個人事業主の社会保険、会社員と何が違う?利用できる保険や公的手当を解説

札束と相談するサラリーマン

会社員を辞め、個人事業主になった方が気になるのが、健康保険や年金、雇用保険等の社会保険ですよね。

会社員時代には当たり前に利用できていた手当や保健が、個人事業主になると利用できなくなったりします。

また、会社員時代の厚生年金も、個人事業主になると無くなります。

そのため、老後資金の作り方についても、個人事業主になると、会社員とは別の方法で取り組まなくてはなりません。

会社が守ってくれていた会社員時代とは違い、個人事業主は、自分の身は自分で守らなくてはなりません。

今回は、会社員から個人事業主になることで変わる社会保険や、引き続き利用できる・利用できなくなる手当・給付金、そして、個人事業主におすすめの老後資金の作り方を紹介します!

個人事業・フリーランスと会社員の社会保険の違いは?

ここでは、会社員時代に受けていた「健康保険」「年金」「労災保険」「雇用保険」の4つが個人事業主なるとにどう変わるのかをそれぞれ解説していきます。

①健康保険

会社員は健康保険に会社経由で入っていて、保険料も会社と自分で折半するというのが普通ですが、個人事業主にはそのような制度はありません。

個人事業主は健康保険を以下の3つのうちから選択することになります。

  • 国民健康保険

住んでいる地方自治体で加入します。

国民健康保険の保険料は、前年度の収入に応じて決まり、家族で加入する場合は加須家全員分の保険料がかかります。

  • 業種ごとの健康保険組合

業種ごとの健康保険もあります。

ただ、健康保険組合が存在する業種は、土木・建築、医師、税理士、文芸・美術関連職などですので、それ以外の業種の方は、選択することが出来ません。

  • 以前の会社の健康保険を継続する

限定的に、退職する前の会社の健康保険に加入し続けることもできます。

しかし、会社の保険に継続して入れるのは、退職してから2年間で、保険料も折半では無く全額負担です。

また、介護保険は生命保険の保険料と一緒に支払います。

②年金

会社員は国民年金に加え、厚生年金というものに加入しますが、個人事業主は厚生年金に加入することはできないため、国民年金1本でやっていかなくてはなりません。

しかし、個人事業主だからといって、国民年金だけしか利用してはいけないという決まりはありません。

任意の年金を利用することで、老後のたくわえを増やすこともできます。それについては後の「個人事業主が老後資金を貯める方法」のところで紹介します。

③労災保険

会社員の時に加入していた労災保険は、個人事業主になると適用されなくなります。

従業員を雇っている場合は、従業員には労災保険が適用されますが、原則、雇い主である会社の役員や個人事業主は加入することができません。

しかし、例外として労災保険の特別加入というものがあり、業種によっては労災保険に加入することが出来ます。

労災に特別加入できる業種

  • 自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人 貨物運送業者など)
  • 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、 破壊もしくは、解体またはその準備の事業(大工、左官、とび職人など)
  • 医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業)の事業
  • 林業(立木の伐採、造林、木炭又は薪を生産、その他林業を行うもの)
  • 医薬品の配置販売を行う者(薬事法第30条の認可を受けて行う医薬品配置販売を行うものに限られる)
  • 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業
  • 船員法第一条に規定する船員が行う事業

④雇用保険

雇用保険は、個人事業主には適用されません。

しかし、従業員を1人でも雇っている場合は、その従業員のために、加入しなくてはなりません。(個人事業主本人には適用されない)

【補足】従業員を雇った場合

従業員を雇っている場合は、従業員向けの社会保険を用意しなくてはなりません。

労災保険雇用保険健康保険・厚生年金
加入条件従業員が1名以上従業員が1名以上適用業種16種は従業員5名以上、それ以外は任意
保険料負担全額会社負担社員と会社会社と従業員が半分ずつ
加入先労働基準監督署ハローワーク(公共職業安定所)年金事務所

従業員の社会保険料は、会社も一部(場合によっては全額)支払うものです。ですので、従業員を雇えば雇うほど、従業員用の社会保険料の会社負担はばかにならないものになります。

ですので、従業員を雇う前に、会社負担分の社会保険料がどれぐらいの額になるのか、あらかじめ確認しておきましょう。

個人事業主になると利用できなくなる会社員時代の手当・給付金

会社員は思わぬことで仕事が出来なくなった時などに、利用できる手当がありますが、個人事業主になると、何かあってもお金が給付されることは少ないです。

傷病手当

会社員は病気やケガで仕事が出来なくなった時、会社で加入している健康保険から、最長1年6ヵ月「標準報酬月額の3分の2」の給付を受けることができます。この手当を傷病手当といいます。

