ベーシックインカムを解説!希望の党の公約は実現可能か?

手続きの様子

ベーシックインカム(BI)という言葉を聞いたことはありますか?

小池百合子東京都知事率いる「希望の党」は2017年衆議院選挙の公約でベーシックインカムの導入を掲げています。

また世界に目を向けるとベーシックインカムの試験的な試みがヨーロッパを中心に行われ始めています。

でもいまいちどういったものなのかよく分からないという人も多いと思います。

これまでの社会保障を根底から覆すかもしれないベーシックインカム、この機会にどういった制度なのか知っておきましょう。

この記事ではベーシックインカムの仕組みとそのメリット・デメリット、実現可能性について解説します。

ベーシックインカムってなに?

ベーシックインカムってそもそもどんなものなのでしょうか。

実はとても簡単で一言で言い表せます。

「年齢・性別に関係なく全ての国民に同じ金額の現金を給付すること」

とても分かりやすいですね。

具体的にどのぐらいの金額が貰えるのでしょうか?

基本的には「働かなくても生きていけるだけのお金」ですが、希望の党は具体的な数字を示していません。

ヨーロッパを例に取ると月6~10万ぐらいだと思われます。

ただ、ベーシックインカムと引き換えに廃止されるものもあります。

年金や生活保護、失業保険などの社会保障制度が廃止されます。

逆に言えば全員に毎月お金配るから職が無くなっても困らないよね!というのがベーシックインカムです。

よくベーシックインカムの特徴として語られるのが「人々が働くことから解放される」ということです。

ベーシックインカムのメリット

ベーシックインカムのメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

見ていきましょう。

1、収入が増えるのでその分だけ消費も増える

ベーシックインカムは収入がある人にも支給されます。

働いている人には月々の給料に加えて新たな収入が増えるため、使える金額はとても増えることになります。

例えば月給が30万の人がベーシックインカム10万を貰えば実質月給40万になります。

収入が増えた分ご飯や遊びにお金を使えば消費が増え経済に好循環が生まれるかもしれません。

2、働かなくても生活できる

日本国憲法には国民の3大義務が書かれています。学校で習ったのを覚えていますか?

教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」です。

その内の一つである「勤労の義務」がベーシックインカムを導入するすると免除される可能性があります。

ベーシックインカムは「働かなくても生きていけるだけのお金」を給付します。

働く代わりにボランティアをしたり、起業に挑戦するなど様々なチャレンジがしやすくなるでしょう。

3、給付漏れがない

給付漏れがないとはどういうことでしょうか?

例えば生活保護の場合、周囲の目が気になって申請できないなど今の社会保障制度では必ずしも必要な人全員に給付が行き渡っているわけではありません。

ベーシックインカムであれば、老若男女区別なく支給するので支給漏れという事態が限りなく減少します。

4、手続きが簡単、行政コストを減らせる

現在の社会保障制度の場合、例えば生活保護の申請を審査するのに手間がかかります。

そのほかにも失業保険、年金なども同様に莫大な手間とコストがかかっています。

もし一律に同じ金額だけ支給するとすれば、審査や手続きの時間がかからないので行政コストの節約につながります。

現在日本には社会保険庁と税務署だけで約7万人の職員がいます。

手続きが簡単になればこうした職員の数が減らせ人件費も節約できるようになるでしょう。

ベーシックインカムのデメリット

今度はベーシックインカムのデメリットについて紹介したいと思います。

1、働く意欲がなくなる、ニートが増える

デメリットとして多くの人が思い浮かぶのは、生きていけるだけのお金をもらったら人は働かかなくなってしまうことだと思います。

ベーシックインカムを貰った人の労働意欲が減退してしまうとその国の経済に悪影響を与えてしまいます。

もし、一部の人だけならばいいかもしれませんが、国民の大部分がそうなってしまうと国の財政が破綻してしまいます。

後でも紹介しますが、現在ヨーロッパのいくつかの国ではこうした影響を測定するための実証実験が行われています。

2、巨額な支出になるため財源の確保が困難

次にデメリットとして挙げられるのが財源の問題です。

全ての国民に最低限の生活ができるぐらいのお金を配るというと日本の場合毎年数十兆円~100兆円ぐらいのお金がかかります。

それだけのお金をどこから持ってくるのかは非常に難しい問題です。

新しい税金を導入するのか?それとも年金などに使われる社会保障費を流用するのか?

いずれの場合も大きな反対を受けることは必至です。

3、現行の社会保障制度が縮小される

現実的な手段として多くの国ではベーシックインカムの財源として社会保障費に目が向けられています。

しかし、社会保障費を削減すると必然的に今までの社会保障制度は縮小せざるを得ません。

年金は受け取れなくなります。

生活保護も受け取れなくなります。

医療費負担も増えるかもしれません。

こうしたデメリットはしっかり検討すべきでしょう。

日本でベーシックインカムを導入できるの?

