個人事業主の方の中には、そろそろ税金対策などもかねて法人化を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、個人事業主が法人化するメリットとデメリットをご紹介します。法人化することで個人事業主の時には受けられなかった節税メリット等を享受することができます。
ただし、タイミングを間違えると法人化メリットを受けられないこともあります。ここでは、個人事業主の方が気になる、結局いつ法人化したらいいのか、という疑問にも答えていきたいと思います。
個人事業主が法人化する8つのメリット
①一定以上の所得なら、法人税のほうが安い
個人向けの所得税と、法人向けの法人税の税率は違います。
所得税率
課税所得 | 所得税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円を超 330万円以下 | 10% |
330万円を超 695万円以下 | 20% |
695万円を超 900万円以下 | 23% |
900万円を超 1,800万円以下 | 33% |
1,800万円を超 4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
法人税率
課税所得 | 税率 |
---|---|
所得800万円以下 | 15% |
所得800万円超 | 23.2% |
所得税は所得金額ごとに細かく税率が設定されているのに対し、法人税は、2種類しか税率が存在しません。
所得税と法人税の税率だけで考えると、課税所得が900万円を超える見込みが出てきたら、個人事業主は法人化を考え始めたほうがいいでしょう。
ただ、法人には、法人税のほかに法人事業税や法人住民税など、いくつかの税金がかかります。
法人化する場所によっても法人にかかる税金は変わるので、自分が法人を設立しようと思っている場所の税率も調べて、比較・検討しましょう。
基本的には課税(事業)所得が900万円を超えるかどうかが、法人化する目安と考えてよいでしょう。
②個人事業主より信用が高い
法人化すると、個人事業主の時よりも信用度が上がります。
個人事業主はいつでも・誰でも始めることができて、その人の情報が世の中に出回っていないことも多いです。
法人化すると、役員の名前や決算日などの会社情報を謄本で、誰でも確認することが出来ます。
法人化して信用を上げると、大きな企業と取引がしやすくなったり、金融機関から融資を受けやすくなります。
どこの誰だかわからない人より、身元がはっきりしている人と取引したいと思うのは、当然ですよね。
もちろん、個人事業主だと、大企業と取引ができないとか、融資が受けられないとか、そういうわけではありませんよ。
③給与所得控除が受けられる
個人事業主が法人化して、自身が貰うお金を、法人から給与としてもらうことで、給与所得控除を受けることが出来ます。
個人事業主の所得は、法人(会社)からもらう給与ではないので、給与所得控除を利用することが出来ません。
平成29年度~平成30年度の給与所得控除額は以下の通りです。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
180万円以下 | 収入金額×40% 65万円に満たない場合には65万円円 | |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 | |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 | |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 | |
1000万円超 | 220万円(上限) |
個人事業主が受けられる主な控除として、青色申告による控除がありますが、これは最大年間65万円です。
給与所得控除の額と見比べても、その差は歴然ですね!
④退職金制度活用して節税が出来る
個人事業主が法人化して、もらう給与所得の額を少し下げると、将来退職金を受け取ることが出来ます。
退職金をもらわずに、その分給与に含めることも出来ますが、退職金制度を活用すると、節税が出来るんです。
退職金は「退職所得」という区別になり、退職所得の求め方は以下の通りです。
退職所得=(退職金支給額-退職所得控除)×1/2
また、退職所得控除は以下の通りです。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (A – 20年) |
国税庁のホームページより引用
退職金制度を利用すると、総合的に見て所得税を節税することが出来るんです。
⑤決算日を自由に決めて決算対策が出来る
個人事業主は、1月~12月の間の収入をもとに、確定申告をします。
それに対して、法人化すると決算月を自由に決めることが出来ます。
