最近、ドイツ最大の民間銀行であるドイツ銀行が経営危機にあり、破綻するのではないかという噂が広まっています。
ドイツ銀行が本当に破綻することになれば、世界経済にとてつもなく大きな悪影響を及ぼしてしまいますね。
その影響はあのリーマンショックと同じくらいかそれ以上と言われています。
ドイツ銀行の経営危機が噂される影で2017年6月イタリア第3位の銀行(モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ)と地方銀行2行(バンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァとベネト・バンカ)が破綻しました。
ドイツ銀行の経営危機ほど大きく取り上げられてはいないものの、このイタリアの3銀行の破綻はドイツ銀行の経営危機に拍車をかけたと言われています。
本記事では、このイタリアの銀行の破綻とその影響について見ていきましょう!
そもそも、イタリアの銀行は名前が長すぎる…
「モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ」とても長い名前で言いにくいですね!
破綻した銀行の中に「バンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァ」もありますが、イタリアの銀行はとても名前が長いですね。
この長い名前を何度も使うのは読みにくいので、本記事では破綻した3銀行のうち「モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ」を「モンテ銀行」、「バンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァ」を「ビチェンツァ銀行」、「ベネト・バンカ」を「ベネト銀行」と呼ぶことにします!
破綻したイタリアの3銀行はどんな銀行?
まず初めに、破綻した銀行がそれぞれどのような銀行なのかをチャックしてみましょう!
モンテ銀行(モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ)
モンテ銀行は何と言っても、「世界最古の銀行」です。
モンテ銀行は1472年にイタリアのシエナ市で誕生しました。
破綻をしてしまったものの、歴史としては600年以上もある歴史的に貴重な銀行でもありました。
本店はサリンベーニ広場の一番奥にあり、広場の中でも一番古い建物とされ、歴史的建築物としても知られています。
資産規模はイタリア第一のウニクレディト、第二位のインサーザ・サンパオロと比べると差はあるものの、モンテ銀行は第3位に位置していました。
ビチェンツァ銀行(バンカ・ポポラーレ・ディ・ビチェンツァ)
ビチェンツァ銀行はイタリア第12位の資産規模の銀行でした。
以下で紹介するベネト銀行同様イタリアのベネト州を基盤として展開する地方銀行の一つです。
ベネト銀行(ベネト・バンカ)
ベネト銀行はイタリア15位の銀行でした。
名前にある通り、ベネト州という地域を基盤とした地方銀行です。
イタリア3銀行の破綻はなぜ起きた?当時の資産状況は?
以上の破綻した3行がどのような銀行なのか確認しましたが、これらの銀行はなぜ破綻したのでしょうか?
その破綻理由や破綻直前の資産状況を見ていきましょう。
破綻の理由
以上の3銀行が破綻した理由はズバリ、不良債権です。
この不良債権はドイツ銀行の経営危機の理由の一つとして取り上げられています。
銀行は企業などにお金を貸し出し、その貸し出し額に応じて利子を受け取り、満期までに当初貸し出したお金を返してもらうことで収益をあげています。
その貸し出しの際にお金を返してもらう権利を債権化したものを貸出債券と言います。
不良債権とは、元本や利息の支払いを受けられなくなってしまう貸出債券のことを言います。
破綻直前の3銀行の財政状況
破綻直前の3銀行は不良債権に悩んでいましたが、そん不良債権に経営が耐えらないほど資金繰りが厳しい状況でした。
野村資本市場研究所というところが発表している資料の中に破綻直前の3銀行の資本不足額があったので、紹介します。
以下の額は120円/ユーロで計算しています。
銀行名 | 資本不足額 | 資本調達後資本不足額 |
モンテ銀行 | 5100億円 | 2532億円 |
ビチェンツァ銀行 | 816億円 | 264億円 |
ベネト銀行 | 852億円 | 0円 |
参考)野村資本市場研究所
以上の表から、3銀行とも数百億円単位で資本が不足しているのがわかります。
特に資本を調達した後もモンテ銀行とビチェンツァ銀行は資本が不足しており、首が回らないという状況でしょうか。
再建費用
イタリア政府はモンテ銀行をはじめとする銀行の再編のために最大200億ユーロ(約2.7兆円)の公的資金を注入するという法案を2017年2月に可決しました。
そして、2017年7月には、54億ユーロ(約7300億円)を実際に支払うことが決定しています。
イタリアの銀行の破綻がドイツ銀行の経営危機を加速させる理由とは?
