投資をする際には,「財務諸表」と呼ばれるものをチェックし,その会社が健全な経営を行っているのか,どのような事業が好調でどこが損失を生んでいるのか,将来も業績は拡大していきそうか,などを見極めることになります。
投資初心者の方や会計学を全く学んだことのない方にとっては,意味の分からない数字や項目が羅列してあるだけで,見ているだけで頭が痛くなってきてしまうようなものもあります。
しかし,財務諸表をしっかりと読み込むことで,その会社のビジネスモデルの強みや弱み,今後の成長の可能性などを知ることができます。
「利回りがいいから」「高配当だから」「直近半年で右肩上がりで伸びてきているから」
こうした理由だけで投資を行っていると,いつか痛い目を見てしまう可能性は非常に高いです。
長期にわたって投資で安定した収益を出すのであれば,大事なのは理論に基づいてしっかりと伸びる企業・安定している企業を見極めていくことです。
その理論の根拠こそが財務諸表なのです。
今回は,投資初心者の方にぜひ学んでいただきたい,財務諸表の見方とみるべきポイントをわかりやすくご紹介していきます!
そもそも財務諸表とは?投資で重要なのは主に3つ!
そもそも財務諸表とはどういったものなのでしょうか?
株式の売買が可能である上場企業においては,経営状況を報告する義務が存在しています。
「〇億円稼ぎました!」と口だけで言っても投資家は信じられませんし,うその報告をしていた場合には投資家の資産に損失が出てしまい,そもそもの株式取引の構造を揺るがすものとなってしまいますよね。
こうした自社の経営状況を広く開示することを,「ディスクロージャー」と呼びます。
そしてディスクロージャーの際に公開される書類のことを財務諸表と呼ぶのです。
この財務諸表のうち株式投資を行う際にチェックするべきものが以下の3つになります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュ・フロー計算書
ここからは個別にどんなものかをご紹介していきます。
貸借対照表とは
貸借対照表はバランスシートやその頭文字をとってBSとも呼ばれます。
貸借対照表では,企業が持っている資産がどのくらいなのか,そのうちのどのくらいが負債でどのくらいが純資産なのか,を表しており,「企業の健康診断書」とも称されることが多いものです。
貸借対照表には次のような項目が記されています。
- 固定資産:保有する建物や土地など
- 流動資産:現金や預金,有価証券や売掛金など
- 流動負債:短期借入金や買掛金など
- 固定負債:長期借入金や社債など
- 資本:資本金や利益準備金など
固定資産や固定負債についている「固定」という単語と,流動資産や流動負債についている「流動」という単語とでは何が違うのでしょう?
一般に土地や建物などの不動産や社債などは短期的に取引されるものではありません。
その反面,売掛金などは決済のタイミングですんなり入ってきますし,買掛金も同様です。
よって固定〇〇というものはお金の出入りに時間がかかるものであり,流動○○というものは出入りがスムーズに行われると覚えておきましょう!
(会計学的に厳密にいうと,1年以内に現金が可能なものが流動の項目に分類され,それ以上なら固定の項目にカウントされます。)
損益計算書とは
損益計算書とは期間中の経営状況を反映しているものになります。
英語では,Profit and loss の頭文字をとって,PLとも呼ばれます。
損益計算書は会社の収益がどこからどのくらいあげられているのか,その際にどのくらいの費用が掛かったのかを表しています。
損益計算書では会社の利益を5つの種類に分類して,どこで発生した収益なのかを明確化しています。
- 売上総利益:売上高から売上原価を引いたもの
- 営業利益:売上総利益から「販売費および一般管理費」を引いたもの
- 経常利益:本業以外で発生した利益の「営業外収益」と費用の「営業外費用」を足し合わせたもの
- 税引き前当期純利益:経常利益に一時的な利益である「特別利益」を加え、「特別損失」を引いたもの
- 当期純利益:税引き前当期純利益から法人税や住民税などの税金を差し引いたもの
読んでみるとわかりますが,売上総利益がざっとわかっている企業のその期の全体的な損益であり,当期純利益が税金や原価を差し引いた結果,最終的に手元に残った利益ということになります。
キャッシュ・フロー計算書とは
キャッシュ・フロー計算書とは,実際に会社に出入りしているお金の流れを反映しているもので,CFとも呼ばれます。
キャッシュ・フロー計算書においては,”営業活動によるキャッシュ・フロー”,”投資活動によるキャッシュ・フロー”,”財務活動によるキャッシュ・フロー”の3つの種類で出入りするお金を区別しています。
営業活動によるキャッシュ・フローとは,本業による収益と支出の状況のことです。
この数字が大きければ,本業の調子が良いことを表しており,反対にこの数字が小さくなっている場合には本業はいまいちだったということになります。
投資活動によるキャッシュ・フローとは,持っている有価証券や不動産などの売買によってどのくらい損をしたり得をしたかを表しているものです。
企業は現金だけではなく,不動産や有価証券という形で資産を保有しており,時にそれらの売却や購入を行います。
また,本業の力を入れるために工場や機械設備などを投じることがあれば,投資によるキャッシュ・フローにマイナスの値が加えられるので,成長期に事業拡大を行っている企業では,投資によるキャッシュ・フローがマイナスになることも多くあります。
最後の財務活動によるキャッシュ・フローとは,株主への配当の支払いや借入金による資金調達などが反映されます。
積極的に借り入れを行い事業を拡大していく企業ではプラスの値をとることが多くなるのが特徴です。
財務諸表の正しい見方とは?チェックするべきポイントはどこ!?
