退職時には「税金」と「社会保険」の手続きをしなければなりません。
会社を退職後すぐに別の会社への転職が決まっている場合は、転職先の会社が必要な納税手続きをやってくれますが、失業期間が1日でもあればご自身で手続きをする必要出てきます。
会社に在籍中は、税金の手続きは会社に任せておけば自動的に給与から天引きされていたため、退職後に初めて税金の手続きを行う方も多いのではないでしょうか。
この記事では退職後の住民税や所得税等の税金手続きや支払い方法・金額についてまとめました。
- 退職後の所得税・住民税の手続き方法
- 所得税・住民税・退職金にかかる税金の目安金額
- 減免(減額・免除)を受けることができる条件
退職前にチェック!給料から天引きされていた税金・社会保険一覧
税金は、退職後に申告すれば返金される場合もありますので、まずは支払うべき税金・社会保険の種類について勉強しましょう。
退職時に知っておきたい税金と社会保険は以下の6つです。
税金 |
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社会保険 |
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この記事では「所得税」「住民税」「退職金にかかる税金」について簡単にご説明していきます。
社会保険の手続きで気になるものがあれば、こちらのページも参考にしてみてください。
退職後の所得税の支払い方は?必要な手続きは?
所得税の金額はどうやって決まる?
所得税は年初に1年の総収入を想定し、それをもとに一定の税率で毎月の給料から天引きされる、前払い方式の税金です。
そして毎年12月に年末調整を行い「実際の所得」と「毎月納入した税金」を釣り合わせます。会社員である間は、年間所得が確定した年末に、在籍する会社が正確な税額を計算して調整してくれているでしょう。
しかし、会社を退職後に1か月以上失業期間や給料を受け取っていない期間があれば、所得税を多く納めていることになり、ご自身で手続きが必要になります。
退職後の所得税の納税方法【再就職の時期で変わる】
もちろん所得税を多く納めた場合、還付金を受け取ることが可能です。その手続きは、年内に再就職したかによって2パターンに変わってきます。
①退職した年内に再就職した場合
年末調整は転職先の会社が手続きしてくれます。
前職の会社で発行してもらった「源泉徴収票」「各種保険」「医療費・住宅ローンなどの控除証明書」「領収書」を一緒に提出してください。
②退職した年内に再就職しなかった場合
翌年の確定申告時(2月半ば~3月半ば)に、ご自身で居住地を管轄している税務署にて確定申告を行います。必要な持ち物は「源泉徴収票」「控除対象になる支出の証明書」「領収書」「印鑑」です。
注意していただきたいのが、12月に再就職が決まったものの転職先の年末調整に間に合わなかった場合です。企業側が年末調整をしてくれないため、ご自身で確定申告をする必要があります。
また、最近では条件を満たせばネットで確定申告を行うことも可能です。忙しい方は自宅で確定申告ができるかを調べてみても良いでしょう。
退職後の住民税の支払い方は?必要な手続きは?
住民税の金額はどうやって決まる?退職者は要注意!
住民税は、住んでいる都道府県と市区町村に納める税金です。前年1月~12月の1年間の所得に対する税金を、翌年6月から翌々年5月にかけて後払いで支払います。
退職して無給になったとしても、その期間中、働いていた時期の所得に対する住民税の支払いが必要になります。
会社に在籍中は給与天引きで納税しているため、住民税を支払っている意識はないかもしれませんが、退職後はご自身で納税する必要があります。
退職後の住民税の納税方法
納税方法は退職した月によって、以下の2パターンに分かれます。
①1~5月に退職した場合
前々年の所得の課税金額のうち、5月までの納税額の合計を退職時に最終給与から一括で支払います。
前年の所得に対する課税は、6月1日付で再就職しているかによって異なります。再就職していれば、転職先の会社で給与から天引きされます。再就職していない場合は、市区町村役場から送られてくる納付書に従って分割払いします。
②6月~12月に退職した場合
退職月の給与からその月の住民税額が引かれます。残りの来年5月までの分は、市区町村役場から送られてくる納付書に従って分割払いします。
もちろん退職時の給与や退職金から、前年の所得に対する住民税を一括納付することも可能です。ただし一度に支払う金額が大きくなるため、ご自身の経済状況に合わせて判断してください。
退職後に所得税の還付金は受け取れる?
