老後の生活費って一体いくらかかるの?定年までに貯金や資産はどれ位持っておけばいい?
人生の3大支出と呼ばれる、教育費、住居費、老後の生活費。
とくに、人生100年時代と呼ばれ、平均寿命がどんどん伸びている現代において、老後生活に金銭的な不安を感じている読者は多いのではないでしょうか?
年金が破綻!?退職金が減少傾向!といった情報も飛び回っていますが、ネガティブな情報に踊らされる前に、まずは老後に必要な最低生活費を数値で理解しておくことが大切です。
今回は、夫婦二人暮らし・単身世帯それぞれの老後の生活費と定年までに貯めておくべき貯金額、事前に知っておきたい年金知識などをご紹介します。
ご家庭の収入状況や定年後のライフプランに合わせて必要な金額は変わってきますので、1つの参考材料にして頂けると幸いです。
老後の平均的な生活費はどれくらい?実際の支出内訳は?
総務省の家計調査年棒(家計収支編)2018年によると、高齢者無職世帯の実際の毎月の支出と内訳は以下のようになります。
夫婦二人暮らしの場合
【高齢者夫婦二人暮らし(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦1組のみの世帯)の支出内訳】
食料 | 66,458 |
住居 | 13,625 |
光熱・水道 | 19,983 |
家具・家事用品 | 10,100 |
被服及び履物 | 6,065 |
保健医療 | 15,759 |
交通・通信 | 28,328 |
教育 | 20 |
教養娯楽 | 24,804 |
その他の消費支出 | 54,806 |
合計 | 239,947 |
夫婦二人暮らしの老後生活費の平均は239,947円/月でした。
一人暮らしの場合
【高齢者単身世帯(65歳以上)の支出内訳】
食料 | 35,477 |
住居 | 13,110 |
光熱・水道 | 12,973 |
家具・家事用品 | 5,573 |
被服及び履物 | 3,608 |
保健医療 | 8,469 |
交通・通信 | 12,672 |
教育 | 50 |
教養娯楽 | 16,105 |
その他の消費支出 | 30,586 |
合計 | 138,623 |
老後の一人暮らしの毎月の生活費は、138,623円でした。
ゆとりある生活に必要な金額は?【補足】
生命保険文化センターの令和元年・生活保障に関する調査によると、夫婦二人で老後生活を送る上で必要な最低日常生活費は、「22.1万円」という結果になりました。
また、経済的にゆとりのある老後生活を送るための費用を足した、ゆとりある老後生活費は、月額平均36.1万円となっています。
ゆとりある生活のための上乗せ額の使い道は、「旅行・レジャー」「趣味・教養」「日常生活の充実」「身内との付き合い」などが挙がりました。
実際の高齢夫婦の生活費が23.9万円なので、ゆとりある老後生活と比べると毎月13万円ほどの差があります。
老後に貰えるお金はいくら?
老後の生活費がざっくりと分かったところで、定年後に貰えるお金について説明していきます。
老後に貰える主なお金は、大きく2つ。
- 公的年金 (国民年金・厚生年金)
- 退職金
です。具体的にそれぞれいくら位貰えるのでしょうか?
①公的年金
公的年金には、20歳〜60歳未満の人が全員加入する「国民年金」と企業・公務員などに勤めている人が加入する「厚生年金」の大きく2つがあります。
厚生労働省のデータによると、国民年金と厚生年金のそれぞれの平均月額は以下の通りです。
- 国民年金・・・55,518円
- 厚生年金・・・144,903円
例えば、夫がずっと会社員、妻がずっと専業主婦の世帯では、夫が厚生年金、妻が国民年金として月約20万円を年金で受け取る計算になります。
【自分の年金受給額の調べ方】
上記はあくまで平均的な数字であり、実際の受給額は皆さんの就業状況や収入等によって大きく変動します。
自分が将来貰える年金額を知るには、毎月誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」が役立ちます。
50歳以上の方の場合は、ねんきん定期便に、将来受け取れる年金額が記載されています。
50歳未満の方は、ねんきん定期便に記載されているのは、過去の納付実績、加入状況のみ。受給額はわかりません。年金額を知りたい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」に登録すると将来の年金額が試算できます。
②退職金
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」によると、退職金の平均額は以下のようになっています。
【勤続20年以上、年齢45歳以上の人の平均退職金】
大学・大学院卒 | 高卒 | |
定年 | 1,983万円 | 1,618万円 |
会社都合 | 2,156万円 | 1,969万円 |
自己都合 | 1,519万円 | 1,079万円 |
早期優遇 | 2,326万円 | 2,094万円 |
定年退職の場合の退職金は、1,600万円〜2,000万円程度が平均的です。
退職金の規定は勤務先によって大きく異なりますので、制度について詳しくない方は就業規定などを確認してみてください。
老後に向けて準備しておくべき貯金額は?【シミュレーション】
それでは、実際に老後に備えてどれだけの貯蓄を用意しておけばいいのかシミュレーションをしてみたいと思います。