財務諸表に関して多少の理解ができたところで,実際に企業の財務諸表を読むときにはどこに目を向けたらよいのかを解説していきます。
貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書のいずれも違った情報を教えてくれる素材ですので,どれもないがしろにすることはできません。
しっかりとみるべきポイントを理解して,企業の状況を正しく把握していきましょう!
貸借対照表で見るべきポイント
貸借対照表で見るべきポイントは大きく分けて4つあります。
- 自己資本比率
自己資本比率は,資本を純資本の大きさで割った割合のことで,事業の元手となる資本がどのくらい自分のものであるかを表しています。
この値が大きい企業ほど,資本の返済の必要がないので,健全な経営をしていると考えられますね。
目安としては40%を超えていると優良企業と自己資本比率の観点では判定できるでしょう。
- 流動比率
流動比率とは,流動資産を流動負債で割ったものに100を掛けた値のことです。
この値が100%であれば,1年以内に現金化できる資産と負債がとんとんということになりますので,100%以上ならば現時点での負債の支払い能力があることが分かります。
一般的に150%以上あれば安全、200%以上が理想と考えられています。
- 当座比率
当座資産を流動負債で割って,100をかけたものを当座比率といいます。
売掛金の貸し倒れなどによって仮に十分な流動比率があったとしても負債の返済が間に合わないこともあります。
そうした事態に直面しても当座資産からの支払が可能かどうかをチェックできるのが当座比率です。
当座比率は一般的に、100%あれば良いとされています。
- 固定比率
資本のうちどのくらいを固定資産が占めているかを表したのが固定比率です。
企業としては,いつ現金化できるかわからない固定資産よりも1年以内に現金化できる流動資産の方が,資産として持つには好ましいですよね。
ですから流動比率は低いほど良いと考えられています。
損益計算書で見るべきポイント
損益計算書で見るべきポイントは大きく5つです。
- 売上高営業利益率
売上高営業利益率とは,営業利益を売上高で割って,100をかけたものになります。
これによってその会社の売上高のうち,どのくらいが本業によるものなのかを把握することができます。
営業利益は会社の主軸となる収入ですので,この値によって会社が狙い通りの収益が出ているのか,それとも本業以外で儲けているだけなのかがわかります。
目安として1~3%が標準的な水準で、5%以上あれば優良企業といえるでしょう。
- 売上経常利益率
売上経常利益率は,経常利益を売上高で割り100をかけたもので,総合的に見て企業が効率の良い経営を行っているかどうかを判断することができます。
仮に営業利益が高く出ていたとしても,借入金の利子が高くついていてしまっては手元に残るお金は小さくなってしまいます。
ですから,この値が高いような企業では,収益性ももちろんですが,金融収支や資金調達も良好であることが分かります。
目安としては先ほどの売上高営業利益率と同様に1~3%が標準で、5%以上あれば優良と考えられます。
- 売上高販管費率
売上高販管費率とは,販管費を売上高で割り100をかけたものになります。
売り上げ高が高かったとしても,その分コストも増えてしまっては意味がありません。
売上高販管費率が低い企業は,少ないコストで高い売り上げを出しているこうりつのよいきぎょうということになりますね。
日本企業の売上高販管費率は平均して15%程度ですが,業種やビジネスモデルによって大きく数値が異なりますので,競合他社などとの比較をしてみるのがおすすめです!
