遺族年金という言葉を聞いたことはあっても詳しい内容、いくら受給できるのか、誰がそもそも受給できるのか、手続きはどうなっているのかなど詳細を知らない方は多いのではないでしょうか。
そもそも遺族年金は、簡潔に言うと、「亡くなった方によって生計を維持されていた家族が生活維持のために受け取れる年金のことです。」
一口に遺族年金と言っても遺族厚生年金や遺族基礎年金など複数の種類があります。
遺族年金を受給できる人は限られており、受給額も状況に応じて様々です。
年金を受け取るためには一定の条件をクリアしておかなければいけませんし、年金によっては一定期間のみしか支給されないものもあります。
人によっては複数の遺族年金を受け取ることも可能です。
その他にも手続きに少し難解な点があるなど、遺族年金の制度は複雑になっています。
そこで、以下ではそれらを噛み砕きながら分かりやすく解説していきます!
POINT!
- 遺族年金とは何かを理解できる
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給額、受給資格、受給期間、手続き方法などを知れる
- 上記2つの遺族年金以外の詳細も解説
- 各ケースごとに受給できる遺族年金を紹介
遺族年金について基礎から解説!
遺族年金とは?
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
出典:日本年金機構Webサイト
つまり、遺族年金は国民年金や厚生年金に加入した人が死亡した時に、その亡くなった方によって生計を維持されていた家族が生活維持のために受け取れる年金のことです。
遺族年金の種類
遺族年金の中で受給者が多い代表的なものとして、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。
以下でこれら2つを詳しく説明します。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、受給要件を満たしている場合、亡くなられた方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができます。
出典:日本年金機構Webサイト
この年金のポイントは、18歳以下の子どもがいる家庭でないと受け取ることができないということです。
受給条件は以下で詳しく説明しますが、亡くなった方によって生計を維持されており、子育て世代の子どもがいる家庭に本年金は支給されます。
遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者または被保険者であった方が、受給要件を満たしている場合、その遺族が受け取ることができます。
出典:日本年金機構Webサイト
遺族厚生年金は、遺族基礎年金とは異なり、18歳未満の子どもがいない場合でも受け取ることができます。
この年金は厚生年金の加入者が亡くなった場合にその遺族に支給されるため、主に会社員・公務員の方の遺族が対象になります。
一方で、遺族基礎年金は社会人の誰もが加入する国民年金の加入者が対象なので被保険者全員が対象になります。
ただし、どちらの年金も後に解説する一定の条件を満たさなければ受給できません。
遺族年金の受給資格、手続き方法を解説
遺族基礎年金の受給資格は?
支給要件 | 被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡した時。(ただし、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分の2以上あること。) ※ただし平成38年(2026年)4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。 |
対象者 | 死亡した者によって生計を維持されていた、 (1)子のある配偶者(2)子 子とは次の者に限ります ・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子 ・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子 |
出典:日本年金機構Webサイト
18歳以下の子どもがいる家庭でないと受け取ることができないということは、先ほど説明した通りです。
子どもが18歳を超えると子育て世代の子ではないと見なされ、基本的には受給が終了します。
また、もう一つのポイントとして、亡くなった方によって生計を維持されていた場合にしか年金を受け取れないという点です。
具体的には以下の2点を満たしている必要があります。
- 同居していること(別居の場合でも仕送りをしている、健康保険の扶養親族等であれば認められます)
- 遺族の前年の収入が850万未満もしくは所得が655万5千円未満であること
この2点を満たしている遺族であれば支給対象になります。
遺族厚生年金の受給資格は?
支給要件 | 1.被保険者が死亡したとき、または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき。(ただし、遺族基礎年金と同様、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分の2以上あること。) ※ただし平成38年(2026年)4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。 2.老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。 3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき。 |
対象者 | 死亡した者によって生計を維持されていた、 ・妻 ・子、孫(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者) ・55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる。) ※30歳未満の子のない妻は、5年間の有給給付となります。 ※子のある配偶者、子は、遺族基礎年金も併せて受けられます。 |
出典:日本年金機構Webサイト
18歳未満の子どもがいる場合は、遺族厚生年金、遺族基礎年金共に受給の可能性があります。
先ほども少し説明しましたが、厚生年金の加入者が亡くなった場合にその遺族に支給される年金なので、自営業の遺族はその対象にはなりません。
主に会社員・公務員の遺族が支給対象になります。
支給対象として、妻には年齢制限がありませんが、亡くなった方が女性である場合、その夫は55歳以上でなければ支給の対象になりません。
本年金の支給対象は祖父母までと遺族基礎年金と比べると支給対象範囲が広くなっています。
支給対象範囲が広い分、優先順位がつけられています。
最も優先順位が高い対象者は、子どもがいる配偶者です。
その後、子ども→子どもがいない配偶者→父母→孫→祖父母と続きます。
遺族基礎年金の手続き方法は?
