社長は「優秀な人材であれば計画を超過してでも採用を優先したい」としています。

ストライクは20年8月期末までにコンサルタントを121名、22年8月期までに168名まで増やす見通し。人員強化により、拡大するM&Aの需要に十分対応できる体制をつくります。

帝国データバンクによると、全国の社長の平均年齢は2019年時点で59.9歳となり、1990年時点から6歳も高齢化しています。

近年は世代交代が進まないまま社長が高齢を迎え、事業承継できずに休廃業・解散、倒産に追い込まれるケースも目立ちます。

全国各地でM&Aの需要が増えていることから、こうした経営者のニーズに応えるため、ストライクは全国のオフィスで人員を強化していく計画です。

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