- ROA(総資産利益率)
ROAとは,総資産に対してどのくらいのリターン(=純利益)が出ているかを表したものです。
目安としては5%以上であれば優良企業で,10%を超えてくるとかなり理想的な状況であるといえるでしょう。
- ROE(自己資本利益率)
ROEは資本に対してどのくらいの純利益が生まれているかを表しています。
ROEの比率は15%以上が理想ですが、20%以上だと非常に優良な企業となります。
キャッシュ・フロー計算書で見るべきポイント
理想的な企業のキャッシュ・フロー計算書は次のようになっている状況というのが一般的な考え方です。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー→プラス
- 投資活動によるキャッシュ・フロー→マイナス
- 財務活動によるキャッシュ・フロー→マイナス
投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローは成長企業で,事業を拡大している場合にはマイナスの値になるものですので,マイナスになっても何ら焦ることはありません。
仮にこれらがマイナスであっても,本業の収益である営業活動によるキャッシュ・フローが十分にプラスならば,健全な経営をしていると考えてよいでしょう。
逆に考えると,営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスなのに,他の項目がプラスになっているケースには注意が必要です。
このケースでは,本業で儲けが出ていないにもかかわらず,設備投資や事業拡大を行っている場合があり,現状に見合わない経営をしていることから,それほど優良な企業とは言えない状況となっていると考えるべきでしょう。
投資・資産運用の勉強はどこでする!?本・勉強会・セミナー?
投資や資産運用について興味を持ったものの、何をベースに勉強したら良いのかわからないという方が大多数でしょう。
先ほど紹介した財務諸表の読み方だけでは、資産運用はうまくいきません。
また、最近ではGoogleで簡単に調べることができるようになったからこそ、嘘の情報や信憑性の高い情報を読み手が判断する必要が出てきました。
お金に関わることですから、しっかりとした情報で勉強したいですよね。
ここからは、資産運用や投資の勉強で役立つ媒体の特徴をご紹介していきます。
その1:投資関連の本や新聞を読んで勉強する!
やはり王道といえば本を購入して勉強するという方法ですね。
書籍の購入には代金がかかってしまうものの、やはり出版というハードルを超えていることもあり、情報の質は比較的高いものが多いと言えるでしょう。
投資の本質的な原理などを理解するには書籍がもってこいです。
しかし、日々変化するマーケット情報などをリアルタイムで追いかける場合には、出版からなかなか情報がアップデートされない書籍はふさわしくありません。
そうした情報のソースとしては、新聞の「マーケット・投資」の欄を参考にすると良いでしょう。
基本的には大企業の動向などで情報は埋まってしまいますが、世の中の流れを理解するには十分といえます。
その2:投資家や著名人のブログやSNSをチェックする!
もう少し手軽な方法で行くとネットでの情報収集があります。
しかし、単にネットサーフィンをして情報を掴むのではなく、ある程度名前が知られているソースをもとにリサーチすることをお勧めします。
というのも、やはり匿名のブログなどでは信頼性に乏しいものも多かったり、リサーチの根拠づけが行われていないものも散見されます。
ある程度有名な方の発信した情報であれば、多くの人の目にも触れており、間違っている場合にはすぐさま指摘が入ります。
ですからまずは有名な投資家や企業の経営者などをSNSでフォローして、世の中のトレンドなどを軽く掴めるようにしておくと良いですね。
その3:セミナーや勉強会に参加する
本やネットの情報だけでは不安、一緒に勉強する仲間が欲しい、といった方であればセミナーへ参加してみるのも良いでしょう。
講師の方に自分が抱えている不安を直接ぶつけることができる機会ですので、勉強もスムーズに進むようになります。
また、同時期に資産運用を始めた仲間とも出会うことができるので、情報交換をしたり、一緒に勉強に打ち込むことができる環境づくりにつながります。
モチベーションと勉強のしやすさの観点から見て、セミナーはかなり有効な手段と言えるでしょう。
その反面、参加費がかさんでしまうので初心者ではなかなか投資の運用益を差し引いても赤字になってしまうケースもあります。
勉強代として割り切るか、すでにある程度の結果が出ている方には最適な方法と言えるでしょう。
その4:アプリなどでデモトレードで実践経験を積む!
いくらインプットした情報が多くても、投資がうまく行くとは限りません。
実践経験がないまま知識だけが増えていってしまっても、勉強した以外の状況には対応できない頭でっかちな状況になってしまいます。
そこで自分のお金を使うことなく、実践経験を積むことができる「デモトレード」を練習しておくと良いでしょう。
デモトレードはハイリスク・ハイリターンで短期的な売買を繰り返すようなものを擬似的に体験することができる環境です。
ただ、デモトレードでうまくいったからと言って本番でもそうなるとは限りません。
はじめのうちは堅実に、少額での投資からスタートするように注意しましょう!
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