個人事業主が主に加入する国民健康保険は、傷病手当制度自体はあるものの、その給付は「任意給付」です。

そのため、ほとんどのケースで個人事業主に傷病手当が支給されることはありません。

病気やケガで働けなくなるリスクを考えるなら、共済や生命保険への加入を検討しましょう。

出産手当金・育休給付金

個人事業主には、産休・育休というものがありません。それに伴い、出産手当金・育休給付金も支給されません。

出産手当金・育休給付金は会社の健康保険と雇用保険から支給されるものです。

個人事業主は基本的にその2つの保険に加入できませんので、出産ギリギリまで働き、出産後すぐに仕事に復帰するという個人事業主もいるそうです。

ただ、出産一時金と児童手当は、個人事業主でも受け取れる公的な手当ですので、利用しましょう。

個人事業主でも利用できる公的手当

出産一時金・児童手当

出産一時金と児童手当は、会社員・個人事業主関わらず受給することが出来ます。

出産一時金は、国民健康保険に申請を出すことによって受け取ることが出来ます。

児童手当は、子供が中学卒業までの間に受け取ることが出来る手当です。

これは国の制度ですので、自分が住んでいる地方自治体の窓口に申請しましょう。

高額療養費制度

高額療養費制度とは、自己負担分の医療費がで一定額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。

高額療養費制度を利用するには、地方自治体の窓口で申請して、限度額適用認定証をあらかじめ交付してもらうか、後に申請して払い戻しを受けるかの2種類の方法があります。

どちらにせよ、高額療養費制度は自分から申請しないと利用できない制度です。

高額療養費制度を使うか使わないかで、支払う医療費の額が数百万円も変わることがあるので、絶対に申請するようにしましょう。

なお、高額療養費制度は、国民健康保険を滞納していると利用できません。万が一のために、普段から国民健康保険は滞納しないようにしましょう。

個人事業主が老後資金を貯める方法

会社員より何かと老後への心配が大きい個人事業主ですが、最近は、個人事業主が自分で老後資金を貯める方法が充実してきました。

国民年金基金

国民年金基金は、主に自営業(個人事業主)の老後をサポートするために作られた、公的な年金です。

会社員の厚生年金にあたり、年金構造のいわゆる「2階」に相当します。

同じく2階に相当するイデコと同様に、その掛金が全額控除されるので、節税にも役立ちますね。

国民年金基金は、一括での受け取りが出来ません。

一括での受け取りを希望する個人事業主は、後のイデコを利用しましょう。

iDeCo(イデコ)

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、金融機関などで加入できる年金制度のことです。

国民年金基金はとの最大の違いは、預けている掛金を運用して、その結果次第では受取額を増やすこともできます。逆に、運用次第で受取額が減ることもあるので、、注意しましょう。

iDeCoで運用できる商品は、定期預金、保険、投資信託の中から選べます。

現在、多くの金融機関でiDeCo口座を開設することが出来ます。

国民年金基金と同様に、節税にもなるので、個人事業主におすすめの年金制度と言えるでしょう。

付加年金

付加年金とは、月々400円を、付加保険料として払うことで、将来の年金に上乗せが出来る制度です。

例えば40年間付加保険料を払ったとすると、支払う付加保険料の総額は約20万円で、将来加算される付加年金額は、年間約10万円です。

月々400円払うだけで年間10万円ももらえると考えると、かなりお得ですね。上の計算なら2年間で元が取れることになります。

申し込みの際には、お住いの地方自治体で申請が出来ますが、国民年金基金との併用はできません!ご注意ください。

民間の個人年金

民間の個人年金は、個人年金保険とも言われ、民間の保険会社などが扱っている保険商品を指します。

民間の個人年金の最大のメリットは、自分で年金額を設定することが出来るということです。

自分の老後にどれだけのお金が必要なのかということを計算し、それに応じた保険料を設定しましょう。

また、中途解約することも可能なので、想定外のことが起きた際の手段としても利用可能ですね。

個人年金保険の保険料は、「生命保険料控除(個人年金)」として、所得税4万円住民税2.8万円までが、控除の対象になります。

小規模企業共済

小規模企業共済は、個人事業主や経営者の退職金に当たるものを作るために、1965年にできた制度です。

月々1000円~7万円の間で保険料を設定することができ、その全額が所得控除となります。

ただ加入資格があり、小規模企業共済に加入できるのは、

  • 建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業などで、従業員の数が20人以下の個人事業
  • 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で、従業員の数が5人以下の個人事業主

の方です。

また、小規模企業共済には20年以上加入し続けないと、もらえる総額が掛金合計額を下回ってしまいます。

基本的には、仕事を辞めるまで加入し続けるつもりで始めることをお勧めします。

個人事業主は、会社員と比べて手当が少ない。利用できる制度を抑えておきましょう

個人事業主は自由に仕事ができる代わりに、いざというときに自分を守ってくれるものが少ないです。

特に社会保険は会社員時代と大幅に利用可能な制度が変わるので、会社員を辞めて個人事業主になる前に、確認しておきましょう。

また、個人事業主には退職金が存在しないので、自分で老後資金について若いうちから考えることも大切ですね。

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