国民健康保険と社会保険の違いや切り替え方法を知ろう

PCを操作する女性

日本では、「国民皆保険制度」により、全ての人が公的医療保険に入る必要があります。

そして、会社員の方が加入している「社会保険」、フリーランスや個人事業主の方が加入している「国民健康保険」の名前は多くの方が聞いたことがあると思います。

しかし、「国民健康保険」と「社会保険」の違いや切り替え方法などについて詳しく把握している人は少ないのではないでしょうか。

そこで、今回は「国民健康保険」と「社会保険」についてわかりやすく解説します。

社会保険料の場合は、毎月の給料から天引きされているので自身の手取り額に影響しますし、国民健康保険になると扶養がなくなり世帯人員ごとに国保に加入する必要性が出てきます。家計にも大きく影響してくるのです。

夫が国民健康保険に加入しているママさんや、会社を退職して個人事業主・フリーランスになる方がいるご家庭の方などは、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

社会保険は健康保険・年金・雇用保険・労災保険を含む

よく「国民健康保険」と「社会保険」が並列で比較されることがありますが、実は、社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称のことを指します。

基本的には、個人事業主やフリーランスの方は「国民健康保険」へ、会社員の方は「社会保険」に加入するのが一般的で、その際によく比較されますが、その比較対象は「国民健康保険」と社会保険の「健康保険」ということになります。

日本は国民皆保険制度を採用しているため、全ての人が医療保険に入る必要があり、上記いずれかの保険に加入する方が大半です。

国民健康保険と社会保険の違いとは?

それでは、国民健康保険と社会保険にはどのような違いがあるか見ていきましょう。

基本的には、社会保険に加入していない人は、国民健康保険に加入する義務が発生する仕組みになっています。

加入資格・それぞれの運営団体・支払う保険料の違い・扶養、配偶者の有無のケースの観点から、違いについて解説していきます。

加入資格・条件

まず、国民健康保険に加入しなければならないのは、自営業の方や、無職の人など、企業に所属していない人がメインになります。

基本的に、国民健康保険以外の保険制度に属さない人は全て、国民健康保険制度に加入する義務があります。

また、企業に所属していると言っても、パートやアルバイトをしていて、社会保険に加入していない方も対象になります。(夫の扶養に入っている場合は、加入義務はありません)

では、社会保険の加入資格はどのようなものなのでしょうか。基本的には、正社員の方は全て加入することが可能です。

そして、アルバイトやパートの方の場合には、以下2つの条件を満たす必要があります。

アルバイト・パートの社会保険の加入条件

  1. 勤務時間及び日数が、正社員の4分の3以上であること
  2. 従業員数501名以上の会社で働いており、週20時間以上の勤務、年収106万円以上(月収が8万8千円以上)雇用期間が1年以上であること、学生でないこと

しかし、もしこれら2つの条件を満たさずに、アルバイトやパートとして年間130万円を稼いでしまった場合には、自ら国民年金と国民健康保険に加入する必要が出てきます。

その場合、社会保険に加入するよりも支払い保険料が高くなる可能性が高いため、注意する必要があります。

運営主体

国民健康保険を運営しているのは、私たちの住んでいる市区町村であり、私たち保険加入者が納める保険料や国などの補助金によって運営されています。

そのため、支給金額や条件、保険料は住んでいる地域によって多少異なります。

一方で、社会保険の健康保険は「協会けんぽ」または「組合健保」が運営しています。

「協会けんぽ」は一般的な中小企業がメインで加入しているもので、全国健康保険協会という団体が運営しており、現在約207万社が加入しています。

そして、「組合健保」は常時700人以上の従業員が働いている企業が、自前で設立したものです。

複数社合同で設立することも可能ですが、その場合には常時3000人以上が必要となるため、グループ会社などで共同で設立して売るケースが大半です。

1000を超える健保組合があり、約10万社が加入しています。

保険料の計算方法

それでは、国民健康保険と社会保険の保険料にはどのような違いがあるのでしょうか。

まず非常に大きな相違点として、社会保険料は企業と個人の折半になる点があげられます。

そのため、個人で負担する保険料は国民健康保険の方が高くなっています。

では、例として、単身者で年収500万円、35歳の方について考えてみましょう。

この方が、これまで働いていた会社を辞め、社会保険から国民健康保険に切り替えるとして、料金の違いをみてみます。

社会保険の中の、厚生年金保険・健康保険・雇用保険の保険料負担率の合計はおよそ年収の14%程度になります。そのため、年間の社会保険料は約58万円となります。

一方、国民健康保険料は地域や年収から引かれる経費によって違いがあるため、正確な料金を求めることは難しいですが、年収500万円の場合の一般的な所得を考えると、およそ月々3万円弱、年間の国民健康保険料は36万円になります。

