多くのベンチャー企業創業者にとって、IPOは1つの目標だと思います。
「IPOを目指すなら、創業時の資本政策から注意が必要。」そう語るのは、司法書士法人として全国有数の規模を誇るライズアクロスグループの代表髙橋圭先生。
今回は、過去多数のベンチャー上場支援を手がけてきた髙橋先生に、IPOを目指す起業家が注意するべきポイントを伺ってみました。
ライズアクロスグループ グループCEO 髙橋 圭 (たかはし けい)氏
2007年 青山学院大学法学部卒業。司法書士試験に合格し、都内司法書士法人へ入社。
2016年 ライズアクロス司法書士事務所を創業
2018年 ライズアクロスグループ創業、グループCEOに就任。
司法書士法人ライズアクロス代表社員 司法書士
司法書士法人としては全国有数の規模に!
インタビュアー:まずは、御事務所の強みを教えてください。
髙橋先生:セールスポイントは色々とあるのですが、まず1つ目としては、司法書士の数が挙げられます。
今、司法書士の業界は司法書士の資格者じゃないと対応できない業務が非常に多くなってきています。
司法書士事務所は、基本的に司法書士と所属スタッフから成り立っているのですが、所属スタッフがどれだけいても、有資格者がいないと対応出来ない業務が多いんですね。
そういった中で、司法書士事務所のバリューは、在籍する司法書士の人数だったりするんですよ。
今うちは46名の司法書士がいまして、46名が多いのか少ないのかが実感が湧かないかもしれないですが、一応、全国でTOP5の規模となっています。
司法書士の在籍人数が多いので、いわゆるキャパが多いということで、対応できる業務も広範囲に渡るというのが一つですね。
また、全国9拠点に展開をしていて、全国規模で支店展開している司法書士法人をいうのはほとんどないので、全国展開しているというのも強みだと思います。
後は、ワンストップのグループ展開というところですね。
司法書士だけでなく、土地家屋調査士、行政書士も抱えているので、様々な依頼を当社で一貫して対応できます。
例えば、家を買うケース。まず、土地を買って来たら司法書士が登記をするんですが、その前に、土地が何平米で、どういう土地の区画かというのを土地家屋調査士が測るんですね。測った結果、この何平米というのが分かります。その後に土地の名義変更を司法書士がやるんですよ。
こういう不動産取引一つにとっても、司法書士と土地家屋調査士が有機的に作用しながら、プロジェクトを進めていくことになります。
行政書士でいうと、例えば建設業を始めたいという人がいたとします。
起業なので、会社設立のための登記を司法書士の方でやって、その後、建設業であれば行政に行政書士が許認可を取りにいくことになります。
こうした形で、それぞれの士業が有機的に作用しながら進めるスタイルのワンストップサービスをいうのは非常に強みになっています。
IPOを目指すなら起業・独立時の資本政策に注意!
インタビュアー:お客様はどういった方々が多いですか?
髙橋先生:ベンチャー企業の支援が大きなセグメントになっています。
スタートアップ、ベンチャー、VC、CVC、ITベンチャーといった単語が出てきたのってここ5〜10年じゃないですか。
Facebook、Google等の影響もあって、IT化が本格的に叫ばれはじめて、ここ10年でITベンチャー中心にベンチャー企業が非常に脚光を浴びるようになってきた、というのが外的要因であって。
そうなってくると、ベンチャー支援の手続きっていうのがかなり出てくるんです。
大体マザーズって年間40〜50社くらい上場するんですけど、そのうちの10%くらいはうちのお客様です。多い年だと20%くらいはうちがやってますね。いわゆる起業支援・ベンチャー支援っですね。
あとはM&Aですかね。ベンチャー界隈が脚光を浴びるとともに、社会全体としてM&Aというのが認知されてきています。
ベンチャーでもイグジットとかバイアウトという単語も一般化してきているので、やっぱりそういうのって、基本的に手続きをやらないといけないわけです。これは時代の流れでしょうね。
インタビュアー:IPOを目指す起業家が気を付けておくべきポイントって何かありますか?
