日銀統計によると、日本国内にはおよそ10億の銀行口座が開設されており、単純計算で国民一人あたり10つの銀行口座を保有していることになります。
どの銀行口座にどれくらいの預金残高があるか、あなたは把握をしているでしょうか?
こうした状況下で、故人が残した銀行口座の預貯金を遺族が把握できないという問題も出てきています。
また、近年は、銀行のペーパーレス化が加速し、通帳に比べて、預貯金の存在が見えにくくなっているという課題も出てきました。
そこで疑問なのが、もし遺族が故人の銀行口座を相続しなかった場合に残されたお金はどうなるのか、ということ。
今回は、亡くなった後に放置された銀行口座のお金がどのように取り扱われているのか解説していきます。
10年放置された預貯金は、休眠預金へ移管される!
死亡時に限らず、10年間放置され続けた銀行預金は、「休眠預金」といって、NPO法人などの民間団体が行う公益活動の資金源に活用されます。
休眠預金になるとどうなる?お金は引き出せる?
銀行口座に放置された休眠状態の社会活動に活用できるように定められたのが、「休眠預金等活用法」という法律で、2018年1月に施行されました。
具体的には、口座に残されたお金は金融機関から「預金保険機構」というところに移管されて、子ども若者支援・生活困難者支援・地域活性化の公益活動を行うNPO法人等に助成、貸付、出資されます。
政府広報オンラインによると、10年間取引がない預金は1年間で1,200億円程度にも上るそうです
休眠預金として移管されたらお金は戻ってこない?と思うかもしれませんが、休眠預金になった後も引き続き取引があった金融機関で引き出しの手続きができるので安心してください。
休眠預金は、民間公益活動に使われることになりますが、全てのお金が移管されるわけではなく、全体の5割のお金は準備金として将来の引き出しのために積み立てられています。
過去の実績では、年間1,200億円の休眠預金の内、引き出されたのは500億円程度ということなので、5割を残しておけば十分であるということのようです。
休眠預金の対象になるもの・ならないもの
休眠預金の対象となるのは以下の預金等です。
対象になるもの | 対象にならないもの |
|
|
10年間取引がない普通預金や定期預金等が休眠預金となり、外貨預金等は対象になりません。
ちなみに、預金者が今後も口座を使うという意思表示としての行動が見られた場合には「異動」と呼ばれて、10年間という縛りがリセットされます。
異動には以下のようなものが該当します。
全金融機関共通 | 金融機関ごとに認識が異なる |
|
|
例えば、通帳の記帳については各金融機関によって異動かどうかの判断は異なります。
どの金融機関に故人の口座があるか分からない場合は?
休眠口座になった後もお金が引き出せるということでひとまずは一安心です。
ですが、故人がどの口座を保有していたか分かるのであればそれにこしたことはありませんよね。
もし通帳やキャッシュカードが見当たらない、ネットバンキングを特定できないなどで故人の口座が分からない場合、結論からいうと、利用していそうな金融機関を推測し、その金融機関に問い合わせを行う、または財産調査の専門家に依頼する、のいずれかの方法があります。
現状では、金融機関全体で故人の口座が存在するかどうかを調べる方法はありません。そのため、金融機関を利用していたかの調査から始める必要があります。
カードや通帳が無い場合には、金融機関からの手紙やメール、カレンダー等の粗品がヒントになりそうです。
金融機関が絞れたら、窓口や郵送等で残高照会を行います。この際、被相続人の死亡の事実がわかる戸籍謄本、自らが相続人であることが確認できる戸籍謄本、印鑑証明書、印鑑などが必要になります。
なお、ネット銀行の口座も基本的には一般的な銀行と手続きは同じです。ただし、ネットの場合、生前に家族等が利用を把握していないと存在の把握が難しいケースが多いです。
1つ1つの金融機関をしらみ潰しに探すのは大変な手間がかかりますので、そういった場合には専門家の助けをこうのも1つの方法です。
預貯金を上手に相続するためのポイント
最後に、遺族が故人の銀行口座の預貯金を把握できていない、というトラブルを防ぐためのコツをご紹介します。
①:利用頻度の少ない口座は解約する
冒頭で述べた通り、現在、日本国内の銀行口座は銀行、信用金庫、ゆうちょなど合わせて計10億口座があります。
単純計算で1人10つ程度の銀行口座を持っているとしても、全ての口座を使っているという人は少ないのではないでしょうか。
使っていない口座は解約して、利用している金融機関のみに絞っておくことをおすすめします。
②:口座情報を遺言書等で残しておく
一見、当たり前のことかもしれませんが、銀行口座情報はIDなどと共にエンディングノートや遺言でのこしておくことが大切です。
インターネット銀行だけではなく、仮想通貨や株式、投資信託、保険、FX、電子マネーなど、いわゆるデジタル資産が増えてきた昨今、遺産の把握のためにしっかりと自身が持つ資産を配偶者や子供に知らせる必要があります。
投資信託など、死亡後も信託報酬を払い続けなければいけないケースもありますので注意してください。
暮らしに役立つお金の情報を無料でお届けしています!