事業承継は親族内だけじゃない!元社労士代表が語る親族外承継のコツ

五味田 匡功

経営者の高齢化が進み、中小企業の事業承継問題は喫緊の課題となりつつあります。

事業承継には、自分の親族に後を継いでもらう親族内承継が大きな割合を占めていますが、そうした中で親族外承継の魅力を語るのが、社会保険労務士・中小企業診断士の五味田先生です。

五味田先生は、自身が立ち上げた社労士事務所を社員に承継し、現在は、事業承継支援を中心とした活動を行なっています。

社労士時代から数々の事業承継を支援してきた五味田先生に、事業承継の課題と親族外承継のポイント等を伺ってみました。

ソビア社会保険労務士事務所 顧問、ホワイト企業財団 代表理事、一般社団日本事業継続支援機構(通称サステナ社団) 常務理事 五味田 匡功 先生

新卒で会計事務所に入社。2007年、会計事務所在籍中に社会保険労務士、中小企業診断士にダブル合格。

会計事務所内の社内ベンチャーとして、社労士事務所を立ち上げ。2年後に独立し、ソビア社会保険労務士事務所を設立。

働き方改革のコンサルティングを手がけるホワイト企業財団の代表理事に就任。

現在は、社労士事務所代表は退任し、顧問に就任。新たな取り組みとして、事業承継領域の支援を行なっている。

承継者がいない黒字会社は全国に137万社!?

インタビュアー:五味田先生は2020年3月に社労士事務所の代表を退任されたみたいですね?

五味田先生:はい。2020年の3月31日にオーナーではありますが代表権は社員に譲って、現在は顧問をしています。

今は社労士事務所の日々の業務や運営からは完全に抜けていて、決裁権は完全にありません。

インタビュアー:最近はどういった取り組みをされているんですか?

現在は、事業承継支援にまつわるビジネスをしています。

世の中には、承継者がいないけど良い会社がたくさんあるんです。

でも、親族内承継をしようとすると年齢的なタイミングが合わなかったり、親族の資質にも左右されたりで中々難しい

だから、どんどん親族外に承継したらいいんじゃないかっていうのが僕の意見です。

直近だと、承継者がいない会社をM &Aで私が買って経営したり、他に経営やれそうな方に斡旋したり、といった活動をしています。

日本には、承継者がいない黒字会社って137万社あるんですよ。

一方、若者が起業する時はゼロイチのパターンが多いですよね。

承継者がいない会社に飛び込んで、それを承継できたら、わざわざ0から会社を作る必要ないじゃないですか。

空き家がたくさんあるのに、それを無視して新築を立てようとしているようなもので。空き家をリフォームしてもいいし、リフォーム後に家を売って、その資金で好きな家建ててもいいですよね。

親族外承継という選択肢、ゼロイチではない新たな起業方法、この2点を広めるためにサステナビリティ社団とネクストプレナー社団です。2つの団体運営に携わっています。

サステナ社団とネクストプレナー社団、この2つセットで、企業さんには「早く事業承継しましょう」、起業家側には「承継を受けましょう」という両輪を組み立てています。

インタビュアー:事業承継に関する課題感は以前から感じていたんですか?

五味田先生:そうですね。例えば、クライアント先の経営会議に出ると社長が寝てることがあるんですよ。

経営者がある程度の年齢を超えるとよくある話ではあるんですけど、寝ている社長をみても社員は誰も注意できないわけですよね。

そういうのは不健全だと感じているんです。

やはり承継するのであれば、経営者の脂が乗ってるうちに承継する方が良いじゃないですか。落ちきってから承継するのでは意味がない。

親族内承継でも親族外承継でもどちらでも良いんですが、なぜか承継というと、親族内が優先でダメなら親族外って考える人が多いんですね。

大事なのは、脂が乗ってるときに、引き継ぎやすい状況で、さらに経営をひき伸ばすために、誰にどう承継すべきか、という点だと思います。

僕は社労士の顧問先で承継者がいるいないを把握しているので、山のように相談がくるんです。

昔から続いてる会社っていうのは、日本の資産です。

例えば、僕が引き継いだ研修会社は40年の歴史があって、3万件の顧客リストがある。引き継がなければその歴史は幕を閉じ、リストは使われないんです。それはすごく勿体無い。

きちんと承継して、レベル高くして世の中に貢献することをみんながすれば、雇用も守れるし、GDPも底上げできますよね。

親族外承継を成功させるためのポイントとは?

インタビュアー:親族外承継を成功させるために必要な心構えは何ですか?

