日本から残業と長時間労働がなくならない理由とは?

 

近年長時間労働の問題がテレビや新聞などで盛んにクローズアップされています。

残業の多い企業は「ブラック企業」と呼ばれ、長時間労働に耐えられなくなった若手社員が自殺するという痛ましい事件も起きました。

世界の中でも日本は特に残業が多いと言われています。

ではなぜ日本だけ長時間労働が多いのか知っていますか?

この記事では日本の雇用システムの枠組みから長時間労働が発生する原因について解説したいと思います。

日本の長時間労働の実態

 

本当に日本は労働時間が長いのでしょうか?

イメージだけじゃないのかと思う人もいるでしょう。

まず最初に日本の労働時間についての数字を見ていきましょう。

労働時間の国際比較

データブック国際労働比較2017より

どうでしょうか?

1990年には日本がダントツで長かった労働時間ですが、年々減少していき現在ではとても長いとは言えなくなっています。

ヨーロッパの国々よりは長いものの問題になるほどには思えないかもしれません。

むしろ日本よりもアメリカの方が労働時間が長いことが分かります。

意外だと思った人も多いのではないでしょうか?

長時間労働の割合

では日本の長時間労働は実はそんなに深刻ではないのでしょうか?

 

もう一つデータを見てみましょう。

先ほどと同じ国を使って長時間労働の割合を見てみましょう。

 

週49時間以上の労働時間の割合(%)

 国名 2012年 2013年 2014年 2015年
日本 31.6 30.5 30.0 29.5
10.6 9.8 9.7 9.5
アメリカ 21.8
10.2
カナダ 18.0 17.5 16.6 16.7
7.1 6.9 6.5 6.8
イギリス 17.3 17.7 18.1 17.8
5.8 6.1 6.1 6.0
ドイツ 16.5 15.6 15.0 14.1
5.0 4.8 4.6 4.4
フランス 16.1 15.2 14.4 14.1
6.5 6.0 5.9 5.8

 

データブック国際労働比較2017より

 

どうでしょうか。日本の男性の長時間労働の割合がダントツで高いことが分かります。

これは何を意味するのでしょうか?

 

長時間労働はホワイトカラーの男性に集中

実は日本の長時間労働の問題はある一定の層に集中しています。

それが「大卒、ホワイトカラーの男性」です。

ホワイトカラーとは頭脳労働をする人たちのことです。

イメージとしては大学卒業後、新卒で企業に総合職や技術職として就職していく人たちです。

もちろん総合職の女性も増えてはいますが、やはり男性が大部分を占めています。

海外と比べて長時間労働という主張は明言されないことが多いですが、基本的にこのホワイトカラーの階層を比較していることがほとんどです。

なぜ日本だけ残業が多いのか?

 

それではなぜ日本企業で残業が常態化しているのでしょうか?

それは日本の雇用制度に関係があります。

男性中心、終身雇用前提の少数採用

日本の会社のホワイトカラーの採用にはいくつか特徴があります。

キーワードは「終身雇用」、「少数採用」、「頻繁な転勤」、「男性中心」です。

日本企業は社員を正規雇用した場合、「終身雇用」つまり雇用保障をする必要があります。

そのため社員数を少数採用に抑える傾向があります。

つまり、日本企業は必要人数ギリギリで会社を運営しているのです。

繁忙期でも社員数を増やすことはないため必然的に長時間労働を強いられることになります。

また、少ない社員数で全国の拠点を管理することになるため社員には頻繁な転勤が必要になります。

日本企業は社員が転勤を拒否することはできませんが、欧米では全く逆で事前の同意なしに企業が転勤を命令することはできません。

頻繁な転勤と長時間労働、この二つを社員はこなさなければならないため必然的に日本企業は「男性中心」の雇用になります。

男性の方が長時間労働に耐えられる体力と仕事を優先できるためです。

このような雇用環境の中で女性が総合職に就職しても仕事と家庭の両立は非常に難しいのが現状です。

 

このようにしてみると日本で長時間労働が蔓延しているのは当然なのかもしれません。

 

年功序列と終身雇用・なぜ日本企業は実力主義を導入しないのか?

これから変わっていくのか?

 

日本で長時間労働がはこびる制度的な原因を見てきました。

これから日本は長時間労働を是正できるのでしょうか?

実は今少しづつですが変化が見られています。

人手不足と働き方改革

現在日本は深刻な人手不足に陥っています。

また、長時間労働の問題に注目が集まり、大企業を中心に残業を厳格に管理する方向へ動いています。

現在の「終身雇用」に代表される日本の雇用システムが成立した1960年代~70年代も人手不足が深刻な時代でした。

人手不足は企業に変革を促す大きな動力になります。

 

ただ完全に長時間労働が是正され残業がなくなり、女性の社会進出もヨーロッパと同じように進むためにはより根本的な改革が必要になるかもしれません。

ホワイトカラーエグゼンプション

長時間労働に関して近年注目されている法案が「ホワイトカラーエグゼンプション」です。

この法案は働いた時間ではなく成果によって賃金を決めるという仕組みです。

基本的にブルーカラーの労働者は時間給、ホワイトカラーの労働者は成果給と親和性が高いことが知られています。

長く働いても短く働いても同じ給料になるのでホワイトカラーの生産性を引き上げるインセンティブになり、長時間労働が是正されることを狙っています。

欧米では基本的に管理職を中心に対象が定められていて、日本でもその方向で検討が進められています。

 

一方でこれは「残業代なし法案」という批判も根強くあります。

この主張は時間給ではなくなるので、逆に企業が労働者に長時間労働を強いるようになるのではという不安から来ています。

世間の不安を払しょくするためにも制度の慎重な運用が求められるでしょう。

 

IT技術の発展が「場所」、「時間」の制約を突破する

近年AI(人工知能)などテクノロジーの進歩が驚くべきスピードで進んでいます。

こうした新たな技術の発展は雇用や労働の仕組みすら変えてします可能性を秘めています。

 

「雇用」というものは「時間と場所」の拘束性が非常に強いものとして考えられてきました。

社会人になれば人生の時間の大半を会社で過ごすことになる人が大半でしょう。

そのような「当たり前」が今後変わるかもしれません。

 

既にIT技術の発展によって場所や時間にとらわれない働き方が誕生しています。

企業内でも在宅や家の近くの拠点で仕事をする「リモートワーク」などがそうです。

 

プログラマーに代表される職種では、雇用の枠組みにとらわれない個人請負として「フリーランス」も増加しています。

さらにはAIが人間の脳の知能を上回る「シンギュラリティ」と呼ばれる時代が数十年後に訪れると真剣に議論している人たちもいます。(ソフトバンクの孫正義など)

その時代には働くということ自体必要ではなくなるかもしれません。

まとめ

 

 

日本の長時間労働についてまとめました。

長時間労働の背景には日本の雇用システムの仕組みに原因がありました。

しかし、現在の人手不足の環境下で、少しづつ変化が起き始めています。

今後の変化にも注意が必要です。