自由に決算月が決めれると、決算を繁忙期と離して設定することにより、年間の売り上げを予測しやすくしたり、逆に決算月と繁忙期を合わせて、士気の向上を目指したりと、その法人にあった決算時期を設定することが出来ます。
⑥福利厚生を活用して節約できる
法人が利用でいる福利厚生として、保険や社宅制度があります。
給与を上げると、社会保険料も上がるので、負担は増えますが、福利厚生制度を活用して会社でお金を払うと、その分のお金が損金として算入されて、余計な出費を防ぐことが出来ます。
例えば、家賃分の給与を引き上げる代わりに、社宅として会社が家賃を払い、一部を給与から天引きするという形にすることで、大幅に節約・節税することが出来ます。
⑦経費の範囲が広い
個人事業主が経費として認められるものは、消耗品費や旅費交通費など、いくつかありますが、法人化することにより認められる経費の範囲が一気に広がります。
具体的には、個人事業主が経費として認められるものすべてに加え、給料や保険料、住宅費などです。
⑨事業継承ができる
個人事業主は、事業主として認められているのはその本人のみです。
一方、法人化すると、認められるのは法人そのものとなります。
ですので、次の後継者に事業を引き継いだとしても、法人化していれば、手続きだけで事業の継承が出来ます。
逆に法人が事業をやめようとすると、面倒な手続きや清算をしなくてはなりません。
個人事業主だと、その人が辞めようと思ったらすぐに辞められるし、事業の継承もできません。
そういうところも、個人事業主と法人の信用の差につながっているのかもしれませんね。
個人事業主が法人化する4つのデメリット
①法人設立に費用がかかる
法人を設立しようとすると、かなりのお金がかかり、具体的な額としては、合同会社が6万円~10万円、株式会社が21万円~25万円です。
法人設立の費用の内訳は、以下の通りです。
- 定款に貼る収入印紙代 : 4万円(電子定款の場合は不要)
- 公証人に払う手数料(定款の認証): 5万円(株式会社のみ)
- 定款の謄本手数料 : 約2000円(株式会社のみ)
- 登録免許税(合同会社) : 6万円または資本金の額の0.7%のうち高い方
- 登録免許税(株式会社) :15万円または資本金の額の0.7%のうち高い方
これに対して、個人事業主が開業する際にかかる費用は0円ですので、事業開始の費用は、法人化の大きなデメリットといえるでしょう。
②赤字でも税金がかかる
個人事業主は、年間の課税所得が0円だと、所得税や住民税はかかりません。
しかし、法人化すると、いくら赤字が大きくても法人住民税という税金を払わなくてはなりません。
法人住民税は、会社の利益に関係なく、法人として存在するだけで発生する税金です。
法人住民税は、最低でも年間7万円です。
③会計処理が煩雑になる
法人化すると、個人事業主はの時よりも、会見処理がはるかに煩雑になります。
個人事業主は、確定申告するだけでOKでしたが、法人化すると、法人決算書というものが必要になり、なかなか個人で処理することが難しくなります。
多くは税理士にやってもらうことが多いですので、その分の費用も掛かりますね。
④従業員分の社会保険料の負担がある
個人事業主は、社会保険への加入は任意であるケースもありますが、法人化すると、労災保険・雇用保険・厚生年金保険・健康保険・介護保険、すべてに加入することが義務付けられます。
そして、従業員分の社会保険料は、一部を会社が負担する決まりになっていて、その分のコストもばかにならないです。
個人事業主が法人化するタイミングはいつが良い?
個人事業主が法人化するタイミングはいくつかありますが、原則支払う税金が大きなポイントです。
法人化するタイミングは、法人税か消費税の2つの税金が基準になります。
法人税を目安にするなら、個人事業の売り上げが800万円を超えたあたりから、法人化したほうが良いといわれています。
消費税を目安にするなら、2年前の課税売上高が1,000万円を超えて、個人事業主として消費税の納税義務者になってしまうというタイミングで法人化すると、再び最長2年間の消費税納税義務の免除が適用されます。
法人化するなら、この2つの税金を目安にしましょう。
事業が軌道に乗ってきたら法人化がおすすめ!
個人事業主が法人化するのは、なかなか手間も費用も掛かることです。
事業を始めてすぐは、安定していないことが多いので、手軽に始められる個人事業主として始めるのが良いでしょう。
そして、事業が軌道に乗って、利益も安定してきたら、法人化することを検討することをお勧めします。
法人化には、デメリットもありますが、ある程度の規模になるとメリットのほうがはるかに多いです。最近は、会社設立の手続きをすべてやってくれる業者もあるので、是非、法人化について検討してみてください!
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