- 老後にかかる生活費
- 生活費以外の医療・介護費・住居リフォーム費等
- 受け取れる公的年金額
上記1~3を試算してみます。ここでは、わかりやすいように夫婦二人暮らし、夫は40年間会社員、妻は専業主婦、子供は既に独立済というケースで考えます。
①:老後にかかる生活費:7200万円
平成30年の日本人の平均寿命は女性87.32歳、男性81.25歳でした。
仮に65歳夫と60歳妻が25年間生きる場合で考えると、日常生活費は、
- 239,947円/月×12ヶ月*25年間=71,984,100円
ざっくり7,200万円が必要になります。
②:生活費以外にかかる費用:1,900万円
老後の生活費以外にかかる主な費用としては、医療・介護費が挙げられます。
厚生労働省によると、日本人の生涯医療費は男性2,584万円、女性2,822万円となります。
そのうち65歳以降にかかる医療費は約6割となり、男性1,450万円、女性1,703万円が高齢になってからかかる見込みです。
ただし、上記の全ての金額を手出しで払うわけではありません。健康保険の自己負担額は1割〜3割で、高額になった場合でも高額療養費制度によって自己負担額に上限が設定されています。
ここでは、仮に2割の金額を自分で支払うとして、約300万円を医療費として見込みます。
また、介護保険も医療費と同様に介護サービスの自己負担は健康保険の適用によって、1割〜3割までとなっています。
生命保険文化センターのデータによると、介護にかかった月々の費用は平均7.9万円、平均的な介護期間は59.1ヶ月だったので、合計すると約550万円、二人で1,100万円になります。
医療費・介護費で1,4000万円、その他の住宅リフォーム、修繕といった予備費を合わせて500万円、合計1,900万円を計上します。
③:受け取れる公的年金額:6,000万円
受け取れる年金額を平均受給額に当てはめて、受給期間
- (夫:厚生年金 144,903円+妻:国民年金55,518円)×12ヶ月×25年
で、合計約6,000万円となります。
①+②-③の結果は3,100万円
上記の結果、必要な差額は3,100万円という結果になりました。
退職金が2,000万円貰えるとしても、定年までに1,100万円程度は貯蓄をしておくと良いことがわかります。
もちろん、どういった老後を過ごしていきたいかによって受け取れる金額は異なってきます。
この計算結果を踏まえて、今一度、老後のライフプランについて考えてみてはいかがでしょうか?
老後生活を支える年金お役立ち制度
老後の生活を考える上で役立つ、年金にまつわる各種制度をご紹介します。
①:在職老齢年金
在職老齢年金とは、60歳を超えて働くシニアを対象とした制度です。
厚生年金に加入している60歳以上の人が働きながら年金を受給する場合に、年金受給額が調整されるのが、在職老齢年金。
具体的には、60歳〜65歳未満の場合には、給料と年金の合計額28万円を超えると超えた分の半額の年金がカット、47万円を超えると支給停止になるというものです。
例えば、厚生年金の平均受給額は約14,5万円なので、給与収入が13.5万円未満までであれば給与と年金を全額受け取ることができます。
28万円と47万円は、支給停止調整開始額、支給停止調整変更額と呼ばれ毎年変更されますので注意してください。
②:国民年金の任意加入制度
国民年金を受け取るためには最低10年間保険料を納付する必要があります。
この10年間のことを受給資格期間と呼びますが、受給資格期間が足りずに年金受給できない方や、年金額をより多くしたい方のために60歳以降も年金を納付できる制度が任意加入制度です。
仮に60歳〜65歳まで任意加入した場合、65歳から受けとれる年金の増価額は以下の通りになります。
- 70歳・・・約488,000円(5年総額)
- 75歳・・・約977,000円(10年総額)
- 80歳・・・約1,465,000円(15年総額)
75.2歳時点納めた保険料の総額に見合う年金を受け取ることができます。
③:年金の繰り下げ受給
年金は、65歳支給開始が原則ですが、請求をすれば受給開始年齢を60歳〜64歳に繰り上げたり、66歳〜70歳に繰り下げることも可能です。
繰り上げをすると月々の年金額は減額され、減額率はその後一生続きます。また、一旦繰り上げ受給が始まると途中でそれを取り消すことはできません。
一方、年金の受給を66歳以降に繰り下げた場合には年金額を増額されます。
1年間の年金総額で比べると70歳まで繰り下げた人は60歳に繰り上げた人の2倍以上の金額になります。
【支給開始年齢を繰り下げた場合の増額率】
支給開始年齢 | 増額率 |
66歳 | 8.4%〜16.1% |
67歳 | 16.8%〜24.5% |
68歳 | 25.2%〜32.9% |
69歳 | 33.6%〜41.3% |
70歳 | 42% |
老後のライフプランを考えよう!
以上、今回は老後の生活費について解説をしました。
今回ご紹介した内容はあくまで1つの例にすぎません。大切なのは、あなたの老後のライフプラン、収入状況に応じて必要な準備をしていくことだと思います。
ぜひ本記事の内容を参考にして、将来の生活について考えてみてください。
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