106万円の壁、130万円の壁とも呼ばれ、パート主婦の働き方に大きな影響を与えてきた社会保険上の扶養条件。
この度、令和2年6月5日に公布された年金制度改正法によって、厚生年金の条件が緩和され、これまで勤務先の社会保険の加入対象外だったパート・アルバイトも社会保険に加入することが可能となりました。
具体的には、現在、社会保険に加入せず、年収106万円〜130万円未満の扶養内で働いているパートの方が改正の影響を受けることになります。
今回は、改正後の厚生年金の加入要件とパート主婦の働き方に与える影響を解説していきます!
パート主婦必見!2022年10月から開始、年金制度改正法の変更点とは?
令和2年の年金制度改正法の変更点を確認していきます。
改正前の厚生年金加入条件を確認しよう
まず、改正前の厚生年金加入要件は以下の通りでした。
- 【1】週間の所定労働時間、および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である
または、
- 【2】以下5つの条件を全て満たす方
1.所定労働時間が週20時間以上
2.賃金が月額8.8万円以上
3.1年以上の勤務見込みがある
4.勤務先の従業員数が501人以上
5.学生ではない
今回、改正のポイントとなったのは、②の内、「1年以上の勤務見込みがある」「勤務先の従業員数が501人以上」という2点です。
変更点①:大手企業だけではなく中小企業で働くパートも対象に
改正の主な変更点は、勤務先の従業員数。
具体的には、2022年10月には、101人以上の会社を対象に、2024年10月には51人以上の企業までが対象となります。
この変更によって新たに厚生年金の加入対象となる人数は以下のように増えることになります。
従業員数 | 51人超え | 101人超え |
新たに厚生年金に加入対象となる人数 | 65万人 | 45万人 |
ようは、これまで厚生年金に加入できるのは大企業で働くパート、というイメージがありましたが、規模の小さい中小企業・ベンチャー企業で働くパートの方々も今後段階的に厚生年金に加入できることになります。
変更点②:1年以上の勤務期間要件が撤廃
これまでは1年以上の勤務期間が必要でしたが、改正によって、フルタイムの被保険者(正社員)と同様に2ヶ月を超えた勤務期間があれば厚生年金加入対象となります。
パート主婦が社会保険に加入するメリットは?
多くの働くママに影響のある今回の改正ですが、改めてパートで勤務先の社会保険に加入するメリットをみていきます。
メリット①:老後に貰える年金額が増える
これまで配偶者の社会保険の扶養に入り、国民年金を受け取ることになっていたパートの方も厚生年金への加入によって老後に貰える金額は以下のように増やすことができます。
勤続年数 | |||||
月収 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 | |
10万円 | 550円 | 1,650円 | 2,750円 | 5,500円 | |
13万円 | 715円 | 2,145円 | 3,575円 | 7,150円 | |
15万 | 825円 | 2,475円 | 4,125円 | 8,250円 | |
20万 | 1,100円 | 3,300円 | 5,500円 | 11,000円 |
※金額は全て月額
年収120万円(月収10万円)の場合、10年働くと将来貰える年金額は月額5,500円、年額66,000円増やせる計算になります。
【社会保険の加入要件「月額8.8万円」に注意!?】
社会保険の加入要件となる「月額8.8万円の賃金」の部分ですが、これは基本給のみで計算され、以下の項目は賃金から除外されます。
- 臨時に支払われる手当やボーナスなど
- 時間外労働、深夜労働に対して支払われる賃金
- 家族手当、通勤手当など最低賃金法で算入しないことが定められている賃金
つまり、会社の業績が好調で賞与が支給されたため、たまたま年収が106万円を超えた、という場合でも月額の基本賃金が8.8万円未満であれば、社会保険の適用対象とはなりませんので注意してください。
メリット②:傷病手当などの社会保障を受けられる
厚生年金とともに健康保険にも加入することになるので、健康保険から支給される各種手当を受けられます。
例えば、病気やケガで会社を休まざるを得なくなった時に、休業前の賃金の3分の2が支給される傷病手当などが利用できるようになります。
106万円未満で扶養内パートをするべき?厚生年金に加入するべき?
これまで51人以上501人未満の会社で、週20時間以上、月額8.8万円以上の給料を受け取っていた方は、今後、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するかどうかの判断が求められます。
加入によって社会保障が手厚くなったり、将来貰える年金額が増えるというメリットがある一方で、社会保険料が給与から天引きされるため手取り額は現在と比べると減少する可能性があります。
社会保険料はだいたい給与の15%程度なので、月収10万円のパート主婦であれば、月15,000円ほどが天引きされることになります。
この天引き額に対して、将来何歳までいきていれば支払った年金額を回収できるのでしょうか?
年金支給の計算方法は複雑なため、あくまで簡易的な計算をしてみたいと思います。
社会保険料の内、厚生年金の支払いに当てられるのは給与の9%程度なので、仮に年収120万円だと過程すると、年金の自己負担額は約年10.8万円。厚生年金に加入後10年間勤務した場合、自己負担額の合計は108万円ということになります。
これに対して年収120万円(月収10万円)で10年働いた時に貰える年金額は月5,500円アップ(表参照)、つまり年間66,000円増えるため、108万円を回収するのにかかるのは約16年。
65歳から年金支給を受けると想定すると、81歳以上になれば支払った保険料を回収できる見込みになります。女性の平均寿命は87歳(2018年時点)なので、多くの方が受給総額が保険料負担を上回ることになります。
家庭のライフスタイルによって、今は手取りを多くして手元のお金を増やしたいというケースもあると思いますので、厚生年金に加入するべきかどうかはご家庭の状況に合わせて判断するようにしてください。
以下の記事ではいくらパートで稼げばお得になるかを解説していますので、参考にしてみてください。
年収と扶養の関係を詳しく理解しておこう!
今回は、厚生年金の加入条件の変更点についてまとめてみました。
社会保険の106万円、130万円の壁の他にも、所得税の扶養要件である103万円の壁や配偶者控除を受けられなくなる201万円の壁など、年収と扶養は様々なルールがあります。
どれくらいの年収だとどういった恩恵が受けられるのか知っておくことはご自身の働き方を考える上でも大切です。
以下の記事ではパートと扶養の関係について詳しく解説していますので、宜しければご覧ください。
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