ここ近年で日本企業の長時間労働が度々問題にあげられ、ニュースや新聞でも取り上げられるようになってきました。
政府としても”働き方改革”を打ち出し、労働環境の改善を図ってはいますが、残業時間に制限がかかってしまったことでサービス残業が常態化しているなんて声も多くあります。
また、長時間にわたる残業は働いている時には習慣化しており、心身ともにダメージを負ってから長時間労働を強いられていたことを実感するケースも多くあります。
そこで今回はサラリーマンとして働いている方や、そのご家族の方などに対して、「うちの残業時間は果たして正常なのか?」とセルチェックできるような情報を紹介していきます。
日本のサラリーマンの残業時間は平均どのくらい!?
民間の調査によると、一般的なサラリーマンの平均残業時間は”47時間”でした!
大手転職情報サイトの「Vorkers」がサラリーマンを対象としたアンケートによると、毎月の平均残業時間は47時間ということになっています。
以下が上記のアンケートの調査結果の概要を引用したものです。
- 「月の残業時間は約30時間」と回答した人の割合が最も多い(14.5%)
- 最も残業時間が長いのは「35~39歳の年収2000~3000万円のビジネスパーソン」
- 20代・30代では残業時間はほとんど変わらず、40歳前を境に少しずつ減少する傾向にある
特に残業時間の長い年収2000万円〜3000万円という高収入層に限っては、月の平均残業時間が75時間以上となっていることも注目すべき結果となっていました。
また、20代と30代では残業時間がそれほど変わらないことから、若手や中堅の時にはある程度の残業は仕方ないとされている状況なのではないかと推測できますね。
一方、役職などが上がってくる40代になると残業時間も少なくなってくるようです。
しかし厚生労働省の指標では10時間との結果が。大きな差が出る理由は?
一方でパブリックによる調査結果は大きく変わっています。
厚生労働省が実施した「毎月勤労統計調査平成29年結果確報」によると、全体的な月の平均残業時間は10時間という結果になりました。
ではどうして民間での調査と厚生労働省の調査とで37時間もの残業時間の差が出ているのでしょうか?
その理由はアンケートをとった相手が根本的に異なるからです。
Vorkersの調査では労働者自身に残業時間を聞いているので、正味の残業時間を発表していると考えられます。
しかし厚生労働省の場合には、雇用主にまとめてアンケートを取っているので、上層部が把握していないサービス残業はカウントされないことになっています。
また、最悪の場合には会社の印象を良くするために不当に残業時間を少なく申告していたり、残業申請をさせないようにするなどの問題がありますね。
そもそも働き改革とは?実際に改正されて効果はあったの!?
労働時間を規制する労働基準法とは!?
そもそも残業時間とは、一体どのように決定されるものなのでしょうか?
労働基準法による正式な定義でいうと、「法定労働時間を超える時間外労働」のことを残業と定義します。
時間外労働というのも、一般的に考えられている「残業」と法律上の「時間外労働」の2つの概念があります。
世間の言う「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超える時間のことを指すものと考える方も多いでしょう。
こちらは比較的イメージしやすいですよね。
一方、法律上の「時間外労働」とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」(1日8時間・1週40時間)を超える時間であると定義されています。
例えば、始業時刻が9:00、お昼の休憩時間が12:00~13:00、終業時刻が17:30の会社であれば、所定労働時間は7時間30分となりますね。
この場合に、9:00に始業し18:00に終業した労働者については、いわゆる「残業」は30分になりますが、 法律上の「時間外労働」は合計で8時間の勤務にしかならないので残業はなしということになります。
働き方改革の核となる36協定とは!?
今回の法改正で問題とされているのが36協定です。
36協定とは、個人を会社から守るためのものであり、正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。
労働基準法36条に基づく労使協定であるため、一般的に「36協定」と呼ばれることが多いですね。
36協定では、会社の大小に関わらず、従業員が一時間でも残業や法定休日に出勤させる可能性がある場合、必ず労働基準監督署に提出する必要があるというかなり厳しい規制となっています。
申請を行う際には具体的に以下のような事項を記載し、従業員代表者と会社が協定を結び、それを労基署に届け出ることが必要です。
- 残業および休日出勤をさせる必要のある具体的な理由
- 残業および休日出勤させる従業員の職種および人数
- 1日あたりの残業時間
- 1ヶ月あたりの残業時間(通常は最大45時間まで)
- 1年あたりの残業時間(通常は最大360時間まで)
- 休日出勤させる日数(月4日)
- 36協定の有効期間(通常は起算日より1年)
36協定の落とし穴!解釈次第では残業時間が増えてしまうことも!