理論的には財源はある

ベーシックインカムのメリットとデメリットを解説してきましたが、日本でほんとに実現できるのかと疑問に思う人も多いと思います。

日本国民一人一人に何万円も配るなんてそんなお金をどこから出せるのでしょうか?

その疑問に答えるために、まず日本の予算がどこに使われているのか見てみましょう

使い道

引用:参議院厚生労働委員会の資料より

少し古いですが上の円グラフは国の平成27年度一般会計の歳出総額とその内訳です。

歳出の約4分の1が国の借金である国債の発行や利払いに回されているのも気になりますが、それよりも注目すべき点が社会保障関係費です。

社会保険保障関係費は年金(11.1兆円)、医療費(9.3兆円)、介護(2.6兆円)、生活保護(2.9兆円)などの使い道に分かれていて、国の一般会計の32.7%を占めています。

額にすると31兆円を理論的にはベーシックインカムに回せる計算です。

さらに下のグラフを見てください。

社旗保障給付

引用:内閣府の資料より

先ほどは国の一般会計だけを見ましたが、社会保障に関する支出は国からだけではありません。

地方自治体の負担が毎年13兆円、会社や個人が納めている保険料や年金が66兆円、さらにはGRIFに代表される年金運用ファンドからの収益もあります。

年間の社会保障費給付費全体を合計すると118.3兆円、これを日本人の人口(2016年で1.27億人)で割ると一人当たり93万円になります。

ベーシックインカムとして日本国民がひと月あたり7万7千円を受け取れる計算です。

さらに年金、医療費、生活保護費などそれまで別々に審査して給付していたものを一本化することで人件費も減らすことができます。

社会保険庁と税務署の職員数は約7万人います。

仮に平均年収600万として職員が半減することができれば2100億円のコスト削減になります。

実現への壁は高い

ここまで読むと、負担は増えないのに毎月7万円も貰えるなんてベーシックインカムいいのでは?と思うかもしれません。

でもそんな簡単な問題ではありません。

見ての通りベーシックインカムを導入することは年間100兆円に達する社会保障のあり方を根本的に変えるものです。

必然的にひずみが生まれ、様々な問題が生じます。

例えば、今まで社会保険料として国民年金や厚生年金を納めてきた人は将来年金が貰えなくなります。

一方でまともに社会保険料を払ってこなかった人もベーシックインカムを受給できる権利があるのは不公平に感じられるかもしれません。

また、基本的に月7万7千円円以外の社会福祉が無くなるため、障がい者や介護が必要な老人などにとってはこの額で生活するのは厳しく、別途対策が必要になるでしょう。

そのほかにも、前章で紹介したベーシックインカムのデメリット部分をどう解消するべきかを議論していく必要があります。

ベーシックインカム導入の動きがある国・地域

ベーシックインカムには賛否両論があるものの、実際にやってみないと分からない部分がたくさんあります。

例えばデメリットの2番目で取り上げた働く意欲がなくなる人の割合はどのぐらいなのでしょうか?

導入後の影響を測定するため、世界中でベーシックインカムの実証実験が行われています。

フィンランド

2017年から二千人を対象に世界最大規模の実証実験が行われている。

国家レベルでは世界で初めての導入

実施期間は2017年1月1日から2019年12月31日

対象となる失業者2千人に月560ユーロ(約6万8千円)を支給

目的はベーシックインカムが労働意欲に影響を与えるかどうかの調査。

オランダ

国内第4の都市ユトレヒトと郊外市町村で、生活保護受給者250人を対象にベーシックインカムの実証実験

実施期間は2017年から2019年の2年間

毎月960ユーロ(約11万円)を支給する。

目的は同様に労働意欲の影響調査

ブラジル

2004年に「市民ベーシックインカム法」が施行され、将来の段階的なベーシックインカムの導入を目指しているが具体的な実現時期は未定。

条件付き現金給付「ボルボ・ファミリア」が2004年から実施されている。

日本の子供手当に似た制度で、子供の就学や予防接種を条件に月額150リアル(約5000円)を支給している。

受給者は5200万人と同様の制度では世界最大規模。

スイス

2016年6月の国民投票でベーシックインカム導入の是非が問われたが、反対73%、賛成23%で否決される。

成人一人当たり2500スイスフラン(約25万円)の支給する案だった。

財源不足や国民が働かなくなることへの不安が強かったことが影響した。

主要政党は法案の実施に反対していた。

まとめ

ベーシックインカムについてまとめました。

ベーシックインカムには昔から「財源がない」と「労働意欲がなくなる」という主に二つの反対意見がありました。

ヨーロッパでは一つ目の問題は概ね解消されようとしていて、二つ目の問題について現在実証実験が行われています。

日本でも衆議院選挙で希望の党が公約で掲げたことで議論が活発化しています。

皆さんもこの機会にぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。

他にも2017年の衆議院選挙で希望の党が主張している政策として配偶者控除の廃止があります。

配偶者控除を利用している方はぜひ下の記事もチェックしてください。

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