株式会社ストライク 代表取締役 荒井 邦彦(あらい くにひこ)氏
1970年千葉県生まれ。一橋大学商学部卒業。株式会社ストライク代表取締役社長。
将来的な起業に向け、経営スキルを身につけるために大学生の頃から会計士の勉強を始める。
大学4年生で会計士試験に合格し、1993年太田昭和監査法人(現新日本有限責任監査法人)へ入所。
1997年に株式会社ストライクを設立。1999年には、国内初となるM&Aマッチングサービス「M&A市場SMART」を開設。2016年6月に東証マザーズへ上場し、2017年6月には東証一部への市場変更を果たす。
『よくわかる中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)『事例でわかる!オーナー経営者のためのM&A活用法―6つのケースが語る成功のポイント』(大蔵財務協会)『できる社長は押さえている!会社の値段』(翔泳社)など著書も多数。
株式会社ストライクってどんな会社?
株式会社ストライクを設立された経緯を教えてください。
私が公認会計士になったのは、それ自体が目的ではなく、将来自分で会社を設立することが目的でした。
会社経営に必要なスキルを身につけるため公認会計士になったものの、私自身将来何をやりたいかまでは決めておらず、ひとまず監査法人で仕事をしながら考えてみることにしました。
そんな中、入社した太田昭和監査法人(現新日本監査法人)で、M&A案件に携わる機会がありました。そこで「会社ごと売買する」という経済的なスケールの大きさや社会的影響度の高さを知り、M&Aに関わる仕事に心がときめきました。
それからは居ても立っても居られず、自分で法人設立に関する本を買って調べ、両親にお金を借りて株式会社ストライクを設立しました。
M&A仲介をする上で、荒井社長が大事にしていることは何ですか?
単にM&Aを成立させるだけでなく、「良い出会いを作る」ことを常に考えていますね。
M&A事業は、社会的な影響度がとても大きな仕事です。会社は人で成り立っているので、ドライに進めてしまうと、結果として多くの人が不幸になってしまう可能性があります。
M&Aが多くの人にとって幸せな出会いとなるにはどうすれば良いのかを第一に考えて動くことを、仲介する立場としても常に意識しています。
それから、とにかくたくさん打席に立つ機会を作ることですね。M&Aは、会社の財務状況やビジネスの親和性など、合理的に判断して決めていると思われがちですが、必ずしもそうではありません。
むしろ、誤った固定観念が、新たなマッチングの可能性を阻害することもあります。
些細なきっかけ一つでも、最終的にはお互いにご満足頂ける成約に至った事例はいくつも見てきたので、私はいつもM&Aの仲介時には固定観念を捨て、業界問わずあらゆる可能性を模索することを大切にしています。
印象的なM&Aのエピソードがあれば教えてください。
ある大手飲食チェーンの一部上場企業のM&Aを仲介した時の話。
その企業は年商4,000億、誰もが知る有名企業。新領域へ進出を視野に入れて、年商6億円の中小企業の買収を検討していました。
単純に売上高だけで比較すると、買収検討先企業の年商は、その企業の半日分程度。
一般的に、買収側企業から見て規模の小さな会社のM&A案件の場合、その案件は担当者に一任され、最後まで役職者が出てこないケースは珍しくありません。その時も、それが十分にあてはまる状況でした。
視察が近づくにあたり、私はその買い手企業担当者に「できれば視察当日、それなりの方を連れてきて欲しい」とお願いをしました。売り手企業へ、買い手の誠意を伝えるためです。
最終的に、担当者に視察メンバーの確認したところ、なんと会長の名がありました。
そして当日、本当に会長は視察にいらっしゃり、面談も自ら行われた結果、双方合意でM&Aは滞りなく決まりました。売り手企業の代表も、会長自ら視察にお越し頂けたことが大変嬉しかったご様子でした。
日本有数の大企業の会長から直接、自社事業に対する期待の言葉をかけられて、悪い気がするはずもありません。
M&Aでは、売り手企業への誠意や評価の気持ちを、買い手側が金銭面だけでなく「行動」としても示すことが大事だと、改めて実感できたエピソードです。
ある格闘技団体の運営会社の話。
格闘技団体の代表は、現役選手兼代表として会社を支えてきましたが、更なる成長を目指すためには、ビジネスのプロとの提携が必要だと考えていらっしゃいました。
しかし、格闘技は特殊なカテゴリーであったため、なかなか譲渡先企業を見つけるのが難しい……というのが率直な感想でした。
そんなある日、某大手IT系企業の社長が、ご自身のブログで格闘技について発言されていることを、弊社の担当者が発見。候補先としてどうか私に相談をしてきました。
面白いとは思いましたが、同時に難しさも感じました。なぜなら、そのIT系企業は、買収にそれほど積極的ではないと考えられていた会社だったからです。新規事業は自社子会社でやるか、マイナー出資をするかの2つの選択肢で行っていました。これまで企業買収をしたという話を聞いたことがありません。
一見して可能性は低いように感じましたが、まずとにかく動いてみようと思いました。
私自身も、この大手IT系企業の代表と直接の面識はなかったため、様々な方法でアプローチを行い、なんとか両社の話し合いの場を設けさせて頂きました。
結果として両社のフィーリングが予想以上に良く、とんとん拍子で話は進んでいき、無事に提携まで至りました。今ではこの格闘技団体の業績も順調に伸び、運営会社の元代表にも喜んで頂けました。
どんなに些細なきっかけでも、固定観念を捨ててまず行動に移してみることで、誰も予想できないような業界・規模のM&Aができることを実感できた、印象的な事例です。
成功するM&A、失敗するM&Aの違いは何ですか?
成功するM&Aで大事なことは「行動・姿勢」
M&Aで重要なのは、買い手の「行動・姿勢」です。
例えば、前述の大手飲食チェーンのエピソードでは、会長が直々に訪問することで、相手方に対して買収に対する誠意・熱意をしっかり伝えることができました。
その他であれば、買収した後も企業の従業員をしっかり評価したり、優秀な人材を親会社の役員に抜擢したりと、「人」を大事にする会社は、その後のM&Aでも成功することが多いです。
買い手の「押し付け」はM&Aの失敗を招く
一方、買う側が「我流の押し付け」をすると、失敗する傾向があります。
会社を動かすのは人です。人事評価が不公平だったり、仕事の進め方を強引に変えさせたりして、そこで働く方々の尊厳を奪ってしまうような行為をすると、会社として機能しなくなってしまいます。
買収後の適切なマネジメント方法まで考えることが、M&A成功の秘訣です。
最後に
最近はM&Aも一般化してきたので、選択肢の一つとして検討する機会も増えてきたかと思います。
M&Aは株式やお金のやりとりだけでなく、事業やお客様、そこに所属する従業員に大きな変化・影響を与えることは間違いありません。
会社を成長させるためにどうすべきかをじっくり考えた上で、買収や売却を決めて頂けたら、企業のM&Aの成功、ひいては日本のM&A市場の成熟にも繋がると思っています。
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株式会社ストライク
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HP:https://www.strike.co.jp/
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