厳しいようにも思われていた36協定ですが、実は思わぬ落とし穴があるのです。
実は36協定には「特別条項」があり、36協定届の所定欄にその理由と延長時間を付記することで、年間6回(6ヶ月)までであれば、月45時間を超えて残業させることが可能となります。
しかもその場合、1ヶ月の時間の上限なく残業させることが可能なのです。
つまり1年の間で6ヶ月間は無制限で残業が可能となってしまったのです。
こうした法律の抜け穴を利用して、長時間残業を強いていたり、記録に残らないようにするためにサービス残業をさせている企業もあるとされています。
働き方改革によって正式に残業ができなくなり、残業時間は変わらないのに残業代が出ないというなんとも逆効果な状況がブラック企業では起こってしまっているようです。
日本企業の残業時間は今後も減らないの!?具体的な解決策とは?
法律や政策面での対応だけでは、なかなか現場レベルで効果的な効果が得られているとは言い難いものとなっています。
というのも、やはり人材と仕事量のバランスを改善しなければサラリーマンの労働時間は縮小できないでしょう。
ではこうした問題を解決するためにはどうした対応策があげられるのでしょうか!?
ホワイトカラーエグゼンプションの導入
長時間労働に関して近年注目されている法案が「ホワイトカラーエグゼンプション」というものです。
あまり聞き馴染みのない単語ですので、初めて聞いたという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか!?
この法案は働いた時間によってではなく仕事を通してあげた成果によって賃金を決めるという仕組みです。
特にホワイトカラーの労働者の働き方とマッチしている評価制度ですので、ホワイトカラーエグゼンプションと言われています。
ただ単にだらだら長く働いても、逆に効率よく短く働いても同じ給料になるので、労働生産性を引き上げるインセンティブになり、長時間労働が是正されることを期待されています。
ヨーロッパやアメリカでは基本的に管理職などのエグゼクティブ層を中心に対象が定められていて、日本でもその方向で検討が進められています。
その反面、これは「残業代なし法案」という批判も根強くあります。
この主張は時間給ではなくなるので、逆に企業が労働者に長時間労働を強いるようになるのではという不安の声も上がっています。
成果による評価は営業職などははっきりと目に見えますが、バックオフィスの職種などは明確な数字の実績がわかりにくいので、労働に見合った給与が支給されるのか、公平な評価されるのかなどの懸念があります。
IT技術の導入によって業務自体が効率化される!?
最近では、AI(人工知能)などテクノロジーの進歩が驚くべきスピードで進んでいます。
こうした抜本的な技術革新はそもそもの働き方の概念すらも変えてしまう可能性があるのです。
従来から”働く”というものは場所と時間に縛られるという前提に基づいています。
多くのサラリーマンは、基本的に毎日同じオフィスに出社して一定の時間働き続けることを基本としています。
しかし、テクノロジーの進歩によってこうした働き方が大きく変わるかもしれません。
例えば、会社に出社しなくても仕事をすることができる、在宅や家の近くの拠点で仕事をする「リモートワーク」などがそうです。
またプログラマーに代表される職種では、雇用の枠組みにとらわれない個人請負として「フリーランス」としての自由な働き方も増加しています。
場合によっては会社という組織自体が今までよりも必要ではなくなり、徹底的に成果に基づいた報酬体系などが導入されるかもしれませんね。
日本の労働問題はかなり根強い!今後は自力で成果を出せるようなスキルアップを!
これからは年功序列・終身雇用などの日本企業の基本的な前提が崩れていくものと考えられています。
また、これまでは残業手当をしっかりともらえたことで年収が多めにもらえてきた方も多いかと思いますが、今後は残業がそもそもできなかったり、残業申請できないケースも増えてくるでしょう。
こうした時代の流れにうまく対応していくには、やはりしっかりと成果を出せる実力を身につけていくことが大切になっています。
IT、会計、英語、業界知識、人脈構築など働きながら培うことのできる能力は多々あるはずです。
会社におんぶに抱っこの働き方ばかりではなく、スキルと実力をつけて働きやすい環境を得るために転職をしたり、キャリアアップをできるような人材になることが、サラリーマンの方が長時間労働に対してできる最善の対応策と言えるでしょう。
なかなか政策的に抜本的な改革は難しいとされていますので、万が一長時間労働に苦しめられているのであれば、「働き方改革で状況は改善されるだろう」と我慢しすぎるのではなく、思い切って退職することも視野に入れる方が心身のためです。
ブラック企業などでは退職することすら拒否してくる場合もありますが、退職は労働者に認められている権利です。
自力での退職がどうしても厳しいという場合には、退職代行サービスなどを利用してみるのもよいでしょう。
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