さらに、健康保険とは別に国民年金に加入する必要があり、現在の国民年金保険料は、16,490円なので年間約20万円です。合計すると56万円という結果になります。

この単身者のケースであれば、国民健康保険に加入した場合の方が特になります。しかし、扶養人数などによっては、国民健康保険よりも社会保険お方がおトクになる可能性があります。

また、世帯全体で見ると、もし奥さんが専業主婦や扶養内パートだった場合、奥さんも国民健康保険、国民年金保険料に加入する必要があります。

保険料を比較する際は、世帯全員の保険料を比べるとことが大切です。

扶養・配偶者の有無

扶養制度が適用されるかという点は、国民健康保険と社会保険の大きな相違点の一つです。

国民健康保険には、そもそも扶養という考え方がなく、世帯内の加入者の年収合計、世帯内の加入人数を元に保険料が算出されます。

そのため、世帯年収が高ければ高いほど、加入者が多ければ多いほど、保険料が高くなってしまいます。

一方で、社会保険の健康保険では、配偶者や親族を扶養に入れることが可能であり、被扶養者が何人いても被保険者の健康保険料は変わりません。

ただし、被扶養者の年間収入が130万円未満が条件となりますので注意してください。

また、被扶養者が60歳以上または障害者の場合には、年間収入が180万円未満であれば扶養に入ることが可能です。

国保と社保では利用できる公的制度・手当が異なる

社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称のことを指し、国民健康保険よりも広い範囲の保険です。

そのため、ここでは国民健康保険と社会保険の健康保険を比較してみます。

それぞれで、利用することのできる公的制度や手当が異なっているため、以下の表にまとめてみましたので参考にしてみてください。

国民健康保険健康保険(社会保険)
保証対象詳細保証対象詳細
医療費自己負担額が3割に抑えられる。医療費自己負担額が3割に抑えられる。
高額医療費制度自己負担額が3ヶ月目まで約8万円に抑えられる。高額医療費自己負担額が3ヶ月目まで約8万円に抑えられる。
4ヶ月目以降の自己負担額が4万4千円に抑えられる。4ヶ月目以降の自己負担額が4万4千円に抑えられる。
出産費本人が出産した時には、42万円の出産育児一時金が支給される。出産費本人が出産した時には、42万円の出産育児一時金が支給される。
埋葬料本人が死亡した時には約1〜5万円が支給される。埋葬料本人が死亡した時には約1〜5万円が支給される。
傷病手当業務に関係ない病気や怪我で働くない時は、1日あたり本人収入の約3分の2が支給される。
出産手当本人が出産のため働けない時には、1日あたり本人収入の約3分の2が支給される。(産前後合計した98日間に限る)

社会保険から国民健康保険への切り替え手続き

国民皆保険制度により、退職日の翌日をもって勤務先で加入していた社会保険から脱退すると、すぐに新たな健康保険への加入義務が発生します。

社会保険から国民健康保険に切り替えるときは、退職した翌日から14日以内に各市町村の窓口で手続きをする必要があります。

必要書類

各市町村の窓口で申請をする際に必要になるものを以下にまとめました。

  • 健康保険の資格喪失証明書
  • 本人の国民健康保険証
  • 社会保険に切り替えた扶養家族の国民健康保険証
  • 運転免許証などの本人確認書類
  • マイナンバー通知カードor本人確認のできるもの
  • 印鑑

健康保険の資格喪失証明書は勤務先、または居住している地域の年金事務所で発行してもらうことになりますので、事前に申請してくと良いでしょう。

申請の流れ

国民健康保険への切り替え手続きは、最短で退職日の翌日から可能で、遅くとも14日以内には手続きを完了させなければなりません。

まずは退職後、お住いの居住区の役所の窓口の営業時間を確認しましょう。切り替えが完了するまでは無保険状態であり、医療は10割負担になってしまうので忘れないようにしてください。

また、直接窓口に出向くことが厳しい人は、郵送で手続きをすませることも可能です。

一部役所によっては郵送手続きができないところもありますので、ホームページで確認してみてください。

家族や親族であれば代理人として手続き行うことが可能ですが、住民票の世帯が異なる場合には委任状が必要となります。

急な退職などの際、もし仮に資格喪失証明書や離職票が送られてこないような場合には、会社に問い合わせてみてください。

必要書類の発行は会社の義務となっていますので、早めの対応を依頼しましょう。

国民健康保険から社会保険への切り替え手続き

自営業やフリーランスから企業へ就職するタイミングでは、社会保険への切り替え手続きが必要になることもあります。

主婦の方で入社前に扶養に入っている場合には、社会保険への切り替え手続きを会社が対応してくれるケースが大半ですが、入社前に国民健康保険に加入している場合には、国民健康保険の脱退手続きを自分で対応する必要があります。

