遺言書を法務局で保管できる新制度が7月開始!仕組みやメリットは?

遺言書

平成30年7月に相続法が40年ぶりに改正され、各制度が順次施行されています。

この度、令和2年7月に施行スタートしたのが「法務局における遺言書の保管等に関する法律」です。

これは、金庫等で自ら保管をしなければならなかった自筆証書遺言書を法務局で保管できるようになる、という制度になります。

この改正によって、一体、相続にどのような影響があるのでしょうか。改正法のポイントや申請手続きなどを解説していきます。

遺言書保管制度のポイントを分かりやすく解説!

2020年7月より、法務局における自筆証書遺言書の保管が可能になりました。

そもそも「遺言書保管制度」が制定された背景は?

これまで仏壇、金庫等を使い、自宅などで保管されることが多かった自筆の遺言書。

自己責任での保管を求められていたため、以下のような課題がありました。

  • 遺言書が紛失してしまう
  • 相続人によって遺言書が隠匿、改ざん、廃棄される
  • 相続人が遺言書を見つけられないまま、遺産分割協議が終了する

遺言書を発端とした相続トラブルも多く、このような課題をうけて、今回の遺言書保管制度が制定に至りました。

相続のトラブル回避、手続きの円滑化を実現!

遺言書保管制度の制定によって、公的機関(法務局)で遺言書の原本及び画像データ化が可能となりました。

そして、遺言者が死亡した後に相続人は、遺言書の写しの交付請求をしたり、遺言書が保管されているかどうかを調べることなどができるようになります

また、この制度を利用すると遺言書の検認も不要となります。

検認とは、遺言書の存在、内容を証明し、偽造・変造を防止するために必要な家庭裁判所での手続きで、通常検認が完了するまでには1〜2ヶ月の期間がかかります。

検認が完了するまでは、遺言者の預貯金の引き出し、所有する不動産の名義変更など、各種関係機関での手続きができませんでした。

今回の制度を利用すると検認が不要となるため、スピーディな遺言執行が期待されています。

自筆証書遺言書の保管制度、ここに注意!

相続トラブルの防止などで効果を発揮する遺言書の保管制度ですが、何点か注意点もあります。

①:遺言内容の質問、相談には応じていない

法務局では遺言書の作成に関する相談には一切応じていません。

あくまで日付や遺言者の氏名の記載、押印の有無など、最低限の外形的なチェックのみを行うだけなので内容については事前に専門家等と相談の上、作成することをおすすめします。

遺言書作成の相談先は、司法書士や弁護士、税理士、行政書士などがあります。

相続争いが心配な方は弁護士、相続税が心配な場合には税理士、不動産の所有があるなら司法書士、などご自身の状況に合わせて相談をしてみてください。

②:相続人へ保管の事実は自動通知されない

遺言書を法務局へ保管していた方が死亡しても、相続人や受遺者(遺言により財産を受け取る人)、遺言執行者(遺言の内容を実現するための手続きをする人)に法務局から通知がいくことはありません。

