企業に課税される法人税が今後一定の条件を満たすことで大幅に引き下げられる議論が進んでします。
2017年の法人税実効税率は29.97%ですが、これを最大20%前後まで引き下げることが検討されています。
税率の軽減を受けることのできる条件は従業員の賃上げと革新技術への投資です。
企業にとって負担が軽くなるだけでなく、会社員にとっても給料が上がる可能性が増えるため注目すべきニュースです。
この記事では2018年に実施が検討されている法人税減税とその背景についてまとめました。
法人税実効税率とは?
法人税ではよく実効税率という言葉が使われます。法人税の実効税率とはなんでしょうか?
企業、つまり法人は払うべき税金が主に3つあります。
それぞれ国税である法人税と地方自治体に支払う地方税である法人住民税、法人事業税です。
いずれも企業がその年に稼いだ利益に課税される税金です。
そこで企業の実質的な負担を示す言葉として「法人税実効税率」という言葉が使われます。
国内だけでなく他の国と比較する際もこの数字が使われています。
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法人税引き下げの条件
今回政府は子育て世帯支援を中心とする「人づくり革命」と同時に進めている企業活動の活性化を狙った「生産性革命」政策の一環として法人税減税の検討が行われています。
減税は2018年度~2020年度までの暫定措置とする方向で、具体的な条件と税率はさらに調整していくことになる予定です。
過去の法人税減税策と異なる点として、全ての企業が法人税減税の恩恵受けることができるわけではなく、条件を満たす必要があります。
賃金の引き上げ・設備投資
一つ目の条件として政府は企業に積極的な賃上げと設備投資を求めています。
背景には日本企業の現預金などの内部留保は過去最大の額になっているという事実があります。
この企業が蓄えている豊富な資金を賃金などの人材への投資や工場、研究施設など設備投資へ誘導しようという意図があります。
具体的な目安として賃金を前年度に比べて3%引き上げることが要求されると伝えられています
詳細はこれから議論を進めていくことになりますが、条件を満たす企業は法人税の実効税率を25%前後まで引き下げられることになります。
革新技術への投資
二つ目の条件が革新技術への投資です。
インターネットを家電など身の回りの様々なモノに繋げるIoT(Internet of things)やAI(人工知能)など最新技術への投資に取り組む企業には減税幅を上乗せすることが検討されています。
これらの技術を導入することで企業の生産性を上げることが狙いです。
これまでの日本企業は長時間残業が常態化していました。
しかし、最近は「ブラック企業」問題として頻繁にニュースに取り上げられるようになったため、これからは残業を減らしつつ生産性を上昇させることが求められます。
その解決策の一つがIoTやAIといった最新技術の導入と言われています。
政府は革新的技術の導入を行う企業には実質的な税負担を20%前後までに引き下げる予定です。
法人税引き下げの背景
日本は安倍政権の成立後、経済成長を目指す「アベノミクス」政策の一環で法人税を引き下げてきました。
2013年度の実効税率は37%でしたが、2016年度に29.97%まで引き下げられました。
今回さらなる法人税減税を実施する背景には何があるのでしょうか?
アメリカで法人税減税法案が成立
理由の一つはアメリカの税制改革です。
アメリカではトランプ政権が進めている約30年ぶりの税制改革の議論が大詰めを迎えています。
トランプ大統領は選挙中から大規模な減税を公約として掲げてきました。
改革の内容には個人の所得税率の引き下げや相続税の廃止など多岐にわたりますが、焦点の一つが法人税の引き下げです。
2017年12月には法人税を35%から20%に引き下げる法案が議会で採決されました。
アメリカは先進国の中でも法人税率が高い国でしたが、今回の減税で一気に先進国の平均を下回る税率になる見通しです。
アメリカではアップルやグーグルなどのグローバル企業が課税をアメリカ本国での課税を回避していることが問題になってきました。
今回の減税によりアメリカは税制面での競争力を取り戻し、多くのグローバル企業がアメリカに拠点を移す可能性が指摘されています。
世界中で企業争奪戦が起きている
アメリカだけでなく、世界的に法人税は引き下げられいる方向にあります。
下のグラフは主要先進国の法人税率の推移です。
法人税率の国際比較(1980~2015)
政府税制調査会資料より
1980年代から一貫して税率は低下していることが分かります。
経済のグローバル化が進むなかで、企業の拠点を誘致しようと世界的に法人税の引き下げ競争が起きているのです。
税率を低くすることで外資企業を誘致れば新たな雇用がうまれ、消費も増え結果的に国内の経済成長につなげることを狙っているのです。
反対に法人税が高いままだと国内企業が海外に移転するリスクが大きくなります。
上でも書きましたが、アメリカは法人税率を35%から20%へと引き下げることになりました。
フランスでもマクロン政権が現在33.33%の実効税率を段階的に引き下げ2022年に25%を目指す方針を発表しています。
イギリスの実効税率も現在19%で10年間で11%引き下げられています。
個人は税率が高くてもなかなか外国に移住するという選択肢を取りづらいですが、企業は世界中でビジネスを行っているため、税率を含めてよりビジネスがしやすい環境を求めて移動していきます。
この世界的な流れの中で日本の競争力を維持するためにも法人税の引き下げは急務だと言えます。
起業がしやすい環境に?
今回の減税でより大きな恩恵を受けるのは大企業になると予想されます。
それでも中小企業や起業を考える方にとって大きなチャンスでしょう。
減税の恩恵を受けることができるだけでなく、革新技術の導入によって生産性を上げ、一層ビジネスを飛躍させることが期待できます。
また、社会が新しい技術を導入に前向きになれば新しいビジネスチャンス、市場が誕生することになります。
なにか新しいビジネスがないか考えてみてもいいかもしれません。
まとめ
2018年から実施が検討されている法人税の減税についてまとめました。
現在約30%の法人税が20%に引き下げられることは大きなインパクトがあるでしょう。
停滞が続く日本経済の起爆剤になるかもしれません。
減税の条件に社員の給料を上げることが入っているので、起業だけでなく会社員にとっても給料が増える可能性があります。
具体的な措置については今後詳細を詰めていく方針だということなので、関連ニュースには注意するようにしましょう。
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