選択制夫婦別姓の広まりなどにより、事実上の夫婦関係にありながらも入籍をしない事実婚をする人々が増えつつあります。
事実婚を検討する上で疑問になることの1つが、法律上の夫婦ではないけどパートナーの扶養に入れるの?ということだと思います。
ここでは、事実婚と扶養の関係性について詳しく解説していきます。
事実婚と法律婚の扶養の違いとは
結論からいうと、事実婚では、税金上の扶養は受けられないが、社会保険上の扶養は受けられます。
以下に具体的に利用できる制度の違いを図で解説します。
法律婚 | 事実婚 | ||
税制面 | 配偶者控除 | ○ | × |
医療費控除 | ○ | × | |
生命保険料控除 | ○ | × | |
社会保険料控除 | ○ | × | |
法定相続人 | ○ | × | |
相続税の配偶者控除 | ○ | × | |
社会保険面 | 健康保険の扶養 | ○ | ○(条件あり) |
年金の扶養 | ○ | ○(条件あり) | |
遺族年金の受け取り | ○ | ○(条件あり) |
詳しい内容を解説していきます。
税金と社会保険上で扶養の定義が異なる
まず、大前提として税金の扶養と社会保険の扶養ではそれぞれ定義が異なり、内縁関係を夫婦として認めるかどうかが異なります。
まず税法上の配偶者は、民法の定める婚姻に基づく配偶者を指すため、事実婚のパートナーは税金の扶養等を受けることが出来ません。
配偶者控除の対象となる配偶者とは、民法の規定により効力が生じた婚姻に基づく配偶者をいいます。いわゆる内縁の妻など、事実婚の相手方は、このような民法の規定による配偶者ではありませんから、配偶者控除の対象とはなりません。(国税庁HP)
一方、社会保険上の扶養では、婚姻届を出していない内縁関係であっても配偶者と認めれています。
この法律において『配偶者』、『夫』及び『妻』には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。(厚生年金保険法)
相続や所得税の配偶者控除は受けられない
事実婚は、税法上は他人扱いとなるため、所得税の配偶者控除や相続税の配偶者控除が受けられません。
さらに、事実婚の配偶者は、法定相続人に含まれません。
故人に親や子供、兄弟など法定相続人がいる場合には、パートナーが全く財産を受け取ることができないこともありえます。
そのため、遺言書などでお互いの財産について取り決めをしておく必要があります。事実婚のパートナーへ相続を渡す方法は、後半で解説します。
事実婚(内縁)の事実を証明するにはどうすればいい?
厚生年金や健康保険では、あくまで実態に基づき、夫婦かどうかの判断がなされます。
実際に内縁であるかどうかを判断するための書類としては、住民票、賃貸借契約書、民生委員発行の事実婚証明書または内縁関係証明書などがあります。
最も信頼度が高いといわれているのが住民票です。住民票の続柄の項目に「妻(未届)」や「夫(未届)」と記載されていれば、有力な証拠となります。
住民票の続柄を変更する際は、お近くの市区町村役所に行き、世帯主変更届を提出してください。
なお、配偶者であれば誰でも社会保険の扶養に入れるかというとそうではありません。
具体的な被扶養者の条件は下記になります。(事実婚の場合)
- 被保険者と同居していること
- 年間収入※130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
事実婚の子供は扶養に入れる?
それでは、事実婚で子供がいる場合、子供は親の扶養に入れられるのでしょうか。
自分たちの間に子供ができた場合
まず、自分たちの間に子供が生まれた場合、何も手続きをしなければ、夫と子供との間に法律上の親子関係はありません。
そこで、必要になるのが「認知」です。認知とは、非嫡出子と父との間に法律上の親子関係を成立させることです。
認知をするには、役所で認知届を提出することで成立します。認知をすると、正式な親子関係が成立するため、通常の親子と同様、扶養や相続の権利が生まれることになります。
パートナーに連れ子がいる場合
社会保険の扶養では、養子縁組をしていない事実婚の配偶者の連れ子も被扶養者として認定されます。
ただし、事実婚の場合には、被扶養者が子供の生計を担っていること、そして同居していることが必要になります。
連れ子との間に養子縁組をした場合には、親と子供の間に法律上の親子関係が結ばれるため、社会保険、税金ともに扶養の対象となります。
【補足】事実婚の配偶者に財産を相続する方法は?
前述した通り、内縁関係の配偶者は法定相続人に含まれないため、どれだけ長い期間連れ添っていたとしても、財産を相続する権利がありません。
事実婚のカップルが財産を相続する方法は以下の通りです。
- 遺言を残す
婚姻関係がなくても遺言でパートナーに財産を残すことで、パートナーは財産を受け取ることができます。
- 生命保険の受取人にパートナーを指定する
保険会社によって、内縁の妻または夫を生命保険の受取人にできないことがあるので注意してください。
- 生前贈与をする
贈与税は年間110万円までは非課税で渡せるので、それを活用しパートナーに財産を与えていく方法です。ただし、2,000万円まで非課税となる贈与税の配偶者控除は利用できないので気をつけてください。
- 特別縁故者として財産請求する
こちらは親や祖父母、子供、孫、兄弟姉妹など相続人が一人もいない場合のみ活用できます。特別縁故者とは、故人と生計をともにしたり、療養看護に務めた相続人以外の人を指します。こちらは配偶者本人が家庭裁判所への申し立てすることが必要です。
婚姻関係にある配偶者が利用できる1億6000万円までの相続税の控除は、内縁関係の場合は利用できません。
場合によっては、多額の相続税がかかるケースもありますので、事前に相続税対策をしておくことをおすすめします。
なお、遺族年金に関しては、法律上の夫婦だけではなく、事実婚の夫婦も受給対象になります。
遺族年金を受け取るには、年金事務所に申請を行い、審査が通れば受給が可能となります。
以上、今回は、事実婚夫婦の扶養に関して解説をしてきました。
まとめると、事実婚の夫婦は、税金面の扶養には入れないが、社会保険の扶養には入れるということです。
金銭面だけをみると、婚姻関係のある夫婦が有利になりますが、事実婚には、夫婦別姓を続けられる点や離婚履歴が残らないといったメリットも挙げられます。
現代では、多様な夫婦のあり方がありますので、お互いの価値観にあった理想の関係を築くことが大切ですね。
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