2020年5月のM&A動向をお知らせします。
新型コロナウイルスの影響をうけ、年明けから好調だったM&A市場も4月に入ってから勢いは鈍化。
4月M&Aは、2016年以来の低水準に。上昇局面が一転、下降する状況へと変わりました。
そして迎えた5月。緊急事態宣言延長が発令される中、M&A市場はどのような動きをみせたのでしょうか?
本記事では、5月のM&A件数やM&A取引金額ランキングをご紹介していきます。
なお、こちらの情報は、全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)を、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計しています。
2020年5月のM&Aは大幅な持ち直し!
5月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比10件増の69件でした。
これは、5月として過去10年で2018年(73件)に次ぐ2番目の高水準となります。4月比では19件増える結果に。
新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞する中、4月に続いて5月も減少傾向が続くと見られていましたが、大幅な持ち直しに転じています。
1~5月のM&Aの総計は351件と前年水準(348件)をキープ。事前に準備していた仕掛かり案件が成立したとみられますが、先行きには不透明感も漂っています。
M&A件数こそ増えたものの、買収金額は10億円以上が7件(4月は4件)と、2カ月連続で1ケタにとどまりました。
海外を中心とする大型案件もほぼ姿を消し、国内案件も小型化が顕著で、コロナ感染を受けてM&Aへの慎重姿勢がうかがえます。
M&Aは取引成立まで最低でも半年程度かかるため、3月以降、新規案件に様子見が広がっていることから、夏場以降、案件が枯渇する懸念もあります。
5月のM&A取引金額ランキング!TOP2案件の詳細を解説!
【2020年5月M&A取引金額ランキング】
1 | ニチイ学館、MBOを実施し非公開化(約990億円) |
2 | SBS HD、東芝傘下の東芝ロジスティクス(川崎市)を子会社化(199億円) |
3 | 西本Wismettc HD、マグロ・サーモン輸入加工の仏COMPTOIRS DES 3CAPSを子会社化(42.6億円) |
4 | No.1、エフティグループ傘下で情報機器開発のアレクソン(大阪市)を子会社化(22.5億円) |
5 | 昭和産業、米油大手のボーソー油脂(東証2部)をTOBで子会社化(15.9億円) |
6 | 日本アンテナ、台湾系中国企業でアンテナ製造の蘇州華広電通(蘇州市)を子会社化(14.1億円) |
7 | 丸大食品、「神戸プリン」「らくらくホイップ」製造のトーラク(神戸市)を子会社化(12億円) |
2020年5月の100億円を超える案件は以下の2件。100億円以上の大型案件は今年に入り、1月4件、2月8件だったが、3月2件、4月1件で推移。海外M&Aが低調なことが背景にあります。
ニチイ学館、MBOを実施し非公開化(約990億円)
5月の金額トップはニチイ学館のMBO(経営陣が参加する買収)案件。米投資ファンドのベインキャピタルがニチイ学館にTOB(株式公開買い付け)を行い、非公開化します。TOB期間は5月11日~6月22日。買収金額は総額約990億円。
ニチイ学館は1968年に創業し、2002年に東証1部に上場。
祖業の医療事務受託事業と介護事業で業界首位に立ちます。しかし、人手不足が深刻化する中で、成長分野への展開などを進めるためには非公開化が望ましいと判断したようです。
SBSホールディングス、東芝グループ子会社化(199億円)
SBSホールディングスは199億円を投じて、東芝グループの物流を担う東芝ロジスティクス(川崎市)の株式66.6%を取得し子会社化。およそ200億円で10月1日に取得すると発表しました。
SBSホールディングスは、東芝ロジスティクスを傘下にすることでグループ売上高は3000億円半ばへ達し、業界10位へと躍進します。
5月は堅調、しかし夏以降のM&A案件はどうなるか
以上、今回は5月のM&A動向をご紹介してきました。
2020年5月は4月の件数減少を跳ね返し、過去10年の中でも高水準の盛り上がりをみせました。
ただし、海外M&Aが低調になってきたことから、M&A金額的には低い水準が続きそうな気配。
夏以降、現在の仕掛かり中案件が枯渇したタイミングでどれだけ企業のM&A活力が戻っているかが1つの目安になりそうです。
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