手続きに必要な書類等
【必須書類】
- 年金請求書
- 戸籍謄本
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 請求者の収入が確認できる書類
- 子の収入が確認できる書類
- 市区町村に提出した死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義)
- 印鑑
【死亡の原因が第三者行為の場合に必要な書類】
- 第三者行為事故状況届
- 交通事故証明または事故が確認できる書類
- 確認書
- 被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類
- 損害賠償金の算定書
【その他に状況によって必要な書類】
- 年金証書
- 合算対象期間が確認できる書類
請求書の提出先
基本的に提出先は市区町村の役所の窓口です。
死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、近くの年金事務所もしくは年金相談センターになるので、注意が必要です。
手続きが少し複雑になっているので、提出書類をしっかりと確認、準備した上で役所の窓口もしくはお近くの年金事務所、年金相談センターに行きましょう。
遺族厚生年金の手続き方法は?
遺族厚生年金の手続き方法は、遺族基礎年金の場合とおおむね同様です。
手続きに必要な書類等
【必須書類】
- 年金請求書
- 戸籍謄本
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 請求者の収入が確認できる書類
- 子の収入が確認できる書類
- 市区町村に提出した死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
- 受取先金融機関の通帳等(本人名義)
- 印鑑
【死亡の原因が第三者行為の場合に必要な書類】
- 第三者行為事故状況届
- 交通事故証明または事故が確認できる書類
- 確認書
- 被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類
- 損害賠償金の算定書
【その他に状況によって必要な書類】
- 年金証書
- 合算対象期間が確認できる書類
請求書の提出先
提出先は、近くの年金事務所もしくは年金相談センターになります。
請求書の提出先のみが遺族基礎年金の請求方法と異なります。
再婚した場合は遺族年金を受け取れなくなる?
再婚すると、年金受給の対象であった者の遺族基礎年金、遺族厚生年金受給権がなくなります。
しかし、その子どもは18歳になる年度の年度末まで年金を受け取り続けることができます。
その他の遺族年金も解説!
遺族共済年金とは?
遺族共済年金とは2015年10月に遺族厚生年金に統合され、廃止になった年金制度です。
しかし、制度が統合された2015年10月以前に遺族共済年金を受け取る権利が発生していた人や統合前からこの年金を受け取っていた人には未だ適用される制度です。
対象者の大前提として、2015年9月30日以前に亡くなった方のみが対象です。
また、亡くなった方が共済年金もしくは障害共済年金に加入していることが受給の絶対条件になります。
もしくは、退職共済年金をすでに受給している、退職共済年金の受給資格を満たしている必要があります。
手続き方法や受給対象者の条件は遺族厚生年金とおおむね同様になっています。
寡婦年金って?
第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなった時に、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間支給されます。
出典:日本年金機構Webサイト
まずそもそも「寡婦」という言葉は、「夫と死に別れて再婚しないでいる女性」のことを指します。
そのため、支給対象は女性に限られます。
女性の中でも亡くなった夫に生計を維持されており、遺族基礎年金、遺族厚生年金を受給していない妻が支給の対象です。
大前提として夫が自営業を営んでおり、国民年金の保険料を25年以上納めておかなければ寡婦年金は受け取ることができません。
夫が本来受け取るはずだった老齢基礎年金の3/4の額が妻に支給されます。
以上の条件を満たしていても妻が老齢基礎年金を65歳よりも前に繰り上げ受給している場合は、寡婦年金は受給できなくなるので注意が必要です。
あくまでも目安になりますが、もし夫が30年間保険料を規定通り納めていた場合、妻が受け取れる寡婦年金は年額45万円程度になり、60歳から64歳までの5年間のみ受け取ることができます。
死亡一時金とは?
第1号被保険者として保険料を納めた月数(4分の3納付月数は4分の3月,半額納付月数は2分の1月,4分の1納付月数は4分の1月として計算)が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。
出典:日本年金機構Webサイト
死亡一時金も遺族基礎年金、遺族厚生年金共に受け取ることのできない人が支給対象になります。
寡婦年金とは違い、男女共に支給対象となります。
しかし、あくまでも亡くなった配偶者が自営業を営んでおり、国民年金に加入していた場合(第1号被保険者)にのみ受給の可能性が発生します。
支給額は亡くなった方が保険料をどれだけの期間納めていたのかによって以下のように変動します。
保険料を納めた期間 | 給付額 |
36ヶ月以上180ヶ月未満 | 12万円 |
180ヶ月以上240ヶ月未満 | 14万5千円 |
240ヶ月以上300ヶ月未満 | 17万円 |
300ヶ月以上360ヶ月未満 | 22万円 |
360ヶ月以上420ヶ月未満 | 27万円 |
420ヶ月以上 | 32万円 |
亡くなった方が付加保険料を36ヶ月以上納めていれば、上記の金額に8,500円が加算されることになります。
なお、死亡一時金は名前にもある通り上記の金額は一度に支払われます。
その他の遺族年金は条件を満たしている期間に、分割でお金が支払われます。
しかし、死亡一時金は一度にまとめて給付され、その後は一切給付されることはありませんので、注意が必要です。
死亡一時金と寡婦年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れない人への救済措置として設けられてた制度です。
そのため、死亡一時金と寡婦年金はどちらか一方を受け取るともう片方は受け取れなくなります。
ご自身のケースではどちらがより高額な年金を受給できるのかやそもそもこれらのお金を受け取れる権利があるのかを確認してみてください。
遺族年金はいつまでにいくら貰える?
