最近、iDeCo(個人型確定拠出年金)という言葉がよく聞かれるようになってきました。それと同時にiDeCoに興味を持つ人も増えてきています。
中でも公務員がiDeCoを使って老後資産形成を始めるケースがとくに増えてきています。
とはいうものの、節税効果が高いというのは知っているものの、具体的にいくら位の節税効果があるのかご存知ない方も多いのが現状です。
そこで今回は、公務員がiDeCoを始めるメリットや具体的な節税効果、始め方について解説していきます。
そもそもiDeCo(イデコ)のメリットは何?
まず、iDeCoとは日本語にすると個人型確定拠出年金のことなのですが、わかりやすく言うと、掛け金を自分で運用しながら積み立てをし、60歳になったら受け取れる仕組みのことです。
iDeCoの最大のメリットである節税効果が高いことはなんとなく知られていますが、ここでは具体的にどのような点で節税の効果が得られるのかを説明します。
掛け金が全額所得控除され、税金が戻ってくる
iDeCoで積み立てをした掛け金全額が所得控除され、所得税や住民税が軽減されます。
軽減されるのは年末調整や確定申告を行うことで、所得や掛け金に応じて納めた税金が戻ってくるからです。
例えば、30歳で年収600万円の公務員が毎月1万円をiDeCoで積み立てると、年間で2万4千円もの節税になるのです。
これはiDeCoの運用成績に関係なく戻ってくる金額なのでオトクであると言えるでしょう。
資産運用により得た利益は非課税!
iDeCoによる資産運用によって得られた利益には税金がかかりません。
一般的には、株式投資での利益、投資信託で得られた利益、定期預金の利息には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでの運用利益に税金はかからないのです。
例えば、iDeCo以外の資産運用で3万円の利益を得た場合には、6095円の税金がかかりますが、iDeCoの場合にはこれが0円になります。
上手に運用ができれば、利益がさらなる利益を生んで雪だるま式に資産を増やすことができます。
運用資産の受け取り時にも税額控除がされる
上記2つのほかに受け取り時にもiDeCoによる恩恵を受けることができます。
運用した資産は「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」という3つのいずれかの形式で受け取ることになりますが、どれを選択しても税金の面で優遇がされます。
一時金の形式で受け取れば退職金所得控除が、年金の形式で受け取れば公的年金控除が受けられます。
iDeCoにはこうした節税のほかにも、掛け金が月額5000円という手頃な金額から始められるというメリットもあります。
より具体的なメリット・デメリットや特徴を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
iDeCoの利用率は?会社員や自営業者よりも公務員の方が最も高い?
結論から言うと、iDeCoの利用率が最も高いのは、意外にも公務員です。
具体的な数値を挙げると、対象者のうち実際にiDeCoに加入している人数と割合は、割合が高い順番に公務員19.1万人(4.29%)、会社員62.7万人(2.0%)、自営業者等13.1万人(0.83%)、専業主婦等2.8万人(0.31%)となっています。(2018年7月末時点)
なぜiDeCoを利用する公務員の人たちが多いのでしょうか?次の章からはiDeCoを始める公務員が増えている理由を解説していきます。
iDeCoに加入する公務員が増えている理由は?
公務員は他の職業区分に比べるとiDeCoに加入できるようになったのは遅かったですが、上述の通りiDeCo加入率は最も高くなっています。
ここではその背景にある2つの理由をご紹介します。
2015年度に公務員の年金制度が大きく変化した
一つ目に挙げられるのは2015年にあった公務員の年金制度の変更により、将来貰える年金の額が減ったことです。
2015年まで公務員の年金制度であった共済年金が民間の厚生年金に一本化されたことによって起こりました。
もう少し説明すると、共済年金には、厚生年金にはなかった優遇制度である「職域加算」と呼ばれる終身で受け取れる加算部分がありました。
しかし、厚生年金への一本化に伴い、この職域加算が廃止され、結果として公務員が受け取れる年金額が減少する結果となりました。
退職金額も年々減少傾向にある
2つ目に挙げられるのは公務員の退職金額が年々減少していることです。
例を挙げると、地方公務員で25年以上勤務後の定年退職した場合の退職金は、平成25年度の2607.1万円から平成29年度の2262.0万円へと345.1万円が減額されています。出典:(総務省「地方公務員給与実態調査」より「調査の結果」各項目を抜粋・改編)
また、国家公務員で行政職の定年退職金も平成24年度の2528.3万円から平成28年度の2223.1万円へと305.2万円の減額をしています。出典:(内閣官房「退職手当の支給状況」より各項目を抜粋・改編)
将来受け取れる年金額と退職金が減り、「老後資金」に不安を感じる公務員が増えたことで、個人で運用できるiDeCoに注目が集まっているという背景があるといえそうです。
公務員がiDeCoを活用した場合の節税効果はどれくらい?
それでは、実際に公務員がiDeCoを活用するとどれだけの節税効果を見込めるのでしょうか。
公務員の毎月の掛け金上限は、会社員よりも少ない「1万2千円」です。
ここでは30歳で年収600万円の公務員が、毎月限度額いっぱいの1万2千円までiDeCoを運用し続けた場合のシミュレーションをして、どれぐらいの節税効果があるのかを解説します。
また、シミュレーションは運用利率を3%として計算しています。
- 拠出時の節税効果
年間の節税額 は28,800 円となり、60歳までの30年間で合計 864,000円の節税となります。
- 運用益の節税効果
運用益における非課税の金額(通常かかる税金)は534,569円であり、iDeCo以外で資産運用するよりも30年間で534,569円の節税になります。
公務員がiDeCoを始めるには?申請手続きを解説
iDeCoを始めるには証券会社に口座を開設する必要があります。
公務員がiDeCoを始める大まかな流れは以下のようになっています。
①iDeCoの申し込み書類を請求する
口座を開設する証券会社を選ぶ時のポイントとしては口座管理手数料が安い、取り扱う商品数が豊富、サポートがしっかりしているなどを考慮すればよいでしょう。
②送られてきた申込書を書いて送付する
ここでは、個人型年金加入申出書と第2号加入者に係る事業主の証明書という2つの煩雑な書類を完成させる必要があります。
③申し込みが受理され、口座が開設されるのを待つ
書類を送付してから口座が開設されるまでには1~2か月かかります。口座が開設されたら、運用商品と掛け金を選んで運用を開始します。
平均寿命や健康寿命が伸び、老後の生活に不安を抱える人は、公務員に限らず増えてきています。そんな中、様々な節税メリットを受けながら、老後資産を運用できるiDeCoは大変効果的な制度といえますね。
中でも以前と比べて、年金・退職金が減っている公務員の方々は、iDeCoを活用するメリットは大きいことがわかりました。興味がある方は、少ない掛け金からでも大丈夫なのでぜひiDeCoを始めてみてはいかがでしょうか。
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