五味田先生:1つ目は劣化を許容することです。

どうしても経営者本人が現役の時と比べると、承継直後は6掛けや7掛けになる。それに我慢できず、口出しすると中々承継が終わらないですね。

2つ目は、劣化を極小化させるべく頑張るということです。

一旦は劣化を許容しないといけませんが、許容してても極小化させようとしないと経営が毀損していきます。

極小化するにはどうすれば良いかというと、緻密に引き継ぐことが大切です。

例えば、情報収集が必要ってなったら情報はどのように収集してるかとか、外部要因はどのように把握しているのか、とか順番に聞いて、引き継ぎ項目をリストにしてあらかじめ決めていく感じです。

財務でいえば、在庫管理、固定資産資金管理はどうしてるのか、、、とか一つ一つ確認していきます。

よくある、「俺もそうしてきたから見て学べ」的なスタンスでざっくりしていると後継者への引き継ぎがうまくいかないケースが多いですね。

インタビュアー:事業承継に関する相談先としてはどういったところがあるのでしょうか?

五味田先生:基本は税理士だと思います。

気をつけなければいけないのは、もちろん人にはよりますが、基本的に税理士は税金の専門家であって、事業承継の専門家ではないということ。

どう事業を引き継ぐかよりもどう節税対策するか、という話になりがちなんです。

そうすると、親族内承継をした方が税金が安くなる方法のレパートリーが多いんですね。

税金が下がる不動産の買い方や、贈与税を安くする承継の仕方とか、税金かからない会社の資産の移し方とかです。

事業をどう発展させるために承継するかではなく、いかに税金少なく承継するかっていう話になっちゃう。

僕からすると、それは瑣末な話で税金を少なくするために事業自体がしぼんだら意味がないですよね。

インタビュアー:事業承継を考えるタイミングはいつがいいのでしょうか。

五味田先生:脂が乗ってる時かなと思います。

人気のあるアイドルが人気無くなってから女優に転換、じゃ遅いじゃないですか。

人気のある時にちょこちょこ女優の準備して、人気の中で辞めて女優になって、脚本家としても人気出てみたいな感じで、社長も一個の事業がうまく行ってて、そんなに頑張らなくてもうまく回るようになってるのであればその事業は卒業すべきと思います。

僕自身がそれを体現しているので、そうしたネクストプレナーとしての成功者が増えることで、めっちゃやりたい!っていう起業家が増えればいいし、そんな承継の仕方あるならしたいという会社が増えればいいと思います。

お客様・従業員・自社、三方良しの状態がベスト

インタビュアー:最後に、五味田先生が仕事をする上で大切にしてることを教えてください。

五味田先生:僕は楽しく仕事できるかどうかに力点をめちゃくちゃ置くんです。

楽しいっていうのは面白おかしいとはちょっと違って。メッチャ赤字だけど、笑いがとまらない、っていうのは楽しくないと思っています。

きっちり収益が出て、お客様も喜んでいて、従業員も関係者もみんな喜んでいる状態。三方良し、その状態になることをすごく大事にしています。

例えば、飲食店で安くて美味しくてお客さんが喜んでいても、従業員が疲弊している状態は不健全だと思います。

一瞬は儲かるけど、多分従業員が辞めたり雰囲気が悪くなったり、お客さんもこなくなるんじゃないかな。

一方、従業員が楽に楽しく働いていて儲かってるけど、食べ物が美味しくないとか、産地偽装するとか、お客さんが割り食ってる場合もどこかで崩れる。

お客さんも従業員も喜んでいるけど、全然儲かってない。これでは還元する原資がない。

お客様と会社と従業員、関係者も含め、みんながWinWinの状態にしないと商売って長くは成り立たないと思っています。

事業承継に関してだと、思いを引き継ぐ支援をしたいと常々考えています。

儲かるために、客のことなんか知るかっていうかっていう会社の事業承継は手伝いませんし、従業員なんて知るかリスク取ってるのはこっちや、っていう社長も手伝いません。

逆に後継者側承がそういう考えの場合も手伝わない。

楽しいっていうのはみんなのバランスが取れていて、これすることでみんなALLHAPPYっていう状態ですよね。

もちろん、競合他社とはビジネスなのでALLHAPPYになるとは限らないけれど、その状態を目指すのはポイントですかね。

できれば競合も業界よくしていくって考えを持つように、承継元にも先にも伝えています。そうじゃないと承継する意味がありませんよね。

ソビア社労士事務所

所在地:大阪府大阪市中央区安土町2-2-15 ハウザー堺筋本町駅前ビル7F

電話番号: 06-6282-7416

メール : info@sovia.jp

HP:https://sovia.jp/

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