原則、国保の脱退手続きの期限は、新しい社保に加入した日から14日以内とされており、国民健康保険は入社日まで使うことができます。

もし、入社日から数日間、社会保険証を受け取ることができずに病院にかかってしまった場合には、その病院に事情を説明してみましょう。

必要書類

以下のものが手続きに必要になります。

  • 加入した新しい社会保険の保険証(扶養家族分も含む)、もしくは、社保の保険証が届いてないなら社会保険の資格取得証明書
  • それまで使っていた国保の保険証(切り替えた全員分も含む)
  • 本人確認書類
  • マイナンバーが分かる書類
  • 印鑑

申請の流れ

国民健康保険からの脱退手続きは、各市町村の役所窓口で行います。

上記の物を忘れず、直接窓口で手続きを行ってください。

また、もし窓口での手続きの時間が取れないような場合には、郵送、代理手続きが可能です。

社会保険から国民健康保険に切り替える際と同じく、郵送での対応が可能かの問い合わせ、住民票の世帯が異なる場合には委任状が必要になります。

退職時は企業の社会保険に加入し続ける「任意継続」も利用可能

会社を退職した際には、国民健康保険に加入するだけでなく、社会保険を継続する「任意継続」という方法を選択することも可能です。

最長2年間継続することができますが、勤務していた時のように会社が保険料を半額負担してくれることはなく、全額自己負担となります。

任意継続を利用するための条件

任意継続を利用するには以下の条件を満たす必要があります。

  • 退職時に任意継続をする保険の加入歴が2ヶ月以上あること
  • 退職日の翌日から20日以内に手続が必要であること
  • 最長2年間と限られていること

また、継続する際には、以下の書類が必要となります。

  • 任意継続被保険者資格取得申出書
  • 扶養事実を確認できる書類(扶養する家族や親族がいる場合)
  • 非課税証明書(扶養する家族や親族がいる場合)
  • 所得税に関する源泉徴収票のコピー(扶養する家族や親族がいる場合)
  • 雇用保険受給資格者証のコピー(扶養する家族や親族がいる場合)

これら任意継続に必要な書類を、退職した次の日から20日以内に、加入していた健康保険組合に郵送してください。

手続きが無事完了すると、新規の保険証とともに納付書が自宅に届けられますので、印字された保険料を納付期限までに支払います。

任意継続のメリット・デメリット

任意継続のメリットとしては、退職時の給与が高いと国民健康保険よりも割安になる可能性があることがあげられます。

これは、国民健康保険は前年の収入額で保険料が計算されてしまうためです。

また、扶養者が多い場合にも、任意継続を選択したほうが割安になる可能性があります。

国民健康保険には扶養という考え方がなく、世帯収入や世帯人数に応じて保険料は高くなってしまいます。

しかし、社会保険を任意継続すれば、扶養が考慮されるため、国民健康保険よりも割安になるのです。

次にデメリットとしては、滞納に厳しい点、変更が認められない点があげられます。

もし任意継続中に保険料を滞納してしまうと、その時点で即資格喪失となってしまいます。

そして、一度任意継続をすると、途中で国民健康保険に加入したり、家族の扶養に入るなどの変更をすることができません。

また、もし退職後1年目の収入が低い場合には、その翌年の国民健康保険の保険料はその額に基づいて算出されるため、社会保険の方が国民健康保険よりも高くなってしまう可能性も挙げられます。

健康保険切り替え時は、保険料の二重払いに注意!

健康保険の切り替え時の保険料の二重払いには注意が必要です。

国民健康保険と社会保険は運営主体が異なるため、切り替えの手続きは双方の運営主体に対して行うことになります。

そのため、国民健康保険の脱退手続きを忘れ、別の健康保険への加入手続きをしてしまうと二重支払いをすることになってします。

会社を退職した場合には、任意継続を自分で選択することになりますので、二重払いが発生することはないかもしれません。

しかし、就職や結婚などで他の健康保険に加入した際に、国民健康保険を脱退し忘れてしまうケースはよくありますので注意しましょう。

二重払いが発生してしまった際には保険料を返金してもらうことが可能です。

返金される金額は「資格喪失日の属する月の前月分まで」ですが、2重で支払った保険料を過去に遡って請求できるのは、2年である点には注意してください。

今回は、社会保険と健康保険の違いについて徹底的に解説していきました。ご家族の方で切り替え予定の人がいる場合はぜひ本記事を見直してみてください。

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