そのため、生前から遺言書を保管した事実を相続人等に伝えておく必要があります。

法務局で遺言書の保管の手続きをすると、「保管証」がもらえるので、この保管証をご家族等に渡しておくと確実です。

なお、死亡後に一部の相続人が遺言書の閲覧や証明書の交付請求があった場合、法務局の遺言書保管官は、他の相続人に対して、遺言書を保管している旨を通知します

③:遺言者が自ら出頭しなければいけない

保管の申請をするには、遺言者が自ら法務局へ行く必要があります。

病気などのため法務局へ足を運べない場合には、本制度を利用できません。

なお、介助のために付添人に同伴してもらうことも問題ありません。あくまで遺言者本人が法務局で手続きすることが本制度利用の条件になります。

遺言者・相続人それぞれの申請手続き

遺言者が法務局へ保管の申請をする流れ、相続人が死亡後に遺言書を確認する流れをそれぞれご説明します。

遺言者:遺言書を法務局へ預ける方法

保管申請の手順は以下の通りです。

  • 1.自筆証書遺言書の作成

遺言書の作成内容は法務局では相談できませんのでご注意ください。

  • 2.保管の申請先を決める

申請先にできる法務局は以下の3つのいずれかです。

(1)遺言者の住所地

(2)遺言者の本籍地

(3)遺言者が所有する不動産の所在地

のいずれかを管轄する遺言書保管所。ただし、すでに他の遺言書を預けている場合にはそこが申請先になります。

  • 3.申請書の作成と申請の予約

法務局HPより申請書をダウンロードして必要事項を記入の上、申請の予約をします。

  • 4.申請の保管をする

申請日がきまったら、当日法務局へ行き申請を行います。

申請に必要な書類は以下の通りです。

【遺言書保管申請に必要なもの】

  • 遺言書・・・ホッチキス止めは×。封筒は不要。
  • 申請書・・・記入の上持参
  • 本籍の記載がある住民票の写し・・・作成後3ヶ月以内
  • 本人確認書類・・・マイナンバーカード、運転免許証、パスポートetc
  • 手数料・・・1通につき3,900円

  • 5.保管証の受け取り

手続きが終了すると、遺言者の氏名、生年月日、遺言書保管所の名称、保管番号が記載された保管証が発行されます。

保管証は、遺言書の閲覧、申請の撤回、変更の届けをする時、また、相続人等が遺言書情報証明書の交付の請求等をする時にあると便利です。

相続人:死亡後に遺言書を閲覧する方法

相続人等は、遺言者が亡くなられている場合に閲覧の請求をして、法務局で保管されている遺言書の内容を確認できます。

閲覧方法は、モニターによる遺言書の画像の閲覧、または原本の閲覧になります。

閲覧請求の流れは以下になります。

  • 1.閲覧請求先の遺言書保管所(法務局)を決める

モニターによる閲覧の場合には、全国どの法務局でも請求が可能です。原本の場合には、原本が保管されている法務局でのみ請求が可能です。

  • 2.請求書の作成と予約

閲覧の請求ができる人は、相続人、受遺者、遺言執行者等です。

閲覧請求書は、法務局HPからダウンロードできます。

  • 3.閲覧請求をする

請求書を法務局へ提出します。

本人確認のため、運転免許証、パスポートなどの顔写真付きの身分証明書を提示します。

閲覧手数料は以下の通りです。

  • モニターによる閲覧・・・1回につき1,400円
  • 原本の閲覧・・・1回につき1,700円

相続人:遺言書情報証明書の取得

銀行、保険、住宅など各種登記・手続きに必要な遺言書情報証明書の取得をする際の流れは以下の通りです。

  • 1.交付請求先を決める

全国どこの法務局でも請求ができます。請求ができるのは、相続人、受遺者、遺言執行者等です。

  • 2.請求書の作成と添付書類の準備

請求書に添付する書類が複数あります。

以下の図に従って、自分に必要な書類を準備してください。

遺言書 保管 法務局

ア.法定相続情報一覧図の写し(住所の記載があるもの)

イ.法定相続情報一覧図の写し(住所の記載がないもの)

ウ.遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本

エ.相続人全員の戸籍謄本

オ.相続人全員の住民票の写し(3ヶ月以内)

法定相続情報一覧図は、平成29年5月から運用が開始されたもので、簡単にいうと故人の法定相続人が誰になるか法務局の登記官が証明したものになります。

相続関係を一覧図にまとめて法務局で手続きすることで作成が可能です。

  • 3.交付の請求を証明書の受け取り

遺言書情報証明書の手数料は、1通につき1,400円です。

窓口請求の場合は、本人確認後に受け取り、送付請求の場合は、請求人の住所へ証明書が送付されます。

遺言書保管制度に関するQ&A

遺言書保管制度に関する質問に答えてみました。

Q.保管の申請をした後に内容を変更したい場合は?

法務局で保管の申請手続きをした後に遺言書の内容を変更したい場合には、変更の届出書を作成し、申し出ることで内容変更が可能です。

変更の届出には手数料はかかりません。

同様に保管を撤回したい、内容を確認したい(閲覧請求)も可能です。

Q.遺言書の保管を撤回すると、その遺言が無効になる?

無効になりません。

保管の撤回はあくまで法務局での保管を撤回しただけなので、遺言書の内容が消滅するわけではありません。

これまで通り自宅で保管することももちろん可能です。

 

以上、遺言書の保管に関する新制度について解説しました。

争続とも呼ばれることも多いですが、これまで仲の良かった家族が相続きっかけで不仲になってしまうという事例も枚挙にいとまがありません。

相続トラブルを回避するためにもこうした制度を上手に使っていきたいですね。