遺族基礎年金の支給額
遺族基礎年金の支給額は以下のように、設定されています。
779,300円+子の加算
子の加算 第1子・第2子 各 224,300円
第3子以降 各 74,800円・(注)子が遺族基礎年金を受給する場合の加算は第2子以降について行い、子1人あたりの年金額は、上記による年金額を子供の数で除した額。
出典:日本年金機構Webサイト
亡くなった方に生計を維持されていた家庭に18歳未満の子どもが1人いる場合は、1年に1,003,600円(月83,600円程度)が支給されます。
子どもが2人いる場合は1年に1,227,900円、3人いる場合は1,302,700円が支給されます。
この額を12で割った月額が毎月指定口座に振り込まれることになります。
そして、何度も説明してきたように、子どもが18歳の年度末を迎えた時点で遺族基礎年金の支給は終了になります。
遺族厚生年金の支給額
遺族厚生年金の算出方法は、遺族基礎年金よりも複雑に設定されています。
1 報酬比例部分の年金額(本来水準)
2 報酬比例部分の年金額(従前額保障)
(従前額保障とは、平成6年の水準で標準報酬を再評価し、年金額を計算したものです。)出典:日本年金機構Webサイト
以下で、この式を詳しく説明しますが、複雑な計算式になっているので要点だけ押さえたい方は、
遺族厚生年金は亡くなった方が本来受け取るはずだった老齢厚生年金の3/4程度が年間の支給額になると覚えておいてください。
それでは、計算式の具体的な説明に入ります。
報酬比例部分の年金額は、原則的に1の式によって算出した額が採用されます。
しかし、1の式で算出した額が2の式で算出した額を下回る際は、2の式で算出した額が報酬比例部分の年金額となります。
【上記の計算式の用語解説】
平均標準報酬月額・・平成15年3月までの被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月までの被保険者期間の月数で除して得た額です。(日本年金機構Webサイトより抜粋)
平均標準報酬額・・平成15年4月以後の被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以後の被保険者期間の月数で除して得た額(賞与を含めた平均月収)です。(日本年金機構Webサイトより抜粋)
遺族厚生年金も年額(老齢厚生年金額の3/4)を12で割った額が毎月指定口座に支払われることになります。
原則として、遺族厚生年金は再婚しない限り、受け取り続けることができます。
ただし、受給者が夫または父母、祖父母の場合、受給開始は60歳からです。
亡くなった配偶者が会社員・公務員の場合
次にそれぞれのケースにおいて受け取れる遺族年金を整理していきます。
ケースによっては、複数の遺族年金を受け取ることができるので、よく確認してみてください。
まずは、亡くなった配偶者が会社員・公務員ケースで受給者の年齢や家族構成ごとに場合分けをし、その際に受け取れる遺族年金をまとめました。
【18歳未満の子どもがいる場合】
遺族基礎年金
遺族厚生年金
【子どもがいないかつ受給候補者の年齢が40歳未満の場合】
遺族厚生年金(受給候補者が30歳未満の妻である場合は5年間限定の有期年金。受給候補者が夫である場合、受給できない。)
【子どもがいないかつ受給候補者の年齢が40歳~65歳の場合】
遺族厚生年金(受給候補者が夫である場合は55歳以上でなければならない)
中高年齢寡婦加算(妻のみが対象)
中高年齢寡婦加算とは、遺族厚生年金に加算される特別な支給金です。
①40歳~65歳未満の女性で、②亡くなった夫に生計を維持されており、②子どもがいない人に特別に支給されます。
支給額は遺族基礎年金の3/4の額になり、2018年度の支給額は584,500円です。
中高年齢寡婦加算は、65歳になった時点で受給は終了になります。
亡くなった配偶者が公務員・会社員の場合は厚生年金、国民年金に加入しているので、遺族厚生年金、遺族基礎年金共に支給対象になります。
以上のように、複数の遺族年金を受け取ることができる可能性があるので、みなさんの状況に応じて複数の年金が受け取れないか確認してみてください。
亡くなった配偶者が自営業の場合
次に亡くなった配偶者が自営業のケースをみていきます。
【18歳未満の子どもがいる場合】
遺族基礎年金
【子どもがいない場合】
死亡一時金もしくは寡婦年金
配偶者が自営業の場合は、厚生年金に加入していないので受け取れる遺族年金は遺族基礎年金か死亡一時金、寡婦年金に絞られます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
以上のように、遺族年金制度は複雑なものです。
みなさんの状況に応じて、もらえる年金の種類、年金額、支給期間が大きく異なります。
ここまで解説してきた内容を一つ一つみなさんの状況に当てはめて、受給できる年金を確認してみてください。
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