イタリア経済の低迷やイタリアの銀行の破綻は同じEUに所属するドイツ経済やドイツ銀行にマイナスの影響を与えるでしょう。
では、「実際にイタリア経済が具体的にどのように停滞するのか?」、「イタリアの銀行の破綻がどのようにドイツ銀行の経営に影響するのか?」を見ていきましょう。
不良債権に悩むイタリア経済
イタリア経済は低迷していると言われているのを聞いたことがある方もいるかもしれません。
そんなイタリアですが、実際にどれくらい経済が厳しくなっているのでしょうか?
今回は以上でも取り上げた不良債権の額と割合からイタリア経済を読み解きます。
イタリアの中央銀行によればイタリアの銀行部門が所有する不良債権の額は3240億ユーロ(約44兆円)です。
これはイタリアの貸出債券全体のうちの16.4%に規模です。
また、イタリアのGDPは約200兆円なので、イタリアのGDPの約20%の規模の不良債権を抱えていることになります。
これだけの規模の不良債権を処理するのは簡単ではないでしょう。
イタリアの銀行が破綻してドイツ銀行の危機が訪れる理由①
ドイツ銀行は世界的な金融機関の中でもデリバティブと呼ばれる金融派生商品や不良債権の引き受け業務を行なっていることで有名です。
イタリアの銀行が破綻すれば、同じヨーロッパに本社を持ちながらドイツ最大の銀行であるドイツ銀行はイタリア・ドイツ政府の意向などで、イタリアの銀行の不良債権を引き受けなくてはいけなくなるかもしれません。
そうすれば、より回収の難しい不良債権を処理しなければいけず、ドイツ銀行の収益率が下がってしまう可能性もあります。
イタリアの銀行が破綻してドイツ銀行の危機が訪れる理由②
ドイツ銀行が扱う巨額のデリバティブ商品の中にはCDS債券というものがあります。
このCDS債券は一種の保険のようなもので、国や企業の破綻や倒産に備えるものです。
このCDS債券買った人は一定期間ごとに保険料を支払う代わりに、そのCDS債券が対象としている国や企業が破綻または倒産した時に保険金をもらえます。
逆にこのCDS債券を発行した銀行は国や企業の破綻・倒産時に保険金を支払わなければなりません。
このCDSがイタリアの銀行を対象としていたらどうなるでしょうか?
ドイツ銀行はイタリアの銀行がするたびに保険金を支払わなけらばならなくなります。
これはドイツ銀行にとっても費用が莫大にかかることなので、経営にダメージが及びます。
イタリア経済はピンチ!今後もイタリアの銀行が破綻するかも?!
イタリア経済は高い不良債権率に悩んでいることは以上でも紹介しました。
この高額の不良債権が今回取り上げたモンテ銀行、ビチェンツァ銀行、ベネト銀行の3銀行を破綻に追いやったわけですが、まだ破綻にいたっていないものの、破綻危機にあるイタリアの銀行は他にもあります。
以上でも引用した野村資本市場研究所の資料によると破綻した3銀行以外にも資金繰りに苦しんでいる銀行があったのでご紹介します。
銀行名 | 資本不足額 | 資本調達後資本不足額 |
Banca Carige | 2196億円 | 972億円 |
Banco Popolare | 828億円 | 0円 |
Banca Popolare di Milano | 816億円 | 204億円 |
Credito Valte llinese | 456億円 | 0円 |
Banca Popolare di Sondrio | 384億円 | 0円 |
Banca Popolare dell’Emilia Romagna | 156億円 | 0円 |
以上の表のように、イタリアの銀行の中には破産した3行と同等かそれ以上に資金繰りの厳しい金融機関があります。
以上の表にある銀行が今後破綻するかもしれません。
もしそうなれば、イタリア経済はさらに厳しくなり、経営危機に直面しているドイツ銀行にさらなる負担を強いることになるでしょう。
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