所得税は、給料が高い人ほど支払う税額が高くなる「累進課税制度」です。
会社勤めの場合に毎月給与から天引きされていた所得税は、年初の1年間の想定年収をもとに算出されていました。
したがって「想定年収と実際の年収を比べ、会社在籍時に多く支払った分」を還付金として受け取ることができます。
参考「一人暮らし会社員」の年収別所得税額
- 年収200万円(課税所得55.6万円):2.78万円
- 年収300万円(課税所得111万円):5.57万円
- 年収400万円(課税所得171万円):8.56万円
- 年収500万円(課税所得237万円):13.9万円
- 年収600万円(課税所得303万円):20.5万円
- 年収700万円(課税所得372万円):31.7万円
- 年収800万円(課税所得448万円):46.9万円
※課税所得とは、年収から基礎控除・給与所得控除・社会保険控除などを除いた課税対象金額。
※平成30年度の税制で計算。
退職後の住民税はいくら?計算方法をご紹介
住民税は、地域によって異なります。ここでは標準税率である所得割10%、均等割り5000円として計算しました。
所得割は所得に比例して課税するものです。一方の均等割は、一定額以上の所得があるものに対して一律同じ税額を徴収するものです。
ご自身の今の所得水準では、住民税はいくらでしょうか。来年支払う住民税額の目安が分かってきます。
参考「一人暮らし会社員」の年収別住民税額
- 年収200万円:6.31万円(所得割60.6万円×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
- 年収300万円:11.9万円(所得割116万円×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
- 年収400万円:17.9万円(所得割176万円×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
- 年収500万円:24.4万円(所得割242万円×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
- 年収600万円:31万円(所得割308万円×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
- 年収700万円:38万円(所得割377万円×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
- 年収800万円:45.6万円(所得割453万円×10%+均等割5000円-調整控除2500円)
退職金に税金はかかる?非課税になるか計算しよう
退職金をもらう前のポイントとして、税務署にある「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出する手続きを忘れないようにしてください。
この書類を提出しておくことで、会社が退職金から源泉徴収で所得税を納付してくれます。この手続きをしなかった場合、一律で20%が源泉徴収されるため損をしてしまいます。
退職金が非課税になるかどうかの計算方法は簡単です。
勤続年数が20年以下の方の場合は、目安として「勤続年数×40万円」より退職金額が少なければ非課税と考えて問題ありません。
退職後の税金支払いが難しい!減免制度(減額・免除)を受けるための条件は?
退職後に予想以上に住民税や所得税の支払いが大変で、経済的に苦しい方向は減免措置を受けることができるかもしれません。
所得税は、被災した場合には減免措置を受けられる制度がありますが、退職後に減免措置を受けられる制度はありません。
一方、住民税は、退職後に減免措置を受けられる可能性があります。
住民税の減免措置を受ける条件
以下の基準を満たせば、減免措置を受けられます。
- 生活保護による扶助を受けている方
- 納税義務者が死亡し、その継承者による納税が著しく困難な場合
- 被災した場合
当然ですが「去年は会社勤めをしていたけど、今年は無職だから免除をお願いしたい」という理由は通りません。
住民税の分納には応じてもらえる
会社勤めの間は、課税額を12分割して毎月の給与から天引きされていました。しかし会社を辞めると、課税額を4分割して年に4回住民税を納める必要があります。
したがって、1回の納税金額が高くなりがちで負担を感じる方も多いようです。
そんな時は、会社勤めの時のように12分割で支払う手続きを役所で行うことができます。それでも生活に苦しい場合、役所はさらに細かな分割にも応じてくれます。
支払いがつらいからと言って放置するのは絶対に避けてください。延滞金がかかりますし、資産の差し押さえをされてしまう危険もあるからです。
おわりに
会社勤めの時はあまり意識してこなかった税金の手続きを、退職後に全て自分で行うのは大変だと思います。
しかし、一つ一つ丁寧に手続きをしていけば、そこまで難しいことはありません。
損をしないためにも、面倒くさがらずに税金の手続きを行ってくださいね。
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