髙橋先生:まず、資本政策とよく言われる作業は慎重に行うべきです。
誰に出資してもらって、誰に何%の株を渡してっていう部分ですね。
例えば、独立時にお金がなかったので、前職の先輩が300万出資してくれることになった時。300万出資する代わりに株を欲しいと言われて、30%の株を先輩に渡したとます。
そうすると、社長は、自分はほとんど出資してないけど70%の株を持っていて、先輩がとりあえず300万出しただけで30%になりますよね。
会社が伸びていって、ベンチャーキャピタルなどから資金調達をすると、本人持ち分が70%から65%、65%から60%になっていっていく。
色々と株主が増えてきていざIPOまでいけるかとなった時に、社長はふと思うわけですよね。「この先輩は最初に300万出資してくれただけなのに何でこの人に数千万、数億円のお金がいくんだろう」と。だって出資しただけで何にもしてないから。
もう少しいうと、レイターステージに入ってくる投資家とかからしても、「何でこの人何にもしてないのに最初からこんなに株持ってるの?」と非常にネガティブになるわけですよ。
この場合、300万はただ借りればいいだけなんです。すぐに全額返せなくても会社が軌道に乗ったら返しますと。
何が言いたいかというと、ここの最初のスタートを間違うと、ビジネスモデルが超絶に優れていて、とんでもないプロダクトを開発して、上場までいけるだろうという会社であっても、後になってずっと尾をひくよということです。
従業員に配れるオプションだってどんどん減るし、投資家がレイターで入ってこれなくなっちゃうし、創業者自身のモチベーションにも関わってきますからね。ここは非常に重要です。
インタビュアー:起業時から資本政策を念頭に入れておかないといけないんですね。他に創業時に注意するべきことってありますか?
髙橋先生:あとは、株主間契約をちゃんと巻いておかなきゃいけないというのが重要です。
起業時って、営業やエンジニアなんかが集まって3人でスタートするケースが少なくないと思うんですが、大体こういうのは、途中で誰か一人が抜けちゃうんですね。
皆で100万ずつ出し合って300万になってたりするので、株は一人33,4%ずつ持ってたりする。となると、一人辞めた時に株をどうする?って話になりますよね。
辞める人の株を取り上げるとか株を返さなきゃいけないなんてルールは基本的にはないので、役員は退任するけど、株主としては残り続けることになるんです。
残り続けると何が起きるかというと、この会社が上場する時は途中で抜けた人もIPOやエグジット時に果実を得ることになるんです。
これをどうやって防ぐかというと、株主間契約をちゃんと巻いていかないといけなんですね。
今は全員良好な関係だけど、会社に関わらなくことが決定したら、単価で残された共同作業者が買うよ、という株主間契約を巻いおくことが重要なんです。
こういう手当をしないでみんな進めてしまうと、もう後には戻れない。こうした話を知らずに失敗してしまった会社も多いと思いますよ。
創業4年でグループ100名超え!急成長士業グループの成長の秘訣とは?
インタビュアー:創業から現在まですごい勢いで拡大をされていますが、会社の成長を支えている要因は何だと思いますか?
髙橋先生:2016年8月に創業して、当時は2、3名で創業したのですが、そこから4年で現在グループ105名くらいになって、他の追随を許さない成長のスピードでここまできました。
本来、僕らの業界は拡大する必要はないんですよ。ですが、僕らが拡大に舵をとっていったというのが大きな要因なんですけど、なぜここまでやってこれたかというと、とにかく人を大事にしてきたというのがあります。
現在、約46名の司法書士が在籍しているのですが、離籍した司法書士が2名しかいないんです。これは業界では、非常に異例なことです。
基本的に司法書士になったら、1つ目の事務所で3年働いて経験を積んで、それから独立してやってみよう、という、要は独立を目指す人が多い業界なんですね。
逆にいえば、そうした状況下で独立しないで働き続ける方が業界的には異例なんです。
なぜそういう中で辞めないで働き続けてくれているかというと、うちがベンチャーだからということが挙げられます。
空気感が面白いんでしょうね。毎年引っ越しもするし、入社して数ヶ月経ったらいきなり面接官を任されるし、どんどん新規取引先が増えていくし、みたいなそのスピード感、ベンチャー感が面白い人がいるから辞めないんだと思います。
もちろん、他にも待遇だったり、1on1だったり、色々心がけている部分はありますが、皆が辞めずにいてくれる結果、優秀な司法書士が育ってきています。
本社で僕と想いを共有した優秀な司法書士たちが全国の拠点に散らばって行ってるんですよ。通常の事務所ならそういう人材がなかなか現れてこないと思うんです。
それを僕らが体現できているのは、よく社員はファミリーだという人がいるけど、それを本気で体現して、本当に社員を大事にしているからだと思います。
僕が仙台に行ってくれないか?って伝えたら、「ついていきます!」とすぐに言ってくれる。
本来は行く必要がないし、東京で独立すればやっていけるようなメンバー達なんですけど、想いや理念を共有した上で、ひとりひとりの司法書士を大事にするものですから、拠点を任せられる人材が育っていく。こういういいフローができて出来てきているのかなと思います。
インタビュアー:最後に読者の方々へ一言お願いします。
髙橋先生:司法書士は先生、先生なんて言われて、敷居が高そうなイメージがありますが、サービス業なので、まずは徹底的に使う、使い込む。利用するというのは語弊がありますが、要はまずは相談してみると良いかなと思います。
僕らも使われてなんぼだと思っていますし、どこの事務所も相談は無料なので、ぜひ何か相談ごとがあれば気軽に問い合わせをして頂けたらと思います。
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